最新更新日2021/04/10☆☆☆

Previous⇒このミステリーがすごい!2021年版 海外ベスト20予想

このミス2022
対象作品である2020年10月1日~2021年9月30日発売のミステリー&エンターテイメント作品の中からベスト20の順位を予想していきます。ただし、あくまでも個人的予想であり、順位を保証するものではありません。また、予想は作家の知名度や人気、ジャンルや作風、話題性などを考慮したうえで票が集まりそうな作品の順に並べたものであり、必ずしも予想順位が高い作品ほど優れているというわけでもありません。以上の点はあらかじめご了承ください。
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このミステリーがすごい!海外版 2021年3月22日時点での暫定予想順位

1位.父を撃った12の銃弾(ハンナ・ティンテ)
12歳のルーは父とともに亡き母の故郷に移り住む。各地を転々としていた父のサミュエルが娘に真っ当な生活をさせようと決意したからだ。だが、ルーは母が亡くなった理由も父の体に刻みこまれた12の銃痕の理由も知らされていなかった。やがて、その因縁が父娘の元に忍び寄ってきて.......。
銃痕の由来が語られる過去のエピソード一つ一つが完成度の高い短篇となっており、最後に少女の成長物語と絡み合う構成が見事です。クライムサスペンスとしても青春小説としても一級の傑作。
父を撃った12の銃弾 (文春e-book)
ハンナ・ティンテ
文藝春秋
2021-02-25


2位.オクトーバー・リスト(ジェフリー・ディーヴァー)
ガブリエラは娘のサラを誘拐され、犯人は解放の条件にある秘密のリストを彼女に要求する。誘拐犯との交渉は友人にまかせ、ガブリエラは隠れ家でその帰りを待つことになる。だが、やがて姿を現したのは娘を誘拐した犯人自身だった。果たして事件の鍵を握るオクトーバーリストとは何なのか?
最終章から始まり、過去へと遡っていく時間逆行ミステリー。特殊な構成のために前半は読みづらさを感じますが、最後に炸裂する大仕掛けには驚かされ、用意周到に張り巡らされた伏線に唸らされます。
オクトーバー・リスト (文春文庫)
ジェフリー・ディーヴァー
文藝春秋
2021-03-09


3位.ホテル・ネヴァーシンク(アダム・オファロン・プライス)
20世紀初頭。ユダヤ系移民のアッシャー・シコルスキーは苦難の末にキャッキル山地にたどり着き、そこで始めたホテル業で大成功を収める。ところが、1950年の事件を契機にホテル周辺で子どもの行方不明事件が続発し、ホテルは次第に没落していく。その裏には経営者一族の秘密が.....。
複数の語り手によって半世紀以上の物語が紡がれていく大河ミステリー。断片的な情報によって徐々に真相が見えてくる趣向に加え、歪なエピソードを紡ぎ合わせた構成には迷宮の如き魅力があります。
ホテル・ネヴァーシンク (ハヤカワ・ミステリ)
アダム オファロン プライス
早川書房
2020-12-03


4位.文学少女対数学少女
陸秋槎
女子高生の陸秋槎は校内誌の新企画として自分の書いた犯人当てミステリーを掲載する。しかし、彼女の同級生で数学の天才である韓采蘆は秋槎自身が想定していなかった真相を論理的矛盾なく導き出してしまう。秋槎は采蘆に自作のアドバイザーになってもうおうとするが、彼女は想像以上の変人で.....。
後期クイーン問題にこだわったメタミステリーで作中作をミステリー論と数学論を比較しながら紐解いていく手法がユニーク。また、百合ミステリーとしても秀逸です。ただ、現実での事件は蛇足かも。


5位.ラスト・トライアル(ロバート・ベイリー)
相棒のリックが父の急死で法律事務所を一時離れたため、一人で弁護を請け負うことなったトム。そんな彼の元に少女が訪れる。殺人事件の容疑者となった母を弁護してほしいというのだ。しかも、被害者はトムとリックの宿敵で母親も因縁の相手だった。トムは勝ち目のない裁判に挑む決意をするが......。
1作目2作目の登場人物が事件で重要な役割を果たすという、大河小説の趣を感じさせてくれるシリーズ第3弾です。盟友と袂を分かち、自身の病と対峙しながらも信念を貫くトムの生きざまに痺れます。
ラスト・トライアル (小学館文庫 ヘ 2-3)
ロバート・ベイリー
小学館
2021-01-04


