最新更新日2020/12/05☆☆☆

1980年代に入るとビデオデッキが一般家庭に広く普及するようになり、同時に、アニメ業界にも大きな変化が生まれます。それまで子供向けだと思われてきたアニメが『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム』などの登場を経て、大人のファンが付くようになったのです。こうした層は既存のアニメには飽き足らず、もっと刺激的な作品を求めるようになります。一方、アニメ制作に携わっていたクリエーターたちも子供向けの作品だけでなく、自分たちが真に作りたいものを手がけたいという欲求が高まってきます。しかし、当時は深夜アニメなどない時代です。大衆向けの番組が求められる夕方やゴールデンタイムのテレビでそのようなマニアックな作品を作るわけにはいきません。映画という手もありますが、劇場用アニメを作るには莫大な製作費が必要となり、無理をして作っても回収の目途が立たないというのが現実でした。そこで、目を付けたのがビデオソフトです。当時のビデオソフト作品は1本1万円以上もする代物だったので、誰でも手が出せるものではありませんでした。その代わり、全国で数千人ほどのマニアが買ってくれれば、それでビジネスとして成立するというメリットがあったのです。こうして、高額のビデオ作品を少数のマニアに向けて販売するというビジネスモデルが構築され、その結果、多種多様なアニメ作品が製作されることになります。こうした流れはその後、長きに渡って続いていくことになりますが、なかでも一番勢いがあったのがOVA勃興期の80年代です。具体的にどのような作品があったのか、OVAの歴史を振り返りながら紹介していきます。
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1983年

ダロス(監督:鳥海永行・押井守)
21世紀末。人口爆発や資源の枯渇などの問題を解決するために、地球連邦政府は月の開拓を推し進めていた。そして、月の裏側に都市「モノポリス」を建設し、豊富な鉱山資源を掘り当てたことで問題は一挙に解決する。しかし、その一方、月の開拓民であるルナリアンたちは統括局・スカラーの厳しい管理政策によって苦しめられていた。そんな彼らの心のよりどころが、モノポリスの近くにそびえ立つダロスだった。それは人面の形をした巨大な人工建築物だったが、一体誰が何のために建設したのかは謎に包まれている。やがて月日が過ぎ、月で生まれ育った第3世代が成長すると、彼らの間で反連邦政府の機運が高まっていく。そんななか、第3世代の少年・シュンと彼の幼馴染のレイチェルはいつしかゲリラのリーダーが主導する独立運動のただなかに巻き込まれていくが......。
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記念すべき世界初のOVA(オリジナルビデオアニメーション)作品です。とはいうものの、もともとはテレビアニメ用として準備されていた企画であり、それが実らなかったためにOVAに転用されたという経緯があります。その内容はシリアスなドラマや政治的な要素を取り入れたSFアニメであり、そういう意味では当時人気の高かった『機動戦士ガンダム』や『太陽の牙ダグラム』などに近いものがあるかもしれません。しかし、テレビとは異なり、スポンサーのために販促用ロボットなどを出す必要がないため、より本格的なSF群像劇に仕上がっているのが最大の特徴だといえます。SFならではの小道具も凝っており、特にテロリスト鎮圧のためにサイボーグ犬の大群が殺到するシーンはかなりの迫力です。ただ、本作はなぜか監督2人制を採用しています。一人はガッチャマンなどで知られる鳥海永行で、もう一人は彼の弟子で当時新進気鋭の演出家として注目されていた押井守です。そのため、話によって作風が全く異なるものになっているという弊害を生んでいます。しかも、当初、テレビアニメで全50話の作品として構想されていたものを強引に4話にまとめているため、全体的に説明不足及び描写不足が目立っている点は否めないところです。結果として、物語としての深みが感じられず、ステレオタイプな筋立てになってしまっています。光る部分もあるだけにいろいろ惜しいと思わせる作品です。
ダロス [DVD]
鵜飼るみ子
バンダイビジュアル
2004-02-25
第1話 リメンバー・バーソロミュー
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1984年

街角のメルヘン(総監督:西久保瑞穂)

浩は新宿駅西口の地下道で美しい娘とぶつかる。急いでいた彼はそのまま立ち去るものの、落としていったノートを彼女が届けてくれたことがきっかけとなって交流を深めていく。ちなみに、ノートに描かれていたのは彼のイメージした街角の絵だった。浩はその絵のイメージを元にして絵本を作るのが夢だという。一方、娘の名前は裕子といい、何者かに追われていた。やがて2人は浩が作ろうとしている絵本・「街角のメルヘン」の導きによって不思議な世界へと誘われていくが........。
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『ダロス』に続いて製作されたOVAですが、ストーリーよりもイマジネーションを優先した作りになっています。起承転結といった物語性には乏しく、現実離れしたファンタジックなイメージを挿入歌とともに流し、まるでミュージッククリップのように紡いでいるのです。したがって、この作品を楽しめるかどうかは絵と音楽の世界に没頭できるかにかかっているといっても過言ではありません。しかし、次々と繰り出される挿入歌がなんとも癖が強く、かなり人を選ぶ作品となっています。それ故に、OVA黎明期に発売された3本の作品のうち、唯一ビジネス的に失敗したのも致し方ないといったところです。そのため、『ダロス』『BIRTH』とは異なり、DVD化もされていません。
ポニーキャニオン
1983-01-01
DVD未発売

BIRTH(監督:貞光伸也/アニメーションディレクター:金田伊行
かつて繁栄していた惑星アクアロイドも今ではイノガニックと呼ばれる無機物知性体に支配され、生き残った人類も星の片隅でひっそりと暮らしているというありさまだった。アクアロイドに住む少年シュルギ・ナムはあるとき、天から落ちてきた不思議な剣を手に入れる。しかし、そのことで彼はイノガニックから追われる身となり、幼馴染であるユピテル・ラサを巻き込み、てんやわんやの追いかけっこが繰り広げられていく。実は、ナムが拾った剣はイノガニックを滅ぼすことのできる唯一の武器、聖剣(シェード)だったのだ。
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OVA黎明期のなかでも最初期の作品といえるのが『ダロス』と『街角のメルヘン』、それに本作を含めた3本です。いずれもテレビアニメではなかなか実現できない企画(ちなみに本作も『ダロス』と同じく元々はテレビシリーズとして企画されたものですが)に挑戦したという共通点はあるものの、『ダロス』は群像劇、『街角のメルヘン』は純文学アニメと銘打ってアニメならではの幻想的な世界を表現しているのに対し、本作は躍動感あふれる動きにこだわり抜いている点が大きな特徴となっています。逆に、ストーリーはあってなきがごとしで、画面上ではひたすらアクションが繰り広げられていきます。しかも、原作者でアニメーションディレクターを務めた金田伊行の個性が全面に押し出されており、金田パースと呼ばれるダイナミックな動きが印象的です。しかし、現代の感覚からすると、そのダイナミックさ故にキャラデザが崩れまくる結果となり、ヒロインを始めとするキャラの顔やプロモーションが安定しないのは大いに不満が残るところです。それに、いくら脚本よりアクション優先の作品といっても、ラストがまるで打ち切り漫画のような投げやり展開になっているのはいただけません。それでも当時としては画期的な作品であったことは確かで、1万8千本のセールスを記録し、ビジネス的にはまずまずの成功を収めています。
バース [DVD]
冨永みーな
ビクターエンタテインメント
2000-12-16




魔法の天使クリィミーマミ 永遠のワンスモア(チーフディレクター:小林治)
小学生の森沢優は魔法の力でクリーミー・マミに変身し、アイドルとして活動していたが、ファイナルステージを最後に引退し、小学生としての日常を過ごすようになっていた。しかし、そんなある日、マミのカムバック騒動が巻き起こる。身に覚えのない優と彼女の幼馴染でマミの正体を知る俊夫はありえないことだと一笑に付すが、実はかつてマミが所属していたパルテノンプロの若社長・立花真悟がマミ復活の極秘プロジェクトを進めていたのだ。果たしてその内容とは?
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『魔法の天使クリィミーマミ』は1983年7月~1984年6月まで放送されていたテレビアニメです。前年放送の『魔法のプリンセス ミンキーモモ』と共に第2期魔法少女ブームを巻き起こした立役者でもあります。もともとは半年の放送予定だったものが好評を得て1年に延長され、それでも人気は冷めやらずに続編OVAシリーズが製作される運びになったのです。ちなみに、その第1弾にあたる本作は世界初のテレビアニメ続編OVAです。当初はオリジナル性の高い作品を制作するために誕生したOVAですが、わずか1年でその意図とは異なる活用方法が編み出されたことになります。しかも、発売するやいなや予想外のヒットを記録し、テレビアニメの続きはOVAでという現在でもよく用いられている手法を確立することになります。そういう意味でも画期的な作品です。ちなみに、本作の内容は総集編40分+続編40分の2部構成になっています。とはいえ、前半も単なる総集編ではなく、台詞をすべて録り直し、BGMも一部差し替えるなどかなり凝った作りになっている点が目を引きます。後半の新作もマミを安易に登場させるのではなく、復活を食い止めるストーリーになっているのがユニークです。そのうえ、テレビシリーズのテーマを巧みに継承しており、肝心のクリーミーマミが登場しなくても違和感なく観ることができます。世界初の試みながら、理想的な続編OVAの形を提示した傑作です。
魔法の天使 クリィミーマミ Blu-ray メモリアルボックス
島津冴子
バンダイビジュアル
2014-05-28



