最新更新日2022/05/15☆☆☆

Previous⇒このミステリーがすごい!2022年版 国内ベスト20予想

このミス2023
対象作品である2021年10月1日~2022年9月30日発売のミステリー&エンターテイメント作品の中からベスト20の順位を予想していきます。ただし、あくまでも個人的予想であり、順位を保証するものではありません。また、予想は作家の知名度や人気、ジャンルや作風、話題性などを考慮したうえで票が集まりそうな作品の順に並べたものであり、必ずしも予想順位が高い作品ほど優れているというわけでもありません。以上の点はあらかじめご了承ください。
※紹介作品の各画像をクリックするとAmazon商品ページにリンクします

2022年4月25日時点での暫定予想順位

1位.同志少女よ、敵を撃て(逢坂冬馬)
1942年。モスクワ近郊の農村で暮らすセラフィマはドイツ軍の急襲によって母を殺されてしまう。赤軍の女性士官イリーナに命を救われたセラフィマはドイツ軍への復讐を誓い、狙撃兵になる決意を固める。他の少女たちと厳しい訓練を重ねた彼女はやがてスターリングラードの前線へと向かうが...。
アガサ・クリスティー賞史上ダントツの最高傑作。実在の赤軍女性狙撃兵に材を得た作品ですが、女性たちのキャラが個性豊かに生き生きと描かれています。そのうえで緊迫感溢れる戦闘描写が見事です。
同志少女よ、敵を撃て
逢坂 冬馬
早川書房
2021-11-17


2位.爆弾(呉勝浩)
些細な傷害事件で警察に連行された中年男。最初は単なる酔っ払いと軽くみていた刑事たちの顔色が変わる。男が予言した時刻に秋葉原で時限爆弾が爆発したからだ。しかも、男はさらなる予言を口にする。一体爆弾はあといくつ仕掛けられているのか?取調室では犯人と刑事の心理戦が続くが…。
独特の気持ち悪さを漂わせる犯人との攻防は読み応えがあり、サスペンスと意外性に満ちた後半の展開も秀逸。また、群像劇としても抜群の面白さ。ただ、”クイズ”は回りくどく感じる人もいるかも。
爆弾
呉 勝浩
講談社
2022-04-20


3位.六法推理 (五十嵐律人)
法学部4年の古城行成が自主ゼミとして運営する無料法律相談所。そこに経済学部3年の戸賀夏倫が訪れる。彼女の住むアパートでは過去に女子大生が妊娠して自殺した事件があったのだが、近頃、赤ん坊の泣き声が聞こえたり、窓に真っ赤な手形ついたりと奇怪な現象が続くのだという。果たして真相は?
捻くれ者の古城と元相談者の助手・戸賀が難事件に挑む連作短編。リベンジポルノや毒親といった現代的な問題が興味深く、法律知識と推理力という2人の長所を組み合わせた解決プロセスもユニーク。
六法推理 (角川書店単行本)
五十嵐 律人
KADOKAWA
2022-04-25


4位.捜査線上の夕映え(有栖川有栖)
マンションの一室で男性の撲殺死体がトランクに詰められた状態で発見される。最初は平凡な事件だと思われたものの、いくつかの不可解な点があったことから臨床犯罪学者である火村の出馬が要請される。捜査が進む中で複数の容疑者が浮上し、火村と相棒のアリスは様々な仮説を検証するが...。
事件自体は地味ですが、捜査と検証を積み重ねていくプロセスはミステリとしての面白さに満ちています。ただ、物語のためにあえて脆弱なトリックを採用したエモ本格なる手法は好みが分かれそう。
捜査線上の夕映え 火村英生 (文春e-book)
有栖川 有栖
文藝春秋
2022-01-11


5位.名探偵に甘美なる死を(方丈貴恵)
加茂冬馬はVRミステリゲームにおけるイベント監修の依頼を受け、会場であるメガトロン荘へ出向く。そこには彼を含めた8名の素人探偵がおり、幽世島事件の関係者である竜泉佑樹の姿もあった。そしてイベントは突如デスゲームへと変貌。助かるにはVRと現実の事件を両方を解く必要があり...。
竜泉家シリーズ第3弾です。今作は最近多いVR空間におけるデスゲームものですが、本質はあくまでも本格ミステリ。特殊設定を活かし切ったトリックが見事です。ただ、やや詰め込み過ぎなのが難。


6位.時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2(大山誠一郎)
県警捜査一課の刑事である僕は周囲からアリバイ崩しが得意だと思われている。しかし、実際は、時計店の美人店主に1回五千円でアリバイ崩しを依頼していたのだ。その日も容疑者である政治家のアリバイに頭を悩ませて時計屋を訪れる。政治家にはアリバイを保証する500人の証人がいるのだが....。
安楽椅子探偵によるアリバイ崩しシリーズ第2弾。収録作品は7作から5作に減ったものの、その分、一つ一つが非常に凝ったものになっており、なんといっても今までの手法を逆手に取る手管が見事です。
時計屋探偵の冒険 アリバイ崩し承ります2
大山 誠一郎
実業之日本社
2022-03-17


7位.救国ゲーム(結城真一郎)
限界集落を1人で復興させたカリスマ・神楽零次が首なし死体で発見される。彼はネット上で全国民の大都市圏移住を主張していたパトリシアなる人物と対立していたのが、事件が起きたのはパトリシアがテロを仄めかした日だった。集落の住人・陽菜子が官僚の雨宮と共に不可能犯罪の謎に挑む...。
限界集落、地方創生、上級国民、ドローンなどといった今日的なものを積極的に取り込み、厚みのあるプロットを構築しているのが見事。本格としても社会派としても一級の作品に仕上がっています。
救国ゲーム
結城 真一郎
新潮社
2021-10-20


8位.ダミー・プロット: 山沢晴雄セレクション (山沢晴雄 )
愛人殺害の嫌疑から逃れるためにアリバイの偽証を依頼する男、有名デザイナーとの替え玉契約を結ぶ女、そして、各所で発見されるバラバラ死体。一連の出来事はどこで結びついているのか?名探偵・砧順之介自身の事件とは何を意味するのか?アリバイの迷路の果てに驚くべき真相が浮かび上がる。
本作は本格の鬼といわれる著者の同人作品を初めて書籍化したもので、作中に仕掛けられたトリックの超絶技巧ぶりはあの「離れた家」以上であるといっても過言ではありません。マニア必読の傑作です


9位.ロング・アフタヌーン (葉真中顕)
新央出版の編集者・葛城梨帆の元に原稿が送られてくる。それはかつて新人賞の大本命と目されながらも内容の過激さ故に受賞を見送られた『犬を飼う』の作者・志村多恵の新作だった。タイトルは『長い午後』。自殺を考えていた主婦が旧友と再会する物語は梨帆自身の過去とリンクしていき...。
本作の大半を占めている作中作が次第に現実とリンクしていくさまがスリリングで引き込まれていきます。女性を取り巻く理不尽な環境を臨場感豊かに描きあげた社会派ミステリの傑作です。
ロング・アフタヌーン
葉真中顕
中央公論新社
2022-03-09


