最新更新日2021/03/30☆☆☆

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SFが読みたい!2022
対象作品である2020年11月1日~2021年10月31日発売の海外SF&ファンタジー作品の中からベスト10の順位を予想していきます。ただし、あくまでも個人的予想であり、順位を保証するものではありません。また、予想は作家の知名度や人気、ジャンルや作風、話題性などを考慮したうえで票が集まりそうな作品の順に並べたものであり、必ずしも予想順位が高い作品ほど優れているというわけでもありません。以上の点はあらかじめご了承ください。
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2021年3月11日時点での暫定予想順位

1位.サハリン島(エドゥアルド・ヴェルキン)
全面核戦争と人々をゾンビ化させる恐るべき伝染病により、鎖国政策を敷いた日本以外の国は滅亡の淵に追い込まれていた。そんななか、ロシア人の血を引く未来学者・シレーニは調査のために大陸との緩衝地帯であるサハリン島へと渡る。ゾンビと犯罪者がはびこる地で彼女が見たものとは.........。
核戦争後に日本領となったサハリン島を舞台に、ヒロインの地獄巡りを描いたデストピア小説。緻密な設定に基づく狂った世界観が強烈で、読みやすい訳文も相俟ってぐいぐいと引き込まれていきます。残酷さとユーモアが入り混じったイマジネーションの奔流が忘れ難い読後感を与えてくれる傑作です。
サハリン島
エドゥアルド・ヴェルキン
河出書房新社
2020-12-22


2位.6600万年の革命(ピーター・ワッツ)
銀河系にワームホール網を構築するべく、亜高速恒星間宇宙船エリオフェラ号が3万人の乗組員を乗せて地球を旅立ってから6500万年の歳月が過ぎていた。そして今、数千年に1度しか目覚めない乗組員たちと、宇宙船の全機能を制御するAIとの100万年に及ぶ攻防が始まる......。
短編集『巨星』の一編で直径2億kmの巨大知性体との邂逅を描いた『島』の前日譚です。専門用語が多すぎて難解だと思うかもしれませんが、これでもワッツの作品としてはわかりやすい方です。そこを乗り越えれば、著者お得意の「人ならざる知性体」の描写をたっぷり満喫することができるでしょう。
6600万年の革命 (創元SF文庫)
ピーター・ワッツ
東京創元社
2021-01-09


3位.わたしたちが光の速さで進めないなら(キム・チョヨプ)
始まりの地へ巡礼の旅に行くと帰らないことを選択する者が出る『巡礼者たちはなぜ帰らない』、寿命が数年しかない異星人の不思議な生態を地球人の目を通して語られる『スペクトラム』、故郷に帰るためにもう出ることのない宇宙船を宇宙停留所で待ち続けている老女を描いた表題作など、全7編収録。
◆◆◆◆◆◆
ワームホール、コールドスリープ、マインドアップロードなどといったSF的な設定を詰め込みながらも、それを平易な文章で綴り、誰でも理解できる普遍的な物語に仕上げています。派手な展開こそありませんが、科学的好奇心と物語に対する感受性を同時に満たしてくれる希有な作品集です。
わたしたちが光の速さで進めないなら
キム チョヨプ
早川書房
2020-12-03





4位.クララとお日さま(カズオ・イシグロ)
子どもの愛玩用アンドロイドとして開発された人工フレンドのクララ。人格を有している彼女は毎日店の窓から外を観察していたが、ある日、14歳の少女、ジョージの家庭に買われていった。ジョージとクララは互いに信頼し合って中を深めていくが、やがてクララは一家の大きな秘密を知ることになり.....。
日系イギリス人である著者のノーベル文学賞受賞後第一作。物語はクララの視点から描かれており、世界に対する認識が未熟さを表現するために文体は児童書っぽくなっています。そのなかでアンドロイドから見た人間の本質が浮かび上がってくる構成が見事です。また、近未来SFとしてのギミックも満載。
クララとお日さま
カズオ イシグロ
早川書房
2021-03-02


