最新更新日2022/11/15☆☆☆

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本ミス2023
対象作品である2021年11月1日~2022年10月31日の間に発売された謎解き主体のミステリー作品の中からベスト10の順位を予想していきます。ただし、あくまでも個人的予想であり、順位を保証するものではありません。また、予想は作家の知名度や人気、作風、話題性などを考慮したうえで票が集まりそうな作品の順に並べたものであり、必ずしも予想順位が高い作品ほど優れているというわけでもありません。それらの点についてはあらかじめご了承ください。
※紹介作品の各画像をクリックするとAmazon商品ページにリンクします
2023本格ミステリ・ベスト10
探偵小説研究会
原書房
2022-12-07


本格ミステリベスト10海外版最終予想(2022年11月15日)

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記載方法は以下のようになっています。
予想順位.タイトル(作者名)本ミスの順位(このミスの順位 文春の順位 読みたいの順位)
ただし、「→本ミスの順位(このミスの順位 文春の順位 読みたいの順位)」の部分が記載されているのは予想ランキングあるいは本ミスで10位以内のものだけです。
なお、このミス、文春、 読みたいはそれぞれ「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」の略です。
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1位.キュレーターの殺人 (M・W・クレイヴン)→3位(文春4位 読みたい8位)
被害者の指を切断する連続殺人の謎にポー刑事とティリー分析官が挑むシリーズの第3弾。ふんだんにアイディアを盛り込み、謎が謎を呼ぶ展開で楽しませてくれます。二転三転しつつ衝撃的なラストへと至るストーリも秀逸。ただ、その動機でそこまでするか?という問題については賛否がわかれそう。


2位.ポピーのためにできること(ジャニス・ハレット)1位(このミス3位 文春4位 読みたい5位)
メールやメモなど、事件の証拠資料のみで構成された異色作。700頁もあるうえに事件が起きるまでが長いものの、謎を小出しにして上手く読者の興味を引いています。伏線やミスディレクションの配置も巧みで推理パズルとしては空前の完成度です。ただ、真相も小出しなので大きな驚きには欠けるかも。


3位.殺しへのライン (アンソニー・ホロヴィッツ)→2位(このミス2位 文春2位 読みたい2位)
ホーソーン&ホロヴィッツ シリーズ第3弾。島に集められた人々の紹介をじっくりと行う前半はスローテンポですが、事件発生以降、登場人物の秘密が次々と暴かれていくくだりは面白く、その末の伏線回収も鮮やかです。ただ、メインの謎である死体の一部をあえて縛らなかった理由についてはイマイチ。


4位.死まで139歩 (ポール・アルテ)→5位(文春20位
埋葬されたはずの死体が二重密室の屋敷で139足もの靴と共に発見されるという謎にツイスト博士が挑むシリーズ第8弾。故・殊能将之が絶賛したことで知られ、やりすぎ感満載の不可思議な謎にわくわくします。現実味に乏しいトリックは賛否が分かれるものの、最後に明らかになる真相には呆然自失。
死まで139歩 (ハヤカワ・ミステリ)
ポール アルテ
早川書房
2021-12-02


5位.ロンドン・アイの謎(シヴォーン・ダウド )→4位(このミス7位
衆人環視の観覧車で起きた人間消失の謎に12歳の少年が挑むジュブナイルミステリー。ジュブナイルといっても張り巡らせた伏線を回収しての推理は本格的で大人のミステリーファンをも唸らせるレベルです。また、ユーモアに溢れ、テンポも良いので娯楽小説としても十分に楽しむことができます。
ロンドン・アイの謎
シヴォーン・ダウド
東京創元社
2022-07-12


6位.優等生は探偵に向かない (ホリー・ジャクソン)→7位(このミス5位 文春3位 読みたい3位)
女子高生がSNSや関係者インタビューを駆使して真相に迫っていく面白さは今回も健在。ピップとラヴィのコンビも魅力的で、終盤に明らかになるまさかの事実にも驚かされます。ただ、それは調査の結果、たまたま明らかになった事実にすぎません。推理要素に乏しく、本格としての味わいは薄いかも。