1985年

幻夢戦記レダ(監督:湯山邦彦)
女子高生の朝霧陽子はサッカー部の少年に憧れていたものの、その想いを告げる勇気を持てずにいた。そこで、自分の気持ちを音楽にしたピアノ曲を完成させ、それをヘッドフォンステレオで聴きながら彼に声を掛けようとする。だが、結局それも果たせず、陽子はひとり肩を落とすのだった。そのとき、突如異世界の扉が開き、彼女はアシャンティと呼ばれる世界に飛ばされてしまう。気が付くと陽子は奇妙な生物が徘徊する見知らぬ森にいた。次元の壁を超えて地球侵攻をたくらむ総統ゼルによって召喚されたのだ。ゼルの狙いは陽子の持つレダのハートだという。やがて、ゼルの兵士たちに襲われた陽子はかつてその地を支配していた女神レダの力を継承し、レダの戦士として覚醒するが......。
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当時の日本アニメとしては珍しいヒロイック・ファンタジーの世界を描いた作品であると同時に、美少女キャラや巨大メカが全面に押し出されているのがいかにも80年代風です。特に、覚醒後のヒロインの衣裳がビキニアーマーである点が目を引きます。ビキニアーマーは40年代のアメコミがその起源だとされていますが、この作品以降日本のアニメファンの間でも一気に注目度が高まることになります。一方、ストーリー的にはヒロインが異世界の闘いに巻き込まれて場当たり的に戦うだけなのでいまひとつ盛り上がりに欠けるのが難です。少なくとも、現代の目から見ると物語はありきたりで特筆すべき点は皆無だといえるでしょう。それでも、豪華声優の演技力や当時人気絶頂だったいのまたむつみによるキャラデザ、美麗かつ繊細な作画などといった要素が揃っており、かなり良質なアニメーション作品であったことは確かです。そうしたこともあり、本作は当時としては破格の大ヒットを記録することになります。
幻夢戦記レダ [DVD]
富山敬
パイオニアLDC
2001-09-07
Chapter.1  
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メガゾーン23(監督:石黒昇)
豊かな時代を謳歌している1980年代の東京。いまどきの若者である矢作省吾はバイクを運転中に偶然出会ったダンサーの卵・高中唯に夢中になり、アプローチをかける。そんなとき、友人の中川真二に電話で呼び出される。彼は夢叶重工の試作ライダーなのだが、軍の機密情報である謎の大型バイク・ガーランドを盗み出したというのだ。その後、真二は軍によって射殺されるものの、省吾は真二から託されたガーランドとともに逃亡し、唯の家にかくまってもらう。軍に追われる省吾は人気絶頂のアイドル・時祭イヴが司会を務めるテレビ番組にテレビ電話を通して出演し、ガーランドの秘密を暴露しようとする。だが、テレビ局は軍の監視下にあり、放送は強制的に中断され、軍の特捜隊がガーランドの確保に向かうのだった。追い詰められた省吾だったが、そのとき、ガーランドが人型ロボットに変形し......。
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元々はテレビアニメ『機甲創生記モスピーダ』の後番組として企画されていた作品であり、製作発表当時は石黒昇・美樹本晴彦・平野俊弘、板野一郎といった『超時空要塞マクロス』のメインスタッフが再結集したことでも話題となりました。本作の内容を簡単にいえば、美少女+変形ロボット+歌であり、マクロスの人気要素をそのまま踏襲したものでした。そのうえ、女性キャラの可愛さや音楽のクオリティ、戦闘シーンの迫力なども申し分ありません。それに加えて、テレビアニメでは絶対に放映できないような濃厚なベッドシーンが挿入されているというおまけつきです。要するに、この作品には当時のアニメファンが求めていたものが集約されており、結果として、本作は累計2万7000本という当時のOVA売り上げ記録を達成します。その成功により、OVAビジネスは大きく可能性を広げていくことになります。『幻夢戦記レダ』と並んでOVA市場を開拓した初期の立役者だといえるでしょう。ただ、現代からみると、主人公を始めとしたいかにも80年代といった軽薄な若者像には共感しずらいものがあるかもしれません。また、主人公が大人の体現者であるB.D.に反抗を続けるだけで、彼自身が何をしたいのかがさっぱりわからないのも難点です。おそらくその辺りはラストの挫折と成長のシーンへとつなげるための描写なのでしょうが、そこに至るまでのプロセスに共感を得られないのは厳しいものがあります。とはいえ、当時としては最高級のクオリティを誇る作品であることは確かなので、興味があるのであれば観て損はない作品だといえるでしょう。
メガゾーン23 Blu-ray
宮里久美
ビデオメーカー
2017-04-07




ドリームハンター麗夢(原作・総監督:奥田誠治)
死神博士こと死夢羅は自分の欲望を満たすために若い女性に対する猟奇殺人を繰り返していたが、最後には榊警部率いる警官隊に取り囲まれ、射殺される。だが、それから5年が過ぎた頃、若い女性たちが睡眠中に惨殺されるという奇怪な事件が立て続けに起こるようになる。しかも、いずれの場合も部屋は内部から施錠され、押し入った形跡もないのだ。運良く生き延びた何人かの女性の話によると、彼女たちは口を揃えて夢の中でマント姿の怪人物に襲われたという。そして、その魔の手は榊警部の娘である榊ゆかりにも及び、夢の中の怪人物は彼女をすぐには殺さず、復讐のためになぶり殺しにすると宣言する。その正体は死んだと思われていた死夢羅だった。死夢羅は夢守の民の末裔で、その能力を使って死の間際に夢の中へ逃げ込んだのだ。榊警部は娘を救うために死夢羅と同じ夢守の民の末裔で、ドリームハンターを名乗る探偵・綾小路麗夢に事件の解決を依頼する。麗夢はゆかりの夢の中に入り込み、死夢羅と対峙するが.......。
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世界初のOVAである『ダロス』が発売されたのは1983年の12月ですが、そのわずか3カ月後の1984年2月には世界初の18禁OVAであるアダルトビデオアニメが登場します。その後このジャンルの発展ぶりには目を見張るものがあり、同年の8月には大ヒットシリーズ『くりいむレモン』の第1弾『媚・妹・Baby』が発売されたのをきっかけとして一気にブレイクし、一般向けを上回る勢いで作品の数を増やしていきました。そして、それらの作品群のなかでも特に異彩を放っていたのが本作です。この作品は1985年6月に18禁アニメとして発売されたものの、アダルト描写以外の部分で思わぬ高評価を受けたことからアダルトシーンを一般向けのものに差し替え、さらに第2話の『ドリームハンター麗夢スペシャルバージョン 惨夢 、甦る死神』も追加して同年12月に一般向けOVAとして再発売されることになったのです。その後もシリーズは一般向けとして第3弾まで作られました。さらに、制作元が倒産したあともコンテンツは別会社に引き継がれてコミカライズやCDなどのメディアミックス展開が行われることになります。ここまで高い人気を得たのは、当時としては過激なグロシーン、ビキニアーマーなどのアニメならではのお色気、良質なアクションシーンなどといった具合にB級エンタメの面白さに満ちていたからです。現代のオタク向けアニメのひな型の一つともいえる作品です。
ドリームハンター麗夢 DVD-BOX 1
銀河万丈
オンリー・ハーツ
2006-11-22



