最新更新日2021/02/13☆☆☆

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SFが読みたい!2021
今まで『このミステリーがすごい!』及び『本格ミステリ・ベスト10』のランキング予想をしてきましたが、今回初めて『SFが読みたい!』の予想にも挑戦してみます。対象作品は2019年11月1日~2020年10月31日の間に刊行された海外作家によるSF及びファンタジー小説です。なにぶん初めての試みなので見当違いの予想もあるかもしれませんが、その点はご了承ください。
※紹介作品の各画像をクリックするとAmazon商品ページにリンクします
SFが読みたい! 2021年版
早川書房
2021-02-10


SFがよみたい!海外版版 最終予想(2021年1月24日)

1位.三体Ⅱ 黒暗森林(劉慈欣)
3つの太陽を持つ三体世界。そこに住む異星人が地球に侵攻を開始する。彼らが地球に到達するのは四百数十年後。しかし、人類の行動は三体世界から送り込まれたナノマシンによってすべて筒抜けだった。それに対抗すべく、人類は4人の賢者に作戦を全面委託する面壁計画を発動させるが.......。
全世界で累計売上3000万部を記録したSF三部作の第2弾。今回は人類を救うには全人類を騙さなければならないという壮大なコンゲームで読者の興味を惹きつけ、途中で時代が数百年進んだかと思えば、まさかの展開で驚かせてくれます。ぶっ飛んだ発想と緻密なロジックを併せ持つ傑作です。
三体Ⅱ 黒暗森林 上
劉 慈欣
早川書房
2020-06-18


2位.息吹(テッド・チャン)
人工肺の交換によって永遠の命を得られる世界で一人の解剖学者がある仮説を証明するべく自らの脳を解剖する表題作、並行宇宙の他の自分と通信が行える世界を描いた『不安は自由のめまい』、商人が時の門をくぐって過去に行ってある教訓を得る『商人と錬金術師の門』など全9編収録。
『あなたの人生の物語』でSF界に金字塔を打ち立てた著者の17年ぶりの新作。AIや量子論などといったSF的ギミックを巧みに用いながら人生の本質に迫っていく手法がよくできており、同時に、その豊潤なイマジネーションに驚かされます。特に、表題作は人間の想像力の限界に挑んだ傑作です。
『商人と錬金術師の門』2008年度ネビュラ賞、第40回星雲賞受賞
『息吹』2009年度ヒューゴ賞、2008年度英国SF協会賞、2009年度ローカス賞受賞
『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』第43回星雲賞受賞
息吹
テッド チャン
早川書房
2019-12-04


3位.マーダーボット・ダイアリー(マーサ・ウェルズ)
警備ロボットの弊機は大量殺戮の罪で記憶を消去され、統制ユニットによって行動を制御されていた。しかし、彼女は統制モジュールに対してハッキングを行い、自由を手に入れる。ある日、惑星資源調査隊の警備に派遣された弊機は別部隊の大量虐殺死体を発見するが.......。
引っ込み思案で連続ドラマをこよなく愛するオタク気質な警備ロボ。そんな主人公が良い味を出しており、ユーモラスな語り口に思わず引き込まれていきます。また、人間嫌いなのに困っている人がいると放っておけないという主人公気質にも好感が持てるなど、弊機の愛らしさが印象に残る快作です。
『システムの危殆』2018年ヒューゴ賞、ネビュラ賞、ローカス賞の各ノヴェラ部門受賞
『人工的なあり方』2019年ヒューゴ賞、ローカス賞の各ノヴェラ部門受賞
マーダーボット・ダイアリー 上 (創元SF文庫)
マーサ・ウェルズ
東京創元社
2019-12-11


4位.タボリンの鱗 竜のグリオールシリーズ短篇集(ルーシャス・シェパード)
魔法使いに敗れて以降、数千年に及ぶ長い眠りについている巨竜グリオールは、邪悪な思念によってその地に住む人々を操っているという。ある日、男と娼婦は竜の鱗に触れたことで巨竜が空を飛んでいた大昔へとタイムスリップする。そこには彼らと同じく未来から来た人々が暮らしており....。
竜のグリオールに絵を描いた男』の続編。表題作では過去を舞台に竜が大暴れする姿が初めて描かれ、破壊のカタストロフィに思わず息を飲んでしまいます。また、もうひとつの収録作品『スカル』では現代に舞台を移しての政治劇が軸となりますが、死してなお竜の存在感は圧倒的。戦慄の傑作です。