10位.記憶の中の誘拐 赤い博物館 (大山誠一)
女子高生が殺される直前に会っていたらしい”先輩”の正体を探る『夕暮れの屋上で』、”あの人”に会うために放火を繰り返す『連火』、借金返済を迫る同僚を殺した男にアリバイが成立する『孤独な容疑者』、十個の部位に切断された死体の謎に挑む『死を十で割る』など、全5編収録。
未解決事件の捜査書類を収蔵する赤い博物館の女館長が鮮やかに謎を解くシリーズ第2弾。今回も切れ味鋭い推理を堪能することが出来、特にホワイダニットとして鮮やかな『死を十で割る』が秀逸。
記憶の中の誘拐 赤い博物館 (文春文庫)
大山 誠一郎
文藝春秋
2022-01-04


11位.脱北航路(月村了衛 )
祖国によって弟を殺された桂東月大佐は軍事演習の最中、部下とともに潜水艦での亡命を試みる。軍の追撃ををかわしながら北朝鮮の領海を脱出し、日本に向かう一行だったが、艦内には密かに初老の女性が運び込まれていた。彼女は45年前に拉致され、北朝鮮に連れてこられた日本人だというのだが…。
拉致問題を盛り込みながらも話自体はシンプルな冒険活劇としてまとめられており、朝鮮人民軍との死闘は手に汗握ります。ただ、物語が次第に浪花節になっていくのは好みの分かれるところ。
脱北航路 (幻冬舎単行本)
月村了衛
幻冬舎
2022-04-13


12位.あれは子どものための歌 (明神しじま)
飢饉に苦しむ祖国を揺るがした8年前の事件の真相を追い求める料理人のキドウに対して因縁の相手であるカルマが「不思議なナイフで自らの影を切り離した男」の話を語る『商人の空誓文』、どんな賭けにも絶対負けない力を得た少女の数奇な運命を描いた表題作など、全5編収録の連作集。
代価と引き換えに願いをかなえるという幻想譚に伏線を張り巡らせ、謎解きミステリとして読ませる手管が見事。また、個々の物語の関係性が次第に明らかになり、その結果訪れる結末にも驚かされます。


13位.大鞠家殺人事件(芦辺拓)
昭和18年。戦火の最中、美禰子は婦人化粧品の販売で富を築いた大鞠家の長男に嫁ぐも、夫は軍医として出征してしまい、彼女は大鞠家の人々のなかに取り残されてしまう。しかも、大鞠家では奇怪な殺人事件が立て続けに発生する。戦局が悪化の一途をたどる中、美禰子は事件の謎に挑むが...。
とにかく時代考証がしっかりしており、当時の人々が生き生きと描かれているのが見事です。一気に物語世界に引き込まれていきますし、そこで描かれている時代だからこその真相にも唸らされます。
大鞠家殺人事件
芦辺 拓
東京創元社
2021-10-12


14位.パラレル・フィクショナル(西澤保彦)
予知夢で未来を見ることかできる親戚同士の男女。彼らは親戚が一堂に会した場で惨劇が起きる夢を見る。だが、なぜそれが起きるのかが分からない。そこで、2人は互いの見た夢をつなぎ合わせて全体像をつかもうとするのだが...。果たして、彼らは惨劇の原因を突き止め、悲劇を未然に防げるのか?
特殊設定ミステリや推理談義といった著者本来の魅力に満ちた原点回帰的な快作です。一癖も二癖もある登場人物のドロドロの人間関係を紐解いていくプロセスにも著者ならではの面白さがあります。
パラレル・フィクショナル
西澤保彦
祥伝社
2022-03-10


15位.弔い月の下にて(倉野憲比古)
大学院生の夷戸は先輩の根津や行きつけの喫茶店のマスター・美菜らと共にキリシタンの島民が大量死したという弔月島(ちょうげつとう)を訪れる。ところが、島には淆亂館(ばべるかん)という奇妙な館があり、館の使用人を名乗る男によって監禁されてしまう。その館で奇怪な殺人が起こり...。
異端宗教や異常心理学の蘊蓄を交えた怪奇趣味は戦前の変格ミステリを彷彿とさせ、その手の作品が好きな人には堪らないものがあります。また、バカミス的なトリックもなかなかにユニークです。
弔い月の下にて
倉野憲比古
行舟文化
2022-01-06


16位.朱色の化身(塩見武士)
ライターの大路亨は元新聞記者の父から辻珠緒なる女性の行方捜しを依頼される。彼女は革新的なゲームソフトの開発者として知られていたが、突然消息を絶ってしまったのだ。珠緒の元夫、かつての同僚や学友など、関係者への取材を続けているうちに彼女の過去は昭和31年の芦原大火と結び付き…。
インタビューが淡々と続く前半は盛り上がりに欠け、退屈に感じるかもしれません。その代わり、昭和という時代を通して女性たちの悲劇が明らかになっていく後半は社会派として読み応えありです。
朱色の化身
塩田武士
講談社
2022-03-15


17位.赫衣の闇 (三津田信三)
物理波矢多は上京して旧友・熊井新市の元に身を寄せる。新市の父は闇市を仕切る的屋の親分であり、波矢多は彼の弟分の私市芳吉之助から奇妙な依頼を受ける。赤迷路に出没する怪人赫衣の正体を暴いてほしいというのだ。調査を進める波矢多だったが、私市の経営するパチンコ店で奇怪な事件が起き...。
シリーズ第3弾。今回は安定のホラー描写に加えて闇市の蘊蓄が興味深く語られており、大きな読みどころになっています。また、時代を背景にした犯行動機も印象的ですが、肝心の謎解きはやや淡白。
赫衣の闇 物理波矢多シリーズ (文春e-book)
三津田 信三
文藝春秋
2021-12-09


18位.渚の螢火(坂上泉)
1972年。沖縄では本土復帰に伴う日本円への切り替えのため、米ドル札の回収を行っていた。しかし、回収に用いられた現金輸送車が襲撃され、100万ドルが奪われる。このことが明るみになれば外交問題に発展しかねない。事態を重く見た琉球警察は緘口令を敷き、秘密裏に捜査を開始するが...。
綿密な取材によって占領下の沖縄がリアルに描かれており、沖縄問題を知るうえで真藤順丈の『宝島』や伊東潤の『琉球警察』等と並ぶ一級の教材となっています。二転三転の展開も読み応えあり。
渚の螢火
坂上 泉
双葉社
2022-04-21


19位.断罪のネバーモア(市川憂人)
相次ぐ不祥事から警察組織は改革を余儀なくされ、遂に民営化への道を進むことになった。そんな警察にブラックIT企業から転職した藪内唯歩は刑事課の警部補・仲城流次と組むことになる。唯歩はノルマに追われながらも粘り強く事件を解決していくが、7年前のある事件が現在の捜査に影を落とし...。
パラレルワールドを舞台にした連作ミステリ形式の警察小説で、一つ一つの事件は比較的単純ならも、終盤それらが別に意味を持ってくる構造が良くできています。後半からの怒涛の展開は読み応えあり。
断罪のネバーモア
市川 憂人
KADOKAWA
2022-02-02


20位.かくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖(宮内悠介)
明治末期。木下杢太郎や北原白秋をはじめとする若き芸術家たちは「牧神(パン)の会」を結成し、隅田川沿いの料理店で芸術談義に花を咲かせていた。そして、いつしか話は彼らが見聞きした不可解な事件へと移っていく。喧々諤々の推理合戦の末に謎を解くのはいつも決まって女中のあやので...。
有名な芸術家たちを登場させ、時代背景の絡んだ事件について推理させる趣向がユニーク。謎解き自体は物足りない部分があるものの、あやのの正体やSF要素など、著者ならではの仕掛けが印象的です。



