最新更新日2020/10/09☆☆☆

映画というのは観るだけでも十分楽しいものですが、観終わったあとにその映画について人と語り合うことができたならばその面白さは何倍にも膨れ上がるものです。また、お気に入りの映画を人にすすめたり、人からすすめられたりするのも映画好きの人にとっては至上の喜びだといえます。近年ではそういった楽しさを漫画にした作品が増えています。俗にいう映画レビュー漫画です。具体的にいつごろからそれが登場し、どういったものがあるのかを順を追って紹介していきます。
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※西暦表記は連載を開始した(描き下ろしの場合は単行本の初巻を発売した)年です。
2004年

テレキネシス 山手テレビキネマ室(画:芳崎せいむ/作:東周斎雅楽)
山手テレビに入社した野村真希乃はドラマ部で働くことを希望し、歴史に残るドラマを制作するのだと意気込んでいたが、実際に配属されたのは映画事業部放映班の『金曜深夜テレビキネマ館』だった。いきなり深夜枠に飛ばされ、落胆する真希乃。しかも、上司の東崋山は社内でも評判の変わり者で、そのだらしなさにあきれる日々を送ることになる。しかし、傷ついた人間に対して彼らに合った映画をすすめることでその傷を癒していく姿を目のあたりにする内に、彼女は次第に崋山に対して信頼を寄せるようになっていく.......。
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毎回登場人物の抱える悩みを描きつつ、それらの悩みを解消する糸口となる名画を紹介していく作品です。しかも、本編のストーリーと映画紹介のどちらかがおまけ扱いになっているわけではなく、両者ががっちりと絡み合いながら展開していくのが見事です。『サンセット大通り』『愛と青春の旅立ち』『ジャッカルの日』といった具合に、なつかしの映画が次々と登場するので、クラシック映画好きの人ならハマるのではないでしょうか。


2012年

ケンガイ(大瑛ユキオ)
大学を卒業した伊賀は就活戦線から離脱し、卒業後はレンタルDVDショップでバイトとして働き始める。そして、マニアックな映画以外には興味を示さない変な女としてバイト仲間の男性陣からは対象外扱いされている白川五十鈴に一目惚れをしてしまうのだった。伊賀は五十鈴と2人で飲みながら映画の話をしたり、一緒にオールナイト映画を観にいったりして果敢にアプローチをかけるのだが、なかなかその先に進めずにいた。果たして伊賀の恋が実る日はやって来るのだろうか?
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映画マニアでコンプレックスの塊のクセに高圧的という非常にメンドクサイ女に恋をしてしまった普通の青年の恋愛模様を描いた物語です。通常のラブストーリーと違い、物語が進んでいってもラブシーンやときめきを感じるような部分は皆無ですが、それぞれの心理描写が巧みで読んでいるうちに段々引き込まれていきます。また、ヒロインらの口を通してさまざまな映画の話が語られていくので、映画好きにはより一層楽しめる作りになっています。ラブストーリーというよりはどちらかといえば、ヒロインが他者に心を開くまでのプロセスを追ったヒューマンドラマといった感じの佳品です。
ケンガイ(1) (ビッグコミックス)
大瑛ユキオ
小学館
2014-02-17


2014年

木根さんの1人でキネマ(アサイ)
30代の独身OLである木根真知子は会社で課長を務めている一方、家に帰ると映画鑑賞と映画の感想ブログ更新を生きがいとする映画オタクと化すのだった。しかも、極端に偏ったジャンルを愛好しているため、職場では映画好きである事実を隠していた。自分の安寧の地はネットにしかないと思っていた木根さんだが、ある夜、世間的に評判の悪い『ターミネーター3』を褒めるレビューをアップしたところ、フォロワーたちの的外れな反論に合う。思わずブチ切れる木根さんだったが......。
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架空の人物が実在の映画をレビューする、映画レビュー漫画の先駆けとなった作品です。1話で最低でも1本の映画が紹介され、ラインナップもバラエティに富んでいるので映画好きな人にとっては興味深い内容に仕上がっています。そのうえ、映画オタクあるあるネタが散りばめられており、それがあまりにも的確なので思わず笑ってしまいます。その一方で、同じ趣味を共有する仲間と語り合いたいという木根さんの満たされない欲求は多くの人が持っているものであり、共感する人も多いのではないでしょうか。いずれにせよ、映画愛が深すぎてこじらせている木根さんというキャラが秀逸で、そのキャラの勢いで読ませる傑作です。ちなみに、タイトルは『木根さんの1人でキネマ』となっていますが、実際には早々に映画を語る相手が登場するので、そういう意味ではタイトル詐欺だといえるかもしれません。