戦え!!イクサー1(監督:平野俊弘)
巨大隕石型の艦船で宇宙を放浪しながら惑星への侵略を繰り返すクトゥルフの民。次なる目標を地球に定めた彼女らはその尖兵として寄生モンスターを送り込む。だが、怪物たちはイクサー1と呼ばれる少女によって次々と倒されていく。イクサー1はクトゥルフのボディガードとして作られた人造人間だったが、良心回路を埋め込まれたことにより、いつしかクトゥルフの侵略から星々を守るために戦うようになっていたのだ。しかし、今のままではクトゥルフの本隊に勝つことはできない。イクサー1は闘いを繰り広げながら、シンクロして自分の真の力を引き出してくれる地球の少女を探していた。そうして見つけたのが17歳の少女・加納渚だった。一方、その事実を突き止めたクトゥルフは彼女を暗殺すべく、モンスターを渚の元へと向かわせる。結果、渚はイクサー1によって救いだされるも、彼女の両親が殺されてしまう。時を同じくして、イクサー1抹殺に燃えるクトゥルフの戦士・コバルトが巨大ロボット・デイロスΘと共に地球に降り立つ。イクサー1は渚に対して共に戦ってほしいと告げるが、両親を目の前で殺されたことにショックを受けた渚はイクサー1を拒絶し......。
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『超時空要塞マクロス』で美少女キャラクターの作画が評判となった平野俊弘の監督デビュー作です。原作は成人向け漫画雑誌・レモンピープルに連載されていた阿乱霊の作品ですが、猫型獣人だったイクサー1を人型にアレンジするなど、設定は大きく変わっています。一方で、レズビアン・触手責め・ロボットのコクピットに全裸で搭乗といった具合に原作が18禁だった名残りが色濃く残っており、平野俊弘のキャラクターデザインも相まってセクシーさを全面に押し出した仕上がりとなっています。また、人体破壊のグロ描写もかなりのもので、一種の見世物的アニメとしては80年代を代表する作品だといえるのではないでしょうか。一方で、本作は特撮ヒーロー&スーパーロボットもののオマージュ的作品でもあるのですが、その割にバトルシーンのクオリティは決して高いとはいえません。全体的に闘いがあっさりとしすぎており、しかもブツ切り感が半端ないのです。さらに、シリアスな話なのに時折他のパロディ要素が挿入されるなどといった、いかにも80年代的な遊び心も今観ると違和感が強すぎます。良くも悪くもOVA黎明期を象徴する作品だといえるでしょう。なお、本作は1986年に『イクサーΣの挑戦』、1987年に『完結編』が発売されたのち、1990年には続編の『冒険!イクサー3』へと続いていきます。
戦え!! イクサー1 Blu-ray BOX(初回限定版)
塩沢兼人
キングレコード
2016-04-27



軽井沢シンドローム(総監督:西久保瑞穂)
幼い頃に両親を亡くして松沼家で育てられた相沢耕平と彼の幼馴染である松沼純生はアメリカに渡ることを夢見て高校卒業と同時に家出をする。その後、耕平はカメラマンに、純生はイラストレーターになるもなかなか芽が出ず、金が底を尽いた2人は純生の姉である松沼薫が住む軽井沢の別荘に転がり込む。やがて、耕平は昔から彼に想いを寄せていた薫と結ばれることになるのだった。しかし、偶然知り合った暴走族「蟻(アント)」のリーダー・久遠寺紀子の窮地を救ったことがきっかけで、彼女とも肉体関係を持つことになり......。
◆◆◆◆◆◆
関東最大の暴走族「DEEP」の初代総長にして稀代の女たらし・相沢耕平と彼を取り巻く人々を描いた青春群像劇です。原作の特徴であるシリアスなシーンは8頭身で、コミカルなシーンは2頭身で描くという独特の手法が踏襲されており、さらに本作ではセクシーなシーンを実写で撮影という挑戦的なスタイルを採用しています。もっとも、実写バージョンはアニメファンの不評を買い、翌年にはすべてのシーンをアニメで再構成した『軽井沢シンドローム アニメバージョン』を発売しています。そして、実写バージョンはなかったことにされてしまったのです。しかし、実写バージョンもいかにもOVA黎明期らしいユニークな試みで、今となっては一つの表現方法として興味深いものがあります。また、肝心の本編の方も主役コンビ2人の声を当てた塩沢兼人と三ツ矢雄二の軽妙な演技が光り、原作の良さを活かした作品に仕上がっています。
軽井沢シンドローム アニメバージョン [DVD]
戸田恵子
ファイブエース
2002-06-19
軽井沢シンドロームアニメ+実写 [VHS]
ポニーキャニオン
1985-07-05


天使のたまご(監督:押井守)
ノアの方舟が陸地を見つけられなかったパラレルワールド。機械仕掛けの太陽が海に沈むと世界に夜が訪れる。廃墟の中で独りで暮らしている少女は日没と共に目を覚まし、巨大な卵を服の下に収めて夜の街に向かう。その途中で少女は不気味な形状をした巨大な戦車の一群に遭遇し、そのうちの一台から銃を抱えた青年が降り立った。青年は少女に問う。「そのたまごの中には何が入っているの」と。彼の言葉に、思わず逃げ出してしまう少女だったが.......。
◆◆◆◆◆◆
世界初のOVA『ダロス』を手掛けた際に監督の押井守は「OVAは少数のファンを獲得すればビジネスとして成り立つので、クリエーターが真に表現したいものが作れるはずだ」といった趣旨の言葉を残しています。その言葉を実践するかのように、押井守が創り上げた極めてオリジナリティの高い作品です。起伏に富んだストーリーなどといったものは皆無で、代わりに、廃墟と化した夜の世界が緻密な作画によって描かれています。つまり、本作はストーリーではなく、奇怪な戦車・石畳の路地・影だけで本体のない巨大魚・虚空を映す窓といった一連の描写から何かを感じ取ってもらおうという、表現に特化したアニメーション作品なのです。確かに、そこで描かれている戦車のパレードや巨大魚狩りのシーンなどには従来のアニメにはなかった独自の魅力があります。ただ、それはあくまでもワンシーンを切り取って見ればの話で、70分の作品として続けて見ると、あまりにも起伏がなさすぎるので眠気を催さずにはいられません。結局、本作は“採算に見合うだけの少数のファン”の獲得にも失敗し、大赤字を記録することになります。とはいえ、光と闇の魅せ方や少女の細やかな髪の動き、さらには水面の揺らぎなどといった具合に、アニメーションとしてはクオリティが高く、そういう意味では見どころ満載です。エンタメからは遠く離れた作品ですが、アートアニメとしては一見の価値ありです。
天使のたまご Blu-ray
兵藤まこ
ポニーキャニオン
2013-08-21


魔法のプリンセス ミンキーモモ 夢の中の輪舞(監督:湯山邦彦)
福引で1等賞の南極旅行を引き当てたパパとママを送り出したモモは一人留守番をしながら慣れない家事に悪戦苦闘していた。そんなとき、パパとママの乗った飛行機が太平洋上の”南の真ん中島”近海で消息を絶ったというニュースが飛び込んでくる。空飛ぶキャンピングカー・グルメポッポで救出に向かうモモだったが、島に近付くとグルメポッポは飛行能力を失って墜落してしまう。海中を潜航していた潜水艦にしがみついてなんとか島にたどり着くモモ。しかし、その潜水艦は島に忍び込もうとしていたギャングのものだった。実はこの島で莫大な未知のエネルギーが発見され、それを狙う世界各国のスパイやギャングが潜入を試みようとしていたのだ。だが、そのほとんどは空飛ぶドラゴンに襲われ、消息を絶ってしまう。やがて明らかになったのはこの島の山頂には空に浮かぶ空中都市があり、大人になりたくない子どもや子どもに戻りたい大人が世界中から集められているという事実だった。莫大なエネルギーは彼らが子どもで居続けるために使われていたのだ。モモは子どもの国に主であるペーターと出会って親交を深めるも、「大人になると子どもの頃の純粋な心を失ってしまうからずっと子どものままでいるべきだ」という彼の考えには賛同できないでいた。一方、謎のエネルギーには不老不死の力があることを知った各国首脳は、それを我がものにしようと軍隊を派遣する。子どもの国がミサイル攻撃に晒されるなか、モモはペーターに助太刀することを決意するが........。
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本作は1982年から1983年にかけて全63話が放映され、第2期魔法少女ブームの火付け役となった『魔法のプリンセス ミンキーモモ』の番外編的作品です。ピーターパンの物語をモチーフに用いながらテレビ版に登場したキャラが総出演するというシリーズの集大成的な作品に仕上がっています。とはいっても、単なるファン向けの作品には終わっておらず、ミンキーモモらしいコミカルな場面を散りばめながらも大人になることの意味を問う、非常に見応えのあるドラマに仕上げているのが見事です。ちなみに、テーマ性という点では16年後に上映されることになる名作『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』を彷彿させます。しかし、あの作品とは異なり、2つの考えがぶつかり合いながらも、最終的にはどちらの考え方も否定することなく終わっている点が本作の独自性だといえるでしょう。また、モモとペーターのほのかな恋や終盤におけるこどもの国VS軍隊のバトルも長編OVAならではの見どころとなっています。非常に完成度が高く、テレビアニメの番外編としては『魔法の天使クリィミーマミ 永遠のワンスモア』に並ぶ傑作です。
魔法のプリンセス ミンキーモモ Blu-ray Disc BOX 3 <最終巻>
塚田恵美子
バンダイビジュアル
2009-05-26
OVA Fairy Princess Minky Momo 夢の中の輪舞
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装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッド・ショルダー(監督:高橋良輔)
百年戦争の終結直前。ウドの街を脱出したキリコは、かつての戦友であるグレゴルーの誘いに応じ、バカラ・シティへとやってきた。グレゴルーは他の仲間たちと共にレッド・ショルダーの創設者であるヨラン・ペールゼンへの復讐をもくろんでいたのだ。キリコはペールゼンとつながっている秘密結社にフィアナがいるかもしれないという期待を胸に彼らと行動を共にする。一方、デライダ高地の地下にある秘密結社のアジトではパーフェクトソルジャー第2号のイプシロンが誕生しようとしていた.....。
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テレビアニメとしてカルト的な人気を誇っていた『装甲騎兵ボトムズ』は放送終了後に多数のOVAが製作されていますが、本作はその第1弾です。時系列的にはテレビ版の13話と14話の間に位置するエピソードであり、ウド編からクメン編に至るまでの空白の3カ月間に何が起きていたかを描いています。ただ、本作においてキリコは傍観者に近い立場であり、彼の八面六臂の活躍を期待すると肩透かしを喰らうでしょう。その代わり、TV版よりクオリティの高い戦闘シーンがたっぷりと楽しむことができます。OVAで初めて登場したキャラクターたちも魅力的ですし、テレビシリーズでは少々描写不足に思われたエピソードの掘り下げにも成功しています。本作だけを観て楽しめるかは微妙なところですが、テレビシリーズのファンにとっては傑作といっても差支えない出来です。その後に発売された作品もみな良作揃いであり、このOVA版ボトムズの成功が、テレビアニメの補完はOVAでという流れを作っていくことになります。
第3回日本アニメ大賞オリジナルビデオ作品最優秀作品賞受賞
装甲騎兵ボトムズ ザ・ラストレッドショルダー [DVD]
富田耕生
バンダイビジュアル
2007-02-23


