最新更新日2022/05/16☆☆☆

Previous⇒このミステリーがすごい!2022年版 海外ベスト20予想

このミス2023
対象作品である2021年10月1日~2022年9月30日発売のミステリー&エンターテイメント作品の中からベスト20の順位を予想していきます。ただし、あくまでも個人的予想であり、順位を保証するものではありません。また、予想は作家の知名度や人気、ジャンルや作風、話題性などを考慮したうえで票が集まりそうな作品の順に並べたものであり、必ずしも予想順位が高い作品ほど優れているというわけでもありません。以上の点はあらかじめご了承ください。
※紹介作品の各画像をクリックするとAmazon商品ページにリンクします

2022年4月28日時点での暫定予想順位

1位.アリスが語らないことは (ピーター・スワンソン)
大学卒業を控えたハリーは父が崖から転落死亡したとの連絡を受ける。故郷に戻った彼を待っていたのは美しい継母のアリスで、彼女の話によると父の死は散歩の途中で転倒した結果だという。しかし、刑事は父の死体には殴打の痕跡が残されていたと告げるのだった。ハリーはアリスに疑念を抱くが...。
ハリー視点の現在パートとアリスの過去パートが交互に語られ、この2つがどう繋がっていくのが気になってぐいぐいと引き込まれていきます。犯人の正体が徐々に明らかになっていく展開もスリリング。
アリスが語らないことは (創元推理文庫)
ピーター・スワンソン
東京創元社
2022-01-27


2位.名探偵と海の悪魔 (スチュアート・タートン)
17世紀。ピップスとアレントがバタヴィアで帆船に乗り込もうとしたとき、包帯男が乗客の破滅を予言する。男は炎に包まれて絶命し、船中では次々と怪事件が起きる。ヒップスは名探偵と名高いが現在、罪人として護送中の身。助手のアレントは聡明なバタヴィア総督夫人とともに捜査を開始するが...。
『イヴリン嬢は七回殺される』は凝った構成故に読みにくさも相当でしたが、本作はストレートなエンタメです。謎解きでは前作に及ばないものの、魅力的なキャラと畳みかける展開にワクワクします。
名探偵と海の悪魔 (文春e-book)
スチュアート・タートン
文藝春秋
2022-02-23


3位.警部ヴィスティング 悪意 (ヨルン・リーエル・ホルスト)
2人の女性を殺して服役中のトム・ケルは失踪中の女性も自分が殺したと言い出す。ヴィスティングたちが見守るなか、死体を遺棄したという場所に連れられてこられたトム・ケルだったが、突如手榴弾が爆発し、混乱に紛れて姿を消してしまう。警察は彼と、彼の逃亡を助けた共犯者の行方を追うが...。
冒頭こそ派手ですが、その後はなかなか捜査が進展しない地味な展開が続きます。しかし、主人公と娘の関係など、停滞の中での人間ドラマこそが本シリーズの魅力です。後味のよいラストも好印象。
警部ヴィスティング 悪意 (小学館文庫)
ヨルン・リーエル・ホルスト
小学館
2022-03-04


4位.最後の審判(ロバート・ベイリー)
死刑囚のジムボーンが脱獄する。目的は老弁護士ジムへの復讐だ。そして、トムが愛する人たちを皆殺しにすると宣言し、末期癌の彼を精神的に追い詰めていく。相棒リック、検察官パウエル、大切な息子夫婦と可愛い孫。余命いくばくもないトムは果たして彼らを守り切ることができるのだろうか。
四部作の完結編。リーガルサスペンスのシリーズながら今回はアクション中心の作りなっています。しかし、骨太の物語と相俟ってこれが抜群の面白さです。それに加え、ラストシーンも感動的。
最後の審判 (小学館文庫)
ロバート・ベイリー
小学館
2021-12-07


5位.黒き荒野の果て(S・A・コスビー)
裏社会で語り継がれる伝説のドライバー・ボーレガード。そんな彼も今では足を洗い、いとこと自動車修理工場を営んでいた。だが、工場の経営が傾いてきたことで、彼はかつて仲間が持ちかけてきた宝石店強盗の運転役を引き受けてしまう。仕事は成功したが、そのことでギャングの抗争に巻き込まれ....。
金と暴力がテーマのいかにもアメリカンクライムノベルといった感じで話自体目新しさはありません。しかし、全編に緊張感が満ちており、ぐいぐいと引き込まれていきます。カーチェイスの描写が秀逸。
黒き荒野の果て (ハーパーBOOKS)
S・A コスビー
ハーパーコリンズ・ジャパン
2022-02-16


6位.辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿(莫理斯 -トレヴァー モリス- )
清がアヘン戦争に敗れて英国領となった香港。同居人募集の家を訪ねた医師の華笙は、そこで福邇という男と出会う。福邇は華笙を一目見るなり、戦場で怪我をした事実を言い当てる。彼は卓越した推理力を有した探偵だったのだ。こうして出会った2人は数々の難事件に立ち向かっていくが…。
ホームズを中国人に置き換えたパスティーシュ作品。原典のネタにひねりを加えており、元ネタを知っている人ほど楽しめる作りになっています。また、アクションも満載で武侠小説としても秀逸。
辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿
莫理斯 (トレヴァー モリス)
文藝春秋
2022-04-22


