最新更新日2021/04/07☆☆☆

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本ミス2022

対象作品である2020年11月1日~2021年10月31日の間に発売された謎解き主体のミステリー作品の中からベスト20の順位を予想していきます。ただし、あくまでも個人的予想であり、順位を保証するものではありません。また、予想は作家の知名度や人気、作風、話題性などを考慮したうえで票が集まりそうな作品の順に並べたものであり、必ずしも予想順位が高い作品ほど優れているというわけでもありません。それらの点についてはあらかじめご了承ください。
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本格ミステリベスト10国内版 2020年3月19日時点の暫定予想順位

1位.蒼海館の殺人(阿津川辰海)
濁流に包囲された館での連続殺人を描いたクローズドサークルものであり、その状況を巧みに利用した犯罪計画は驚嘆すべきものがあります。また、それに対する精緻な推理も見事としか言いようがありません。緊迫感も申し分なく、文句なしの傑作です。ただ、苦悩する名探偵は好みの分かれるところ。
蒼海館の殺人 (講談社タイガ)
阿津川辰海
講談社
2021-02-16


2位.孤島の来訪者(方丈貴恵)
『時空旅行者の砂時計』と世界観を同じにする外伝的続編。一見典型的なクローズドサークルのようですが、実際は前作と同様の特殊設定ミステリーです。しかも、その完成度は本ミス7位の前作以上で、怒涛の伏線回収とヒネリの効いた真相が見事です。ただ、B級ホラー的展開は好みが分かれるかも。
孤島の来訪者 〈竜泉家の一族〉シリーズ
方丈 貴恵
東京創元社
2020-11-28


3位.雨と短銃(伊吹亜門)
本格ミステリ大賞受賞作『刀と傘 明治京洛推理帖』の前日譚。坂本龍馬の目の前から人斬りが忽然と消えるという魅力的な謎を扱っていますが、トリック自体は小粒です。その代わり、巧みな伏線回収や時代背景を絡めた事件の構図はよく考えられています。また、時代小説としても読み応えありです。
雨と短銃 (ミステリ・フロンティア)
伊吹 亜門
東京創元社
2021-02-22


4位.六人の嘘つきな大学生(浅倉秋成)
本作は就活の最終選考を巡るサスペンスミステリーですが、過去の就活パートと現代パートの2部構成になっており、現代の状況が明らかになるにつれて真相が浮かび上がってくる構成が実にスリリングです。また、伏線やロジックもよく考えられており、真相の意外性も申し分ありません。


5位.あと十五秒で死ぬ(榊林銘)
第12回ミステリーズ新人賞佳作受賞作を含む4篇を収録した中編集であり、15秒縛りというお題で統一されているのがユニークです。特に、死神にもらった15秒の余命で被害者が犯人に逆襲する『十五秒』とぶっとんだ設定ながら緻密なロジックが光る『首が取れても死なない僕らの首無殺人事件』が秀逸。


6位.エゴに捧げるトリック(矢庭優日)
催眠術が強大な力を持つ世界で殺人事件が起きる特殊設定ミステリー。ミステリーの世界に催眠術を持ち込むとなんでもありになりがちですが、そこに厳格なルールを設け、あくまでもロジカルに謎を解いていくことで非常に読み応えのある作品に仕上がっています。まさかのラストもインパクト大です。


7位.或るギリシア棺の謎(柄刀一)
国名シリーズ第2弾。前作が連作なのに対して本作は長編となっています。しかし、文章が読みにくいうえに展開が地味で冗長なので読み進めるのが苦痛に感じる人もいるかもしれません。その一方で、意外な手掛かりから明らかになる思わぬ真相には驚かされます。ミステリーとしての技巧は一級品です。
或るギリシア棺の謎
柄刀 一
光文社
2021-02-23


8位.ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人(東野圭吾)
アフターコロナの描写に初期の作風を彷彿とさせる王道的本格を絡めた作品です。元マジシャンという探偵役のキャラ造形やテンポの良い物語はなかなかよくできています。ただ、探偵がマジックで何でも解決してしまう点はリアリティ不足かも。謎解きも小粒で、マジックが推理に寄与してないのも残念。


9位.信長島の惨劇(田中啓文)
序盤は本能寺の変の顛末がシリアスに語られ、まるで真っ当な歴史小説のようです。しかし、殺されたはずの信長から招待状が届き、秀吉や家康らの有名武将が孤島を訪れてからはバカミスに早変わり。連続殺人のトリックに新味はないものの、史実とのつじつま合わせが楽しい作品に仕上がっています。
信長島の惨劇 (ハヤカワ文庫JA)
田中 啓文
早川書房
2020-12-10


10位.怨み籠の密室(小島正樹)
古い因習の残る村での殺人事件を描く海老原浩一シリーズ第8弾。密室殺人の謎はあるものの、やりすぎミステリーと呼ばれている過去作と比べると不可能趣味は控えめです。その代わり、トリックに頼ることなく、緻密なプロットを用いて真相の意外性を演出している所に作家としての成長を感じます。
怨み籠の密室 (双葉文庫)
小島正樹
双葉社
2021-02-10