1986年

メガゾーン23 PART II 秘密く・だ・さ・い(監督:板野一郎)
B.D.との対決に敗れてから数年。村下智美殺害の容疑で指名手配された矢作省吾は友人のライトニングを頼り、暴走族・TRASHに身を寄せていた。一方、B.D.率いる軍によって掌握された巨大宇宙船都市メガゾーン23は、偽りの東京を装ったまま戦時体制へと移行する。また、巨大コンピューター・バハムードのプログラムである人気アイドル・時祭イヴも戦意高揚の広告塔として利用されていた。だが、バハムードは完全には軍の手に落ちておらず、かつてのイヴの人格を通して省吾との接触を図ろうとしていた。その頃、もう一つの巨大宇宙船都市であるデザルグがメガゾーン23に対して本格的な侵攻を開始する。迎撃に向かう軍もデザルグの圧倒的な戦力の前になすすべがない。そんななか、省吾は真実を知るためにバハムードの隠れセッションでイヴと会うが......。
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大ヒットOVA『メガゾーン23』の続編です。しかし、キャラクターデザイン兼作画監督が平野俊弘から梅津康臣にチェンジしており、絵のタッチがまるで別作品のようになっているのには驚かされます(時祭イヴのキャラデザだけは前作と同じく美樹本晴彦のままですが)。おまけに主人公を演じる声優まで変わっているので続けて鑑賞するとかなりの違和感を覚えるのは避けられないところです。一方で、敵役のB.D.はキャラデザが変更されたことで渋みが増し、前作以上にかっこ良さが際立っています。ストーリーも前作をしっかり踏襲し、スケールの大きなSF作品に仕上げている点は好感が持てます。それだけに、前作で成長の兆しを見せた主人公が(軽薄な雰囲気は抜けたとはいえ)相変わらず場当たり的な言動に終始しており、いまひとつ魅力に欠けるのがなんとも残念です。それでも、全体としての完成度は高く、なかなかの良作に仕上がっています。ちなみに、本作は劇場公開が決まった関係で主人公とヒロインのベッドシーンが大幅にカットされていましたが、DVD化された際にそのシーンも復活しています。
メガゾーン23 PARTII Blu-ray
宮里久美
ビデオメーカー
2017-04-07


カリフォルニア・クライシス 追撃の銃火(監督:西久保瑞穂)
サンディエゴで暮らす青年・ノエラは仕事でロサンジェルスに向かう途中、トレーラーと軍用車の銃撃戦に遭遇する。面倒事に巻き込まれるのはごめんだと、その場に居合わせたマーシャという名の少女を拾って逃げ出すが、マーシャはトレーラーから謎の球体を持ち出していた。しかも、その球体が墜落したUFOから回収された重要機密だったために2人は軍に追われる羽目になってしまう。焦るノエラを尻目にマーシャは「UFOを発見してビッグになるのだと意気込んでいたが......。
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従来のアニメーションとは異なり、色指定に用いるトレスを実線で表現することによって陰影の深い絵作りを試みた実験色の強い作品です。その表現方法はアメリカ西海岸のポップな雰囲気にマッチしており、作品のムードを盛り上げることに成功しています。また、アニメで表現されたハリウッド映画的なカーチェイスもなかなか見応えがあります。ストーリー的にはやや消化不良の感もありますが、45分程度の作品ではそれもいたしかたないところでしょう。今となっては知っている人も少ないマイナー作品ではあるものの、アニメの新しい可能性に挑戦しようとする姿勢には好感が持てる佳品です。


装鬼兵M.D.ガイスト(監督:池田はやと/原案:大畑晃一/演出:根岸弘)
惑星ジュラは長らく地球政府によって統治されてきたが、新世代人類のネグスロームはそれを快く思わず反旗を翻す。ジュラ正規軍は彼らの反乱を封じ込めようとするも、相手は一歩も引かず、やがて闘いは泥沼の様相を呈してくる。そんななか、ある人工衛星が故障により地表へと墜落した。なかにいたのはガイストという名の男だった。彼は元正規軍特殊部隊所属の兵士だったが、常人を遥かに超えた戦闘力と凶暴な性格故に危険視されて人工衛星の中に幽閉されていたのだ。彼が野に放たれたことにより、事態は風雲急を告げ......。
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主人公を悪の立ち位置に据えたピカレスクロマン風の挑戦的な作品です。しかも、目的のためには手段を選ばない悪人ながらも無関係な人間には手を出さず、その他大勢の悪役たちを豪快に殺していくので正統派ヒーローものとはまた違った爽快感を味わえる作品に仕上がっています。とにかく、殺戮マシーンとして描かれる主人公の存在感が圧倒的です。ただ、その分、主人公以外のキャラにいまひとつ個性や魅力といったものが感じられない点に物足りなさを覚えます。また、メカデザインは概ねカッコ良いのですが、そのなかで主人公の鎧姿だけが浮いているような気がしないでもありません。以上のように、細かな不満はいくつかあるものの、全体としては忘れ難い印象を残してくれるアンチヒーローものの佳品だといえるでしょう。


ガルフォース ETERNAL STORY(監督:秋山勝仁)
液状生命体のパラノイドと女性型単一生殖生命体のソルノイドは広大な宇宙を舞台に果てのない抗争を繰り広げていた。そして、第9星系においてもその戦いは激しさを増していく。そんななか、ソルノイド軍の巡恒艦スターリーフが被弾し、生き残った副艦長エルザ以下7名は艦隊司令部の命令により、惑星カオスへと向かう。だが、艦内にはパラノイドが送り込んだ怪物が忍び込んでいた。エルザはその怪物に襲われ、「私は絶対に拒絶する」という謎の言葉を残したのちに絶命する。一方、同じように怪物に襲われたパティも体調に異常をきたしていた。サブコマンダーのラビィはパティの体内に異物を発見し、摘出手術を行う。ところが、摘出された異物はみるみるうちに成長し、赤ん坊から少年へと育っていくのだった。その姿を見てとまどうラビィたち。単一生殖のソルノイドにとってその少年は初めて目にする男性だったのだ。やがて、彼女たちは両軍の上層部が極秘裏に進めてきた驚くべき計画を知ることになり........。
◆◆◆◆◆◆
メカと美少女という当時のマニア向けアニメの王道をさらに推し進めた作品で、主人公サイドを単一生殖という設定にすることで登場人物は謎の少年を除いてすべて美少女になっています。しかも、園田健一がキャラデザを担当した女性キャラたちは皆可愛くて魅力的です。ただ、それだけに、彼女たちが容赦なく殺されていく展開は衝撃的なものがあります。本作はSFやスペースオペラとして特筆すべき点があるわけではありませんが、キャラの可愛らしさと残酷な運命のギャップによって忘れ難い印象を残す作品となっているのです。また、小比類巻かほるが歌う主題歌『両手いっぱいのジョニー』も効果的に使われており、悲劇的な物語のクライマックスを盛り上げてくれます。尺が短いために掘り下げ不足の部分はありますが、異色のスペースオペラとして評価できる作品です。なお、本作は商業的には必ずしも成功とはいえなかったものの、熱狂的なファンに支えられ、『レアガルフォース』『ガルフォース 地球章』など、4部構成全14話という長期シリーズになっていきます。
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1987年