その他注目作

五つの季節に探偵は(逸木裕)
探偵を父に持つ榊原みどりは子供の時から何事もそつなくこなすものの、ひとつのことに夢中になったことがなかった。そんな彼女が高校2年の時、友人から担任教師の弱みを掴んでほしいと頼まれる。それがきっかけで人の本性を暴くことに喜びを見出した彼女はやがて探偵事務所に就職し.....。
『星空の16進数』に脇役として登場した榊原みどりを主役に据えた5編収録の連作短編です。仕掛けの面白さと真相の意外性を兼ね備えた良作で、ビター結末を通して滲み出る人間ドラマも読み応えあり


マザー・マーダー(矢樹純)
息子を溺愛する母親は彼の生活を脅かすものに対しては容赦がなく、学校や近隣でトラブルを繰り返していた。しかし、当の息子は家から一歩も出ようとはせず、その姿を見た者は誰もいない。果たして彼女の息子は本当に存在するのか?やがてそれは世間を震撼させる事態に発展していくが.......。
全5話の連作ミステリ。1話ごとに母子の絡んだ意外な事実が明らかになり、ぞっとさせられます。どんでん返しのあるイヤミスとして秀逸です。ただ、プロットが複雑なので一読で理解するのは大変かも。
マザー・マーダー
矢樹 純
光文社
2021-12-21


コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎(笛吹太郎)
昨夜行った居酒屋が忽然と消える『消えた居酒屋の謎』、アレルギーの原因となるナッツがいつの間にか混入されていた『ありえざるアレルギーの謎』、身に覚えのない喪中はがきが送られてくる『謎の喪中はがき』、引き出しのお金が勝手に増える『見知らぬ十万円の謎』など、全7篇収録。
ミステリ好きがカフェで推理合戦を行うも、謎を解くのはいつも店長という『黒後家蜘蛛の会』の本家取り。謎解きは比較的簡単なものの、テンポの良いとぼけた味わいの物語には独自の魅力があります。


二重らせんのスイッチ(辻堂ゆめ)
ずっと真っ当な人生を歩んできた桐谷雅樹はある日突然、強盗殺人の容疑で逮捕される。全く身に覚えのないことだったが、量販店の監視カメラには兇器を購入する彼の姿が映っており、現場からは彼自身のDNAが検出された。運良くアリバイが証明されたことで釈放されるも、彼の前にはさらなる罠が...。
生き別れの双子の確執を描いたクライムサスペンス。ミステリーとして伏線回収の妙を楽しみつつ、家族小説として爽やかな感動も味わえます。テンポ良くまとめられたエンタメ小説の佳品です。
二重らせんのスイッチ
辻堂ゆめ
祥伝社
2022-04-15


忌木のマジナイ 作家・那々木悠志郎、最初の事件 ( 阿泉来堂)
那々木悠志郎の担当編集となった久瀬古都美は、彼の実体験に基づいて書かれた未発表原稿に目を通す。それは、心霊現象を信じていない少年が見た者の視力を奪うと巷で噂の”崩れ顔の女”を呼び出してしまうというものだった。ところが、原稿を読んでいた古都美の前にも”崩れ顔の女”が姿を現し.....。
シリーズ第3弾。過去作よりも怪異自体のインパクトは劣るものの、作中作の影響を受けて現実が怪異に侵食されていく構成には何ともいえない不気味さがありますし、作中作を用いた仕掛けも見事です。


エンドロール(潮谷験)
新型コロナの大流行により、多くの若者たちの未来が閉ざされた。その結果、自殺した哲学者・陰橋冬の思想に影響を受けた若者たちが次々と彼の後を追う。駆け出し作家の雨宮葉はある理由から一連の自殺を食い止めようとし、冬の意志を継ぐ自殺志願者の若者たちとWeb討論会で、対決するが…。
著者十八番のロジックを謎解きだけでなく、自殺を食い止める手段として用いた点が新鮮。ロジックの緻密さは過去作に劣るものの、社会派パズラーとでもいうべき個性的な作品に仕上がっています。
エンドロール
潮谷験
講談社
2022-03-30


可制御の殺人(松城明)
大学院生の女性が自宅の浴室で死体となって発見された。現場が密室であったことから警察は自殺だと結論付ける。しかし、事件の裏にはQ大の学生・鬼界が関わっていた。留年を繰り返している彼は人間に適切な情報をインプットすることで思い通りの行動を引き出す研究を続けているというが...。
第42回小説推理新人賞最終候補作である表題作に5つの短編を加えた連作集です。いわゆる理系ミステリーですが、文章は読みやすく、知的好奇心が刺激される謎解きを興味深く読むことができます。
可制御の殺人
松城明
双葉社
2022-03-17


N (道尾秀介)
老人殺しの重要な手掛かりである行方不明の飼い犬探しを女刑事がペット探偵に依頼する『眠らない刑事と犬』、正体不明の侵入者が殺した恋人の遺体処理を引き受ける『飛べない雄蜂の嘘』、「死んでくれない?」という言葉を繰り返す鳥の謎を高校生が追う『落ちない魔球と鳥』など、全6篇収録。
順番をシャッフルしながら6つの短篇を読むことで伏線回収の構造が変化し、異なる読み心地を味わえるという試みがユニークです。ただ、本を上下させながら読む順番をシャッフルさせるのは少々面倒。
N
道尾 秀介
集英社
2021-10-05


ペッパーズ・ゴースト(伊坂幸太郎)
中学教師の壇は接触した人間の未来をほんの少しだけ垣間見ることができる能力者だった。しかし、その能力のせいで彼はテロ被害者が結成したサークルの犯罪計画に巻き込まれることになる。一方、彼の教え子である女学生は風変わりな小説を書いていたのだが、その登場人物が現実世界に登場し.......。
著者らしいウィットに富んだクライムミステリーです。作中作に登場する必殺仕事人の2人組もキャラが立っており、本篇との関係も意表を突いています。ただ、犯罪計画の動機は納得度が低いかも。
ペッパーズ・ゴースト
伊坂 幸太郎
朝日新聞出版
2021-10-01


ミカエルの鼓動 (柚月裕子)
心臓外科医の西條は大学病院で、手術支援ロボット「ミカエル」の導入を推し進めていた。ところが、外科手術の天才と名高い真木が現れ、「ミカエル」に頼らない手術を見事にやり遂げてみせる<2人は難病の少年の治療方針をめぐって対立するが<そんな折、西條を慕っていた若手医師が自殺し......。
医療メーカーとの癒着などといった大学病院の闇に迫りる一方で、人と人との絆を描いた人間ドラマは読み応えがあります。特に、終盤の手術シーンは手に汗握ります。綿密な取材に基づいた力作です。
ミカエルの鼓動 (文春e-book)
柚月 裕子
文藝春秋
2021-10-07


闇祓(辻村深雪)
澪が通う高校に暗い雰囲気の少年・白石要が転校してくる。クラスになじめない彼に対してなにかと世話を焼く澪だったが、要は不審な態度で彼女との距離を詰めてくる。そして、ついには彼女の家の周辺に出没するようになるのだった。恐怖を感じた澪は憧れの先輩である神原に助けを求めるが......。
ハラスメントにより人が死に追いやられる連作ミステリーです。一種のイヤミスですが、同時に、犯人が闇の一族という伝奇ものでもあります。そのため、不快なシーンもエンタメと割り切れる点が秀逸。