2016年

私と彼女のお泊り映画(安田剛助)
佐藤小春と黒澤麻由美は高校時代からの仲良しで、違う大学に通うようになった今も週末ごとにお泊り映画鑑賞会を実施している。今夜は小春のおすすめで『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を観ることになる。ポーカーフェイスの麻由美はあまり表情には出さないものの、すっかり映画が気に入ったらしく、ギターを抱えたり、女戦士フェリオサの髪型にしてみようと考えたりし始めるが.......。
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映画を観ながら女性2人がイチャイチャする微百合漫画です。映画を通して親友同士がさらに親睦を深めていくという百合要素とレビュー漫画の要素がほどよくブレンドされているので、映画と百合の両方が好きな人にはぴったりの作品だといえるのではないでしょうか。各話巻末に2人の採点レビューが掲載されているのも映画好きな人にとってはうれしいところです。ただ、どちらか片方にしか興味のない人にとっては中途半端な作品だと感じてしまうかもしれません。ちなみに、本作は3巻で完結しますが、続編として社会人になった2人を描いた『私と彼女の同棲生活』があります。ただし、こちらの作品には映画レビュー要素はなく、完全な百合漫画となっています。


怒りのロードショー(マクレーン)
映画オタクの高校生、シェリフ、ヒデキ、まさみ、ごんぞうの4人組はいつも愚にもつかない無駄話ばかりしているが、映画に対する愛だけは誰にも負けていなかった。ある日、ヒデキ、まさみ、ごんぞうの3人がランボーシリーズは2が駄作だから1しか観ていないと言い出し、それを聞いたシェリフは唖然としながらも、『ランボー2 怒りの脱出』は映画史に残る名作だと主張する。やがて、話題はシュワルツネッガーの『コマンド―』に移り.....。
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本作は画力が優れているわけでもありませんし、映画に対する深い見識などといったものも皆無です。しかし、映画に対する熱量の高さは数あるレビュー漫画の中でも断トツです。悪ノリとさえいえるぶっとんだ展開のなかでも本当に映画が好きだということがビシバシと伝わってきて、彼らがおすすめの作品を思わずレンタルして観たくなる衝動に駆られます。また、そんな彼らに対して冷笑的な村山くんも憎まれ役ながらもキャラが立っていて目が離せません。同好の士が集まってワイワイ語り合う楽しさを思い出させてくれる感じが秀逸な力作です。
怒りのロードショー
マクレーン
KADOKAWA
2017-01-30


2017年

シネマこんぷれっくす!(ビリー)
梁木学園の新入生、熱川鰐人は映画に出てくるような熱い青春を送ることを目標としており、それに相応しい部活を探していた。しかし、これといった部が見つからないまま入学から2週間がすぎていく。そんなある日の放課後、『スターウォーズ』に登場するマークスマンH・コンバット・リモートが地面を移動しているのを目にする。思わず跡を付けていくと、待ちかまえていたのは映画研究会の先輩女子部員三人組だった。リモートは映画好きの新入生を映研に引きずり込むための撒き餌だったのだ。強引に入部を迫る彼女たちに対し、鰐人はそれをきっぱりと断る。なぜなら、映画制作もやっていない映研では熱い青春は送れそうもなかったし、3人の先輩は美人ではあるものの、世間からのつまはじき感が半端なかったからだ。だが、そこに現れた3年生の男子部員、祝厳鉄の口車に乗せられて、結局入部することになる。改めて鰐人は熱い青春を送るべく、映画を制作して文化祭で発表することを目標に掲げるが、いつの間にかそれもうやむやになる。結局、彼は先輩たちと映画談議を交わす無為な日々を送るようになり......。
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グラサンがトレードマークで黒澤映画のファンだという黒澤天喜、巨乳でカンフー映画大好き娘の花村瑞月、清楚な見た目に反してZ級映画ハンターの宮川一子という3人の女性キャラの個性が強烈で、そのうえ、映画を語る際の熱量も半端ない作品です。映画好きの人ならかなり楽しめるのではないでしょうか。映画あるあるネタは笑えますし、それを含めたギャグのテンポも申し分ありません。映画レビュー漫画としてはもちろん、青春コメディ漫画としてもよくできた秀作です。