7位.ゴールドマン家の悲劇(ジョエル・ディケール)
『ハリー・クバート事件』でベストセラー作家となったマーカス・ゴールドマンの実家は質素な家庭だった。そのため、少年時代の彼は有福で弁護士の伯父と医者の伯母がいるもう一つのゴールドマン家に憧れ、その家に入り浸っては従兄弟たちと遊んでいた。だが、思わぬ悲劇が一家に襲いかかり...。
前半は主人公たちの成長を描いた青春小説のようでミステリーらしくありません。しかし、これはこれで読み応えがあり、その前半部があるからこそ、一家崩壊のドラマに心揺さぶられることになります。
ゴールドマン家の悲劇 上 (創元推理文庫)
ジョエル・ディケール
東京創元社
2022-03-19


8位.捜索者 (タナ ・フレンチ)
警察官のカルは長年勤めてきたシカゴ警察を退職し、アイルランドの小さな村に移り住む。そこで廃屋を改築して静かに暮らしていたのだが、交流を持った少年から行方不明の兄を探してほしいと頼まれる。独自に調査を始めるも手掛かりはなく、代わりに一見穏やかな村の暗部が露わになっていき...。
一種の犯罪小説ですが、派手な展開はなく、話はむしろ淡々としています。しかし、その中に不穏な空気を忍ばせ、緊迫感を持たせることに成功しています。主人公と少年との友情描写も秀逸。
捜索者 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
タナ フレンチ
早川書房
2022-04-20


9位.ベルリンに堕ちる闇(サイモン・スカロウ)
1939年の12月末。ドイツでレイプ殺人が発生。線路脇に遺棄されていた死体の主は元女優の党幹部だった。党内勢力図を塗り替えかねないこの事件の捜査に、どの派閥にも属さないホルスト・シェンケ警部補が指名される。捜査を開始した彼は酷似した事件が広範囲にいくつも起きていることに気づくが...。
主人公が指揮する捜査が様々な圧力によって思うように進められないなど、ナチス政権下のドイツをリアルに描いた作品です。全体的に重苦しい空気に包まれていますが、重厚な読み応えはあります。
ベルリンに堕ちる闇 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
サイモン スカロウ
早川書房
2021-11-17


10位.死まで139歩 (ポール・アルテ)
ツイスト博士の元に依頼が舞い込んだ2つの事件はいずれもしゃがれ声の怪人が関わっていた。そして、その怪人の電話に導かれ、博士は埋葬されたはずの主の死体を異様な屋敷で発見する。しかも、部屋は施錠され、積もった埃の上には足跡一つない。さらに、屋敷にはなぜか139足もの靴が......。
ツイスト博士シリーズ第8弾。とんでもないらしいとマニアの間で囁かれていた作品ですが、噂に違わぬ怪作です。謎だらけの前半が魅力的で、それを無理矢理解決してしまうバカミスっぷりも凄まじい。
死まで139歩 (ハヤカワ・ミステリ(1974))
ポール アルテ
早川書房
2021-12-02


11位.英国屋敷の二通の遺書 (R・V・ラーム)
植民地時代に英国人が建設し、以来当主が非業の死を遂げ続けているというグレイブルック荘。そこに数々の難事件を解決してきた元刑事のアスレヤが招待される。屋敷の現当主が何者かに命を狙われているというのだ。当主は対策として自分の死に方によって効力の変わる遺書を2通用意するが...。
珍しいインドの本格ミステリ。舞台は現代なのですが、屋敷の見取り図が登場するなどのクラシックな探偵小説の雰囲気にワクワクします。探偵役も魅力的で黄金時代のムードを満喫できる良作です。
英国屋敷の二通の遺書 (創元推理文庫 M ラ 12-1)
R・V・ラーム
東京創元社
2022-03-19


12位.ロスト・アイデンティティ (クラム ラーマン)
イスラム教徒だが、戒律は守らず、酒もヤクも嗜む麻薬密売人のジェイ。彼は逮捕されるも、MI5のテロ対策室メンバーの仕事を手伝うことを条件に釈放される。彼に与えられた任務はイスラム過激派によるテロの阻止。しかし、その中枢に迫ったジェイは無差別テロが目前に迫っていることを知り…。
主人公の軽妙でユーモラスな語り口に引き込まれる一方で、三人称で描かれるMI5などの描写はスパイ小説として抜群の面白さです。ただ、それだけに衝撃的なラストは好みの分かれるところ。
ロスト・アイデンティティ (ハーパーBOOKS)
クラム ラーマン
ハーパーコリンズ・ジャパン
2022-03-19


13位.過ちの雨が止む(アレン・エスケンス)
記者になったジョーは仕事でトラブルを抱えていたが、自分と同姓同名の男が不審な死に方をしたことを知り、現場の田舎町へと向かう。その男はジョーと同じ名前を持つ顔も知らない父親かもしれないと考えたからだ。事件の謎を追ううちにジョーは小さな町の複雑な人間模様に巻き込まれ…。
バリー賞など3冠受賞に輝いた「償いの雪が降る」の続編。今回はジョーがやたらウジウジと悩むシーンが多いので前半は読んでいてイライラするかもしれません。しかし、後半における二転三転の展開はミステリーとして抜群の面白さですし、正義を貫こうとするジョーの姿も胸を打ちます。