6位.警部ヴィスティング 鍵穴(ヨルン・リーエル・ホルスト)
大物政治家のクラウセンが心臓発作で急逝する。その件でヴィスティング警部は検事総長に呼び出される。クラウセンの別荘から8000万クローネ(約14億円)を越える外国紙幣が発見されたのだという。しかも、その翌日に別荘は放火され、焼け跡から若者の失踪事件への関与を示唆する証拠が出てきて.....。
警部ヴィスティングシリーズの第13弾です。地道な捜査が続く地味な展開ながらも主人公の魅力とテンポの良さで物語に引き込まれていきます。孫や共に事件を追っていく娘との関係にもほっこり。
警部ヴィスティング 鍵穴  ~THE INNERMOST ROOM~ (小学館文庫)
ヨルン・リーエル・ホルスト
小学館
2021-03-05


7位.老いた殺し屋の祈り(マルコ・マルターニ)
オルソは還暦をとうにすぎた老人だったが、組織一の殺し屋として名を轟かせていた。だが、心臓発作で倒れたことにより、彼は行き別れた恋人と娘に一目会いたいと願うようになる。そして、オルソは組織に背き、イタリアに中部の田舎町を目指す。ところが、その途上で、何者かの襲撃を受け......。
凄腕の殺し屋でありながら、一般人には礼儀正しく心優しい主人公が魅力的です。また、苛烈な暴力シーンとほのぼのとしたシーンとのメリハリも絶妙で、優れたエンタメ作品に仕上がっています。
老いた殺し屋の祈り (ハーパーBOOKS)
マルコ マルターニ
ハーパーコリンズ・ジャパン
2021-02-17


8位.燃える川(ピーター・ヘラ―)
親友同士のジャックとウィンは大学の休みを利用してカヌー旅行に出掛ける。ところが、その途中で山火事と遭遇し、計画の変更を迫られるのだった。深い霧の中で男女が口論する声を聞き、翌日、怪我を負った女性を発見する。そして、一行は生き延びるためのサバイバルを余儀なくなさるのだが......。
前半は壮大なスケールの自然に圧倒され、後半は森林火災の恐怖に手に汗握るといった具合に、卓越した描写力が光ります。大自然を舞台にした冒険サスペンスとしてよくできた作品です。
燃える川 (ハヤカワ文庫NV)
ピーター ヘラー
早川書房
2021-01-21


9位.マイ・シスターキラー(オインカン・ブレイウェイト)
アフリカ最大の都市・ラゴスで看護婦をしているコレデには悩みがあった。セクシーな妹・アヨオラが新しい恋人を作っては次々と殺害し、死体の処理を自分に押し付けてくるのだ。しかも、彼女が想いを寄せている医師が妹に一目惚れをしてしまう。一方、警察の捜査は次第に姉妹の元に迫っていき.....。
アフリカ人作家によるクライム文学。おぞましい状況をユーモラスに描いたブラックコメディとして秀逸で、姉妹の過去が明らかになるにつれて滲み出る切なげな雰囲気にも味わい深いものがあります。
マイ・シスター、シリアルキラー (ハヤカワ・ミステリ 1963)
オインカン・ブレイスウェイト
早川書房
2021-01-07


10位.つけ狙う者(ラーシュ・ケプレル)
国際警察のヨーナ・リンナ警部が消息を絶ってから8カ月。巷では独身女性を狙った惨殺事件が続発していた。犯人は被害者の顔をめった切りにし、そのうえ、犯行直前の映像を警察に送りつけていたのだ。被害者同士の接点はなく、警察は過去の犯罪歴から容疑者を絞ろうとするが......。
ヨーナ・リンナシリーズの第5弾。とはいえ、前半は肝心の主人公が不在で、やや散漫な印象を受けます。しかし、後半からは強烈なサスペンスと怒涛の展開が始まり、一気に引き込まれます。
つけ狙う者(上) (扶桑社BOOKSミステリー)
ラーシュ・ケプレル
扶桑社
2020-12-25


11位.素晴らしき世界(マイクル・コナリー)
女刑事レネイ・バラードは見ず知らずの男が古い事件のファイルを漁っているのを発見する。男は元ロス市警刑事のハリー・ボッシュで、かつてハリウッド署で起きた15歳の家出少女が殺害された事件を調べているのだとう。レネイはボッシュを追い出すが、彼女もその事件に興味を示し........。
『汚名』の続編である本作でボッシュは『レイト・ショー』の主人公レイネとコンビを組みます。主人公が2人になったためにやや冗長な感もありますが、最強コンビの活躍は痛快で読み応えありです。
素晴らしき世界(上) (講談社文庫)
マイクル・コナリー
講談社
2020-11-13