邦画プレゼン女子高生 邦キチ!映子さん(服部昇大)
映画好きの高校生、小谷洋一は映画について語り合う仲間が欲しくて「映画について語る若人の部」を立ち上げるも、彼以外の部員を集められずにいた。そんなとき、ふいに入部希望者が現れる。1年生の邦吉映子という女生徒で、彼女も映画を語り合える友人に恵まれず悩んでいたのだという。大喜びの洋一は「私の趣味はマニアックすぎるらしくて周囲から理解されたためしがない」と言う彼女に対して、自分もそうだったとばかりに大きくうなずいてみせるのだった。だが、彼女の一番のお気に入り映画はまさかの実写版『魔女の宅急便』で.......。
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作者は6代目『日ペンの美子ちゃん』で知られる服部昇大です。美子ちゃんと同じく本作の絵のタッチも70年代の少女漫画風なのですが、その画風と本作に登場するエキセントリックなキャラクターが妙にマッチしています。そして、そのなかでも特に強烈な印象を読者に与えているのが、邦キチこと邦吉映子です。この手の作品に登場する映画マニアの多くが洋画好きなのに対して、彼女は部類の邦画好きという特徴があります。まあ、そのこと自体は別にいいのですが、問題は作品のセレクションがあまりにも変なことです。『実写版 魔女の宅急便』を始めとして、『貞子3D』『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』『テラフォーマーズ』といった具合に、彼女のお気に入りラインナップには世間的に微妙な評価のタイトルがずらりと並びます。それらの作品を「わたくし~であります」という独特の口調を駆使して全力で誉めあげるのがなんともシュールです。ごくまれに評判の良い映画を紹介することもあるものの、いずれにせよ誉めるポイントが世評とは大きくずれており、常人には理解しがたい論法で数々の邦画を褒め殺していく姿には狂気すら感じます。そして、その感覚のずれっぷりを周囲のキャラが的確につっこんでいくことで、本作はすぐれたギャグ漫画として成立しているのです。数ある映画レビュー漫画の中でもインパクトという点では頭一つ抜けている怪作です。
映画大好きポンポさん(杉谷庄吾【人間プラモ】)
映画の都、ニャリウッドにある映画会社ペータゼンフィルム。その敏腕プロデューサーであるポンポさんことジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットは映画のオーディションを受けにきたナタリーという娘を地味だという理由で落とす。だが、何か引っかかるものを覚えたポンポさんは結局、ナタリーを新進気鋭の女優・ミスティアの付き人として雇うのだった。一方、ポンポさんにはジーンという名の付き人がいた。死んだ魚の目をした青年だったが、映画に対する情熱は誰にも負けていない。そこに目を付けたポンポさんは、彼に自身の制作映画の予告フィルムを作らせたところ、それは予想以上の出来栄えだった。ジーンの才能を確信したポンポさんは彼に告げる。私が執筆した脚本でナタリー主演の映画を撮ってみろと......。
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本作は映画を鑑賞する側ではなく制作する側の視点から描いた作品です。しかし、登場人物はみな映画バカばかりなので、彼らの口からはさまざまな映画論や制作論が語られていき、その内容は映画好きの人にとっては非常に興味深いものとなっています。一方で、映画に夢を抱いた若者たちのサクセスストーリーとしても一級品です。要するに、トータル的にすごく面白い作品なのです。ちなみに、本作はもともと深夜の5分アニメとして企画されたものが元となっています。それがボツになり、その企画を再利用する形で話を膨らませて現在の形になったというわけです。つまり、廃棄物の再利用にすぎなかったのですが、その結果、予想外の反響を呼ぶことになります。漫画として非常に高い評価を得て、劇場用アニメーションとして改めて制作が決定するまでになったのです。これは漫画の内容に負けず劣らずドラマチックな展開だといえるのではないでしょうか。また、本作にはスピンオフ作品として『映画大好きフランちゃん』と『映画大好きカーナちゃん』があります。本編のストーリーとも密接につながっているため、合わせて読むと面白さも倍増です。
映画大好きポンポさん (MFC ジーンピクシブシリーズ)
杉谷 庄吾【人間プラモ】
KADOKAWA
2017-08-26
映画大好きフランちゃん NYALLYWOOD STUDIOS SERIES
杉谷 庄吾【人間プラモ】
KADOKAWA
2019-08-26
映画大好きカーナちゃん NYALLYWOOD STUDIOS SERIES
杉谷 庄吾【人間プラモ】
KADOKAWA
2020-09-26


