最新更新日2021/01/27☆☆☆

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SFが読みたい!2021
今まで『このミステリーがすごい!』及び『本格ミステリ・ベスト10』のランキング予想をしてきましたが、今回初めて『SFが読みたい!』の予想にも挑戦してみます。対象作品は2019年11月1日~2020年10月31日の間に刊行された国内作家によるSF及びファンタジー小説です。なにぶん初めての試みなので見当違いの予想もあるかもしれませんが、その点はご了承ください。
※紹介作品の各画像をクリックするとAmazon商品ページにリンクします
SFが読みたい! 2021年版
早川書房
2021-02-10



SFがよみたい!海外版版 最終予想(2021年1月27日)

1位.アメリカン・ブッダ(柴田勝家)
荒廃したアメリカを捨てて仮想空間上にある新大陸へ移り住む人々に対して仏陀の教えを信仰するインディアンの青年が現実への帰還を呼び掛ける表題作、物語は伝染病だとして海外からの持ち込みを禁じている国が物語の前に敗北するさまを検疫官の目を通して描いた『検疫官』など全6編収録。
著者のバックボーンである民俗学にSF的ガジェットを絡めた極めてオリジナリティの高い作品集。特に、少数民族と最先端技術の突飛な組み合わせから恐るべき結論へと至る『雲南省スー族におけるVR技術の使用例』や、民俗ホラーとでもいうべき『邪義の壁』などのインパクトが強烈です。
アメリカン・ブッダ (ハヤカワ文庫JA)
柴田 勝家
早川書房
2020-08-20


2位.オクトローグ 酉島伝法作品集成(酉島伝法)
宇宙で暮らす無機生命体の少年が滋味豊かな彗星の成分採取に初めて参加する様子を綴った『彗星狩り』、海で覆われた惑星を探査する人類を異星生物の視点から描いた『ブロッコリー神殿』、印刷会社に勤める男が仕事に忙殺されるなかで知らぬ間に世界が変容していく『金星の蟲』など、全8篇収録。
この世ならさる異形の者とグロテスクに変容していく世界を卓越した言語センスで的確に描写していくさまが見事です。そのうえ、SF版蟹工船とでもいうべき『金星の蟲』、ブラッドベリを彷彿とさせる叙事詩SFの『彗星狩り』といった具合に、作品ごとに違った切り口の物語を楽しむことができます。
オクトローグ 酉島伝法作品集成
酉島 伝法
早川書房
2020-07-02


3位.ツインスター・サイクロン・ランナウェイ(小川一水)
人類が広大な宇宙へと進出した遥か未来。辺境のガス惑星では都市型宇宙船で暮らす人々が、ガスの中を遊泳する昏魚を捕獲して生計を立てていた。漁は夫婦で行う習わしだが、お見合いが失敗続きのテラにはパートナーがいない。そこに家出娘のダイオードが現れ、2人でペアを組もうと言いだすが....。
男尊女卑の社会で女性同士がペアを組んで古い価値観を打破していく百合小説です。何より、気が強いくせに泣き虫というダイオードの可愛らしさがたまりません。そのうえ、ガス惑星で行われる幻想的な漁を始めとするSF要素や疾走感溢れるクライマックスも魅力的に描かれています。


4位.人間たちの話(柞刈湯葉)
火星の地面をすくってその成分を研究していた科学者が従来の概念とは異なる生命体との邂逅を果たす表題作、人間を幸せにするために編み出された次世代型監視社会での悲喜劇を描いた『たのしい超監視社会』、宇宙人に提供するラーメンの奇想天外さが愉快な『宇宙ラーメン重油味』など全6篇収録。
◆◆◆◆◆◆
著者初の短編集。処女作の『横浜SF』に通じるぶっ飛んだ発想を起点としてシリアスからコメディまで、バラエティに富んだ作品が揃っています。特に、『1984』の優れたパロディといえる『たのしい超監視社会』や多様な宇宙人とラーメンの組み合わせがユニークな『宇宙ラーメン重油味』などが秀逸。
人間たちの話 (ハヤカワ文庫JA)
柞刈 湯葉
早川書房
2020-03-18