11位.報復の密室(平野俊彦)
第13回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞。密室トリックを用い、自殺に見せかけて殺された娘の父親が、薬理学教授ならではの知識を用いて犯人をあぶり出す話です。最初の密室トリックがしょぼいなど荒削りな面もありますが、発想とプロットのユニークさで読者を惹きつける力はかなりのものです。
報復の密室
平野俊彦
講談社
2021-02-23


12位.天の川の舟乗り(北山猛邦)
気弱な探偵・音野順と助手の白瀬白夜が活躍するシリーズの12年ぶりの新作です。相変わらず2人の掛け合いが楽しく、著者得意の物理トリックも健在。派手さはありませんが、堅実に楽しめる作品集に仕上がっています。特に、古城の財宝の謎と人間消失トリックをうまく絡めた『怪人対音野要』が秀逸。
天の川の舟乗り (名探偵音野順の事件簿)
北山 猛邦
東京創元社
2021-03-19


13位.Ghost ぼくの初恋が消えるまで(天称涼)
主人公が連続通り魔事件の犠牲となった6歳年上の幼馴染の幽霊とともにさまざまな謎に挑む連作ミステリー。ヒロインが幽霊という設定を上手く活かした特殊ミステリーとしてよくできており、特に、それまでの伏線を一気に回収する最終話が圧巻です。また、切ない青春小説の良作でもあります。


14位.卒業したら教室で(似鳥鶏)
市立高校シリーズの第8弾。これまでとは大胆に趣向を変え、学校の七不思議が絡んだ日常の謎に加え、12年後の未来で作家の書いた異世界ファンタジーが作中作として組み込まれています。その構成を利用した仕掛けはなかなかユニークです。ただ、詰め込みすぎでゴチャゴチャしている面もあり。


15位.月下美人を待つ庭でー猫丸先輩の妄言ー(倉知淳)
フリーターの猫丸先輩がさまざまな謎を解いていくシリーズの第6弾。5つの短編が収録されていますが、15年ぶりの新作ということもあってか出来にバラツキがあるのが気になるところ。その中では、奇妙な謎を鮮やかに推理する『ついているきみへ』と逆説的推理が光る表題作がよくできています。
月下美人を待つ庭で (猫丸先輩の妄言)
倉知 淳
東京創元社
2020-12-21


16位.星空にパレット(安萬純一)
クローズドサークル、メタミステリー、密室殺人といった具合に、一作ごとに異なる趣向の謎解きが楽しめる、4話収録の短編集です。どれも純度の高い本格ミステリであり、犯人のトリックを暴いていく緻密なロジックは読み応えがあります。ただ、トリックに必然性が感じられないものがあるのが難。
星空にパレット (創元推理文庫)
安萬 純一
東京創元社
2021-01-20


17位.傍聴者(折原一)
~者シリーズの第14弾。自殺に見せかけて次々と交際相手を殺していた女性の裁判を巡る物語です。大トリックこそないものの、騙しのテクニックを駆使して隅々にまで仕掛けを施しているのはさすがです。傍聴席のミステリマニアによるミステリーネタも本格好きなら楽しめるのではないでしょうか。
傍聴者
一, 折原
文藝春秋
2020-11-26


18位.偶然にして最悪の邂逅(西澤保彦)
著者にしては珍しいノンシリーズ短編集。その出来は玉石混合といったところですが、巧みなロジックとダークなオチが印象深い表題作とどんでん返しが見事に決まる『間女の隠れ家』はなかなかの佳品です。あとは幽霊が38年前の真相を探る『ひとを呪わば穴ふたつ』も物語として読み応えがあります。
偶然にして最悪の邂逅
西澤 保彦
東京創元社
2020-12-10


19位.僕が答える君の謎解き 明神凛音は間違えない(紙城境介)
引き籠り少女の凛音は人間離れした計算能力でどんな事件の犯人も即座に言い当ててしまうものの、その理由を論理的に説明できず、代わりに主人公が答えの根拠を解明してく。ヒネリの効いた設定に緻密な推理が光る連作日常ミステリの傑作であり、ラブコメ設定を逆手に取ったオチにも驚かされます。


20位.放課後の嘘つきたち(酒井田寛太郎)
幼馴染に誘われて部活連絡会を手伝うことになったボクシング部のエースがカンニング疑惑や幽霊騒動などといったさまざまなトラブルを解決していく連作ミステリー。青春のほろ苦さを感じさせる読後感が持ち味ですが、2人の探偵役がディスカッション形式で謎を解いていく推理も読み応えがあります。
放課後の嘘つきたち (ハヤカワ文庫JA)
酒井田 寛太郎
早川書房
2020-11-19