14位.ネヴァー(ケン・フォレット)
中央アフリカのチャド共和国とスーダン共和国は武力衝突をり返し、その連鎖は被害を被った中国が報復行為に出るまでに至る。これ以上紛争が拡大するのを防ぐべく、米中によるギリギリの交渉が続いていたが、そこに北朝鮮でクーデター勃発との報が舞い込む。思わぬ事態に両国は疑心暗鬼に陥るが.....。
『針の眼』の著者による全3巻の大作。場面切り替えのせわしい序盤はとっつきにくいものの、中盤以降の緊迫の展開にページをめくる手が止まらなくなります。日本も絡む凄惨な展開はインパクト大。
ネヴァー(上) (扶桑社BOOKSミステリー)
ケン・フォレット
扶桑社
2021-12-02


15位.匿名作家は二人もいらない (アレキサンドラ・アンドリューズ )
作家志望のフローレンスはベストセラー作家のモード・ディクソンにアシスタントとして雇われる。覆面作家であるモードに下書き原稿を仕上げる仕事をまかされた彼女は当初真面目に仕事をこなしていた。しかし、原稿へ自分の文章を混ぜ、共同執筆者を気取ることに快感を覚えるようになり...。
前半は大きな動きはないものの、中盤以降サスペンスが増して一気に面白くなっていきます。クライムノベルとしては手垢のついたプロットながらも強烈なキャラと二転三転の展開が魅力的です。
匿名作家は二人もいらない (ハヤカワ・ミステリ文庫)
アレキサンドラ アンドリューズ
早川書房
2022-02-16


16位.フォーリング―墜落(T・J・ニューマン)
コースタル航空ニューヨーク行き416便の機長・ビルに差出人不明のメールが届く。そこには爆弾を巻き付けられた妻子の写真が添付されていた。犯人はビルにワシントンに向かうように指示し、家族を救いたければ飛行機を墜落させろと告げる。家族の命か、乗客の命か。ビルの決断は?
冒頭からサスペンスフルな展開が続き、どんどん緊迫感が増していくのが秀逸。一方、作中のノリはエンタメ系ハリウッド映画に近く、ユーモアをちりばめて過度に重苦しくなるのを防いでいます。
フォーリング 墜落
T J ニューマン
早川書房
2022-03-16


17位.阿片窟の死 (アビール・ムカジー)
1921年。ガンジー指導の元での独立運動が勢いを増すなか、カルカッタでは英国皇太子訪問を控えて厳戒態勢が敷かれていた。しかし、街では異様な変死事件が相次いでいた。英国人警部のウィンダムは阿片依存症に苦しみながらも相棒のインド人部長刑事・バネルジーの助けを借りて事件の謎を追うが...。
ウィンダム警部シリーズの第3弾。独立運動で緊迫感が高まるカルカッタを臨場感豊かに描き、そのうえで、虚実を交えた歴史の闇を浮かび上がらせていく手管が見事です。陰影に富んだキャラも魅力的。


18位.レオ・ブルース短編全集(レオ・ブルース)
クリスマスパーティ ーの夜に秘書が殺された事件にビーフ巡査部長が挑む「ビーフのクリスマス」をはじめとして「ビーフと蜘蛛」「棚から落ちてきた死体」「犯行現場にて」「われわれは愉快ではない」「それはわたし、と雀が言った」「単数あるいは複数の人物」など、全40編収録。
1992年間発表の「棚から落ちてきた死体」にその後発見された12作品を加えた決定版。各10ページ程度しかない点は物足りなさも感じますが、ブルースの魅力を手軽に味わうには絶好の書です。


19位.レイン・ドッグズ (エイドリアン・マッキンティ)
北アイルランドにある古城の中庭で女性の転落死体が発見された。しかも、城門は閉ざされており、中に入るには高い城壁を乗り越えない限りは中に入るしかない。つまり、現場は完全な密室だったのだ。この難事件に挑むダフィの元に警察高官がIRAの手によって爆殺されたという連絡が入り......。
第3弾に続いて密室の謎にダフィが挑むシリーズ第5弾。ただ、謎解きがメインではなく、ダフィ自身に転機が訪れる物語はハードボイルドとして読み応えがあります。会話も小気味よく、キャラも魅力的。
レイン・ドッグズ ショーン・ダフィ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
エイドリアン マッキンティ
早川書房
2021-12-16


20位.ブラックサマーの殺人 (M・W・クレイヴン)
若い女性の失踪事件が発生し、ポー刑事以下の捜査陣は状況から殺人事件と断定。三ツ星レストランの経営者で世界的なシェフでもある父親を逮捕する。だが、その6年後、殺されたはずの娘が突然姿を現した。DNA鑑定でも本人に間違いないしの結論がくだされ、ポー刑事は窮地に追い込まれるが......。
シリーズ第2弾。直感派のポー刑事と健気なティリー分析官のコンビはもちろん、捜査陣の面々がみな魅力的で事件の不可解さも相俟ってぐいぐい引き込まれていきます。ただ、トリックは少々無理が。