12位.暗殺者の悔恨(マーク・グリーニ)
グレイマンは依頼に基づき、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争における戦争犯罪人を暗殺する。だが、そのことで国際的な性的人身売買を行っている巨大組織を敵に回してしまう。しかも、拉致された女性たちに危害が及ぶことを知ったグレイマンは、彼女たちを救うべく行動を開始するが......。
グレイマン・シリーズの第9弾。一人称のグレイマンは最初違和感がありますが、三人称との使い分けが巧みで次第に気にならなくなります。下巻からの派手なノンストップアクションは安定の面白さ。
暗殺者の悔恨 上 (ハヤカワ文庫NV)
マーク・グリーニー
早川書房
2020-11-19


13位.危険な男(ロバート・クレイス)
銀行員の女性・イザベルが拉致される現場を目撃した私立探偵のパイクは彼女を無事救出する。ところが、捕えた犯人は保釈され、同時にイザベルが失踪してしまうのだった。しかも、釈放された犯人はその直後に殺されていた事実が判明する。一体イザベルの身に何が起きたのか?
パイクシリーズの第5弾。寡黙で強いパイクの魅力は相変わらずで、激しいアクションをたっぷり堪能することができます。ただ、思慮の浅いヒロインの言動については好みのわかれるところです。
危険な男 (創元推理文庫)
ロバート・クレイス
東京創元社
2021-01-28


14位.ランナウェイ:RUN AWAY(ハーラン・コーベン)
金融アナリストのサイモンはボーイフレンドに薬漬けにされて寮から姿を消した娘を苦難の末に見つけ出す。だが、娘のボーイフレンドを殴り飛ばした映像がSNSにアップされたことで、彼は誹謗中傷にさらされてしまう。しかも、そのボーイフレンドが殺され、殺人の嫌疑までかけられることになり....。
テンポの良いサスペンスに引き込まれ、謎の殺し屋コンビや探偵の存在が読者の興味を掻き立てます。そして、一見無関係なそれらの断片を繋ぎ合わせ、驚くべき真相を浮かび上がらせる構成が見事です。
ランナウェイ: RUN AWAY (小学館文庫)
コーベン,ハーラン
小学館
2020-12-08


15位.猿の罰(J・D・バーカー)
50代のベテラン刑事のサム・ポーターはシカゴを震撼させる連続殺人鬼〈四猿〉を追っていたが、なんとポーターと四猿が知り合いであることを示唆する写真が発見される。拘留され、追い詰められるポーター。一方、「父よ、お許しください」という句が添えられた祈る死体が各地で発見され.......。
四猿シリーズ三部作の完結編です。それだけに展開は今まで以上に派手で、特に最終章は怒涛の展開で読み応え満点です。ただ、登場人物が多すぎるので1作目からまとめて読まないと分かりにくいかも。
猿の罰 〈四猿〉シリーズ (ハーパーBOOKS)
J・D バーカー
ハーパーコリンズ・ジャパン
2020-10-16


16位.ファントム 亡霊の罠(ジョー・ネスボ)
ハリーの元恋人の息子であるオレグが殺人容疑で逮捕される。幼い頃の彼をよく知るハリーはとても信じられず、独自に調査を開始する。だが、オレグは母と自分を捨てたハリーを責め、何もしゃべろうとはしなかった。しかも、調べれば調べるほどオレグに不利な証拠ばかりが揃い.......。
刑事ハリー・ホーレシリーズ第9弾。刑事ではなくなったハリーですが、相変わらず満身創痍で事件に立ち向かっていく姿が描かれます。そして、その末に至るラストがなんとも切なくて衝撃的です。
17位.もう耳は貸さない(ダニエル・フリードマン)
元殺人課の刑事バック・シャッツも89歳になり、体の衰えが顕著になってくる。そんななか、ラジオ番組んのレポーターから過去の捜査についての取材を求められる。かつて彼が逮捕した殺人犯が死刑直前になって暴力で自白を強要されたと主張しているというのだ。バックは改めて事件を振り返るが.....。
シリーズ第3弾。ジジイがマグナムをぶっ放すような爽快感は影を潜め、内省的な作品になったのは好みの分かれるところです。一方で、死刑制度の是非を問う社会派ミステリーとしては読み応えあり。
もう耳は貸さない バック・シャッツ・シリーズ (創元推理文庫)
ダニエル・フリードマン
東京創元社
2021-02-22