5位.ピュア(小野美由紀)
環境汚染の影響で人類の出生率が著しく低下した未来。人類滅亡を阻止するために取られた手段が遺伝子改造だった。その結果、宇宙に住む女性が地上で暮らす男性を犯して喰らうことで妊娠することが可能となる。だが、学園星ユングの生徒であるユミはその生き方に疑問を感じるようになり......。
男女の関係の変容を描いたフェミニズムSF。全5篇中、特に強烈なインパクトを放っているのが表題作で、性交の後に女性が男性を喰らうという極めて残酷な世界を少女の視点から軽いポップな文体で描いており、そのギャップにくらくらします。また、同じ世界を男性視点から描いた『エイジ』も傑作。
ピュア
小野 美由紀
早川書房
2020-04-16


6位.イヴの末裔たちの明日 松崎有理短編集(松崎有理)
AIロボットの普及によって失職した男が奇妙な薬の治験アルバイトを始める表題作、未来人を自称する囚人が脱獄のためにタイムマシンの製作に取り組む『未来への脱出』、幼い頃よりあしながおじさんの援助を受けて育った女子大生が彼のおぞましい正体を知ることになる『方舟の座席』など全5編収録。
バラエティに富んだ短編集であり、一作一作がSF的アイディアに優れているのでSF好きな人にとっては非常に刺激的な読みものに仕上がっています。また、物語の世界観としてはデストピアめいたものが多く、暗い展開が続くものの、ほのかなユーモアが感じられて読後感は意外と悪くありません。


7位.タイタン(野崎まど)
23世紀の半ば。AIの進化によって人類は労働から解放されていた。ある日、趣味で発達心理学の研究を行っている内匠成果の元に知能拠点の管理者が訪れる。巨大AIタイタンの第二知能拠点コイオスが機能不全に陥ったというのだ。成果はコイオスのカウンセリングを半ば強制的に請け負わされるが......。
進化しすぎて人の手に負えなくなったAIをカウンセリングという原始的な手法で治療するという発想がユニークです。特に、精神的には赤子同然だったコイオスが次第に自我を形成し、「仕事とは何か?」という自問を繰り返すくだりは現代人の悩みにも相通じるものがあり、興味深く読むことができます。
タイタン
野崎まど
講談社
2020-04-21


8位.オーラリメイカー(春暮康一)
遥か未来。人類は水―炭素生物連合の一員となり、人工知性体の知能流と対立していた。ある日、銀河の辺境に人工的な軌道を描く恒星を発見する。そこに高い科学力を有する生命体がいるのだ。彼らを連合に迎え入れるべく調査団が派遣されるが、その恒星系からは文明の痕跡は何も見つからず.....。
第7回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞の表題作と短編『虹色の蛇』を収録。前者はイーガンばりのハードSFであり、数万年単位の時代を包括するスケールの大きさに圧倒されます。ただ、ドラマ的には無味乾燥であるのに対し、後者は同一の世界観を共有しつつも、情感豊かな佳品に仕上がっています。
オーラリメイカー
春暮 康一
早川書房
2019-11-20


9位.ホテル・アルカディア(石川宗生)
ホテル・アルカディアの離れのコテージには支配人の娘が引き籠っていた。そして時折、裏山で泣いているという。その話を聞いた7人の芸術家たちは娘に同情し、コテージの下で朗読会を始める。面白い話を聞かせて娘を元気づけるためだ。芸術家たちの口からは奇想天外な話が次々と紡がれていくが.....。
短編集『半分世界』でその奇想ぶりが注目された著者の新作です。本作は長編小説ではあるものの、作中作という形で多くの短篇小説を挿入しており、一作一作のぶっ飛んだ発想はやはり著者ならではです。ただ、各エピソードの面白さに対して長編小説としてのまとめ方がいま一つなのは残念。
ホテル・アルカディア
石川 宗生
集英社
2020-03-26


10位.大絶滅恐竜タイムウォーズ(草野原々)
進化史を賭けた戦いで星智彗女学院3年A組が次に対戦するのは知性化鳥類だ。しかも、彼らは宇宙に進出をするまでに進化を遂げていた。だが、技術文明を生み出すまでには至っていない。それではどのような手段を用いて宇宙進出を果たしたのか?少女たちは答えを求めて卵の塔を登り始めるが......。
『大進化動物デスゲーム』に続くシリーズ第2弾。前作は『最後にして最初のアイドル』でそのぶっとび具合が注目された著者にしては大人しい印象だったのですが、本作を読むとそれが単なる前振りに過ぎなかったことに気付かされます。トンデモ理論が炸裂の純度100%の原々ワールドです。