その他注目作

王女に捧ぐ身辺調査: ロンドン謎解き結婚相談所(アリスン・モントクレア)
1946年のロンドン。結婚相談所を運営するアイリスとグウェンは殺人事件を解決したことですっかり有名になり、エリザベス王女に仕える女官から依頼が舞い込む。王女が交際中のフィリップ王子に脅迫状が届いた件の処理のために王子の身辺調査をしてほしいというのだ。2人は謎解きに奔走するが......。
シリーズ第2弾にして物語は王室問題にスケールアップ。大味になるかと思いきや各勢力の思惑が入り乱た手に汗握る物語に仕上がっています。軽快なテンポの掛け合いとアクションも健在な佳品です。
影のない四十日間 (オリヴィエ・トリュック )
サーミ人居住区でトナカイの所有者が殺害される。彼は隣人トラブルを抱えていたというがそれが原因なのか?トナカイ警察として配属されたばかりのクレメットとニーナは捜査を進めていくが、事件の裏には様々な思惑が潜んでいた。一方、カウトケイノの博物館からは貴重なサーミの太鼓が盗まれ......。
年間40日は太陽が出ないノルウェイの最北部を舞台に、密猟や家畜の盗難を担当する警官コンビの奮闘を描いた北欧ミステリー。北欧での暮らしぶりや政治、先住民族の文化などが興味深く描かれ、引き込まれていきます。また、内容が散漫とした部分もあるものの、ラストの追跡シーンは手に汗握ります。
影のない四十日間 上 (創元推理文庫 M ト 10-1)
オリヴィエ・トリュック
東京創元社
2021-11-11


まだ見ぬ敵はそこにいる ロンドン警視庁麻薬取締独立捜査班 (ジェフリー・アーチャー)
巡査部長に昇格したウィリアムは警視長直属の麻薬取締独立捜査班に異動となり、警視長自身から特命を受ける。それは、ロンドンを裏から支配する麻薬王・ヴァイパーの正体をつかみ逮捕せよというものだった。しかし、その足掛かりとして逮捕した麻薬の売人がウィリアムと因縁のある相手で.....。
ウィリアム・ウォーウィックシリーズ第2弾。ベテラン売れっ子作家だけあって潜入、追跡、活劇、裁判と見せ場の連続でぐいぐいと引っ張っていきます。ただ、十分に楽しむには前作読了済が大前提。
まだ見ぬ敵はそこにいる ロンドン警視庁麻薬取締独立捜査班 (ハーパーBOOKS)
ジェフリー アーチャー
ハーパーコリンズ・ジャパン
2021-12-17


シルバービュー荘にて(ジョン・ル・カレ )
英国の海辺の町で書店を営んでいたジュリアンは町外れのシルバービュー荘に住むエドワードと出会い、次第に親交を深めていく。そんなある日、ジュリアンはエドワードから見知らぬ女性に手紙を渡すよう頼まれる。一方、英国諜報部は重大機密漏洩の犯人を追ってシルバービュー荘を訪ねるが......。
2020年に89歳で亡くなったスパイ小説の巨匠の遺作です。ル・カレが近年多用してきたスパイの裏切りについて描かれており、物語に新味はありません。その代わり語り口のうまさはさすがル・カレです。
シルバービュー荘にて
ジョン ル カレ
早川書房
2021-12-16


シリア・サンクション(ドン・ベントレー)
史上初のヒスパニック系大統領の再選を目指してホワイトハウスはシリア・ISの化学兵器研究をCIAの部隊に襲撃させるも失敗に終わる。一方、その化学兵器開発に携わってきた科学者から米国政府へ接触があった。彼の確保の命を受けた国防情報局のドレイクはシリアに潜入し、激戦に身を投じるが...。
グレイマンシリーズのグリーニーが絶賛した作品で、全編に緊迫感みなぎるハードボイルドな雰囲気が魅力となっています。ただ、政治的策謀が多めでアクションが少ない点は好みの分かれるところ。
シリア・サンクション (ハヤカワ文庫NV)
ドン ベントレー
早川書房
2021-11-17


時は殺人者(ミシェル・ビュッシ)
コルシカ島で一家4人を乗せた車が崖から転落し、父・母・兄の3人が死亡する。それから27年。唯一生き残った妹のクロチルドは夫や娘と共に、事故以来初めてコルシカ島を訪れた。だが、彼女に一通の手紙が届く。そこには母の筆跡で母と自分以外知り得ない事柄が書かれていた。母は生きているのか?
現在と27年前の主人公の日記を交互に配置した構成が巧みで、読者は深まる謎に翻弄されていくことになります。サスペンスとして非常に読み応えがありますが、少々強引な真相は賛否の分かれるところ。
時は殺人者 上 (集英社文庫)
ミシェル・ビュッシ
集英社
2021-10-20


母の日に死んだ (ネレ・ノイハウス)
孤児院から子どもを引き取って育てていたライフェンラート家の邸宅から死後数日経過した老人の死体が発見される。亡くなったのは邸宅の主だったが、事件はそれだけで終わらなかった。床下から死蝋化した三体の遺体が発見されたのだ。30人の里子を育てた男は恐るべきシリアルキラーだったのか?
刑事オリヴァー&ピアシリーズの第9弾。猟奇殺人インパクトもさることながら、並行して語られる女性の物語が思わぬところで事件と繋がっていく構成の妙が見事です。圧倒的な筆力で読ませる傑作。


ゲストリスト(ルーシー・フォーリー )
アイルランドの孤島ではメディアで活躍する男女が豪華な結婚式を挙げていた。だが、参列者の間では様々な思惑が絡み合い、謎めいた警告の手紙まで送られてくる。そして、ついに事件は起きる。パーティの最中に殺人事件が発生としたのだ。果たして誰が殺されたのか?その犯人の正体は?
世界最大規模の書評サイトでミステリ年間1位を記録!その魅力は曖昧模糊とした物語が後半、パズルのピースが嵌っていくが如く繋がっていく点にあります。ただ、時系列がバラバラで読みにくのが難。
ゲストリスト (ハヤカワ・ミステリ)
ルーシー フォーリー
早川書房
2021-11-04