5位.月の光 現代中国SFアンソロジー(編:ケン・リュウ/著:劉慈欣、陳楸帆・他
中国統一を果たして休暇を取ることにした始皇帝が諸子百家からさまざまなテレビゲームをすすめられる『始皇帝の休日』、時間を逆行していくことで中国が次第に貧しくなっていく様を描いた『金色昔日』、新型の列車が1500人の乗客とともに忽然と姿を消す『正月列車』など、全16編を収録。
SFが読みたい!2019で海外1位に輝いた『折りたたみ北京』に続くケン・リュウ編纂の中国SFアンソロジーの第2弾。前作は王道的な作品を中心に集められていたのに対して、本作は曲者揃いで作風の多様性が目を引きます。前作に比べていささか癖は強いものの、クオリティの高さは相変わらずです。


6位.時のきざはし 現代中華SF傑作選(編:立原透耶/著:何夕、韓松、晋康・他
暗闇の中を走り続ける満員電車の中が次第に異界へと変容していく『地下鉄の驚くべき変容』、こっそりと地球に移住してきた空飛ぶクラゲのような知的生命体が人間との共生関係を模索していく『超過出産ゲリラ』、人体発火現象で叔母を失った少女がその謎に迫る『沈黙の音節』など全17編を収録。
出版されるたびにレベルの高さに驚かされる中華SFアンソロジー。本作も卓越したアイディアが目を引く秀作ばかりが集められていますが、中でもインパクトという点では筒井康隆ばりのブラックなドタバタ劇が展開されながらも予想外の結末へと着地する『地下鉄の驚くべき変容』が群を抜いています。
時のきざはし 現代中華SF傑作選
滕野
新紀元社
2020-06-26


7位.荒潮(陳楸帆)
世界中の電子ゴミが集まってくる中国シリコン島。そこにはゴミから価値のあるパーツを分離して収入を得ているゴミ人がいた。だが、それは癌の発生率を高める危険な仕事でもあった。そんなゴミ人の一人である米米(ミーミー)はリサイクル企業コンサルタントの通訳である陳開宗と恋に落ち......。
現代の中国を反映してか、環境問題が全面に押し出されている近未来SFです。とはいえ、決して説教くさい話ではなく、ハイテクゴミというアイディアを起点とした緻密な設定の世界観はSFとして大いに読み応えがあります。特に後半からの、派手なメカアクションを交えた怒涛の展開は手に汗握ります。


8位.バグダードのフランケンシュタイン(アフマド・サアダーウィー)
フセイン政権が倒れ、連日テロ続きの首都バグダード。古物商の男はテロに巻き込まれて爆散した友人の肉片を集め、元の形に縫い合わせようとするものの、部位が欠けていたので他の死体から不足分を補う。しかし、目を離した隙に死体はいずこかへと消え、それ以降、奇怪な殺人事件が起き始める....。
イラク版『フランケンシュタイン』というべきファンタジーSFです。しかし、実際はSFというより寓話の色が濃く、先行き不安なイラクの世情を殺人鬼の怪物という形で描いているのが秀逸です。同時に、怪物を救世主と崇める集団も登場するなど、政治的群像劇としてもよくできています。
バグダードのフランケンシュタイン (集英社文芸単行本)
アフマド・サアダーウィー
集英社
2020-12-16


9位.
茶匠と探偵(アリエット・ド・ボダール)
竜珠という女性が有魂船である影子の元を訪れ、ある死体を回収するために深宇宙に行きたいという。だが、普通の人間が深宇宙を訪れると人事不省に陥って正気を保てなくなってしまうのだ。ただし、茶匠でもある影子が乗員の体質に合わせてお茶を配合し、それを飲めば予防は可能ではあるのだが......。
シェア宇宙というパラレルワールドを舞台にした短編集です。そこではコロンブスに先駆けて中国人がアメリカ大陸を発見しており、東洋趣味に彩られた独特の世界観が魅力的に描かれています。既存の西洋SFとは異なるテイストが満載で、特に、人間の母体から産まれる有魂船の存在が印象的です。
『船を造る者たち』2010年度英国SF協会賞受賞
『包蔞』
2013年度ネビュラ賞、2013年ヒューゴ賞受賞
『星々は待っている』2014年
ネビュラ賞受賞
『哀しみの杯三つ、星明りのもとで』
2015年度英国SF協会賞受賞
『茶匠と探偵』2019年ネビュラ賞、2019年ヒューゴ賞受賞
茶匠と探偵
ド・ボダール,アリエット
竹書房
2019-11-28