7位.英国屋敷の二通の遺書 (R・V・ラーム)※ランク外
インド人作家による現代インドを舞台にした本格ミステリ。代々当主が非業の死を遂げる呪われた屋敷が地崩れによって孤立し、事件が起きるといった古典的探偵小説の雰囲気がたまりません。また、遺書に関する仕掛けもヒネリが効いています。ただ、本格としては推理の手掛かりが不十分なのがやや難。
英国屋敷の二通の遺書 (創元推理文庫 M ラ 12-1)
R・V・ラーム
東京創元社
2022-03-19


8位.レオ・ブルース短編全集(レオ・ブルース)※ランク外
短編全40作品を網羅したマニア垂涎の逸品。ただ、どれも10ページほどと短いため、物語としてのメリハリは十分ではありません。その代わり、奇妙な味と皮肉の効いたオチという著者ならではの魅力を満喫することが出来ます。また、比較的長めの「ビーフのクリスマス」はフーダニットとして秀逸。
レオ・ブルース短編全集 (海外文庫)
レオ・ブルース
扶桑社
2022-04-28


9位.名探偵と海の悪魔 (スチュアート・タートン) →4位(このミス4位 文春6位 読みたい6位) 
前作『イヴリン嬢は七回殺される』が特殊設定ミステリの傑作だったのに対し、本作は謎と冒険と怪異の全方位的娯楽作品となっています。その分、本格としてのボリュームが薄くなっているのは残念ですが、謎解きのレベルは水準を超えていますし、なにより、冒険譚としては抜群の面白さです。
名探偵と海の悪魔 (文春e-book)
スチュアート・タートン
文藝春秋
2022-02-23


10位.魔王の島(ジェローム・ルブリ)※ランク外(このミス10位 文春13位 読みたい9位)
1949年に両足の欠損した子供たちの死体が打ち上げられたノルマンディ沖の孤島を巡る物語は二転三転し、独特のトリップ感覚を味わうことができます。そして、その末にたどり着く真相がある意味非常に衝撃的です。ただ、反則スレスレのご都合主義な点は否めないので、その辺りは好みが分かれそう。
魔王の島 (文春文庫)
ジェローム・ルブリ
文藝春秋
2022-09-01



その他注目作品18

11.辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿(莫理斯 (トレヴァー モリス))→10位(このミス12位 文春17位 読みたい12位) 
ホームズを中国人に置き換えたパスティーシュ作品で、「血文字の謎」「黄色い顔のねじれた男」「親王府の醜聞」「ベトナム語通訳」など、どこかで聞いたことのあるタイトルの短編が6篇収録されています。原典のネタを活かしつつも再構築し、思いもよらぬ結末に着地する構成が見事です。
辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿 (文春e-book)
莫理斯(トレヴァーモリス)
文藝春秋
2022-04-22


12.邪悪催眠師 (周浩暉) 
人の死をも自在に操る催眠術師と公安局刑事隊長の羅飛が対決する、『死亡通知書 暗殺者』の前日譚。スリラーとして優れた作品である同時に、催眠術を中心としたロジックもしっかりとしており、犯人探しのパズラーとしてもよくできています。ただ、催眠術が万能すぎるのは気になるところ。
邪悪催眠師 (ハーパーBOOKS)
周 浩暉
ハーパーコリンズ・ジャパン
2022-08-24


13.彼は彼女の顔が見えない (アリス・フィーニー)
夫が人の顔を判別できない相貌失認症だという設定がキーとなる謎解き要素満載のサスペンス小説。なかには仕掛けが読みやすいものもありますが、とにかくあの手この手で読者を騙そうとする手数の多さには圧倒されます。ただ、仕掛けを盛り込み過ぎたために、リアリティが犠牲になっている面も。
彼は彼女の顔が見えない (創元推理文庫)
アリス・フィーニー
東京創元社
2022-07-29