LILY-C.A.T.(監督:鳥海永行)
巨大企業シンカムは宇宙船サルデス号を惑星探査に向かわせる。乗員であるクルー6名と社員7名は到着までの20年間をコールドスリープで眠り続けるが、目覚めてみると宇宙船内に密航者2名が紛れ込んでいるとの情報が送られていた。密航者探しが始まるなか、船内では突如未知のバクテリアが増殖し、次々と乗組員たちに襲いかかる。果たして密航者は誰なのか?そして、バクテリアの正体は?
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アニメっぽさを極力排した、どちらかというとハリウッドのSF映画のような作品です。時間は70分程度とこの手の実写映画に比べるとかなり短めですが、その辺りはアニメ特有のテンポの良さでそつなくまとめられています。短い時間で少なくない登場人物の個性もきちんと描き分けており、謎めいた展開で視聴者の興味を引き付けていく構成もなかなかに見事です。また、殺人バクテリアの不気味さもよく表現できているように思います。ただ、尺の関係でキャラを十分掘り下げる前に殺さなくてはならない登場人物が何人かいた点は惜しまれます。それから、本業の声優ではないキャストが混じっていたため、その演技だけが浮いていた点も賛否が分かれるところです。とはいえ、全体的な完成度は決して低くはなく、昨今のいかにもアニメ的なアニメに食傷気味だという人には特におすすめです。









妖獣都市(監督:川尻善昭)
  
人間界と魔界は無用な争いを避けるため、平和条約を締結し、不干渉の名のもとに長きに渡って平和を維持し続けていた。その条約の期限切れが迫るなか、新たな平和条約の調印のために魔界の大物ジュゼッペ・マイヤートが来日する。だが、2つの世界のかりそめの平和をよしとしない魔界側のテロリストが調印を阻止すべく、マイヤートの命を狙う。それに対し、マイヤートには2人の護衛が付けられる。人間界の闇ガード滝蓮三郎と魔界の闇ガード麻紀絵だ。彼らは異形の技を使う恐るべき刺客たちと死闘を繰り広げるが.......。
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販促目的で劇場公開されたためにアニメ映画として扱われることも多い本作ですが、基本的にはOVAとして企画・販売された、れっきとしたオリジナルビデオアニメです。また、原作は菊池秀行の小説で、バイオレンスアクションアニメの第一人者である川尻善昭が監督として初めて本領を発揮した作品としても知られています。とにかくこれぞ川尻作品といった感じで、全編が、青と赤の配色を基調としたスタイリッシュ&グロテスクなシーンで溢れています。キャラクター的には25歳とは思えない渋みのある主人公も悪くはないのですが、やはり本作を印象深いものにしているのはヒロインである麻紀絵でしょう。クールな色気を漂わせながら敵を切り裂いていく、その妖艶な魅力がたまりません。一方、敵キャラでは不気味な蜘蛛女が観る者に強いインパクトを与えます。大胆なベッドシーンなども盛り込まれ、当時としては珍しい、過剰なまでにアダルティな作品に仕上がっています。一言でいえばかなり刺激的な作品です。しかも、アクションに次ぐアクションで娯楽性も申し分ありません。間違いなく80年代を代表するOVA作品の一つです。
第5回日本アニメ大賞オリジナルビデオ作品最優秀作品賞受賞
第1回ビデオでーたビデオソフト大賞 オリジナルビデオ部門受賞

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トワイライトQ 迷宮物件 FILE538(監督:押井守)
東京上空で奇怪な事件が起きる。空中でジャンボジェット機が突然、巨大な鯉に姿を変えて消失したのだ。そのころ、とある探偵が調査を依頼される。調査対象は東京の片隅のアパートで暮らす冴えない中年男と幼女だった。2人はジャンボジェット機消失事件に関係があるらしい。果たして彼らは何者なのか。
◆◆◆◆◆◆
本作はタイトルからも分かる通り、テレビドラマとしてカルト的な人気を誇っていた『トワイライトゾーン』及び『ウルトラQ』を意識したオムニバス形式の作品です。OVAとして全6巻の発売が予定されていました。そして、1作目の『時の結び目 REFLECTION』は良くも悪くも正統派SFアニメとして無難にまとまっています。ところが、2作目である本作があまりにもわけのわからない代物だったので全く売れず、シリーズもそのまま打ち切りになってしまったのです。個人的には押井守の作品は結構好きなのですが、それでも30分間ひたすらモノローグが続くこの作品はかなりつらいものがあります。とにかく話が観念的すぎて娯楽性皆無なのです。これではシリーズが打ち切りになったのもやむなしだといえるでしょう。ある意味、OVA黎明期における最大の問題作です。ただ、旅客機が巨大な鯉に変身する冒頭のシーンだけはインパクトがあり、押井守ならではのセンスを感じさせてくれます。
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第2話 迷宮物件 FILE 538
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ロボットカーニバル(監督:大友克洋、北久保弘之、森本晃司・他)
マッドサイエンティストの老人が世界征服を行うために巨大ロボットを起動させようとする『フランケンの歯車』、傷心の少女と遊園地で出会ったロボットの触れ合いを描いた『STAR LIGHT ANGEL』、人型の作業用ロボットが囚われの少女を救出するために自らを戦闘用ロボに改造する『DEPRIVE』、母の愛を知らない中年男と彼が造った少女が悲恋を奏でる『プレゼンス』など、全7作品を収録。
◆◆◆◆◆◆
大友克洋、北久保弘之、梅津秦臣など、8人のクリエイターがロボットをテーマにした短編アニメをそれぞれ手掛け、オムニバス形式でまとめた作品です。まず、なんといっても素晴らしいのが大友克洋が担当したオープニングムービーで、豪華絢爛なアニメーションに一気に引き込まれていきます。また、本編の方も一級のアニメーターたちが各作品の監督を務めているだけあって、それぞれ個性的な作画を堪能することができます。ただ、アニメーションには並々ならぬこだわりが感じられる一方で、物語としての起承転結に欠けているものや予定調和なものが多かったのは少々残念です。そんな中で、物悲しいストーリーを繊細なタッチで綴った『プレゼンス』と痛快娯楽活劇として素直に楽しめる『明治からくり文明奇譚』の完成度の高さが光ります。玉石混交ながらもこの時代ならではの試みは大いに買いたい意欲作です。
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ブラックマジック M-66(監督:志郎正宗)
軍の輸送機が墜落し、輸送中だった2体の軍用アンドロイド・対人自動歩兵M-66が行方をくらます。出撃した特殊部隊によって1体は自爆に追い込むも、もう1体は取り逃がして市街地への侵入を許してしまうのだった。しかも、その機体には開発者Dr.マーシュの孫娘であるフェリスの暗殺プログラムが組み込まれていることが判明する。一方、軍の緊急出動に気付いたフリージャーナリストのシーベルは極秘裏に取材を開始するが、成り行き上、フェリスをM-66の襲撃から守ることになり.......。
◆◆◆◆◆◆
この作品は原作者である志郎正宗が自ら監督・脚本・絵コンテを務めており、それだけに隋所にこだわりを感じさせる作品に仕上がっています。とはいっても、物語的にはこれといって見るべき点はありません。よくある『ターミネーター』の亜流のような話で、50分弱の本編で描かれているのは最低限の状況説明を除けば、あとはひたすら続くアクションシーンだけです。しかし、このアクションが素晴らしく、ヌルヌルと動く作画は戦闘の臨場感を否応なしに高めてくれます。殺戮兵器であるM-88の不気味さもよく表現されており、対峙する特殊部隊もアニメでありがちな無駄口などを叩かずに黙々と戦っている感じが実にリアルです。緻密なミリタリー描写も相まってアクションアニメとしては当時、かなり高い評価を得た作品です。ただ、特殊部隊の描写の秀逸さに対して、主人公であるシーベルのキャラがいま一つ印象に欠けるといった弱点はあります。それから動きの素晴らしさに対して絵柄そのものに安っぽさを感じるのも賛否が分かれるところです。
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魔龍戦紀(監督:大上浩明)
呪術の力を用い、かつては朝廷をも 影から操っていた鬼道衆は、絶大な力を持つ道祖復活のために四聖獣を現世に復活させようとする。しかし、その目論見は密教僧の玄道によって阻まれ、頭目の千代妓敏朗も殺されてしまう。それから18年後の1989年。敏朗の跡を継いだ千代妓美鬼は朱雀の気を持つ女子高生・村瀬美穂を発見し、我が物にしようとする。それに対し、玄道によって育てられた陶芸家の比勇恭一は囚われの美穂を救うべく美鬼と対峙する。そして、美穂の救出そのものは成功するも、恭一は美鬼との戦いの末に行方不明になってしまうのだった。一方、玄道と若き密教僧の綾羅・錦繍はすべてに決着を付けるべく、最後の戦いに挑もうとする。だが、3人の前には白虎として覚醒しかけ、自我を失った恭一が立ち塞がり......。
◆◆◆◆◆◆
『妖獣都市』と同系統のエログロバイオレンスを全面に押し出したアクションアニメです。ちなみに、『妖獣都市』は菊池秀行の小説が原作であるのに対して、本作は原作を持たないオリジナル作品です。しかし、その作風には当時菊池秀行と人気を2分していた夢枕獏の影響が色濃く見て取れます。陰陽道・戦う密教僧・エログロバトルといった要素は80年代の夢枕獏の作品そのもので、夢枕獏が原作だと言われれば思わず納得してしまうレベルです。しかも、その世界観を表現するための作画も素晴らしく、『妖獣都市』に負けない刺激的な娯楽アニメに仕上がっています。ただ、本作は全3巻からなっており、1巻は間違いなく素晴らしい出来なのですが、2巻以降は少々クオリティが落ちているのが残念です。まず、ラスボスである美鬼の他にも魅力的な敵キャラが何人か出てくるものの、尺の関係なのか、キャラとしての掘り下げがなされないままあっさりとやられてしまうのはいただけません。かなりの強敵として描かれているだけに、どうしても最期があっけなく感じてしまうのです。また、ラスボスとの戦い及びその決着にもカタルシスが感じられず、非常に後味の悪いものになっているのも大いに問題です。途中までは非常に魅力的な作品だっただけに、最後までそのテンションを保てなかったのが惜しまれます。
魔龍戦紀(3) [VHS]
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1989-07-22