看守の信念(城山 真一)
釈放直前の模範囚が外出先で30分間行方を断った後に発見される『しゃくぜん』、人が出入りできない密室状態の備保管庫で火の気もないのに火災が起きる『赤犬』、窃盗常習犯の受刑者が文通を通して励みとしていたジャズシンガーの女性は実在しないと判明する『がて』など、全5作収録。
『看守の流儀』に続く刑務所ミステリ。各話ともミステリとしての完成度が高いうえに、刑務所内の人間模様を描いたドラマとしても読み応えがあります。特に、ラストが感動的な『がて』が秀逸。
看守の信念 看守の流儀
城山真一
宝島社
2022-02-24


卵の中の刺殺体――世界最小の密室(門前典之)
干上がった龍神池の底から龍の卵を思わせるコンクリートの塊が発見され、中から白骨化した女性の刺殺死体が発見された。その5年前。コバルトカフェのオーナーは慰労をかねて龍神池近くの別荘に店長たちを招待する。だが、公道に続く吊り橋が落ち、その夜、密室状態の部屋でオーナーが殺される...。
蜘蛛手啓司シリーズ第6弾。著者ならではのバカトリックは相変わらずですが、他のシリーズ作品と比べ、プロットに優れ、まとまりが良いのが美点です。奇想と説得力を兼ね備えた良作だといえます。
卵の中の刺殺体
門前典之
南雲堂
2021-12-03


陽だまりに至る病(天祢涼) 
小学5年の咲陽は父親が帰ってこないという同級生の小夜子を家に連れ帰り、親に内緒で部屋に匿う。翌日、小夜子を探しているという刑事の訪問を受け、咲陽は彼女の父親がある事件の犯人ではないかと疑念を抱く。さらに、咲陽の父親が経営するレストランがコロナ渦の影響で経営危機に陥り...。
仲田&真壁シリーズの第3弾であり、子供の貧困や虐待に続いてコロナ渦の貧困に迫った社会派ミステリです。コロナ渦における少女たち物語として読み応えありですが、ミステリーとしてはいま一つ。
陽だまりに至る病 (文春e-book)
天祢 涼
文藝春秋
2022-02-21


名探偵は誰だ(芦辺拓)
旅先のホテルで出会った相客たちが自分を殺そうとしていることを知った男が殺意なき人物を探そうとする「犯人でないのは誰だ」、敏腕刑事が犯人としてマークしている人物にを探る「捕まるのは誰だ」、雪の山荘の爆破事件での生き残りを特定しようとする「生き残ったのは誰だ」など全7編収録。
変則的なフーダニット短編集。パット・マガーの「探偵を探せ」などのシリーズを彷彿とさせる趣向であると同時に、掟破りの真相が楽しい。1話が短くボリューム不足なのは好みの分かれるところ。
名探偵は誰だ
芦辺 拓
光文社
2022-04-19


砂に埋もれる犬(桐野夏生)
刹那的に生き、男に媚びるだけの亜紀は息子の優真にろくに食事を与えようともせず、小学校にも通わせていない。同棲相手に息子が殴られても男の機嫌を取る始末だ。そんなある日、優真が虐待を受けていることに気付いたコンビニ店主が救いの手を差し伸べるも、彼の心には闇が巣食ったままで...。
社会問題となっている育児放棄及び児童虐待に焦点をあてた作品であり、ずっしりと重い読み心地は著者ならではです。ドキュメンタリータッチの作風も引き込まれます。ただ、終盤があまりにも駆け足。
砂に埋もれる犬
桐野 夏生
朝日新聞出版
2021-10-07


リズムマムキル(北原真理)
田舎町に住む小学6年生のるかの母は美人の東大卒で、同時に、自分の正義を逸脱した者は徹底的に論破せずにはいられないという性格の持ち主だった。るかはその煽りを受けて学校で孤立していた。ママから逃げたいと切望する彼女はヤタという男に拉致され、いつしか彼との間に共感が芽生えるが...。
12歳の少女が巻き込まれる血と暴力の物語は怒涛の展開でぐいぐいと引き込まれていきます。また、壮絶な成長物語としても読み応えありです。ただ、あまりにも過激な描写は好みのわかれるところ。
リズム・マム・キル
北原 真理
光文社
2021-11-24


むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。(青柳碧人)
かぐや姫にプロポーズした貴族たちが殺人事件の容疑者となる『竹取探偵物語』、意地悪おじいさんがネズミの穴で事件に巻き込まれ、同じ一日をループしながら真相を突き止める『七回目のおむすびころりん』、猿蟹合戦として言い伝えられてきた事件の真相を紐解く『真相・猿蟹合戦』など全5編収録。
シリーズ第3弾。相変わらず奇抜なアイディアが楽しいものの、1作目ほどのインパクトには欠けます。そのなかでは、多重推理ものの『竹取探偵物語』と、アイディアが光る『わらしべ多重殺人』が秀逸。


青い雪 (麻加朋) 
夏の数日を避暑地で過ごし、ともに遊んでいた子供たち。だが、最年少である5歳の少女が忽然と姿を消してしまう。行方が分からぬまま月日が過ぎ、やがて一通の告発状の存在が明らかになる。そこには「すずねの母親はブルースノウ」と書かれていた。当時中学生だった寿々音は真相を探り始めるが...。
未解決の児童失踪事件という現実でも耳にする不気味な事象を巡って二転三転するさまはミステリとして読み応えありです。また、タイトルの示す意味等、波乱に満ちた家族のドラマとしても読ませます。
青い雪
麻加 朋
光文社
2022-02-22


海神(染井為人)
天ノ島は東日本大震災による津波で甚大な被害を受け、悲惨な状況にあった。本土からの応援も期待できないなか、NPO法人代表を名乗る遠田が島を訪れる。彼は卓越した指導力で島の復興を進めていくが、その裏で復興支援金を使い込んでいた事実が発覚する。しかも、遠田は逮捕目前に失踪し...。
被災地を食い物にする男の正体が3つの時間軸を行き来しながら暴いていくプロセスがスリリングです。人間の闇に迫るとともに絶望から再生への物語を神話的に謳いあげているのも印象的。
海神
染井 為人
光文社
2021-10-19


異常心理犯罪捜査官・氷膳莉花 嗜虐の拷問官(久住四季)
都内で手足を執拗に潰された死体が発見される。被害者は半グレの構成員だったことから、当初は内部抗争の末の私刑だとみられていた。だが、本庁捜査一課に異動となった莉花の協力者で死刑囚の阿良谷静は目に釘を刺す別の殺人事件を挙げ、同一犯による快楽殺人だと指摘する。果たしてその正体は?
『羊たちの沈黙』を意識したサイコサスペンスの第3弾ですが、スピーディな展開に引き込まれます。登場人物もみな魅力的でキャラクター小説としても秀逸。そして何より、意外な真相に驚かされます。


刑事弁護人(薬丸岳) 
弁護士の持月凛子は時に凶悪犯の弁護も行う刑事弁護に真摯に取り組んできた。そんな彼女が当番弁護士に指名されたのはホスト殺しの容疑で逮捕された現役女性警察官・垂水涼香の裁判だ。凛子は同僚の西と弁護にあ たるが、容疑者の虚偽の供述に振り回された挙げ句、弁護士解任を通告され…。
凶悪犯に対する弁護の必要性をテーマにした法廷ミステリーで、臨場感に満ちた裁判シーンは読み応えがあります。また、癖の強い西弁護士も魅力的。ただ、ミステリーとしての驚きには欠けるかも。
刑事弁護人
薬丸岳
新潮社
2022-03-18