18位.石を放つとき(ローレンス・ブロック)
マット・スカダーはエレインの昔馴染みからストーカー被害の相談を受ける。なんとかストーカー行為をやめさせてほしいというのだが、加害者の名前も顔も全くわからないというのだ。五里霧中のなか、果たしてスカダーは男を見つけ出し、目的を達成することができるのだろうか?
アメリカで2018年に発表された中編と2011年発表の11編収録短編集との合本です。驚くような展開があるわけではないものの、ネオハードボイルドの旗手が放つ熟練の味わいが堪能できる好編です。
石を放つとき (マット・スカダー・シリーズ)
ローレンス・ブロック
二見書房
2020-11-26


19位.ガン・ストリート・ガール(エイドリアン・マッキンティ)
富豪の夫婦が射殺されという事件が発生。ほどなくして最有力容疑者と目されていた被害者夫婦の息子が崖の下から死体となって発見される。自殺だと思われ、遺書も残されていた。だが、ショーン・ダフィ警部補は不審なものを感じ、新人刑事と共に事件を追うも、関係者から新たな犠牲者が......。
シリーズ4弾。国際的な陰謀や本格めいた謎解きは少々唐突感があるものの、混迷極まる80年代の北アイルランドを背景に展開される、史実を絡めた人間ドラマは読み応えがあります。新キャラも魅力的。


20位.「グレート・ギャツビー」を追え(ジョン・グリシャム)
アメリカの文豪・フィッシュジェラルドの直筆原稿が厳重な警備をかいくぐって大学図書館から盗まれる。捜査線上に浮かび上がったのはフロリダで書店を経営している男。彼には希覯本収集家というもう一つの顔があった。真相を探るべく、新進気鋭の女流作家マーサー・マンが彼に接近するが.......。
法廷ものではないグリシャム作品。ミステリーとしての仕掛けは大したことはないものの、村上春樹の訳も相まって肩の凝らない軽妙な娯楽作品に仕上がっています。本の業界の蘊蓄も興味深く読めます。
「グレート・ギャツビー」を追え (単行本)
ジョン・グリシャム
中央公論新社
2020-10-07



その他注目作品

アニーはどこにいった(C・J・チューダー)

ジョーン・ソーンは「妹のアニーに再び同じことが起きようとしている」という不吉なメールを受け取り、故郷に呼び戻される。そこで彼は英語教師の職を得るが前任の教師は息子を惨殺したのちに「息子じゃない」というメモを残して自殺したという。8歳のときのアニー失踪事件と現在の事件の関係は?
作者が敬愛するスティーヴン・キングの影響を色濃く受けた作品です。濃厚な怪奇ムードの中、バラバラだったピースが怪異の要素を絡めつつも一つにつながっていく構成が見事です。
アニーはどこにいった (文春e-book)
C・J・チューダー
文藝春秋
2020-10-15


ナイト・エージェント(マシュー・クワーク)
FBI局員のピーターの役割はホワイトハウスの危機管理室でめったにかかってこない深夜の緊急連絡を取り次ぐだけの退屈なものだった。ところが、ある夜、取り乱した女の声で「赤の台帳、オスプレイ、6日後」と告げられ、それがきっかけで彼は国家的陰謀に巻き込まれることになり......。
誰が敵で誰が味方かわからない状況で殺し屋から命を狙われるスリル満点の謀略スリラー。テンポがよくて一気に読めますし、ホワイトハウスの内実を描いた物語としても興味深いものがあります。
ナイト・エージェント (ハーパーBOOKS)
マシュー クワーク
ハーパーコリンズ・ ジャパン
2020-11-17


ミラクル・クリーク(アンジー・キム)
バージニア州郊外のミラクル・クリーク。そこで韓国移民の一家が営む高濃度酸素カプセル施設・ミラクルサブマリンで火災が発生し、2名が死亡する。警察は利用者の一人であるエリザベスを逮捕するが、裁判が始まるとミラクル・サブマリンを巡るさまざまな家族の問題が浮き彫りになってきて.......。
エドガー賞最優秀新人賞など新人賞3冠を達成。裁判を通して徐々に真実が見えてくると同時に、4組の家族の軋轢や人間性が浮き彫りになっていくプロセスがヒューマンドラマとして読み応えがあります。


ざわめく傷痕(カリン・スローター)
週末のスケート場で13歳の少女が少年に銃を突きつけるという事件が発生。少女は警官によって射殺され、近くのトイレからは彼女が産んだと思われる未熟児の遺体が発見される。検死官のサラは遺体に暴行の痕跡を発見し、彼女がまともに出産できない体であったことを知る。そして、新たな事件が.......。
グランド郡シリーズの第2弾。残虐描写の多い著者の作品の中でも本作のそれは群を抜いています。児童虐待の闇の深さを突き付けられると暗澹たる気分にさせられます。後味の悪さもかなりのもの。
ざわめく傷痕 (ハーパーBOOKS)
カリン スローター
ハーパーコリンズ・ ジャパン
2020-12-17