その他注目作

11.ポロック生命体(瀬名秀明
AIの進歩は社会を大きく変えていく。AI棋士が将棋で永世名人を破り、映画や小説はAI作家が物語を数値化し、誰もが楽しめる傑作を生み出せるようになっていた。しかも、老いとは無縁のAIは学習によってその才能をどこまでも伸ばしていくことができるのだ。果たしてその先にあるものとは?
AIをテーマにした全4篇の中編集。いずれもAIが人間を越えたときに何が起きるかについて描かれており、そこで語られる考察は非常に興味深いものがあります。物語としてはかなり地味であるものの、淡々とした雰囲気の中からAI中心の世界を鮮烈に浮かび上がらせていく手法が見事です。
ポロック生命体
秀明, 瀬名
新潮社
2020-02-27


12.歓喜の歌 博物館惑星Ⅲ(菅浩江)
地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大な博物館・アフロディーテには全世界の芸術品や動植物が集められている。そのアフリディーテでは創立50周年のフェスティバルが開かれようとしていた。そんななか、贋作騒動が持ち上がり、新人自警団員の兵藤健は仲間と共に犯人グループの摘発に乗り出すが.....。
博物館惑星シリーズの第3弾です。ただ、博物館に展示している芸術品を情感たっぷりに描いた過去作品に比べると今回は贋作組織との対決が主軸となっており、雰囲気はかなり異なっています。その点を物足りなく感じる人もいるかもしれませんが、その分、最終章のイメージの奔流には圧倒されます。
第41回日本SF大賞受賞
歓喜の歌 博物館惑星3
菅 浩江
早川書房
2020-08-20


13.レームダックの村(神林長平)
ネットを標的とした同時多発テロにより、電子データに依存していたマネーは一夜にして消失する。全世界が混乱する中、新聞記者の真嶋は政府直属機関の依頼で地方都市の視察に出向く。だが、信州のサービスエリアで襲撃を受け、奥地の村に連行されるのだった。そこで彼が見たものとは?
終末的世界を描いた『オーバーロードの街』の続編です。一見世俗とは切り離されたような秘境の村ですが、世界と強い繋がりがあり、滅びとは無関係でいられないというプロットはよくできています。ただ、オカルト要素や社会派テーマがメインで、SF色がそれほど濃くない点は好みの分かれるところ。
レームダックの村
神林 長平
朝日新聞出版
2019-11-07


14.未知の鳥類がやってくるまで(西崎憲)
空に人や動物が出現して行列を成す『行列』、常に風呂敷に包んだ箱を持ち歩いていた転校生と大人になってから再会する『箱』、警視庁に”トウキョウノスズキ”と書かれたメールが届く『東京の鈴木』、校正の仕事をしている女性が嵐の近づく週末に恐怖の体験をする表題作など、全10篇収録。
摩訶不思議な話が集められた短編集ですが、SFやファンタジーというよりは寓話といった趣があります。日常空間を起点としながらも、そこから少しずれた世界を不穏なムードと共に提示していく手法がなんともスリリングです。なかでもイメージの奔流に圧倒される『行列』が秀逸。


15.約束の果て:黒と紫の国(高丘哲次)
伍州の考古学研究員・梁斉河は持ち込まれた古い装身具に「壙」「臷南」という未知の国名が記されているのに気付く。彼は膨大な文献を漁り、2つの書物にそれらの国の記述があるのを発見する。だが、一つは偽書でもう一つは小説だった。そこには2つの国を巡る恋物語と抗争が記されていたのだが.....。
2019年日本ファンタジーノベル大賞・大賞受賞作品。本作は架空の国を舞台にしていますが、5000年前に書かれた物語の中に秘められた真実を何世代にも渡って徐々に解き明かしていくプロセスに引き込まれていきます。ただ、過去編の鮮烈なイメージに対して現代パートが弱く感じられるのが少々残念。
約束の果て―黒と紫の国―
高丘哲次
新潮社
2020-09-04