探花ー隠蔽捜査9ー(今野敏)
竜崎が刑事部長を務める神奈川県警にトップ入所の刑務部長が配属される。彼は何故か竜崎に対してライバル心を露わにするが、そんな折、横須賀米軍基地近くで殺人事件が発生する。しかも、日米地位協定の絡みから米海軍犯罪捜査局(NCIS)の捜査官が捜査に加わるという異例の事態となり...。
竜崎が出世しすぎ、上からの圧力に抗って信念を貫くという要素は随分と希薄に。その点は物足りないものの、テンポの良さと外交問題に発展しそうな事案でも原理原則を貫く竜崎の魅力は健在です。
探花―隠蔽捜査9―
今野敏
新潮社
2022-01-19


やまのめの六人(原浩)
宝石泥棒たちが嵐の中、車を走らせていたが土砂崩れに巻き込まれて1人は死亡。生き残った5人は近くの屋敷に避難する。ところが、そこには恐るべき老婆が棲んでおり、彼らは拘束されてしまう。なんとか脱出を試みるも彼らはいつの間にか6人になっていた。紛れ込んだ化け物は一体誰なのか?
殺人鬼一家、謎の化け物、消えた宝石の謎と様々な要素を詰め込んだ物語はテンポが良く、一気読みの面白さです。ただ、読み終わってみると謎解きが弱く、ホラーとしても新味に欠けるのが難。


午前0時の身代金(京橋史織)
新米弁護士の小柳の元に詐欺事件に巻き込まれた女学生が相談にやってくる。だが、彼女は弁護士事務所のあるビルから姿を消し、翌朝、誘拐された事実が報道される。しかも、犯人の要求はクラウドファンディングによる10億円の調達だというのだ。期限の深夜0時までに金は用意できるのか?
第8回新潮ミステリー大賞受賞作の本作は身代金をクラウドファンディングで調達という着想が斬新で一気に引き込まれます。二転三転の展開も読み応えありです。ただ終盤話をまとめきれていない感も。
午前0時の身代金
京橋史織
新潮社
2022-03-18


ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~(三上 延)
本とは無縁の生活を送ってきた少年は、古書店の跡取り息子である父が亡くなったことで、千冊の蔵書を相続するはずだった。だが、少年の祖父はその蔵書を売りに出そうとし、それをなんとか止めてほしいという依頼がビブリア古書堂に舞い込む。一体祖父が蔵書の処分にこだわる理由とは?
シリーズ通算第10弾。日本三大奇書の『ドグラマグラ』などを巡る謎解きは相変わらず本好きの好奇心を刺激します。しかし、それ以上に、扉子の祖母・智恵子が醸し出す不穏な空気が印象的。


楽園の殺人(越尾圭)
学芸員から成る調査団が固有の生態系を持つ東硫黄島に上陸する。その目的は島の生態系を把握すことにあった。だが、上陸後まもなく調査員の一人が殺される。しかも、被害者の口には外来植物の種子が詰め込まれていた。さらに、島からの脱出が不可能な状況に追い込まれ、新たな殺人が...。
典型的なクローズドサークルミステリーながらも、そこに動植物の蘊蓄を絡ませ、独自タッチの作品に仕上げることに成功しています。ただ、ミステリーとしての仕掛けはやや凡庸。
楽園の殺人
越尾 圭
二見書房
2021-11-22


デジタルリセット(秋津朗 )
男は自分の意にそぐわないことが5回あると、周囲の人を殺害して自分の痕跡を消していた。そして、別の地で新たな人生を始めるのだ。一方、フリープログラマーの譲治はシングルマザーの姉親子の、OLの由香は同僚の失踪に気付く。2人は共に姉と同居していたらしい青年の行方を追うが...。
第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞読者賞受賞作。自分の意に沿わないとなんの躊躇もなく人を殺す青年の存在が強烈で、譲治と由香のコンビがそれを追跡する物語はかなりスリリングです。登場人物も個性的で最後のどんでん返しにも驚かされます。ただ、伏線不足のために少々唐突な感もあり。


フェイクフィクション 誉田哲也
男性の首なし死体が路上で発見され、司法解剖の結果、死因は頸椎断裂だと判明する。つまり、男は斬首によって殺害されたのだ。一方、元プロキックボクサーの河野潤平は職場の製餡所に入ってきた有川美祈に一目惚れする。だが、彼女は新興宗教サダイの家に関係しており...。
ショッキングな展開からはじまり、その後怒涛の展開が続くのでページをめくる手が止まらなくなります。宗教を巡るサスペンスとバイオレンスの物語は抜群の面白さ。ただ、ラストは少々淡白です。


燕は戻ってこない(桐野夏生)
29歳の女性・リキは憧れの東京で病院事務の仕事につくが、非正規故に給与は安く、生活は楽ではなかった。そんな折、同僚のテルが破格の副収入を餌に勧めてきたのが国内では認められていない代理母契約だった。多額の報酬に目がくらみ、子宝に恵まれない夫婦と契約を結んだリキだったが...。
代理母を巡る物語を縦軸に貧困などの女性にまつわるさまざまな問題を描いた力作。ミステリー色は薄いものの、波瀾万丈の物語は読み応えありです。ただ、少々長すぎる点は好みの分かれるところ。


虚魚(新名智)
怪談師の三咲は同居人のカナちゃんとともに体験した人が死ぬ怪談を探していた。両親を事故死させた男を殺すためだ。三咲は釣った人が死んでしまう魚の噂を耳にし、その真偽を調べていくとある川の河口で似たような怪談が複数発生していることが判明する。2人は怪異の川をたたどっていくが...。
第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞作。さまざまな怪談を披露しながらその根源を辿っていく物語は興味深く、読ませます。伏線も綺麗に回収される良作ながらもインパクトに欠ける点が難。
虚魚 (角川書店単行本)
新名 智
KADOKAWA
2021-10-22


ビタートラップ(月村了衛)
農林水産省の下っ端役人である並木はある日、恋人から「わたしは中国のスパイ」だと打ち明けられる。目的は上海の有力者から預かった小説の原稿の強奪だという。今後のことを考える時間を稼ぐために2人は同棲をして組織の目を欺く。しかし、並木は中国の国家安全部に拉致され......。
なんともライトで緩い作品に仕上がっており、機龍警察のような重厚な作風を期待すると肩すかしを喰らうでしょう。しかし、話のテンポは良く、さくっと気楽に楽しみたい人にはもってこいです。
ビタートラップ
月村 了衛
実業之日本社
2021-10-29


クラウドの城(大谷睦)
イラク帰りの元傭兵・鹿島丈は北海道にある米IT企業で警備の仕事に就くも就任初日から殺人事件に遭遇する。しかも、厳重なセキュリティで守られた現場は完全な密室だった。鹿島は不治の病に侵された妻との残された時間を惜しみながらも事件の謎を追うが、それを嘲笑うかのように第2の密室殺人が...。
ハードボイルドの物語に密室殺人を絡めて、それが社会派的テーマに繋がっていくといった具合に、多面的な面白さがある作品です。ただ、犯人の動機など、一部説明不足に感じる点が気になるところ。
クラウドの城
大谷 睦
光文社
2022-02-22