14.窓辺の愛書家 (エリー・グリフィス )
殺人コンサルタントと称して多くの推理作家に執筆協力をしていた老婦人の謎に挑む、刑事ハービンダーカーシリーズの第2弾。ミステリ小説を巡る謎が魅力的で、前作の『見知らぬ客』と比べて本格色が濃くなった点がうれしいところです。特に、散りばめられた伏線を巧みに回収する手管が秀逸。


15.壊れた世界で彼は (フィン・ベル)
ギャングが一家を人質にとって田舎町の民家に立て籠もるというサスペンスものながら、目まぐるしい展開の中で事件の核心を上手く隠蔽し、最後に伏線を回収して意外な真相を開示する手管が見事です。ただ、いささか回りくどい表現が多くて中盤ではかなりの中弛みを感じてしまうのが難。
壊れた世界で彼は (創元推理文庫)
フィン・ベル
東京創元社
2022-05-30


16.ゲストリスト(ルーシー・フォーリー )
アイルランドの孤島で結婚式を挙げていたところ、暴風雨が迫るなかで殺人事件が....。といった感じで典型的なクローズドサークルものにみせかけつつも、時系列をバラバラにし、犯人はもちろん被害者が誰かも分からない展開がスリリング。純粋な本格ではありませんが、終盤の伏線回収は見事です。
ゲストリスト (ハヤカワ・ミステリ)
ルーシー フォーリー
早川書房
2021-11-04


17.修道女フィデルマの采配(ピーター・トレメイン )
7世紀のアイルランドを舞台に王女で法廷弁護士の修道女フィデルマが活躍する、日本オリジナル編纂の短編集第5弾。ヒネリの効いたホワイダニットが光る『法定推定相続人』やラストのオチが秀逸な『魚泥棒は誰だ』、オオカミ少年をモチーフにした奇妙な味の『「狼だ!」』など、秀作揃いです。


18.死亡告示 トラブル・イン・マインドII (ジェフリー・ディーヴァー)
クライムノベルの色が強い作品集ですが、中編小説の「永遠」は本格としても読み応えがあります。探偵役を務める刑事の統計学を用いた推理がミステリマインドをくすぐりますし、著者十八番の二転三転の展開も申し分なしです。なにより、意外性に満ちた真相がホワイダニットものとして秀逸。
死亡告示 トラブル・イン・マインドII (文春文庫)
ジェフリー・ディーヴァー
文藝春秋
2022-05-10


19.真夜中の密室(ジェフリー・ディーヴァー )
リンカーンライムシリーズ第15弾。施錠した部屋でも楽々と侵入する怪人ロックスミスの暗躍と、リンカーン・ライムが警察の政争に巻き込まれる話が並行して語られ、それぞれにどんでん返しが用意されています。ロックスミスとの対決はあっさりですが、その分、仕掛けの多さは魅力的。
真夜中の密室 リンカーン・ライム (文春e-book)
ジェフリー・ディーヴァー
文藝春秋
2022-09-27


20.デイヴィッドスン事件(ジョン・ロード)→8
1929年発表の作品で、物語は私利私欲に走って多くの人から恨みを買っている2代目社長が何者かに殺されるというもの。名探偵の推理によって容疑者が逮捕されるのですが、そこからヒネリのある展開が待っています。メインの仕掛けは当時すでに先行例があるものの、その犯人像はなかなかに強烈です。


21.悪魔を見た処女(エツィオ・デリコ/カルロ・アンダーセン)
ロープにぶら下がっている悪魔を少女が目撃する表題作はかつて江戸川乱歩が「トリックが巧妙で雰囲気や意外性も秀逸」と称賛した黄金期の作品。凄い傑作というわけではないものの、古典の芳醇な香りを満喫できる佳品です。それに比べ、併録の『遺書の誓ひ』は突出した点がなく、やや凡庸。
悪魔を見た処女 (論創海外ミステリ 280)
カルロ・アンダーセン
論創社
2022-04-27