その他注目作品

探偵はサウナで謎をととのえる(吉岡梅)
探偵業を始めた元刑事はいつもは迷推理ばかり披露するくせにサウナに入ると立ちどころに謎を解き明かしてしまうといういかにもイロモノっぽい連作ミステリーです。しかし、サウナの蘊蓄からヒントを得て行われる謎解きは意外にレベルが高く、本格マニアにも十分楽しめる作品に仕上がっています。


錬金術師の消失(紺野天龍)
ファンタジー世界を舞台にしながらも外界から隔絶した塔で連続ミステリが起きるというガチガチの本格ミステリに仕上がっています。トリックの独創性などはないものの、世界観と絡ませた用い方が見事です。主役2人の掛け合いも楽しく、ファンタジーと本格の融合作品としてはなかなかのレベルです。
錬金術師の消失 (ハヤカワ文庫JA)
紺野 天龍
早川書房
2020-12-17


不可逆少年(五十嵐律人)
『法廷遊戯』で注目を集めた著者の第2弾。13歳の少女による殺人生中継という衝撃的な事件で読者にインパクトを与え、物語世界に引き込んでいく手腕は一級品です。少年犯罪というテーマも悪くありません。ただ、前作に比べるとオチが容易に読めてしまい、本格ミステリとしての魅力は今一つです。
不可逆少年
五十嵐律人
講談社
2021-01-26


元彼の遺言状(新川帆立)
第19回このミステリーがすごい!大賞受賞作品。「僕の財産は僕を殺した犯人に譲る」という遺言状の謎がインパクト満点なうえに、探偵役の女弁護士が破天荒なキャラで楽しく読むことができます。作者が弁護士だけあって遺言状に関する謎解きも秀逸です。ただ、ミステリーとして無理のある部分も。
元彼の遺言状
新川帆立
宝島社
2021-01-08


チェス喫茶フィアンケット迷局集(中村あき)
第3回双葉文庫ルーキー大賞受賞作。チェス喫茶で働く店長代理の高校生が身の回りの謎を解き明かしていく日常ミステリーです。ライトノベルのような軽いノリながらも、ミステリーとしてはかなり練り込まれており、巧妙に張り巡らされた伏線から真実を明らかにしていく手管には感心させられます。


放課後探偵団 2(青崎有吾、斜面堂有紀、辻堂ゆめ・他)
高校時代をテーマにしたアンソロジーシリーズの第2弾。さすがに当代を代表する青春ミステリーの書き手を揃えただけあって読み応えのある作品ばかりです。特に、黒塗りの楽譜の謎を巧みな伏線回収と共にと解き明かし、甘酸っぱいラストへと繋げた辻堂ゆめの『黒塗りの楽譜と転校生』が印象的。


探偵は友人ではない(川澄浩平)
第28回鮎川哲也賞受賞作である『探偵は教室にいない』に続くシリーズ第2弾。相変わらず少年少女の繊細な心情を描く術に長けており、青春小説として読み応えがあります。ただ、本格ミステリとしては前作以上に謎解きがあっさり風味で、日常の謎ものとしてもいささか物足りなさを覚えます。
探偵は友人ではない 真史と歩シリーズ
川澄 浩平
東京創元社
2020-11-11


サクラオト(彩坂美月)
満開の夜桜の下で次々と次々と殺人起きる謎に挑む表題作を始めとして四季と五感をモチーフにした連作ミステリーです。一つ一つの謎解きがよく考えられており、しかも、各話に感じた違和感を伏線として回収し、最後にすべてを反転させてみせる仕掛けが見事です。『向日葵を手折る』に並ぶ傑作。
サクラオト (集英社文庫)
彩坂 美月
集英社
2021-01-20


カラット探偵事務所の事件簿 3(乾くるみ)
浮気調査や信用調査は一切せず、謎解きのみを扱う探偵事務所を描いたシリーズ第3弾。7つの短編が収録された連作ミステリーで亡夫の考えた次女の名前を推測する『次女の名前』、謎を解くのではなく、謎を作る『遊園地に謎解きを』など、ユニークな趣向が盛りだくさんです。軽ミステリーの佳品。


お電話かわりました名探偵です(佐藤青南)
通信指令室の女性指令課員が話を聞いただけで事件を解決する安楽椅子探偵もの。ライトミステリーとして気軽に楽しめる出来であり、特に、「家が盗まれた」という不可解な通報から意外な真相を導き出す第1話が秀逸です。ただ、後半にいくにつれて尻すぼみになっていく感があるのが少々残念。


ネメシス 1(今村昌弘)
2021年4月放送開始ドラマのノベライズで、探偵事務所ネメシスのメンバーであるお人好し探偵の風間とワケあり助手のアンナが難事件に挑むというもの。全体的に軽量級ですが、密室やダイイングメッセージなどを盛り込み、フーダニットとしてもそこそこ楽しめる出来に仕上がっています。
ネメシス1 (講談社タイガ)
今村 昌弘
講談社
2021-03-12



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