この夜が明ければ (岩井圭也)
北海道の夏季バイトで知り合った7人の男女は仲を深めていく。しかし、ある夜、リーダー格の仲野大地が変死し、荷物からは脅迫状らしきものが発見される。正義感の強い工藤秀悟は警察を呼ぼうとするが、最年少の佐藤真理がなぜかそれに反対する。しかも、通報に反対なのは彼女だけでなく....。
サスペンス風の作品ですが、物語の大半は事件よりも彼らの過去に焦点が当てられています。現代の世相を反映したそれらのエピソードには考えさせられるものの、ミステリーとしては物足りなさも。
この夜が明ければ
岩井 圭也
双葉社
2021-10-21


新しい世界で 座間味くんの推理(石持浅海)
夫婦の離婚理由を探る表題作、若手起業家とその援助者の思惑の違いによって生じた謎を紐解く『雨中の守り神』、キャンプ場に男がスーツ姿で現れた理由を推理する『場違いな客』など、大学生の玉城聖子、警視庁の幹部、座間味くんと呼ばれる中年男性の3人がちょっと不思議な謎に挑戦する。
座間味くんシリーズ第5弾。謎としてはどれも地味で事件ですらないものも少なくありません。そのため、少し物足りなく感じる面はあるものの、座間味くんのちょっと強引な推理は安定の面白さ。
新しい世界で 座間味くんの推理
石持 浅海
光文社
2021-12-21


ディープフェイク(福田和代)
中学教師の湯川は生徒間のもめ事を身を挺して解決していったことからメディアに取り上げられ、鉄腕教師の名で親しまれていた。そんな折、週刊誌に湯川と女子高生の密会写真が掲載され、生徒に暴力を振るう動画が拡散される。湯川は全く身に覚えのない醜聞によって追いつめられていくが....。
AIなどを用いて簡単にフェイク動画が作れるようになった現代社会の恐怖を描く社会派サスペンス。先の読めない展開に引き込まれると同時に、ネット社会の暗黒面を突きつけられてぞっとします。
ディープフェイク
福田 和代
PHP研究所
2021-10-19


月の光の届く距離(宇佐美まこと)
17歳で妊娠した美優は恋人から拒絶されたうえに両親からも責められて死を覚悟する。そこに思わぬ救いの手が差し伸べられるも中絶するには遅すぎると福祉の手によってゲストハウス「グリーンゲイブルズ」に預けられる。そこには血の繋がりよりも深い絆で結ばれた家族が暮らしており.....。
本作はミステリーと銘打たれていますが、ミステリーとしての魅力はほぼ皆無です。その代わり、家族に恵まれなかったヒロインが新しい出会いによって成長してくヒューマンドラマとして秀逸。
月の光の届く距離
宇佐美 まこと
光文社
2022-01-18


スクイッド荘の殺人(東川 篤哉)
開店休業状態の鵜飼探偵事務所に小峰三郎なる人物が訪ねてきた。彼は烏賊川市の有力企業の社長で、クリスマスに宿泊する予定のスクイッド荘に同行して脅迫者から護ってほしいという。断崖絶壁に建てられた奇妙な建物に大雪が降り積もる。探偵と助手が酒と温泉に現を抜かすなか、殺人者の影が…。
烏賊川市シリーズ第9弾。脱力系トリックを軸にした仕様のため、ミステリーとしては好みの分かれるところですが、テンポの良い掛け合いは相変わらずの楽しさです。ユーモアミステリーとして秀逸。
スクイッド荘の殺人
東川 篤哉
光文社
2022-04-19


図書室のはこぶね(名取佐和子)
バレー部のエース・百瀬花音は怪我のために体育祭に参加できず、代わりに準備期間の一週間、図書委員の代打を務めることになる。図書室の掃除をしていたとき、彼女は2冊の『飛ぶ教室』を見つけ、その1冊には”箱舟はいらない”と書かれたメモが挟まれていた。一体それは何を意味するのか?
高校生の男女が本を巡る謎に挑む青春ミステリ。謎解きを通して高校生の悩みが浮き彫りになっていく青春物語が秀逸。また、様々な名作がわかりやすく紹介されているので本好きの人にもオススメ。
図書室のはこぶね
名取 佐和子
実業之日本社
2022-03-17


珈琲店タレーランの事件簿 7 悲しみの底に角砂糖を沈めて(岡崎琢磨)
全国高校ビブリオバトルの決勝大会にて、順番を決める抽選くじに細工が発覚する『ビブリオバトルの波乱』、行けなかったハワイ旅行の土産がなぜか存在する『ハネムーンの悲劇』、幼少期の思い出に秘められた秘密が暴かれる「ママとかくれんぼ」など、短編&ショートショート全7編収録。
今作は美星が物語に直接関与せず、安楽椅子探偵に徹しているので謎と推理をテンポ良く繰り返す小気味良いミステリに仕上がっています。ただ、アオヤマ君の出番がほとんどない点は物足りなさも。


レインメーカー(真山仁)
夜中に発熱と痙攣を起こし、病院に運んだ2歳の息子がそのまま息を引き取る。両親は悲嘆にくれながらも病院の処置に納得するも、祖父が弁護士と共に医療ミスを主張して病院側を提訴する。医師の立場から医療過誤訴訟に取り組んでいる弁護士の雨守誠は医療現場の矛盾に切り込んでいくが...。
医療過誤訴訟問題を医師側から描いた作品で提訴する側が悪役的立場なのが異彩を放っています。一方、被告側も病院の身売りを計画する病院副理事長等、一筋縄ではいかない物語に引き込まれます。
レインメーカー (幻冬舎単行本)
真山仁
幻冬舎
2021-10-27


四面の阿修羅(吉田恭教)
埠頭側の空き地で発見された男性のバラバラ死体。司法解剖の結果、遺体の切断面からはすべて生活反応が検出される。つまり、男は生きたまま四肢を切断されたのだ。しかも、頭部には生ゴミと書かれた紙が貼られていた。捜査一課長谷川班のエース・東條有紀は残忍な犯行の動機に着目するが...。
槙野&東條シリーズ第7弾。凄惨な拷問シーンは好みの分かれるところですが、手掛かりのピースをいくら集めてもなかなか真相が見えてこない展開はミステリとしてなかなかの面白さです。
四面の阿修羅
吉田恭教
南雲堂
2022-03-07


夏が破れる(新庄耕)
いじめによる不登校が続く15歳の進は、現状を改善しようと親のすすめで沖縄県喜久島の離島プログラムに参加する。美しい海に一時の安らぎを覚える進だったが、そこでの修練はあまりにも過酷だった。夜中の悲鳴、姿を消した少女、異臭放つ豚小屋の肉片。ついに進は命がけの脱走を図るが…。
とにかく離島での生活がおぞましく、目を背けたくなる描写のオンパレードです。ダークな物語として非常に読み応えあり、脱走シーンも手に汗握ります。ただ、ラストの展開は蛇足な気も…。
夏が破れる
新庄耕
小学館
2022-04-25


連鎖犯(生馬直樹)
シングルマザーの家庭の姉弟が誘拐され、500万円の身代金を要求される。2人は無事生還するもどこか違和感の残る事件だった。7年後、あるコメンテーターによる母親のバッシングの末、彼女は謎の転落死を遂げる。さらに、コメンテーターは他殺死体として発見され、姉妹は行方をくらますが.......。
経済格差や児童虐待等の現代社会の闇を巧みにミステリーとして盛り込み、ぐいぐいと読ませます。後半の展開は社会派の割に荒唐無稽な感がなきにもしもあらずですが、読後感は悪くありません。
連鎖犯
生馬 直樹
光文社
2022-01-18