地の告発(アン・クリーヴス)
英国のシェットランド諸島。マグナス老人が病死し、ペレス警部たちが葬儀に参列する最中、大規模な地滑りが発生し、辺り一帯が土砂で埋まってしまう。しかも、掘り出した空家の中から身元不明の女性の絞殺死体が発見されたのだ。ペレスたちの捜査が続く一方で、新たな殺人事件が発生し.......。
シェットランド諸島シリーズ第7弾。相変わらず派手な展開とは無縁ですが、島の自然やそこに住む人々の細やかな描写には引き込まれるものがあります。伏線を丁寧に紐解いていく謎解きも秀逸。
地の告発 (創元推理文庫)
アン・クリーヴス
東京創元社
2020-11-30


殺人記念日(サマンサ・ダウニング)
フロリダに住む夫婦は倦怠期を迎えていたが、殺人とその隠蔽を協力して行うことで絆を深めることに成功する。それからというもの、彼らは殺人を楽しみ、常に次の獲物を探し求めるようになっていた。だが、ある日、隠していた死体が警察に発見される。彼らは昔の殺人鬼に罪を被せようとするが.....。
主人公は殺人鬼ですが、直接的な殺人の場面がなく、家庭では良き父親なので感情移入しやすい作りになっています。そして、破滅へと向かっていく展開はサスペンス感たっぷりで手に汗握ります。
殺人記念日 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
サマンサ ダウニング
早川書房
2021-03-17


マハラジャの葬列(アビール・ムカジー)
1920年6月。英国からインド帝国警察に赴任したウィンダム警部はオリッサ藩王国の第一王位継承者を目前で殺されてしまう。しかも襲撃者はその場で自殺。警部は殺された皇太子の同窓生だという相棒のバネルジー部長警部とともに、事件の謎を解明するべくサンバルプールに赴くが......。
『カルカッタの殺人』に続くウィンダム警部シリーズの第2弾。相変わらず当時のインドでの文化や風俗が興味深く描かれており、特に後宮の描写は圧巻です。ただ、ミステリーとしてはやや凡庸。
マハラジャの葬列 (ハヤカワ・ミステリ 1965)
アビール・ムカジー
早川書房
2021-03-03


完璧すぎる結婚(グリア・ヘンドリックス)
裕福で優しいリチャードとの婚約。だが、それからというものネリーは無言電話や見知らぬ女性からの視線に悩まされるようになる。しかも、リチャードの部屋にまで怪しげな女性が訪ねてきたのだ。一方、リチャードの前妻であるヴァネッサは彼の婚約を知り、なんとか結婚を阻止しようとするが.......。
一見よくある恋愛サスペンスにみえますが、中盤ですっべてがひっくり返され、さらにサスペンス感が増していく展開が見事です。また、この手の作品としては珍しく、読後感は意外と爽やか。


パリ警視庁迷宮捜査班 魅惑の南仏殺人ツアー(ソフィー・エナフ)
アンヌ・カペスタン警視正率いる特別捜査班の元に新たな殺人事件が舞い込む。被害者には拷問の跡があり、しかも、殺されたのはアンヌの元夫の父親だった。事件の捜査には刑事部やフランス国家警察も介入し、三つ巴の様相をみせる。やがて、過去の2つの未解決殺人事件との関連性が浮かび上がるが...。
前作はフランス版特捜部Qなどといわれてましたが、この第2弾になってコメディ色が鮮明に打ち出されています。ミステリーとしては物足りない反面、濃いキャラが織りなすドタバタ劇として秀逸です。


図書館の怪―四篇の奇怪な物語ー(マイケル・ドズワース・クック)
中世史学者のジャックは大学時代の友人・サイモンから彼の屋敷に古くからある図書室の蔵書目録を改訂してほしいと持ちかけられる。希覯本に目のないジャックは二つ返事で引き受けるが、屋敷に来てみるとサイモンはひどくやつれていた。彼の亡き妻の手記に信じられない出来事が綴られていたのだ。
ポーの短編小説を想起させるようなクラシカルな怪奇譚。ゴシックロマンのムードに満ちた物語が現代小説のリズムで語られるのが心地よく、意外な謎解き要素もあってミステリーとしても楽しめます。
図書室の怪 (四編の奇怪な物語) (創元推理文庫)
マイケル・ドズワース・クック
東京創元社
2020-10-30