破邪大星ダンガイオー(監督:平野俊弘)
天才科学者のターサン博士は自らが開発したスーパーロボット・ダンガイオーを4人のパイロットと共に宇宙海賊バンカーに売り渡そうとしていた。だが、パイロットであるミア、ロール、ランバ、パイの4人は当初ターサン博士の造った人造人間だとされていたものの、実は宇宙各地から集められ、記憶を操作された超能力者だと判明する。そのことを知った4人はダンガイオーを奪ってバンカーの元を脱出し、それぞれの故郷を目指そうとするが......。
◆◆◆◆◆◆
いかにも平野俊弘らしい美少女キャラを盛り込みつつも、70年代テイストのスーパーロボットアニメの復活を目指した作品です。ストーリー的には突出した点はないものの、宿敵との対決や神谷明の絶叫とともに繰り出される必殺技のオンパレードといった具合に、ツボを押さえた作りが光ります。スーパーロボット好きな人にとっては堪らない作品だといえるでしょう。ただ、OVAなのに2話のAパートが1話の総集編だというのはいただけませんし、4話以降が製作中止になったために3話がとってつけたような展開になってしまったのも残念です。なお、2001年には本作の続編として、『破邪巨星Gダンガイオー』がテレビアニメとして放映されましたが、こちらも未完のまま打ち切りになっています。
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2016-04-27


バブルガムクライシス(監督:秋山勝仁・他)
西暦2032年。超過密都市であるメガロシティTOKYOは7年前に発生した第2次関東大震災からようやく完全復興を遂げようとしていた。ただ、その間に起きた急激な科学の発展と多人種の流入は社会構造の歪みを生み、富裕層と貧困層の差が浮き彫りになっていく。結果、治安は悪化し、作業用に開発された人型機械のブーマがしばしば犯罪に使用されるようになる。そうした犯罪は凶悪化の一途を辿り、いまやADポリスですら手に負えなくなっていた。そんな折、街にはびこる非合法ブーマから人々を守るために立ち上がる者たちがいた。4人の美女からなる闇の仕置人・ナイトセイバーズである。彼女たちは最新強化服のハードスーツに身を包み、ブーマ犯罪者を影から操る超集合企業体・ゲノムに立ち向かっていくが......。
◆◆◆◆◆◆
当時人気だった園田健一をキャラデザとメカニックデザインに迎え、メカと美少女とお色気といったオタク向けアニメの売れ線要素をそつなくまとめたOVAの人気シリーズです。とはいえ、アニメ作品としては当時としても突出したレベルにあったわけではありません。作画・演出ともに凡庸ですし、ストーリーもテンプレそのものです。しかし、8話だけは別です。冒頭のハードスーツとブーマの対決から一気に引き込まれ、小気味良いアクションとテンポの良いストーリーを堪能することができます。少なくとも、シリーズ前半の凡庸なアニメーションとは全くの別物です。この回だけでも観る価値はあります。なお、『バブルガムクライシス』自体はこの8話で一旦終了となりますが、その後も高い人気を維持し続け、リメイクや派生作品が数多く製作されています。
バブルガムクライシス [Blu-ray]
古川登志夫
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2008-11-21


1988年

魔界都市〈新宿〉(監督:川尻善昭)
199X年。この世界を魔界に売り渡そうとする魔導士レヴィ・ラーと、それを阻止せんとする念法使いの十六夜弦一郎が激突する。結果、弦一郎は敗れ、ラーの放った邪悪なパワーはマグニチュード8.5の魔震を引き起こす。そのエネルギーは震源地となった新宿を魑魅魍魎が跋扈する魔界都市へと変貌させる。それから10年。長い眠りについていたラーが目覚め、自らの野望のために再び動き出す。弦一郎の息子である十六夜京也は連邦政府主席の娘・羅摩さやかの依頼を引き受け、打倒ラーのために立ち上がるが......。
◆◆◆◆◆◆
『妖獣都市』で脚光を浴びた川尻善昭が再び菊池秀行の原作小説のアニメ化に挑戦した作品です。相変わらず迫力のあるアクションシーンは素晴らしく、作画や美術のクオリティも申し分ありません。主人公が次々と現れる敵を打ち破っていく物語は王道的バイオレンスアクションとして十分に楽しめる出来です。ただ、こちらは原作がジュブナイル小説なのでエログロ描写などはかなり控えめであり、『妖獣都市』と比べるとインパクトに欠ける面があります。それに、キャラクターに関してもいま一つ面白みに欠けます。さらに、アクションもクオリティ自体は高いものの、尺の関係か、一つ一つが割とあっさり終わってしまうのが残念です。王道アクションアニメとして十分に楽しめる出来ではあるものの、『妖獣都市』や『獣兵衛忍法帖』といった川尻善昭の他の代表作を観たあとではどこか物足りなさを感じてしまいます。とはいうものの、過激さやアクの強さはかなり控えめであるため、そういった要素が苦手だという人にとっては逆におすすめかもしれません。
魔界都市<新宿> [Blu-ray]
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2020-02-05


冥王計画ゼオライマー(監督:平野俊弘)
多国籍企業を隠れ蓑にして暗躍する秘密結社・鉄甲龍(ハウドラゴン)は雌伏のときを経て、八卦ロボによる世界征服を開始した。組織の長である少女・幽羅帝は八卦衆の一人で自らの愛人でもある耐爬に日本政府の秘密基地・ラストガーディアンを襲撃させる。しかし、そこには最強ロボ・天のゼオライマーがあった。15年前に鉄甲龍を裏切った天才科学者・木原マサキの手によって強奪されたものた。ラスト・ガーディアンは秋津マサトという名の少年を拉致し・無理矢理ゼオライマーに搭乗させようとする。謎の少女氷室美久と一緒に八卦衆と戦えというのだ。訳もわからないままに戦闘に突入し、ゼオライマーを使いこなせずに苦戦するマサト。しかし、突如人が変わったように冷酷な表情を浮かべると、ゼオライマーは圧倒的な力を発揮し始める。果たしてマサキの身に何が起きたのか.......。
◆◆◆◆◆◆
原作は『戦え!!イクサー1』と同じく、レモンピープルに連載されていた成人向けロボット漫画で、基本設定を流用しながらも18禁要素をほぼ排除している点も共通しています。また、作画のクオリティは当時としてはかなり高く、ロボットのデザインも独自の魅力があり、巨大ロボットアニメとしてなかなか見応えのある作品だといえます。さらに、主人公や敵幹部の意外な正体にも驚かされますし、中盤までのサスペンスフルなストーリーも悪くありません。ただ、設定を説明するのにナレーションに頼り過ぎなせいで、どうにも物語に入り込みにくいのが難です。それに、全6話の予定が4話で打ち切りとなったために、最終回の展開がバタバタとしすぎているのが最大の欠点だといえるでしょう。同じ監督の『破邪大星ダンガイオー』と同様に当初の構想通りに描き切れなかったのが惜しまれます。
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塩沢兼人
バンダイビジュアル
2008-10-24


バオー来訪者(総監修・絵コンテ:鳥海永行)
秘密組織ドレスは列車で9歳の少女・スミレを研究所に搬送していた。彼女には予知能力があり、その力を研究して、軍事情報活動に転用しようというのだ。ところが、スミレは搬送途中に予知能力を使って監禁されていた貨車を抜け出し、騒動を起こす。しかも、実験体を閉じ込めていたカプセルのロックも解除され、中で眠っていたバオーが覚醒してしまったのだ。バオーとは遺伝子操作によって生み出された寄生虫バオーに寄生された人間のことである。寄生虫の力によって異形のものに変身し、恐るべき力を発揮するのだ。その力は核にも匹敵するという。バオーこと橋沢育朗はスミレと共に列車から逃げ出し、そのまま一緒に逃亡生活を続ける。だが、ドレスの刺客はすぐそこまで迫っていた......。
◆◆◆◆◆◆
原作者の荒木飛呂彦は1986年に連載を開始した『ジョジョの奇妙な冒険』でブレイクを果たしますが、その前に週刊少年ジャンプで連載していたのが『バオー来訪者』です。わずか17話で終了したものの、ケレン味たっぷりの荒木節はこのころから健在です。また、多くの打ち切り漫画にありがちな投げっぱなしジャーマンになることもなく、話も全2巻できれいにまとまっています。そのため、のちにカルト的な人気を得ることになるのですが、そんな作品にいち早く目を付けてOVA化を果たしたのが本作というわけです。そして、このアニメ版も原作に負けず劣らず素晴らしい出来です。物語のテンポがよく、畳みかけるようなアクションシーンも見応えがあります。また、テレビアニメでは見せられないグロテスクな人体破壊シーンをふんだんに盛り込んでいるのもOVAならではといえるでしょう。ただ、全2巻とはいえ、17話を50分程度の尺にまとめるのは無理があったようで、原作のかなり重要な要素が削られているのが惜しまれます。
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池田秀一
東芝デジタルフロンティア
2003-04-02