残酷依存症(櫛木理宇)
林道でブルーシートをかぶせた死体が発見される。死んでいたのは都内の大学に通う女子大生で、壮絶な拷問の跡が残されていた。一方、サークル仲間である航平・匠・渉太の3人は何者かに監禁されていた。犯人は互いの爪を剥げ、目を潰せと彼らの友情を試すかのように残酷な支持をしていくが....。
シリーズ第2弾。グロテスクな描写は相変わらずインパクトがあるうえに、前作と違って被害者が悪人なので勧善懲悪に似たカタルシスも感じることも出来ます。それでも残酷描写の苦手な人は要注意。
残酷依存症 (幻冬舎文庫)
櫛木理宇
幻冬舎
2022-04-07


不可視の網 (林譲治)
AI制御の監視カメラを張り巡らせた姫田市で大量のバラバラ死体が発見される。警察の捜査の結果、監視カメラを巧みに避けている男の存在が浮上する。さらに、最近町にやってきた船田信和という男が事件となんらかの関係があるらしいのだが、彼には驚くべき特性があることが判明し....。
近未来を舞台としたSFミステリ。事件は犯人サイドからも描かれているため、謎解きの要素は希薄ですが、チェスタトンの『見えない人』をSF的に再解釈したような仕掛けに独自の面白さがあります。
不可視の網 (光文社文庫)
林譲治
光文社
2022-04-12


Jミステリー2022 SPRING (光文社文庫編集部・編)
恋人を殺して隠蔽工作をしている最中に弁護士が訪ねてくる今村昌之『ある部屋にて』、引きこもりが幼児を殺した事件による波紋を描いた芦沢央『立体パズル』、主婦殺しの容疑者として夫が疑われるなかで2歳の息子が犯行を目撃していたことが判明する織守きょうや『目撃者』など全6編収録。
人気作家による書き下ろしアンソロジー。突出した傑作こそないものの、謎めいた展開が秀逸な『目撃者』、古畑任三郎のパロディが楽しい『ある部屋にて』など、読み応えのある作品揃いです。
Jミステリー2022 SPRING (光文社文庫)
今村昌弘
光文社
2022-04-12


シェア(真梨幸子)
新宿の一等地にある家を父親から相続した鹿島穂花はそのボロさに驚きながらもシェアハウスにリフォームして家賃収入を得ようとする。だが、入居者は職業不定のアラフォー女子ばかりで、なぜかその多くがキラキラネームの持ち主だった。しかも、床下からは赤子のミイラが発見され....。
給付金詐欺などコロナ禍ならではの問題を絡めたイヤミスです。癖のある女性の描写はさすがの上手さですし、テンポも良く、さらに、二転三転の末に胸糞悪い真実が明らかになる展開はインパクトあり。
シェア
真梨 幸子
光文社
2022-03-23


暗渠の底 近畿連続女性殺害事件(長田周根)
世間を騒がせた連続殺人事件。その容疑者として一人の男が身柄を拘束される。稀代の凶悪犯逮捕の報にマスコミの報道は過熱するが、女子高生の満理は二転三転する報道内容に違和感を覚えていた。やがて冤罪を疑うようになり、独自に事件の調査を開始するが。果たして裁判の行方は?」
本作は70年代に実際に起きた首都圏女性連続殺人事件をモデルに、綿密な取材に基づいて書かれており、リアリティや臨場感という点では申し分ありません。実録小説としてかなりの力作だといえます
暗渠の底 近畿連続女性殺害事件
長田 周根
幻冬舎
2022-02-25


ミス・パーフェクトが行く!(横関大)
厚生省キャリア官僚で29歳の真波莉子はその完璧な仕事ぶりから ミス・パーフェクトと呼ばれていた。しかも、首相の隠し子で現政権を裏から支えていたのだ。政治家の炎上発言、ファミレスの売り上げ改善、赤字経営が続く市立病院の立て直し等。さまざまな難問に彼女はどう対処していくのか?
どんんな難問でも鮮やかに解決するヒロインの活躍はとても痛快で、気軽に楽しめるエンタメ作品に仕上がっています。ただ、破天荒な物語に対してヒロインが優等生すぎるのは若干の物足りなさも。
ミス・パーフェクトが行く!
横関 大
幻冬舎
2021-12-08


焼けた釘(くわがきあゆ)
地元の後輩がストーカー行為に遭っている事実を知った数日後、その後輩が何者かに殺される。千秋は犯人をおびき出すために後輩の格好に扮して捜索を始める。だが、それは犯人に法の裁きを下すためではなかった。犯人に自分を愛してもらうためだ。一方、OLの杏は恋敵を亡き者にしようとし...。
第8回暮らしの小説大賞受賞。独立した2つのエピソードがどう繋がるのかと思っていると予想外のどんでん返しに驚かされます。ただ、ヒロインの歪み具合が強烈すぎて読者を選ぶ作品ではあります。
焼けた釘
くわがき あゆ
産業編集センター
2021-10-13


アクトレス(誉田哲也)
ドミナン事件から5年。希莉はシナリオライターや舞台女優を務める傍らで小説を書いていたが、それを人気女優の名義で発表されてしまう。しかも、その小説の筋書きをなぞったような事件が起きたのだ。誰が何のために?希莉は真相を探り始めるが、その背後には新たな悲劇が忍び寄っていた...。
『ボーダレス』の19年ぶりの続編で、高校生だった奈緒、希莉、琴音のその後が描かれています。ミステリーとしての派手さはない代わりに、個性的な彼女たちの成長を描いた青春群像劇として秀逸。
アクトレス
誉田 哲也
光文社
2022-01-18


不協和音3 刑事の信念、検事の矜持(大門剛明)
わけあって別々に育てられた刑事の兄・祐介と検事の弟・真佐人はときに反目し、ときに協力し合いながら次々起きる事件を追っていた。そんなある日、刑事だった父が逮捕した男が再審請求で無罪となった事件の鍵を握る人物が現れる。父の逮捕した男は本当に無罪だったのか?果たして真相は?
シリーズ完結編。連作短編の形式で次第に真相へと迫っていくのがスリリング。反目しながらも固い絆で結ばれている兄弟にもぐっときます。一方、やりきれない結末は好みの分かれるところ。


レッドデータ(辻寛之)
モンスターレッドと呼ばれる危険ドラッグが巷に出回っていた。それを摂取すると強烈な幻覚作用が起きるという。霧島彩が所属する特捜チームが取り締まりに乗り出し、ドラッグ製造に関わっていた半グレ集団・紅龍の幹部を逮捕する。だが、その背後には謎のドラッグデザイナーの存在が…。
シリーズ第3弾。今回も主人公である霧島彩の魅力を軸にしながら、波乱万丈の物語がテンポ良く語られています。ただ、シリーズを重ねるにつれて展開が予定調和になってきているのが気になるところ。
レッドデータ (光文社文庫)
辻寛之
光文社
2021-11-16


能面鬼五十嵐貴久
有名私立大学の新入生・諸井保はサークルの新歓コンパで無理に酒を飲まされ、急性アルコール中毒で急死してしまう。他のメンバーは保身のために彼の死因を偽装する。1年後。彼らの元に案内状が届く。実家のお寺で1周忌の法要を行うというのだ。そこで彼らを待ち受けていたのは地獄だった。
人がテンポ良く殺されていくのでスラッシャーホラー好きにはオススメです。追い込まれて精神崩壊していく描写は秀逸で、犯人探しの面白さもあります。ただ、スプラッター描写は意外と軽め。
能面鬼
五十嵐 貴久
実業之日本社
2021-12-02