最後の巡礼者(ガード・スヴェン)
2003年。第2次世界大戦の英雄、カール・オスカーの他殺死体が自宅で発見される。ナチスの鉤十字が刻まれたナイフでめった斬りされたのだ。捜査は行き詰るが、トミー・バーグマン刑事は2週間前に発見された3体の白骨死体との関連性を見出す。そして、ときは1939年に遡る........。
2014年ガラスの鍵賞受賞作品。現代と過去をめまぐるしく行き来するので最初は状況把握に苦労するかもしれません。しかし、後半になると伏線を回収しながらの二転三転の展開に惹き込まれていきます。
最後の巡礼者 下 (竹書房文庫)
ガード・スヴェン
竹書房
2020-10-05


森の中に埋めた(ネレ・ノイハウス)
キャンプ場でトレーラーが突如炎上し、大爆発を起こす。車内からは男性の焼死体が発見され、オリヴァーとピアは捜査を開始した。ほどなくしてトレーナーの持ち主はオリヴァーの級友の母親と判明するが、彼女は何者かに殺される。しかも、次々と起きる事件の関係者はオリヴァーの知人ばかりで.....。
シリーズ第8弾。謎解きの面白さは今一つですが、のどかな村に秘められた醜悪な人間関係が次第に明るみになっていくプロセスは読み応えがあります。ただ、登場人物が多すぎて覚えきれないのが難


平凡すぎる犠牲者(レイフ・GW・ペーション)
年金生活を送っているアルコール依存症の男が撲殺死体となって発見される。よくある簡単な事件だと誰もが考えていた。だが、有力な容疑者に挙げられていた第一発見者の新聞配達人が何者かに殺され、事件は混迷の色を深めていく。ベックステレーム警部はこの事態をいかに打開していくのか?
シリーズの第2弾。主人公である警部は客観的に見れば下品なだけの無能警官なのですが、それがなぜか事件を解決してしまうところに独自の面白味があります。北欧の今を描いた社会派としても秀逸。
平凡すぎる犠牲者 (創元推理文庫)
レイフ・GW・ペーション
東京創元社
2021-01-09


みんな知ってる、みんな知らない(チョン・ミジン)
1995年の6月5日。同じ日の別の場所で9歳になる2人の少女がそれぞれ誘拐される。その後、無事に生還するものの、2人は誘拐された間の記憶を失ってしまう。それから20年が過ぎ、彼女たちは徐々に記憶を取り戻していき、それが新たな事態を呼び起こすこととなり.......。
各章が独立した形をとりながらも、互いに関連性を有している連作ミステリー。サイコサスペンスとして秀逸で、監禁描写にゾッとします。合間に挿入される挿し絵も雰囲気を盛り上げてくれます。
みんな知ってる、みんな知らない
チョン・ミジン
U-NEXT
2021-01-11


咆哮(アンドレアス・フェーア)
湖の凍てついた氷の下から16歳の少女の死体が発見される。プリンセスドレスを身にまとい、口には数字の書かれたブリキのバッジが押し込められていた。発見者であるクロイトナー上級巡査が手柄を立てようと躍起になるなか、捜査を指揮するヴァルナ―の自宅の屋根から新たな少女の死体が発見され.....。
フェーアのデビュー作。ミステリーとしての切れ味はいまひとつながらも、チームで地道に捜査を続けるヴァルナ―と野生の勘で突っ走る暴走警官のクロイトナーとの対比が楽しく、捜査小説として秀逸。
咆哮 (小学館文庫)
アンドレアス・フェーア
小学館
2021-01-04


アメリカン・スパイ(ローレン・ウィルキンソン)
FBI捜査官のマリーは黒人女性であるが故に自らの能力を発揮する機会を得られずにいた。ある日、西アフリカ・ブルキナファソの若きリーダー、トマ・サンカラにハニートラップを仕掛ける任務をCAIから言い渡される。だが、国民のための改革を推し進める彼の姿を見て、任務に対する信念は揺らぎ.....。
冷戦末期の史実をベースに描かれたスパイ小説ですが、緻密な歴史背景や繊細な心理描写が細やかに積み重ねられており、文学の香すら立ち上ってきます。地味ながらもクオリティの高い佳品です。
アメリカン・スパイ
Lauren Wilkinson
早川書房
2021-02-17


眠れる美女たち(スティーブン・キング/オーウェン・キング)
ある田舎町でイーヴィという女が麻薬密売所を襲って火を放つ事件が発生する。彼女は逮捕されるが、その直後から女たちが繭に覆われて目を覚まさなくなるという奇病が広がり始める。しかも、無理に目覚めさせると凶暴化して暴れ出すのだ。そんななか、イーヴィだけが発病を免れていたが......。
キング親子の共著。奇病によって人々が疑心暗鬼に陥り、パニックが広がっていく過程を丹念に描いていくくだりはさすがの上手さです。ただ、腑に落ちないことが多くて最後が尻すぼみだったのは残念。
眠れる美女たち 上 (文春e-book)
オーウェン・キング
文藝春秋
2020-10-29