警告(マイクル・コナリー)
LAタイムズを辞め、ニュース・サイトの記者になっていたジャック・マカヴォイは一夜を共にした女性の殺害容疑でマークされる。被害者がデジタル・ストーキングされていたという事実を知った彼は独自に調査を開始する。そして、かつての恋人で元FBI捜査官の探偵・レイチェルに調査を依頼するが......。
ジャック・マカヴォイシリーズ11年ぶりの第3弾。今回のテーマはDNA鑑定などの現代捜査の危うさで、サスペンス満点の展開は読み応えがあります。ただ、もやもやした結末は好みの分かれるところ。
警告(上) (講談社文庫)
マイクル・コナリー
講談社
2021-12-15


森から来た少年 (ハーラン・コーベン)
剛腕弁護士として知られるへスターはある日、孫のマシュウから相談を受ける。忽然と姿を消した同級生のナオミを探してほしいというのだ。彼女は何かを隠しているような孫の様子を訝しく思いながらも彼の力になることにし、幼少時に一人森で生活していたという天才調査員に協力を要請するが.....。
70代の女性弁護士と30代の元野生児がコンビを組む異色のサスペンスです。著者ならでは先の読めない展開は健在ですが、やや展開が遅いのが気になります。すっきりしない結末も好みの分かれるところ。
森から来た少年 (小学館文庫)
ハーラン・コーベン
小学館
2022-01-07


クライ・マッチョ(N. リチャード・ナッシュ )
マイク・マイロは落馬事故によってロデオスターとしての栄冠を失い、結婚生活も破綻する。そんな彼にメキシコにいる息子ラファエルを偽装誘拐してほしいという依頼が舞い込む。成功報酬は5万ドル。マイクは闘鶏で生計を立てるラファエルを見つけるが、彼らにはさまざまな苦難が待ち受けていた...。
映画化を機に初邦訳された1975年の作品です。男と少年の旅路を描いたロード・ノベルですが、イベント盛りだくさんで退屈せずに読むことができます。主人公の再生を描いた物語としても秀逸。
クライ・マッチョ (海外文庫)
N. リチャード・ナッシュ
扶桑社
2022-01-13


平凡すぎて殺される (クイーム・マクドネル)
28歳のポールは平凡すぎる容貌を活かし、入院中の老人を慰問する日々を送っていた。彼を見ると老人たちは彼を身内だと思い込むのだ。ところが、ある日、彼は元ギャングの老人にナイフで刺されてしまう。しかも、30年前の誘拐未遂事件の秘密を聞いたと勘違いした組織の人間に命を狙われる羽目となり....。
脇役陣のキャラが立ちまくっており、スリリングかつコミカルな展開に引き込まれていきます。一見平凡な主人公も生い立ちが明らかになるにつれ魅力的に。ただ、後半がややとっちらかっているのが難。
平凡すぎて殺される (創元推理文庫)
クイーム・マクドネル
東京創元社
2022-02-19


墓から蘇った男(ラーシュ・ケプレル)
オスロの集合住宅で男の腐敗死体が発見される。しかも、死んだ男の家の冷凍庫からは警視庁への復職を控えたヨーナの亡妻の頭蓋骨が見つかったのだ。彼女の墓は荒らされており、ヨーナの脳裏にはかつて対峙した怪物・ユレックスの記憶が蘇る。奴は生きていると確信するヨーナだったが...。
ヨーナ・リンナシリーズ第7弾の本作は不穏な空気に満ちており、特に、フレックスの影が次第に忍び寄ってくる描写は手に汗握ります。読み応えは十分ですが、悲惨な展開は好みの分かれるところ。
墓から蘇った男(上) (海外文庫)
ラーシュ・ケプレル
扶桑社
2022-03-02


サナトリウム(サラ・ピアース)
雪山に佇むル・メソはサナトリウムを改装した豪華ホテルだ。女刑事のエリンは弟の婚約パーティに出席するため、恋人と共にそのホテルを訪れる。ところが、弟の婚約者が失踪し、続いてゴムマスクを被らされた死体が発見された。雪崩によって外界と孤立するなか、エリンは独自捜査に乗り出すが......。
設定は典型的なクローズドサークルですが、本格というよりサスペンスに近い作品です。しかも、ホテルの不気味な描写が秀逸でテイスト的にはホラーに近いかも。一方、説得力に欠ける犯行動機は難。
サナトリウム (角川文庫)
岡本 由香子
KADOKAWA
2021-11-20


修道女フィデルマの采配(ピーター・トレメイン )
修道院長が自分を殺すことを占星術で予言した修道士が溺死体となって発見される『みずからの殺害を予言した占星術師』、小国における族長選出の会合で有力な候補者が毒を盛られて死亡する『法定推定相続人』など、王女にして法廷弁護士でもある修道女フィデルマが難事件に挑む全5編を収録。
短編集第5弾。様々な思い込みによって目が曇っている人々に対して理路整然と真理を説いていくフィデルマのスタンスは相変わらず痛快です。そして、それだけに珍しく後味の悪い『養い親』が強烈。