16.キャサリンはどのように子供を産んだのか?How Did Catherine Cooper Have a Child?(森博嗣)
VRが現実に取って替わろうとしている未来社会。国家反逆罪に問われていたキャサリン博士がAI監視下の研究室から検事局の8人と共に忽然と姿を消す。しかし、先天性疾患を患っている彼女が部屋から出られる筈がなかった。グアトはキャサリン博士が無菌室で出産していたという情報を得るが.....。
WWシリーズの第3弾。本作ではVRが極限まで発達した世界で子孫を残す意味とは何かについての探求が行われ、それを起点として生命とは、存在とは何かという命題に繋がっていく点が刺激的です。また、ファンにとっては著者の処女作のセルフパロディ的展開にも興味を覚えるのではないでしょうか。


17.裏世界ピクニック4 裏世界夜行(宮澤伊織)
季節は冬。空魚たち一行はカルト集団の本拠地だった牧場へと向かう。そこは「山の牧場」になぞらえて作られた施設であり、いくつかの部屋は裏世界に通じている。第四種接触者をなんとか倒し、施設から離れようとする汀だったが、空魚は鳥子と共にこの施設の管理人になりたいといいだし.......。
4話からなるシリーズ第4弾。主人公2人がどんどん裏世界に順応していっているため、初期にあった未知の存在に対する恐怖といった要素は薄まってきています。しかし、その反面、シリーズのもう一つの柱である百合要素は大充実です。一方、ホラー要素としては”赤い人”の薄気味悪さはなかなかのもの。


18.宇宙船の落ちた町(根本聡一郎)
田舎町で育った佑太は14歳のときに巨大なUFOが墜落するのを目撃する。それは902人のフーバー星人を乗せた宇宙船だった。10年後。フーパー星人たちが地域社会に溶け込んでいく一方で、佑太は無気力な日々を送っていた。だが、あるアイドルの握手会を契機として、彼の生活は一変することになり.....。
宇宙人や宇宙船墜落といったSF的ガジェットが現代日本が抱える問題のメタファとなっており、優れた風刺小説に仕上がっています。しかも、ストレートに書けば説教臭い話になるところにラブコメ要素を付加し、読みやすくまとめているのが秀逸です。ただ、楽観的すぎる展開は賛否が分かれるところ。
宇宙船の落ちた町 (ハルキ文庫)
根本聡一郎
角川春樹事務所
2020-02-15


19.ハカセ、タイヘンです!(あまひらあすか)
天才科学者バビニクは「ハカセ、タイヘンです!」という声に目を覚まし、驚愕する。ロマンスグレーの男性だったはずの自分がいつの間にか美少女になっていたのだ。しかも人類はすでに滅んでいた。一体何が起きたのか?バビニクは美形アンドロイドのイチゴウと共に謎を解き明かす旅に出るが......。
ラノベのような軽いノリで始まる作品ですが、コメディかと思っていると、世界の秘密が明らかになるにつれて次第にその様相を変えていきます。絶望に打ちひしがれながらも新たな希望を切り開いていくさまが実に瑞々しく描かれているのです。切なさの中に美しさをたたえた終末SFの傑作です。
ハカセ、タイヘンです!
あまひらあすか
オリオンブックス
2020-01-24


20.終末世界はふたりきり(あまひらあすか)
人類滅亡が迫る世界でネクロマンサーの男は自ら生成したゾンビ少女のユメコと楽しい日々を過ごしていた。ユメコも男を父親のように慕っている。だが、一つ問題なのは唯一の生者である男を喰らおうと、時折野生のゾンビの群れが襲ってくることだ。男はユメコと共にゾンビ退治に精を出すが......。
終末感溢れる救いのない世界での日常がのほほんとした文体で描かれ、そのシビアな現実と緩いノリのギャップによって、切なくも心地よい雰囲気を醸し出すことに成功しています。文章も平易でさくさくと読むことができます。終末やゾンビ少女という言葉に心惹かれる人なら読んで損のない佳品です。
終末世界はふたりきり (文芸社文庫NEO)
あまひら あすか
文芸社
2020-09-15


21.SIGNAL シグナル(山田宗樹)
電波天文台がM33さんかく座銀河から送られてくる電波を受信し、異星人の存在が明らかとなる。中学2年の芦川翔はこのニュースに興奮するが、周囲の反応は冷ややかだった。そこで、翔はこの感動を分かち合える仲間を求め、天文学者の母親が電波解読に関わっているという朱鷺丘昴に会いにいくが.....。
本作は2部構成になっており、前半は瑞々しい青春小説として、17年が経過した後半は異星人からの電波を直接受け取ることのできるレセプターが登場し、オカルト色の強いSFとして楽しむことができます。全体的に小粒感は否めませんが、爽やかな読後感が味わえる古典的なSF物語として秀逸です。
SIGNAL シグナル (角川書店単行本)
山田 宗樹
KADOKAWA
2020-10-01