エースをねらえ!2(チーフディレクター:古瀬登/総監修:出崎統)
宗方コーチの厳しい指導にくらいつき、テニスプレイヤーとして大きく成長した岡ひろみはアメリカ遠征へと旅立ち、そこで準優勝という結果を残す。コーチにメダルを見せることができると喜ぶひろみだったが、帰国した彼女が目にしたのは宗方コーチの死だった。病魔に冒されていた彼はひろみの遠征中に「岡、エースをねらえ」という言葉を残して力尽きたのだ。コーチを失ったショックで抜け殻のようになるひろみ。そんな彼女に手を差し伸べたのが宗方コーチの無二の親友である桂大悟だった。宗方コーチからあとのことを託された大悟はひろみに厳しい修行を課すことでなんとか彼女を立ち直らせようとするが......。
◆◆◆◆◆◆
1970年代にスポ根少女漫画として大ブームを巻き起こした『エースをねらえ!』は2度のテレビアニメに加えて劇場版アニメまで公開されたにも関わらず、描かれたのは原作の第一部にあたる部分のみであり、第2部は手つかずのままでした。そこで、シリーズを完結させるために製作されたのが本作というわけです。ブームはとうに去っていましたが、OVAであれば、熱心なファンが買ってくれるので採算ラインに乗せることができるという判断から製作に踏み切ったのではないでしょうか。そして、出来上がった作品は確かにファンを満足させるに足る見事なものでした。出崎節が随所に炸裂し、これぞ70年代のスポコンアニメといった味わいを満喫できるうえに、70年代当時のアニメとは比べ物にならないクオリティでその世界を再現しているところがたまりません。また、宗方コーチが亡くなってから岡ひろみが立ち直るまでを描いた鬼気迫るシーンもドラマとして大いに見応えがあります。そして、コーチの死を乗り越えたひろみが雨のテニスコートでお蝶夫人と激闘を繰り広げるラストが感動的です。それに、ひろみとは違った形で心に傷を負った緑川蘭子の物語も、アニメオリジナルの展開として見逃せません。80年代スポーツアニメの最高峰の一つに数えられる名作です。
第6回日本アニメ大賞オリジナルビデオ作品最優秀作品賞受賞
TMS DVD COLLECTION エースをねらえ! 2 DVD-BOX
玄田哲章
バンダイビジュアル
2003-05-23


トップをねらえ!(監督:庵野秀明)
21世紀の初頭、人類は宇宙怪獣と呼称される謎の生命体と遭遇し、以来、外宇宙において度重なる攻撃を受けるようになっていた。そんななか、宇宙怪獣との交戦によって行方不明となったタカヤ・ユウゾウ提督の娘であるタカヤ・ノリコは宇宙パイロットになることを夢見て、沖縄のパイロット養成所に入学する。だが、彼女は運動神経こそ図抜けているものの、マシーン兵器の操縦はからっきしの落ちこぼれだった。それにも関わらず、タカヤ提督の部下だったオオタコーチに宇宙パイロットのエリート集団であるトップ部隊に抜擢されたことにより、周囲から嫉妬されイジメを受けるようになる。孤立感に苛まれ、落ち込むノリコだったが、コーチの特訓や憧れのお姉さまであるアマノ・カズミとの交流を経て次第に才能を開花させていく。そして、ノリコの抜擢に納得できないカシハラ・レイコとマシン兵器での決闘を行うことになるのだが........。
◆◆◆◆◆◆
『新世紀エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』で知られる庵野秀明の監督デビュー作です。タイトルからも分かる通り、『エースをねらえ!』に映画の『トップガン』の要素をまぶした作品で、その他にもさまざまな特撮やアニメなどのパロディが散りばめられています。そのため、当初はコメディ作品だと思われていた節もありますし、そうした観点から鑑賞すると第1話は微妙な出来です。全体的に悪ふざけが過ぎますし、その割にメインストーリーはシリアスなのでドラマとしてどうにもチグハグな印象を受けてしまうのです。ところが、2話以降その印象は一変します。当時としてはかなり本格的なSF理論を物語の中に組み込み、SFアニメとして見応えのある作品へとジョブチェンジしていったのです。しかし、それだけで終わったのなら単なる良作どまりの作品にすぎなかったでしょう。本作の本領が本当の意味で発揮されるのは第4話からです。この回から主役ロボであるガンバスターが登場し、恐ろしく熱量が高い戦闘シーンが繰り広げられていきます。特に、第5話の数億匹の宇宙怪獣VSガンバスターはアニメ史上に残る名場面です。また、最終話である6話のラストシーンに至るまでの展開も非常に感動的で忘れ難いものがあります。本作がこれほどまでにインパクト満点の作品となったのも庵野秀明の卓越した演出力があればこそでしょう。それに、田中公平の音楽やタカヤ・ノリコを演じた日高のり子の熱演も素晴らしく、作品の魅力をさらに高いレベルまで押し上げています。OVA史の中で燦然と光り輝く名作中の名作です。なお、2004年には続編にあたる『トップをねらえ!2』が製作されていますが、こちらの監督は庵野秀明ではなく、ガイナックスの後輩で、のちにエヴァンゲリヲン新劇場版の監督(庵野秀明は総監督)を務めることになる鶴巻和哉です。
トップをねらえ! Blu-ray Box
若本規夫
バンダイビジュアル
2012-02-24
第1話 ショック!私とお姉様がパイロット!?
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機動警察パトレイバー (監督:押井守)
1998年。テクノロジーの急速な発展と都市開発の需要の高まりにより、建設工事の現場には大量の人型作業機械・レイバーが投入されるようになっていた。しかし、いつしかレイバーは犯罪にも使用されるようになり、大きな社会問題となっていく。通常の警察組織ではこれに対抗できないことから、パトロールレイバーを用いて治安維持にあたる特車2課が設立され、その後、最新鋭機である98式AVイングラムの投入と共に第2小隊が新設されることになる。ところが、その実態は埋め立て地の果てのあばら屋を拠点とする窓際部署だった。期待の最新鋭機もトレーラーで輸送中に渋滞につかまり、なかなか届かない。そのとき、第2小隊に出動命令が下る。出動したくても肝心のレイバーがない状況のなか、第2小隊の後藤隊長はこちらから出向いてイングラムを受領し、そのまま出動するという奇策に打って出るが.......。
◆◆◆◆◆◆
本作はゆうきまさみの漫画が原作だと勘違いしている人もいますが、実際は、ヘッドギアというクリエーター集団が企画し、アニメ・漫画・小説・ゲームなどを同時展開させたメディアミックス作品です。ここまで多角的なメディアミックスは過去に例がなく、現代的なメディアミックス作品の先駆け的存在ともいわれています。しかも、当時1万円越えが当たり前だったOVAを4800円で発売するという驚異の低価格販売を実現したのも画期的でした。それを実現するためにOVAなのにCMを入れ、監督には予算管理及びスケジュール管理には定評があるということで、当時『天使のたまご』や『迷宮物件 FILE538』の商業的大失敗で干されていた押井守を起用しています。ただ、それでも予算不足はいかんともしがたく、全体的にチープな作りになっている点は否めません。ロボットアニメなのにレイバーを用いた派手なアクションなどは皆無ですし、作画も全体的に安っぽさが目立ちます。それでも、アクの強いキャラ同士の絡みやシチュエーションコメディでなんとか一定以上の面白さを保っているのはさすが押井守といったところでしょうか。また、全6話(のちに別監督による7話を追加)のうち、4話までは少なくともドラマとしては凡庸なものばかりですが、ラスト2話の『二課の一番長い日(前後編)』だけは非常に見応えのあるエピソードに仕上がっています。レイバーが動かないのは相変わらずではあるものの、自衛隊の一部勢力がクーデターを起こす物語はサスペンス感に満ちています。特に、第5話における不穏な空気が徐々に高まっていく描写が秀逸です。その後続いていく長大なシリーズの中でも屈指の傑作だといえるでしょう。結果として、この初期OVAシリーズは各巻5万本という大ヒットを記録し、名作との呼び声高い劇場用アニメ2作へと繋がっていくことになります。
第1話 第2小隊出動せよ!
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銀河英雄伝説(監督:石黒昇)
遥か未来。銀河全域にまで勢力を伸ばした人類は、皇帝と貴族が支配する銀河帝国と、その帝国から脱出した共和主義者たちによって建国された自由惑星同盟の二大陣営に分かれて覇を争っていた。その戦いは150年にも及び、いつ果てるともしれなかったが、2人の英雄の出現によって歴史は大きく動こうとしていた。一人は帝国の貧しい貴族の家に生まれ、姉が皇帝の後宮に収まったのを契機として20歳の若さで帝国元帥まで上り詰めたラインハルト・フォン・ローエングラム。もう一人は自由惑星同盟の商人の子として生まれ、経済的理由から士官学校に入学したところ、思わぬ武勲を立ててエル・ファシルの英雄として祭り上げられたヤン・ウエンリーである。その2人がアスターテの会戦で初めて戦火を交える。同盟領に侵入したラインハルト率いる帝国軍に対して数に勝る同盟軍が包囲戦を仕掛けたところ、包囲網が完成するまでのタイムラグを利用した電光石火の各個撃破によって壊滅寸前にまで追い込まれてしまったのだ。同盟軍司令官のパエッタ中将が重傷を負ったことにより、艦隊の命運は指揮権を引き継いだヤン・ウェンリー准将の手に委ねられるが....。
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本作はもともとテレビアニメとして企画されたものですが、その企画が頓挫したことで低価格OVAに転用されたという経緯があります。しかも、『機動警察パトレイバー』とはまた違ったアプローチで低価格化を実現している点が目を引きます。通信販売によって製作会社から直接消費者に商品を届けることにより、中間コストが生まれないようにしたのです。その目論見は見事に当たり、1話25分の構成で本編110話、外伝52話、長編3話という、OVAとしては空前絶後の長期シリーズを実現することになります。また、販売形態だけでなく、作品自体の出来も見事の一言です。作画などのクオリティはそれほど高いわけではありませんが、壮大なスケールで描かれる原作の魅力を丁寧に再現しており、なかでも戦闘シーンのBGMをすべてクラシック音楽で統一した演出が秀逸です。そのおかげで、宇宙での戦いにおける荘厳な雰囲気を観る者に対してわかりやすく伝えることに成功しています。また、常勝の天才ことラインハルトや不敗の魔術師ことヤン・ウェンリーの両雄を始めとした登場人物もみな魅力的で、豪華声優陣の神がかった演技によってその魅力が一層高められています。歴史のうねりを感じさせる重厚なドラマも見応え充分であり、なにより、名将たちのぶつかり合いにおける戦術及び戦略上の駆け引きの面白さが特筆ものです。スペースオペラを扱ったアニメ作品としては最高峰に位置する名作です。
銀河英雄伝説 Blu-ray BOX スタンダードエディション 1
郷田ほづみ
ポニーキャニオン
2014-08-29
第1話「永遠の夜の中で」
(Amazonプライム・ビデオ)