2018年

おやすみシェヘラザード(篠房六郎)
名門女子高の千夜学園にはある噂が広まっていた。女子寮の13号室のそばを通ると長い黒髪の女性が手招きをして部屋に誘い込み、うっかり誘いに乗ると、あっという間に失神させられてしまうというのだ。初夏のある夜、1年生の二都麻鳥(にと・あさと)は自室のクーラーが壊れたので友人の部屋に泊めてもらうことになる。ただ、女子寮では就寝時刻以降の部屋の移動は禁じられていた。そのため、点呼のあとでこっそり友人の部屋に向かおうとしたところ、危うく巡回中の寮母さんに見つかりそうになる。そのとき、自室に引っ張り込んで救ってくれたのが13号室の住人である箆里詩彗(へらざと・しえ)だった。彼女は妖艶な雰囲気を漂わせる絶世の美女であり、しかも、礼をいって部屋から出ていこうとする麻鳥を引きとめて一夜をともにしようと言い出す。そういう趣味はないにも関わらず、この世のものとは思えない彼女の色香にあらがえずに麻鳥がベッドに入ると、詩彗はおもむろに映画の話をし始める。実は、彼女は無類の映画好きで自分の好きな映画の話を誰かにしたくてたまらなかったのだ。しかし、彼女はとんでもない説明下手で、その退屈さから二都はあっという間に深い眠りについてしまう。それからというもの、彼女は夜毎に詩彗先輩の超絶つまらない映画話を聞かされる羽目になり.....。
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映画レビューというのはなるべく短い言葉でいかに的確に作品の魅力を伝えるかが肝だといえます。しかし、本作の映画レビューは思いついたことを片っ端から口にしているだけなのでまとまりがなく、話を聞いても、一体何が面白いのかさっぱりわかりません。そのため、普通の映画レビュー漫画だと思って読むと次第に腹が立ってきます。それではどういった読み方が正しいかというと、ヒロインの映画に対する溢れんばかりの愛情をくみ取りつつ、見た目は妖艶な大人の女性なのに中身はポンコツというギャップからくる可愛らしさをひたすら愛でていくのです。そうすれば、この作品の魅力が段々理解できるようになってくるでしょう。それに加え、できれば実際に映画を観たうえで読むとよいかもしれません。そうすれば、あまりにもピントの狂った説明ぶりに思わず笑えてくるはずです。特に、『アウトレイジ』におけるダンカンの下りなどは爆笑ものです。逆に、映画を観ないで彼女のレビューを真面目に読んでいるとこちらまで眠くなってしまうおそれがあるので、その場合はレビューは斜め読みして、主に詩彗先輩のリアクション芸と麻鳥のツッコミにピントを合わせてストーリーを追うようにしましょう。間違っても、本作のレビューを参考にしてその映画を観るかどうかを決めようなどと思ってはいけません。数ある映画レビュー漫画の中でも特に読者の資質が問われる異色作です。