5位.人之彼岸(郝景芳)
AIによって自分の分身を作りだせる世界を描いた『あなたはどこに』、どんな重症患者でも入院すれば全快になるという病院の謎を追った『不死病院』、AI開発者に対する傷害事件が契機となってAIが人間に反逆する可能性についての論争が巻き起こる『愛の問題』など、全6編収録。
中国SFを代表する作家の一人であり、日本でも『折りたたみ北京』で注目されるようになった郝景芳によるAIをテーマにしたエッセイ&短篇集です。ただ、本作に関してはどこかで見たような話やオチが多いのが少々残念。とはいえ、『乾坤と亜刀』は本作のテーマ性を総括するトリの作品として見事です。
6位.この地獄の片隅に(編:J・J・アダムス編、作:ジャック・キャンベル他)
空調の調整から娯楽の提供まで至れり尽くせりのパワードスーツに搭載された恐るべき機能を描いた表題作、深海作業用のパワードスーツが極秘情報を拾ったことで謎の勢力との戦闘に発展していく『深海採集船コッペリア号』、19世紀の蒸気アーマーが登場する『ケリー盗賊団の最期』など、全12編収録。
パワードスーツをテーマにしたアンソロジーです。23編が収録されていた2013年刊行の原書を12編に絞り込んだものですが、それでもボリュームはかなりのもので色々なタイプのパワードスーツを堪能できます。パワードスーツの起動描写はどれもかっこ良く、バラエティに富んだ世界観も魅力的です。


7位.中国・アメリカ謎SF(編:柴田元幸、小島敬太/ヴァンダナ・シン、梁清散)
「絶対ケースを開けるな」と書かれた試作パソコンの動作チェックをしている内にそのパソコンと打ち解けていく『マーおばさん』、食べごろの豚バラ肉が蠢く灼熱の惑星に不時着した宇宙飛行士がなんとか焼肉を食べようと悪戦苦闘する『焼肉プラネット』など、米中のSFを6編収録。
2人の編集者が日本ではあまり知られていない作家の作品をそれぞれ米中から持ち寄り、1冊の本にまとめたアンソロジー。共通したテーマはないものの、中米中米と交互に読んでいくと中国とアメリカのSF観の違いが鮮明に浮かび上がってくるのがユニークです。ちなみにアメリカの作家はすべて女性。
中国・アメリカ 謎SF
白水社
2021-01-30


8位.黒魚都市(サム・J・ミラー)
異常気象によって都市は次々と水没し、国家の秩序は崩壊していった。故郷を失った難民たちは北極圏に建てられた洋上巨大都市・クアヌークへと逃げ込む。だが、その地には性交した相手の記憶が流れ込み、死に至るという奇病が蔓延していた。そこにシャチと北極熊を引き連れた謎の女性が訪れるが.....。
巨大海上都市を舞台にした近未来SFです。水没した世界、AI都市、死に至る謎の病、動物と意思の疎通を可能にするナノマシンといった具合にさまざまなギミックを散りばめ、SFマインド溢れる作品に仕上がっています。また、立場の違う5人の語り手を用意して物語に奥行きを与えている点も秀逸です。


9位.きらめく共和国(アンドレス・バルバ)
南米に位置するサンクリストバルは貧しくも緑豊かなジャングルに囲まれた美しい町だった。だが、1994年に先住民らしい32人の子供たちが現れ、その町を蹂躙し始める。警察は彼らが潜んでいると思われるジャングルを捜索するが居場所を突き止めることができない。それから数カ月が過ぎ......。
本作で描かれているのは子供たちの残忍さと未知のものを恐れる大人たちの心の弱さです。幻想譚の形を借りながら人間の本質を暴きだしていく一種の文明論的作品としてよくできています。また、過去を淡々と振り返っていく語り口により、ノンフィクションのような臨場感を醸し出しているのも秀逸。
きらめく共和国
アンドレス・バルバ
東京創元社
2020-11-11





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