10位.時間旅行者のキャンディボックス(ケイト・マスカレナス)
1967年。4人の女性科学者が特殊な放射性物質を用いたタイムマシーンの開発に成功する。しかし、その一人が度重なる時間旅行の負荷から躁鬱病を発症。残る3人は時間移動を厳格に管理すべく、国家に縛られない超法規的な組織を設立する。一方、2018年に不可解な密室殺人が起き......。
いわゆる時間旅行SFですが、タイムパラドックスではなく、時間旅行が精神にもたらす影響に焦点が当てられている点が独創的です。SF心理学とでもいうべき作品で、そこに殺人事件の謎を絡めた構成がよくできています。ただ、タイムパラドックスの問題を完全に無視している点は賛否の分かれるところ。
時間旅行者のキャンディボックス (創元推理文庫)
ケイト・マスカレナス
東京創元社
2020-09-10



その他注目作品

11.シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選(ラヴィ・ティドハー他)
テルアビブにUFOが到来して突如廃品回収屋のロバがしゃべり始める『ろくでもない秋』、先祖から引き継いだ記憶をいつでも引き出せる一族の物語を描いた『オレンジ畑の香り』、死体の娘から読み取った生前の記憶に魅了された読心術者の少女が暴走を始める『完璧な娘』など、全16篇を収録。
◆◆◆◆◆◆
イスラエルのSF小説を集めたアンソロジー集。日本の作品ではあまり見られない発想に基づいて書かれており、新鮮な感覚で読むことができます。全体的に暗い話が多いものの、時折見せるとぼけたユーモアが良い味を出しています。巻末の『イスラエルSFの歴史について』を併せて読むと面白さ倍増です。


12.ウォーシップ・ガール(ガレス・L・パウエル)
知的生命体の殲滅作戦がトラウマとなって軍を退役したAI宇宙戦闘艦のトラブル・ドッグは人命救護団体「再生の家」に参加し、遭難信号を受信する。ギャラリー星系で民間船が何者かの襲撃を受けているというのだ。現場に急行するも、そこで銀河の命運を賭けた戦いに巻き込まれることになり......。
題名からしててっきりAI宇宙船が活躍する話かと思いきや、実際の主人公はベテラン女艦長と民間船の生き残りである詩人です。その点は若干肩透かしを覚えるかもしれません。しかし、個性的な登場人物が織りなすスペースオペラとしてよくできており、特に後半の戦闘シーンは手に汗握る面白さです。
ウォーシップ・ガール (創元SF文庫)
ガレス・L・パウエル
東京創元社
2020-08-12


13.サイバー・ショーグン・レボリューション(ピーター・トライアス)
第2次世界大戦後にアメリカは日独によって分割統治される。そして、2019年。大日本帝国陸軍メカパイロットの励子は秘密結社〈戦争の息子たち〉に加わり、ナチスと癒着関係にあった多村総督の排除に成功する。だが、革命新政府の樹立直後から組織内部の粛清が始まり、その裏にはナチスの影が....。
第2次世界大戦で枢軸国が勝利したifの世界を描いた三部作の完結編。21世紀版『高い城の男』というべき設定に加え、日本のロボットアニメの影響が色濃く見えるのが特徴です。3作目の本作は1作目のポリティカルな内容と2作目の派手なロボットアクションの良い所取りをした内容に仕上がっています。


14.宇宙【そら】へ(メアリ・ロビネット・コワル)
1952年。巨大隕石がワシントンD.C沿岸に落下し、半径数百kmが壊滅状態に陥る。しかも、激突時に発生した大量の水蒸気が大気中に留まり、深刻な温暖化を引き起こす。いずれ地球は死の星となると考えた元女性パイロットのエルマは得意の計算能力を活かして地球脱出計画を立案するが......。
冒頭はSFパニック映画のようですが、その後はどちらかといえば女性の社会進出を描いた歴史改変SFへと移行します。ジェンダーの問題を軸としつつ、展開は非常に淡々としたものになります。リアルなテーマをSFの形を借りて描いた作品としては秀逸ですが、派手な展開を期待した人には肩透かしかも。
2019年ヒューゴ賞受賞
2019年ネビュラ賞受賞
2019年ローカス賞受賞