ローン・ガールハードボイルド(コトニー・サマーズ)
ラジオの人気DJ・マクレイの元に自分が祖母代わりに育ててきた19歳の少女・セイディが失踪したので探してほしいという電話がかかってくる。乗り気ではないマクレイだが、上司の要請もあり、調査を開始する。その結果、セイディが妹のマティを殺した義父の命を狙っているという事実が判明し......。
よくある悲劇的な物語ですが、まずセイディの視点で事の発端が語られ、のちにマクレイの調査でその顛末を補足するという手法がサスペンス感を高めています。邦題に反し、ハードボイルド要素は皆無。


終身刑の女(レイチェル・クシュナー)
シングルマザーのロミーはストーカーと化した馴染みの客を殺し、国選弁護士の手際の悪い弁護もあって、終身刑を言い渡されてしまう。しかも、息子を預けていた彼女の母親が服役中に死んでしまったのだ。絶望にかられたロミーは息子に一目会うために脱獄を企てるが.......。
ヒロインを始めとする個性豊かな囚人たちのドラマを描いた群像劇。刑務所が舞台なだけに重苦しい雰囲気はあるものの、そこはかとないユーモアも感じられ、上質なエンタメ作品に仕上がっています。
終身刑の女 (小学館文庫 ク 8-1)
レイチェル・クシュナー
小学館
2021-02-05


白が5なら、黒は3(ジョン・ヴァーチャー)
クリントン大統領時代のアメリカ。黒人の父親と白人の母親の間に生まれたビルは自分に黒人の血が流れていることを周囲に隠していた。そんな彼の元に旧友のアローンが現れ、黒人青年に対する傷害事件を起こす。アーロンは逃走に手を貸すことになり、警察に怯える。しかも死んだはずの父が現れ......。
アメリカで深刻な問題となっている人種差別の問題をテーマにしたクライムノベルです。アメリカの暗部に対する描写は生々しく、リアリティに満ちています。非常に考えさせられる作品です。
白が5なら、黒は3 (ハヤカワ・ミステリ)
ジョン・ヴァーチャー
早川書房
2021-02-03


幸運は死者に味方する(スティーヴン・スポッツウッド)
1945年のニューヨーク。女探偵ミズPと元サーカス団員で親子ほども年の離れた助手のウィルに1件の依頼が舞い込む。前年に自殺したコリンズ製鉄の元社長の妻が交霊会を催した直後に水晶玉で撲殺されたのだ。しかも、現場となった書斎は完全な密室だった。密室殺人と聞いて興奮するウィルだが....。
1940年代を舞台にしながら登場人物のほとんどが女性という異色の本格ミステリ。探偵コンビの掛け合いが楽しく、師弟の絆にはぐっとくるものがあります。謎解きもしっかりとした良作です。
幸運は死者に味方する (創元推理文庫)
スティーヴン・スポッツウッド
東京創元社
2021-03-19


教皇のスパイ(ダニエル・シルヴァ)
ローマ教皇のパウロ七世が突如逝去する。教皇の秘書の立場にあったドナーティは、当日に警備担当者が失踪していたことから彼の死に不審を抱き、旧友でイスラエル諜報機関オフィスの長官であるガブリエルに助力を求める。ガブリエルは事件の謎を追うが、そこには歴史を覆す禁断の署の存在が......。
ガブリエル・アロンシリーズの第10弾です。シリーズの集大成といった感じの作品でそれぞれのキャラクターが魅力的に描かれています。ユダヤ人迫害とキリスト教にまつわる謎と陰謀も読み応えあり。
教皇のスパイ 〈ガブリエル・アロン〉シリーズ (ハーパーBOOKS)
ダニエル シルヴァ
ハーパーコリンズ・ジャパン
2021-03-17


憐れみをなす者(ピーター・トレメイン)
フィデルマは修道女としての道を見つめ直すべく、単身で巡礼の旅に出ていた。しかし、乗り込んだ船でかつての恋人キアンと再会し、彼女の胸に動揺が走る。しかも、嵐の中で他の修道女が行方不明にとなる。最初は海に転落したものと思われていたが、船室から血の付いた衣類が見つかり....。
7世紀のアイルランドを舞台にしたシリーズ第8弾。冷静沈着なフィデルマが珍しく私情を隠しきれず、四苦八苦している点に目新しさがあります。謎解きはやや弱いものの、海洋冒険小説の要素も新鮮。
憐れみをなす者 上 (創元推理文庫)
ピーター・トレメイン
東京創元社
2021-02-22