悪い弁護士は死んだ(レイフ・GW・ペーション)
ベックストレーム警部の元に朗報が飛び込んでくる。ずっと警察に苦汁をなめさせてきたマフィアお抱えの弁護士が何者かに殺されたのだ。死因は鈍器による殴打で、部屋からは被害者が撃ったと思われる銃弾の跡が発見される。だが、奇妙なことに殺人事件の数時間後にはペットの犬まで殺され...。
シリーズ第3弾。事件の謎に迫る過程を細やかに描いた捜査小説としての魅力に加え、下巻に入ると話のスケールが大きくなり、面白さが一気に加速していきます。ただ、警部のお下劣さは相変わらず。


天使の傷(マイケル ロボサム)
退職した元警視が変死体で発見された。臨床心理士のサイラスは現場の状況から自殺ではないと判断する。警視は現役時に担当した児童連続誘拐殺害事件を犯人が既に獄中死したにも関わらず、引退後も捜査をしていたという。しかも、嘘を見破る少女・イーヴィの異名が記されたメモが発見され…。
サイラス&イーヴィシリーズ第2弾。事件そのものはサプライズ感に欠けるものの、次第に明らかになっていくサイラスとイーヴィの壮絶な過去衝撃的です。同時に、2人の関係にも目が離せないところ。


ガラスの顔(フランシス・ハーディング)
トンネルを張り巡らせた地下都市カヴェルナで暮らす人々には表情がなく、面(おも)と呼ばれる人工表情でそれを代用している。チーズ作りの親方に拾われた少女ネヴァフェルはその都市にあって唯一自らの表情を持つ存在だった。好奇心旺盛な彼女は権謀術数渦巻く宮廷の陰謀に巻き込まれていくが...。
独創的な世界観に基づくファンタジー小説ですが、不可思議な連続殺人や伏線を回収しての謎解きといった具合にミステリーの要素盛り沢山。特に、世界の謎が次々解き明かされる後半は読み応えあり
ガラスの顔
フランシス・ハーディング
東京創元社
2021-11-11


ブルックリンの死(アリッサ・コール)
黒人女性のシドニーは結婚に失敗し、実家のブルックリンに戻ってきた。だが、彼女は古くからの隣人が次々と新しい住人と入れ替わっている事実に気がつく。しかも、新しい住人であるセオと地元の歴史探訪ツアーを企画し、街の歴史を調べているうち、戦慄の事実を知ることになるのだが...。
2021年エドガー賞最優秀ペイパーバック賞 作品。人種問題に再開発計画を絡めたスリラー作品で、街全体に漂う不穏な空気がサスペンスフル。ただ、現実味に乏しいオチは好みの分かれるところ。
ブルックリンの死 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
アリッサ コール
早川書房
2022-03-16


姉妹殺し(ベルナール・ミニエ)
1993年。トゥールーズの森で大学生の姉妹の他殺死体が発見される。彼女たちはいずれも白いドレスを身に付けており、姉は顔を潰されていた。あるミステリー作品と犯行手口が酷似していたことから、その作者が疑われるも、それから25年後たった現在、今度は同じ手口で作者の妻が殺され....。
セルヴァズシリーズ第5弾。本作では人気キャラである殺人鬼ハルトマンは登場しませんが、その代わり、セルヴァズ警部の駆け出し時代が描かれています。ややご都合主義が目に付くも安定の面白さ。
姉妹殺し 警部セルヴァズの事件ファイル (ハーパーBOOKS)
ベルナール ミニエ
ハーパーコリンズ・ジャパン
2022-04-26


噤みの家(リサ・ガードナー)
ボストンの住宅街に銃声が鳴り響く。現場には男の射殺死体か転がり、その傍らには女が拳銃を手にして立ち尽くしていた。その女、妊娠中の妻・イーヴィは犯行を否認するが、彼女には16歳の時に父親を誤って射殺した過去があった。当時彼女を取り調べたウォレン刑事は捜査に乗り出すか…。
シリーズ第3弾。疑惑の女性・イーヴィ、1年以上に及ぶ監禁から生還したフローラ、そして、シリーズ主人公のD・D・ウォレン刑事という女たちの物語はサスペンスに満ち、読み応え満点。
噤みの家 (小学館文庫)
リサ・ガードナー
小学館
2022-04-06


災厄の馬(グレッグ・ブキャナン)
海辺の寂れた町・イルマーシュで不気味な事件が起きる。とある農場に16頭の馬の生首が円を描くように埋められていたのだ。それはまるで邪悪な宗教儀式のようであり、これから起きる災厄を告げているように思えた。刑事のアレックは獣医であるクーパーの協力を得ながら捜査を進めていくが...。
センセーショナルな事件を抑制の効いた筆致で描き、幻想的な雰囲気を強調したゴシックスリラーです。ただ、過剰に詩的な文章や曖昧模糊とした結末のせいで話が理解しにくいのが難だといえます。
災厄の馬 (ハヤカワ・ミステリ 1977)
グレッグ・ブキャナン
早川書房
2022-03-02


ガーナに消えた男(クワイ・クァーティ)
アフリカ・ガーナの探偵事務所にアメリカ人の青年が訪ねてくる。インターネット詐欺にあった彼の父が真相究明のためにこの地を訪れ、そのまま消息を絶ってしまったというのだ。探偵のエマは調査を開始するが、事件は単なる詐欺事件にとどまらず、この国のさまざまな暗部へと繋がっていき…。
日本人にはあまりなじみのないガーナの暗部を描いた社会派ミステリとして秀逸です。ただ、物語としては後半盛り上がりに欠けるという不満点も。女探偵のエマの活躍をもう少し見たかったところ。
ガーナに消えた男 (ハヤカワ・ミステリ)
クワイ クァーティ
早川書房
2022-04-05