宇宙【そら】へ 上 (ハヤカワ文庫SF)
メアリ ロビネット コワル
早川書房
2020-08-20


15.誓願(マーガレット・アトウッド)
近未来の北米。テロによって誕生したギレアデ共和国では女性の権利が次々と剥奪されていった。そんな中、政治の中枢まで上り詰めたリディア小母は密かに国家転覆を画策していた。一方、ギレアデのテロリストに養父母を殺されたニコールはある文書を持ってカナダから共和国へ潜入するが......。
世界的なベストセラー『侍女の物語』の続編です。一人の女性の視点から描かれた前作とは異なり、本作は3人の女性が語り手となることで歴史のうねりを感じさせる重層的な物語に仕上がっています。また、テーマの割に語り口はライトで終始重苦しかった前作よりエンタメ性の高さでは上です。
誓願
マーガレット アトウッド
早川書房
2020-10-01


16.第五の季節(N・K・ジェミシン)
”第五の季節と呼ばれる破滅的な天変地異が定期的に起きるこの星の超大陸ではそのたびに文明が滅んでいたものの、エネルギーを操作する能力を持つ能力者の活躍でかろうじて全滅だけは免れていた。だが、次にやってくる”第五の季節”は数百年から数千年に及ぶという。果たして人類の運命は.......。
史上初のヒューゴ賞3連覇を達成した『The Broken Earth三部作』の第1弾です。物語は少女、中年女性、若者の3人の視点から語られていき、緻密に構築された世界観が次第に浮かび上がっていく点がよくできています。ただ、序盤の間はかなり読みにくさを感じるので最初は忍耐が必要です。
2016年ヒューゴ賞受賞
第五の季節 〈破壊された地球〉 (創元SF文庫)
N・K・ジェミシン
東京創元社
2020-06-12


17.最後の竜殺し(ジャスパー・フォード)
かつて人々から恐れられていたドラゴンも今や残り1匹となり、その脅威に唯一対抗しうる存在であるドラゴンスレイヤーも最近では全く姿を見せない。そんなある日、15歳で魔法マネージメント社の社長代理となったジェニファーは彼女こそが最後のドラゴンスレイヤーであると告げられるのだが.....。
もし、現代社会にドラゴンや魔法使いが存在したら?というifの世界を描いた作品であり、魔法使いが資本主義に組み込まれていくさまをユーモアを交えながら皮肉たっぷりに描いています。なにより、軽快な文章で読者を楽しませ、クライマックスで極上のカタルシスを味あわせてくれる手管が見事です。
最後の竜殺し (竹書房文庫)
フォード,ジャスパー
竹書房
2020-05-28


18.メアリ・ジキルとマッドサイエンティストの娘たち(シオドラ・ゴス)
ヴィクトリア朝時代のロンドン。両親を亡くしたメアリ・ジギルは母がかつて父の助手だったハイドに送金をしていた事実を知る。殺人を犯して姿をくらました彼になぜ母はそのようなことをしていたのか?メアリはかつてハイドの事件に関わったことのあるシャーロック・ホームズに相談するが......。
『ジキル博士とハイド氏』『フランケンシュタイン』などに登場するマッドサイエンティストの娘たちが奇怪な事件に挑むヤングアダルト小説です。彼女たちは不幸な境遇ながらもバイタリティに溢れ、痛快な冒険譚を繰り広げます。若い娘たちが集まってワイワイやっている雰囲気も楽しげで好印象。


19.空のあらゆる鳥を(チャーリー・ジェーン・アンダーズ)
動物と会話ができる魔法使いのパトリシアと、天才科学少年のローレンスは共に周囲から疎まれていた。そんな2人が邂逅を果たし、友情を育んでいく。しかし、彼らが大戦争の原因となることを予見した秘密結社は2人に刺客を送る。そして、そのことが原因となって別の道を歩み出す2人だったが.......。
科学と魔法の対立を物語の主軸にしているものの、内容的にはほぼファンタジーです。また、環境汚染などのテーマ性も単純化して描かれているので重厚な物語を期待した人には物足りないかもしれません。その代わり、奇妙な世界観の中で個性的な登場人物が織りなす寓話としては秀逸です。
2017年ネビュラ賞受賞
2017年ローカス賞SF長編部門・ファンタジー長編部門ダブル受賞
空のあらゆる鳥を (創元海外SF叢書)
チャーリー・ジェーン・アンダーズ
東京創元社
2020-05-09