22.幽霊を創出したのは誰か? Who Created the Ghost?(森博嗣)
心中した男女の幽霊がさ迷っているという噂を耳にしたグアトとロジはピクニックがてら問題の地に赴く。果たして幽霊らしき男女が現れ、グアトは会話をかわすことに成功するのだった。後日、2人の元を幽霊になった男の弟だと名乗る老人が訪れ、兄が生存している可能性を探っているというのだが.....。
WWシリーズの第4弾。前作までと比べて全体的に淡々とした話であり、物語としての大きな盛り上がりはありません。しかし、バーチャルの著しく発展した世界で幽霊は存在するのか?という問題提議は興味深く、ぐいぐいと引き込まれていきます。小粒ながらも知的好奇心を刺激してくれる好編です。


23.パライゾ(阿川せんり)
突然、人間が黒いぶよぶよの物体に変わり、飛び跳ねるだけの存在になってしまうという現象が発生する。その中で、人間の形状を保っていられるのは人を殺した経験のある者だけだった。ライフラインはストップし、各所で火災が発生する。崩壊していく日常の中で残された者たちは最後に何を選ぶのか?
人類が突如滅びへと向かっていく不条理な状況を描いた連作小説です。しかし、その割には悲壮感などはあまり感じられず、殺人者たちの視点から滅びゆく世界が淡々と描かれていきます。独特のブラックな味わいはなかなかのものですが、各話同じパターンの繰り返しが多くてメリハリに欠けるのが難。
パライゾ
阿川 せんり
光文社
2020-04-21


24.絶対猫から動かない(新井素子)
両親や義父母の介護問題を抱える大原夢路は、あるときから地震で停止した電車から出られなくなる夢を見るようになる。しかも、電車の中には人の生気を喰らう三春ちゃんという怪物が存在していた。夢路は中年会社員や老人、中学生といった他の乗客と力を合わせて怪物と対峙することになるが.......。
それぞれ重い現実を抱えている登場人物の物語を独特の軽い文体で描いてさらりと読めるように仕上げているのはさすがです。また、人間を捕食する三春ちゃんという怪物が可愛らしく描かれているのもギャップからくる魅力があります。ただ、話がかなり長くて少々冗長なのは賛否が分かれるところ。


25.100文字SF(北野勇作)
「戦争で人と武器が滅び、楽器だけが残った世界」「ずっと火星だと思っていた星がそうではないことに気づいた男」「幾度となく襲来を繰り返す人喰い怪獣への対策として打ち出された巨人化計画」「不完全な神を手に入れるために行われる不完全な卵の選別」などなど、1話100文字で語られる掌編集。
twitter発の1編100文字のSF小説約2000の中から200本を厳選した傑作選。さすがに100文字ではプロットに膨らみがないので、物語の豊潤な香りを味わうことはできません。その一方で、次から次へと飛び出してくるイマジネーションの奔流には圧倒されます。ハードSFから感動話までジャンルも多彩です。
100文字SF (ハヤカワ文庫JA)
北野 勇作
早川書房
2020-06-04


26.四畳半タイムマシンブルース(原案:上田誠/文:森見登美彦)
コーラーをぶちまけてクーラーのリモコンを壊してしまった大学生の私はアパートの廊下に放置してあるタイムマシーンを発見し、それに乗って過去に行く。故障前のリモコンを回収するためだ。ところが、何気なくおこなったその行為が宇宙消滅の危機を招くことになり......。
本作は、上田誠の戯曲で映画にもなった『サマータイムマシンブルース』の物語を、『四畳半神話体系』のキャラに置き換えたコラボ作品です。話の展開はほぼ原作と同じであるのにも関わらず、『四畳半神話大系』の世界観がちっとも損なわれていない点に驚かされます。理想的なコラボだといえます。


2021年2月10日追記
予想結果
ベスト5→5作品中2作的中
ベスト10→10作品中5作的中
順位完全一致→10作品中0作品

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