凍てついた痣  (カリン・スローター 
大学の敷地で発見された男子学生の遺体。遺書があったことから飛び降り自殺と思われたが、検死官のサラは違和感を覚える。しかも、第一発見者の女学生が拳銃で自殺したのだ。被害者2人に繋がりはなく、自殺する動機も見当たらない。捜査が難航するなか、男子生徒の部屋からある人物の指紋が......。
シリーズ第3弾。今回は大学内での事件が描かれており、次々と起こる悲劇に心が揺さぶられます。サスペンスや人間模様も読み応え満点ですが、本作の主役というべきレナにイラつく読者は多そう。
凍てついた痣 (ハーパーBOOKS)
カリン スローター
ハーパーコリンズ・ジャパン
2021-12-17


犠牲者の犠牲者(ボー・スヴェーンストレム)
ストックホルム郊外で全裸で磔にされた男性が発見される。男は悪名高きレイプ犯で生殖器と舌を切り落とされていたが、かろうじて生きていた。カール警部と記者のアレクサンドラが事件の真相を追うも、そんななか新たな事件が発生。他の凶悪犯が先の事件とは異なる方法で拷問の末惨殺されたのだ。
本作は三部構成になっており、新たな章に入るたびに始まる意外な展開に驚かされます。二転三転が続き、やがてタイトルの真の意味が明らかになる展開は読み応えがありです。ただ、少々ご都合主義。
犠牲者の犠牲者 (ハーパーBOOKS)
ボー スヴェーンストレム
ハーパーコリンズ・ジャパン
2021-11-17


ジグソー・キラー (ナディーン・マティソン)
殺人鬼ジグソー・キラーが逮捕されてから2年半。テイルズ川でバラバラ死体が発見される。死体は男女のものが混在しており、しかも、関係者しか知り得ないジグソー・キラーのシンボルが刻まれていたのだ。ヘンリー警部補は両事件の関連性を確かめるべく、ジグソー・キラーとの面会に挑むが....。
事件解決の手掛かりを求めて刑務所に収監されているカリスマ殺人鬼に助言を求めるというパターンは『羊たちの沈黙』以来幾度も用いられてきましたが、ジグソー・キラーの邪悪さはそれらの作品と比べても頭一つ抜けています。プロットに新味はないものの、終盤の盛り上がりはなかなかです。
ジグソー・キラー (ハーパーBOOKS)
ナディーン マティソン
ハーパーコリンズ・ジャパン
2022-01-17


塩の湿地に消えゆく前に(ケイトリン・マレン )
少女クララは他者の強い思念を映像として視ることが出来、その能力を活かして占いで生計を立てていた。ある日、彼女は行方不明の少女を探してほしいという依頼を受け、同時に、女性たちが痛めつけられるビジョンを頻繁に見るようになっていく。クララはなんとか彼女たちを救いだそうとするが......。
本筋の合間に被害者や死者の視点を挿入し、巧みにサスペンスを盛り上げる手管は見事です。ただ、次第にミステリというよりも男に虐げれる女の物語が主題になっていくのは好みのわかれるところ。
2021年エドガー賞最優秀新人賞受賞作。
塩の湿地に消えゆく前に (ハヤカワ・ミステリ1975)
ケイトリン マレン
早川書房
2022-01-06


冤罪法廷(J・グリシャム)
ガーディアン・ミニストリーズは冤罪専門の法律事務所だ。その専任弁護士で聖職者でもあるポストは22年前の弁護士殺害事件を再検証し、証人の説得に奔走する。結果、真犯人の所属する麻薬カルテルの闇に足を踏み入れることになる。だが、ポストはそんな危険を顧みず、無実の人間を救おうとする....。
冤罪専門という仕事が奇妙身深く、また、中盤から緊迫感が増してくるので徐々に引き込まれていきます。後半の怒涛の展開も読み応えありです。ただ、裁判の決着があっけないというものたりなさも。
冤罪法廷(上) (新潮文庫)
J・グリシャム
新潮社
2021-12-23


完璧な家族 (リサ・ガードナー)
ボストン市警の凄腕女刑事D・D・ウォレンは緊急招集によって呼び出される。子供2人が犠牲になった一家銃殺事件が発生したのだ、だが、16歳の長女ロクシーだけは2匹の盲目の犬と共に姿を消していた。果たして彼女が犯人なのか?一方、監禁事件の生還者であるフローラもロクシーの行方を追うが...。
壮絶な監禁事件を扱った『棺の女』の続編です。ミステリーとしてはサプライズに欠けるものの、家族の崩壊と再生の物語として非常に読み応えがあります。重い内容ながら希望が見えるラストもグッド。
完璧な家族 (小学館文庫)
リサ・ガードナー
小学館
2022-02-04


殺人は自策で(レックス・スタウト)
相次ぐ盗作訴訟の解決を調査委員会から依頼されたネロ・ウルフは捜査の末に一連の訴訟が巧妙な詐欺であることを突き止める。そして、黒幕の正体へと迫っていくのだが、そんななか、詐欺に関わったと目される男が刺殺死体となって発見される。しかも、同様の殺人はその後も続いていき…。
1959年発表のネロ・ウルフシリーズ。軽妙な掛け合いなどシリーズならではの面白さは健在で、特に、事件解決後のウルフと犯人の会話には独自の味わいがあります。ただ、犯行動機には疑問符も。
殺人は自策で (論創海外ミステリ 279)
レックス・スタウト
論創社
2022-03-03