1989年

エースをねらえ!ファイナルステージ(監督:出崎統)
宗方コーチの死を乗り越えた岡ひろみがテニスプレイヤーとして大きく成長しようとしていたころ、彼女の良き先輩である藤堂貴之はアメリカに渡ってプロ入りを果たす。だが、世界の壁は予想以上に厚く、アメリカでの試合は連敗続きだった。彼を心配したひろみは藤堂に会うために一人アメリカに渡る。一方、お蝶夫人と呼ばれ、日本女子テニス界に君臨し続けていた竜崎麗香もまた、世界のレベルを前にして、自分の限界を感じていた。そんな折、世界の強豪たちが日本に集う、クイーンズカップ'90の開催が決まり......。
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『エースをねらえ!2』に続くシリーズ完結編です。前作はオリジナル展開を交えながらも一応原作に沿って話が展開していったのに対して、本作は完全なオリジナルストーリーになっています。ちなみに、原作では後半になると竜崎麗香や藤堂といった国内強豪選手は一線を退いて岡ひろみを世界に送りだすために力を尽くすという展開になっています。つまり、ドラマ的には岡ひろみ一人に焦点が当てられる形になっているのです。それに対して、アニメ版である本作ではそれぞれのキャラクターに焦点を当て、その後のテニス人生をしっかりと描いている点が目を引きます。特に、『エースをねらえ!』という作品において象徴的な存在であり、圧倒的な強さを誇っていたお蝶夫人が世界のレベルについていけず、精神的に追い詰められていくシーンは衝撃的です。もちろん、世界のステージを駆け登っていく岡ひろみのドラマもスポーツアニメの王道的展開として見応え充分ですが、この完結編に関していえば、お蝶夫人・緑川蘭子・藤堂貴之といったサブキャラクターたちの敗者のドラマがより胸を打つ作りになっています。出崎節全開の群像劇として非常によく出来ており、いかにも少女漫画といった原作とはまた違った味わいのある傑作です。
エースをねらえ!ファイナルステージ DVD-BOX
山田栄子
バンダイビジュアル
2003-09-26


メガゾーン23 III イヴの目覚め(監督:荒牧伸志・八谷賢一)
メガゾーン23の生き残りが地球に帰還してから数百年の月日が流れていた。人類は超高性能コンピューター"SYSTEM”によって徹底的に管理されたエデンシティで暮らしていたが、それは人類を滅亡寸前にまで追い込んだかつての過ちを繰り返さないようにするためだった。だが、一部の人間は管理されることを嫌い、レジスタンスを結成して反攻作戦を開始する。天才ハッカーであるエイジ・タカナカはその腕を見込まれて、SYSTEMを管理するエリート集団E=Xに選抜される。そして、対レジスタント部隊のガーランド隊に編入され、思わぬ出会いを果たすことになるのだった。一方、SYSTEMは地球環境維持には人類の排除が必要だと考え、プロジェクト・ヘブンを発動するが......。
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OVA黎明期を支えた人気アニメの完結編です。とはいえ、舞台は前作の数百年後に設定されているため、登場するのはAIの時祭イヴを除いてすべて新キャラです。そのうえ、製作スタッフも総入れ替えになっているのでメガゾーン23らしさはほぼ皆無です。そうした理由から前作までのファンはがっかりするかもしれませんが、後半徐々に前作とのつながりが見え始める展開は悪くありません。1作目2作目と比べるといま一つインパクトに欠ける点は否めないものの、大河SFの締めくくりとしてはそれなりによくできた作品だといえます。
メガゾーン23 III Blu-ray
高岡早紀
ビデオメーカー
2017-04-07


御先祖様万々歳!(監督:押井守)
埋立地に建てられた高級マンションに両親と共に住んでいる四方田犬丸は、バットを手にしてメタルフェイスのドライバーを持つ父・甲子国と親子喧嘩を繰り広げていた。そんななか、マンションに一人の少女が訪ねてくる。彼女は自分のことを四方田麿子と名乗り、未来からやってきた犬丸の孫娘だと主張するのだった。とても信じられない与太話ではあるものの、犬丸と甲子国は打算からそれを受け入れる。しかし、そのことに納得できない母の多美子は家を出ていき......。
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スタジオピエロ10周年記念作品として製作された全6巻のOVA作品です。しかし、押井守に全権を委ねたのが運の尽きで、とても売れ線とはいえない内容になっており、商業的には失敗といっていい結果に終わっています。その代わり、コア層からは支持されている作品であり、舞台劇を思わせる演出と押井守ならではの長台詞で構成された物語はよく出来た不条理劇として高く評価する人も少なくありません。特に、第5話の強烈なオチは観る者に忘れ難いインパクトを与えてくれます。おそらく押井守自らが企画した作品群のなかでは世間的に最も評価されているのではないでしょうか。なお、本作は90分の長編アニメに再編集され、『MAROKO 麿子』のタイトルで劇場公開もされています。ただし、こちらの方は本作最大の見どころである5話のオチがバッサリとカットされているため、どちらか片方を観るのであればOVA版がおすすめです。


その後のOVA
大いなる可能性が感じられたOVAも登場から7年が過ぎた80年代末にはその限界が見えてきます。限界というのは、いくらOVAがマニア向けの媒体だったとしても売れないものは売れないという厳然たる事実です。マニアに売るためにはより多くのマニアに受けるものを製作しなくてはならず、そこから外れた作品は数千本という数字すら達成することが容易ではなかったのです。そして、80年代が終わる頃にはどのようなものが売れて、どのようなものが売れないのかが大体分かるようになってきます。その結果、90年代に入ると挑戦的なタイトルが少なくなり、次第にマニア向けの売れ線作品へと集約されていくことになるのです。また、2000年代に入ると、深夜アニメという新しい媒体が生まれることで、マニア路線という役割も奪われていきます。そうしたなかで、OVAは次第に目立たぬ存在となり、ODA(オリジナルDVDアニメーション)と名前を変えつつ、深夜アニメや人気コミックの補完的役割を担うようになります。たとえば、テレビアニメとして放送したものの、続編をテレビでやるほどでもない作品をファン向けにODAとして発売したり、人気コミックのおまけに低予算ODAを同封したりといった具合です。こうしてみると、やはり80年代が一番OVAの輝いていた時代だといえます。