ロンドン謎解き結婚相談所(アリスン・モントクレア)
1946年のロンドン。戦争中情報部に所属していたアイリスと戦争で夫を失ったグエンは共に結婚相談所を立ち上げる。ところが、会計士の青年に女性を紹介したところ、その女性が殺されしまう。しかも、青年が逮捕されてしまったのだ。それがマスコミに報道され、結婚相談所は経営の危機に陥るが....。
逮捕された青年の無実を信じて真相を究明に奔走する女性2人のバディもの。それぞれのキャラが立っており、次第に友情が深まっていくプロセスは読み応えありです。犯罪組織との対決もスリリング。
ロンドン謎解き結婚相談所 (創元推理文庫)
アリスン・モントクレア
東京創元社
2021-02-12


ベイカー街の女たちと幽霊少年団(ミシェル・バークビイ)
入院したハドソン夫人は同室の患者に覆いかぶさる黒い影を目撃し、そのうえ、彼女がいる特別病棟では不可解な死が繰り返される。一方、見舞いに訪れたワトソン夫人からはロンドンで少年の失踪事件が相次いでいるという話を聞く。2人はストリートキッズの力を借りて2つの事件を調べ始めるが......。
ミセス・ハドソン&メアリー・ワトソンシリーズの第2弾。シャーロックホームズの世界を上手く描いていますが、肝心のホームズの出番が少ないのはやや残念。後味の悪い結末も好みの分かれるところ。


幻の名車グレイゴーストを奪還せよ!(クライブ・カッスラー/ロビン・パーセル)
ペイトン子爵が名車グレイゴーストと共に姿を消す。やがて、子爵は無事に保護されるものの、警備員殺害の容疑で逮捕されてしまう。その裏には子爵家に恨みを持つ者の策謀があった。すべてを解く鍵は1906年に起きた名車盗難事件の顛末を記した日記にあるというのだが.......。
カッスラーが亡くなる2年前に発表されたファーゴシリーズの第10弾。他シリーズの主人公・アイザック・ベルとの時を越えた共演が目玉となっており、二転三転の展開はなかなか読み応えです。


毒花を抱く女(ルイース・ボイイエ・アブ・イェンナス)
1年前にレイプされたうえに愛する父も事故で亡くしたサラは、過去を乗り越えて新たな人生を踏み出すべく田舎から首都・ストックホルムに出て仕事を始める。だが、死んだはずの父から電話があり、自分の入浴写真がインスタに投稿される。そこには国家を揺るがす陰謀が秘められていた.....。
三部作の第1弾。サイコサスペンスに分類される作品ですが、そうした観点からはやや凡庸な出来です。その代わり、事件が次第に国家的陰謀とつながっていくスリラーとして読み応えがあります。
毒花を抱く女 (ハヤカワ文庫NV)
ルイース ボイエ アブ イェンナス
早川書房
2020-10-01


脱獄王ヴィドックの華麗なる転身(ヴィルター・ハンゼン)
フランス革命前夜。パン屋の倅として生まれたフランソワ・ヴィドックは無実の罪で投獄される。彼は脱獄を繰り返し、当局から追われる身となってしまうのだった。だが、そんな彼にも転機が訪れる。警察大臣のジョセフ・フーシェに脱獄の腕前や経験を見込まれてパリ警察で働くこととなり.....。
世界初の私立探偵であり、犯罪捜査の父と呼ばれるフランソワ・ヴィドックの伝記小説。モンテ・クリスト伯や探偵デュパンなど、さまざまな創作のモデルとなった人物の半生が興味深く描かれています。
脱獄王ヴィドックの華麗なる転身 (論創海外ミステリ)
ヴァルター・ハンゼン
論創社
2020-11-29


復讐の大地(トム・クランシー)
ISILはアンダーウッド将軍が率いる大統領特使の一団をロケットランチャーで襲撃し、捕えた将軍が斬首される様子をテレビで中継する。米国は空母打撃群を派遣して報復に出るも、リーダーのアッ・ドーサリーは生き延びていた。そして、米国内に侵入し、政府高官の誘拐という手段に打って出るが.....。
トム・クランシーの死後も発表され続けているオプ・センターシリーズの第15弾です。派手な展開できっちり楽しませてくれますが、扱っているテーマが古く、展開もテンプレ気味なのが難。
復讐の大地(上) (扶桑社BOOKSミステリー)
スティーヴ・ピチェニック
扶桑社
2020-11-01


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