無明 警視庁強行犯係・樋口顕(今野敏)
荒川の河川敷で高校生の水死体が発見された。所轄警察は自殺と断定するも遺族は納得しない。遺体の首筋に不審な引っ掻き傷が残っていたからだ。両親は司法解剖を求めるが、担当刑事は恫喝を交えて断ったという。そこで本部捜査一課の樋口が独自に捜査を開始するが所轄の猛反発を受け...。
シリーズ第7弾。事件の真相や犯人像にこれといったインパクトはありません。その代わり、主人公の魅力を軸に警察内部の対立など、警察小説の定番要素をじっくりと描いた物語は安定の面白さです。
無明 警視庁強行犯係・樋口顕
今野 敏
幻冬舎
2022-03-16


幽世の薬剤師(紺野天龍)
漢方が専門の薬剤師・空洞淵霧は病院り帰り道で不思議な少女に出会い、そのまま異界へと連れていかれる。異界では原因不明の感染症が人々を苦しめていた。しかも、その症状は吸血鬼に噛まれた症状とそっくりだったのだ。果たしてこれは未知の病なのか?それとも恐るべき怪異なのかか?
和風ファンタジーな世界を舞台に特殊設定ミステリと医療ミステリを融合させた異色作です。雰囲気はかなりラノベ風ですが、未知の病に対するロジカルな考察はミステリとして読み応えがあります。
幽世の薬剤師(新潮文庫nex)
紺野天龍
新潮社
2022-03-28


うしろから歩いてくる微笑(樋口 有介)
柚木草平は鎌倉で薬膳研究家の美女から高校の時に失踪した同級生の目撃情報が鎌倉周辺で増えているので調べてほしいと頼まれる。まずは〈探す会〉事務局を訪ねる柚木だったが、手掛かりはなく、しかも応対した女性がその夜に殺されてしまう。今度は殺人事件の調査を始める柚木だったが…。
著者急逝によるシリーズ最終作。よって、特に最終回らしい趣向などはありません。その代わり、キザな探偵が美女づくしの事件の謎を解き、ほろ苦い結末を迎える定番展開は安定の面白さです。


鑑定人 氏家京太郎(中山七里)
氏家鑑定センターの所長である氏家京太郎は、猟奇殺人の犯人として逮捕された那智貴彦の弁護士から再鑑定の依頼を受ける。那智は2人の殺害は認めたものの、残り一人の犯行は否認しているという。世間では死刑を恐れての言い逃れだと思われていたが、京太郎は矛盾するある証拠に着目し...。
御子柴礼司シリーズに登場した氏家京太郎が主役のスピンオフ的な作品。犯人は比較的分かりやすいものの、証拠を一つ一つ検証して真実に近づいていくプロセスは地味ながらも読み応えがあります。
鑑定人 氏家京太郎
中山七里
双葉社
2022-01-20


濁り水 Fire's Out(日明恩)
大山雄大は、消火のエキスパートである特別消火中隊が所属する葛飾区上平井出張所に異動となり、そこに観測史上2番目の暴風雨がやってくる。出動した大山は冠水した駐車場で車の下に潜り込んだ老女を助けようとするが、結局溺死してしまう。しかも、後日、喪服の老人から謎の言葉を聞き...。
シリーズ第4弾。今回は殺人事件とリフォーム詐欺の2本立てですが、それに絡んだ消防や建築の膨大な蘊蓄が読みどころとなっています。相変わらずやる気がなさそうで意外と有能な主人公も魅力的。
濁り水 Fire's Out
日明 恩
双葉社
2021-11-18


おわかれはモーツァルト(中山七里)
榊場隆平は盲目ながら国際大会優勝の実績を誇る人気ピアニストだ。だが、彼を中傷するフリーライターが銃殺され、榊場は犯人と目されてしまう。現場は完全な暗所であり、そんなところで犯行が可能なのは榊場だけだというのだ。窮地に追いやられる榊場だったが、そこに岬洋介が姿を現し......。
岬洋介シリーズ第8弾。真犯人は分かりやすく、ミステリーとしてはかなり薄味です。その代わり、音楽シーンが臨場感に満ち、大きな読みどころとなっています。爽やかな感動が味わえる佳品。
おわかれはモーツァルト
中山七里
宝島社
2021-12-18


樹海警察2(大倉崇裕)
山梨県上吉田署には一風変わった部署がある。樹海で見つかった遺体を専門に捜査する地域課特別室がそれだ。その部署にキャリアの柿崎努警部補が配属されて半年。型破りな2人の部下に振り回されつつも、ようやく樹海での捜査に慣れ始めた柿崎だったが、そんな彼に最大級の災難がふりかかり...。
生真面目な主人公と破天荒な2人の部下との掛け合いが楽しく、キャラの魅力で読ませるシリーズです。話のテンポも良く、サクサクと読めます。一方で、緊迫感に満ちた終盤の展開も読み応えあり。
樹海警察(2) (ハルキ文庫 お 19-2)
大倉 崇裕
角川春樹事務所
2022-03-15


死にたがりの完全犯罪と部屋に降る七時前の雨 (山吹あやめ)
賃貸住宅で共同生活をしている大学生で世襲議員一族の桂月也と後輩の日部陽介は緊急事態宣言で大学が閉鎖されたのを機に小遣い稼ぎの探偵業を始める。だが、舞い込む依頼は厄介なものばかり。一方、陽介は月也が日頃からこぼしている物騒な親殺し計画をなんとか思いとどまらせようとしていたが....。
全11話の連作ミステリ。主役2人の掛け合いが楽しく、またシリアスなテーマを含みつつも文章はライトでサクサクと読める作品です。内容的にもコロナ下で外出を控えている時の気分転換にオススメ。


謎解き葬儀屋イオリの事件簿―いつかの想いをつなぐお仕事―(持田ぐみ)
輪花は大好きだった叔母を突亡くし、悲嘆に暮れる。そんな彼女が葬儀場で出会ったのは葬式のスペシャリストである伊織永汰だった。彼は香典泥棒の騒動を鮮やかに解決し、叔母が輪花に送ろうとした想いまで見抜く。遺された人々の悲しみに寄り添う彼の仕事ぶりに憧れて、輪花は葬儀業界へと飛び込むが...。
葬儀をテーマにしたいわゆる日常の謎ミステリーです。謎解きそのものは小粒でやや物足りないかもしれませんが、故人と遺族をつなぐための推理という趣向は一種のお仕事小説として読み応えがあります。


シャルロットのアルバイト(近藤史恵)
元警察犬である雌のシェパード・シャルロットと一緒に暮らしている真澄、浩輔夫妻。ある日、浩輔が迷子のトイプードルを拾ってくる。彼らはシェパードとは勝手が違うプードルに悪戦苦闘しながらもその子を家で飼い、飼い主を探そうとするが.....。『シャルロットと迷子の王子』など、全5編収録。
元警察犬と若い夫婦が遭遇する日常の事件を描いたコージーミステリ第2弾。仲の良い夫婦の関係が心地よく、犬も可愛いので読んでいて癒されます。ペットや家族のあり方を巡る問題も読み応えあり。
シャルロットのアルバイト
近藤 史恵
光文社
2022-02-22


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2023このミス国内3