22.ウィンストン・フラッグの幽霊 (アメリア・レイノルズ・ロング)
B級ミステリの女王ことロングの1945年の作品です。ミステリ作家のミス・パイパーと犯罪心理学者のトリローニーを探偵役に配した物語は、消えた死体や遺言状の謎を中心にテンポ良く語られ、思わず引き込まれていきます。驚くべきトリックなどはありませんが、そつなくまとめられた佳品です。
ウィンストン・フラッグの幽霊 (論創海外ミステリ 285)
アメリア・レイノルズ・ロング
論創社
2022-06-30


23.ヨーク公階段の謎 (ヘンリー・ウェイド)→9
大手銀行の頭取がロンドンの名所で急死した事件の謎をロンドン警視庁の若手警部が追う1929年発表のプール警部シリーズ第1弾。プール警部が関係者から話を聞く展開が延々と続くため、正直かなり退屈です。その代わり、手掛かりをそろえたうえでミステリ的な仕掛けを解き明かしていくくだりは秀逸。
ヨーク公階段の謎 (論創海外ミステリ 287)
ヘンリー・ウェイド
論創社
2022-09-10


24.エリザベス女王の事件簿 ウィンザー城の殺人(S・J・ベネット)
90歳を越えたエリザベスⅡ世が殺人事件の解決に乗り出すという日本ではありえない作品です。しかも、2016年当時の国際状況に触れられており、日本の元首相の名前が出たりもします。フーダニットミステリーでこれといったトリックなどはありませんが、設定の妙と軽妙な雰囲気が楽しい佳品です。


25.殺人は自策で(レックス・スタウト)
ネロ・ウルフシリーズ第22弾の本作は複数の作家をでっち上げの盗作で訴える詐欺事件が起き、やがてそれが殺人へと発展するというもので読者への挑戦状付きなのが目を引きます。ただ、その割に推理の根拠が薄弱なのは残念なところ。一方、キャラの魅力と軽妙な掛け合いは安定の面白さです。
殺人は自策で (論創海外ミステリ 279)
レックス・スタウト
論創社
2022-03-03


26.ピーター卿の遺体検分記 (ドロシー・L・セイヤーズ 
ピーター卿シリーズ第1短編集(1928年発表)の新訳です。長編作品とは異なり、重厚で文学的な作風は影を潜め、その代わり、探偵役であるピーター卿の颯爽とした活躍を存分に楽しむことができます。また、風変わりな事件や凝ったタイトルも楽しい一方で、肝心の謎解きはやや物足りなさも。
ピーター卿の遺体検分記 (論創海外ミステリ 277)
ドロシー・L・セイヤーズ
論創社
2021-12-28


27.レイン・ドッグズ (エイドリアン・マッキンティ)
ショーン・ダフィシリーズ第5弾。ハードボイルドな警察小説にも関わらず、第3弾『アイル・ビー・ゴーン』に続いて密室殺人が扱われている点が目を引きます。しかも、事件の現場が古城といういかにもな雰囲気なのがうれしいところです。ただし、謎解きメインの作品ではないので過剰な期待は禁物。
レイン・ドッグズ ショーン・ダフィ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
エイドリアン マッキンティ
早川書房
2021-12-16


28.サナトリウム(サラ・ピアース)
山奥のホテルが雪崩で孤立するなか連続殺人事件が発生するという、『ゲストリスト』以上にクローズドサークルな作品ながら、中身は本格ではなくサスペンスです。それでも、不気味な館の描写やいわくありげな舞台を絡めた真相など、それらしいムードは味わえます。ただ、動機の説得力がいま一つ。
サナトリウム (角川文庫)
岡本 由香子
KADOKAWA
2021-11-20


2022年12月7日追記
予想結果
ベスト5→5作品中5作的中
ベスト10→10作品中7作的中
順位完全一致→10作品中0作品

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