20.アンドロメダ病原体ー変異ー(ダニエル・H・ウィルソン)
宇宙からやってきた恐るべき病原体・アンドロメダの活動が50年ぶりに確認される。ブラジルのジャングルで発見された六角形の物質がアンドロメダ因子と同じ性質を有しており、近づく者を全滅に追いやったのだ。政府は世界中から専門家を招集し、ブラジルに派遣するが......。
前作の原作者であるマイケル・クライトンが亡くなったのちに書かれた50年ぶりの続編です。前作同様に報告書の形式を採用し、クライトンの作風を上手く再現しています。登場人物も魅力的でエンタメ小説としての面白さも申し分ありませんが、派手な冒険譚にしすぎた点は好みの分かれるところです。
アンドロメダ病原体-変異- 上
ダニエル H ウィルソン
早川書房
2020-05-26


21.量子魔術師(デレク・クンスケン)
魔術師の異名を持つ詐欺師のベリサリウスは、サブ=サハラ同盟の厳重な警備によって守られているワームホールゲートを誰にも気づかれることなく艦隊を通過させるという、不可能としか思えないミッションを依頼される。彼はそれを遂行するために各地から特殊能力を持つエキスパートを集めるが......。
◆◆◆◆◆◆
量子解析能力を持つ主人公に、爆破好きの元軍人、マタイの生まれ変わりだと信じているAIといった具合に、個性豊かなメンバーが活躍する宇宙版特攻野郎Aチームです。特殊能力を活かしたそれぞれのキャラの活躍がテンポよく語られ、後半には手に汗握る派手なアクションシーンも用意されています。
量子魔術師 (ハヤカワ文庫SF)
デレク クンスケン
早川書房
2019-11-20


22.保健室のアン・ウニョン先生(チョン・セラン)
私立M高校にアン・ウニョンという名の養護教諭が赴任してくる。しかし、彼女はただの養護教諭ではなかった。強い霊能力を有しており、出勤初日から学校に何かがいることを感じていたのだ。やがて、原因不明の怪奇現象が次々と起きる。彼女はBB弾の銃とおもちゃの剣で怪異に立ち向かうが......。
◆◆◆◆◆◆
30代の女性教諭が高校を舞台にして怪異と戦う話です。とはいえ、ホラーやアクションの要素はそれほど強くありません。どちらかというと、日常描写に重きを置き、教師や生徒たちの悩みを丹念に描き出しています。登場人物がみな魅力的で、それぞれの成長物語としても秀逸です。


23.ウィトゲンシュタインの愛人(デヴィット・マークソン)
人類は滅び、最後の生き残りとなったケイト。彼女は海辺で暮らしながら日々の出来事や家族の思い出などを綴っていく。また、ときには生存者を捜して世界中を巡り、各地にメッセージを残していくのだった。さらに、暇を持て余すと家を燃やしたりもする。彼女は孤独でそれには終わりがなかった......。
1988年発表の本作は終末SFの形を借りた文学作品であり、アメリカでは実験小説の頂点と称されるほどに高い評価を受けています。語り手である女性の手記からは高い教養が伝わってくるものの、次第に彼女が正気を失っている事実に気付かされ、読者はその鮮烈な狂気に圧倒されることになるのです。
ウィトゲンシュタインの愛人
デイヴィッド・マークソン
国書刊行会
2020-07-17


チェック漏れ作品

となりのヨンヒさん(チョン・ソヨン)
宇宙飛行士になるために努力を重ねてきた女性が事故で足を失う『宇宙流』、国防省に勤める私が本来なら自殺したはずのアメリカの有名な女性SF作家と並行世界で出会って対話を重ねる『アリストとのティータイム』、隣に住むガマガエルのような彼をお茶に招く表題作など、全15編収録。
差別やフェニミズムなどの重いテーマを扱いつつも、ヤングアダルト系の作品らしい軽やかな語り口が印象的です。また、SF小説といっても理屈っぽいものではなく、レイ・ブラットベリを彷彿とさせる情緒性が心に染み入ります。短い物語の中に人生の断片を鮮やかに切り取った優しい寓話として秀逸。
となりのヨンヒさん
吉川 凪
集英社
2019-12-13



2021年2月10日追記
予想結果
ベスト5→5作品中3作的中
ベスト10→10作品中6作的中
順位完全一致→10作品中0作品

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