獣たちの葬列 (スチュアート・マクブライド)
スコットランド東部で腹部に人形が埋め込まれた遺体が発見される。それは、なりを潜めていた殺人鬼インサイドマンの手口だった。殺人罪で服役中の元刑事・アッシュは8年前にインサイドマンを逮捕目前まで追い詰めた実績を買われ、捜査協力を条件に仮釈放される。だが、彼には別の目論みがあり...。
『獣狩り』に続くアッシュシリーズの第2弾です。悲惨な事件や警察組織の軋轢など、気の滅入るような事件を個性豊かな人物を配してぐいぐい読ませていきます。ただ、描写が少々冗長な面もあり。
獣たちの葬列 (ハーパーBOOKS)
スチュアート マクブライド
ハーパーコリンズ・ジャパン
2021-10-15


女たちが死んだ街で (アイヴィ・ポコーダ)
ロサンゼルスのサウスウエストでは13人の女性が喉を掻き切られて殺されるという凄惨な事件があった。結局、捜査は未解決のまま打ち切りとなる。そして、15年後。全く同じ手口で女性が殺される。かつて、その事件によって人生を狂わされた6人の女性。彼女たちは再び事件に巻き込まれていくが......。
6人の女性が順に語り手を務め、彼女たちの目を通して米国における人種差別や性差別を浮き彫りにしていく構成になっています。社会派としては読み応えありですが、ミステリとしては物足りなさも。
女たちが死んだ街で (ハヤカワ・ミステリ)
アイヴィ ポコーダ
早川書房
2021-10-05


陪審員C-2の情事(ジル・シメント)
10代の少女が生後18ヶ月の弟を焼き殺したとされる事件の裁判に7人の陪審員が集う。裁判中は陪審員同士の交流は禁じられていたのにも関わらず、52歳の女性・C-2は同じ陪審員で年下の解剖医F-17と不倫に走る。欲望、焦燥、そして、陪審員としての重責。さまざまな感情に揺れ動くC-2だったが......。
本作はミステリではなくて心理描写中心の恋愛小説なのですが、中盤以降のリーガルサスペンス的展開はなかなか読み応えがあります。一方、最終的に文学的テーマに着地する点は好みの分かれるところ。
陪審員C-2の情事
ジル・シメント
小学館
2021-10-25


ハンターキラー 東京核攻撃(ジョージ ・ウォーレス、ドン・キース)
東南アジアを拠点とするイスラム過激派が北朝鮮人民軍と接触する。核魚雷を入手し、それを用いて東京を壊滅させようというのだ。その真の狙いは世界的混乱に乗じてイスラム統一国家を建築することにあった。一方、ウォーカー中尉率いるSEAL隊はその企みを阻止すべく、北挑戦に潜入するが......。
シリーズ第3弾。今回は北朝鮮潜入や敵による原子力潜水艦強奪など派手な展開が盛り沢山で読んでいてワクワクします。ただ、その分、話の焦点がぼやけ、まとまりを欠いてしまっているのが難です。


2034 米中戦争(エリオット・アッカーマン、ジェイムズ・スタヴリディス)
2034年3月。南シナ海で米軍が捕獲した船籍不明のトロール船に対して中国が返還を要求。対応を協議するアメリカだったが、いきなり南シナ海上の駆逐艦2隻が撃沈され、さらにサイバー攻撃によってアメリカ主要部が停電に陥ってしまう。米軍は空母打撃群を派遣するも中国軍によって壊滅され......。
近未来における大国同士の戦いを描いた作品として迫力があり、読み応え満点です。各国の駆け引きも手に汗にぎります。ただ、中国とインドが超ハイテク兵器を使いまくるのは現実味に欠けるかも。
2034 米中戦争 (二見文庫 ザ・ミステリ・コレクション)
ジェイムズ・スタヴリディス
二見書房
2021-11-11


悪魔の海の荒波を越えよ(クライブ・カッスラー&ダーク・カッスラー)
フィリピン沖ルソン海峡で深海流調査を行っていたダーク・ピットらは突如高波に襲われる。なんとか難を逃れた彼らは海底に沈んでいる古いダグラスC-47輸送機に出くわし、その内部からチベット製の彫像を発見するのだった。一方、副大統領からは海に墜落した中国のミサイルを回収せよとの依頼が...。
シリーズ第26弾。作者のC・カッスラーは亡くなったものの、生前から共同執筆者として活動していた息子が跡を継ぎ、クオリティは折り紙つき。米中対立を軸に骨太の海洋冒険小説に仕上がっています。


欺きの仮面 (サンドラ・ブラウン )
FBI捜査官のドレックスは長年の捜査の末、裕福な女性ばかりを狙う連続殺人犯の居場所をついに突き止める。証拠を掴むつめに隣人として接近したところ、犯人には美しい伴侶がいた。その女・タリアは次の犠牲者なのか? それとも共犯者? 疑惑を深めつつも、彼女に惹かれてしまうドレックスだったが...。
前半はやや冗長に感じるものの、中盤以降は緊迫感が一気に増し、ページをめくるてが止まらなくなります。前半の冗長さもどんでん返しのための伏線として必要不可欠。ロマンスサスペンスの佳品です。
欺きの仮面 (集英社文庫)
林 啓恵
集英社
2021-12-17


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