水曜日のシネマ(野原多央)
大学1年生の藤田奈緒はレンタルDVDショップで生まれて初めてのバイトをするが、無愛想で皮肉屋の店長とはそりが合わずに鬱屈した日々を過ごしていた。ところが、ふとしたきっかけで店長の意外な優しさや映画に対する無垢な愛情に触れ、次第に彼に惹かれるようになっていく。そして、もっと映画に詳しくなりたいといったところ、毎週水曜日にお店のバックヤードで店長と一緒に映画を観ることになり........。
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映画レビューものと年の差カップルものを掛け合わせた恋愛漫画です。ただ、正直序盤はピリッとしません。紹介される映画はベタなものばかりでレビューの内容も表層的で浅い感じがしますし、恋愛ものとしても全体的に描写が緩くてなんだか『恋は雨上がりのように』の下位互換のようです。ところが、これが中盤以降ぐっと面白くなります。単に映画をレビューするだけでなく、登場人物の体験と絡ませることで深みが出てくるようになりますし、一つ一つのエピソードもメリハリが効いていて読み応えがアップします。そして、年の差カップルものとしても、『恋は雨上がりのように』とはまた違った着地を鮮やかに決めてくれるのです。映画レビュー漫画であると同時に、それ自身が完成度の高い恋愛映画のように爽やかな感動をもたらしてくれる1本です。



その他映画をテーマにした主な作品


1983年

あどりぶシネ倶楽部(細野不二彦)
大学サークルによる映画製作を通して学生たちの人間模様を描いた作品。全1巻でこれといった劇的な展開もない地味目の作品ですが、青春時代における希望や挫折といったものを的確についた描写が光ります。映画に夢を追う若者たちの群像劇として極めて完成度の高い傑作です。


1984年

アクター(かわぐちかいじ)
『沈黙の艦隊』や『ジパング』などで知られるかわぐちかいじの出世作です。物語は、大衆演劇の女形だった主人公が俳優としての才能を見いだされ、その異才によって映画界に旋風を巻き起こすというもの。本作において主人公は3つの映画と1つのテレビドラマに出演しますが、その中でも最大の見どころといえるのが全編の半分以上を占める成人指定の四谷怪談こと”お梅の恋”の撮影シーンです。役者たちの情念がぶつかり合った演技合戦は鬼気迫るものがあり、目が離せなくなってしまいます。
アクター(1) (モーニングコミックス)
かわぐちかいじ
講談社
2012-11-19


2004年

平凡ポンチ(ジョージ朝倉)
商業デビューのチャンスをライバルに横取りされた30歳の自主映画監督と、彼のファンで貧乳コンプレックスの美少女が巨乳アイドルを殺害し、逃亡生活を送りながらも自主映画を撮影し続けるロードムービーラブコメディ。サスペンスとギャグが混然一体となった物語は展開が無茶苦茶で段々わけがわからなくなりますが、怒涛の勢いで最後まで駆け抜ける怪作です。
平凡ポンチ(1) (IKKI COMIX)
ジョージ朝倉
小学館
2013-06-24


2009年

群青シネマ(都戸利津)
60年代の四国を舞台に高校生3人組が自主制作映画に挑戦する話です。ノスタルジックで爽やかな青春物語としてよくできています。特に、最後に出てくるNG集の使い方が秀逸です。


2011年

デラシネマ(平野泰視)
戦後間もない日本。映画が娯楽の王様だった時代に大部屋俳優とフォース助監督が映画界のてっぺんを目指していく物語です。当時全盛だった時代劇映画を題材に、迫力ある殺陣や60年代に花開くことになるリアリズム時代劇の映画論などが描かれていきます。非常に熱量の高い力作だっただけに、物語がこれからというところで、不可解な打ち切りにあってしまったのが惜しまれます。


2012年

シネマちっくキネ子さん(OYSTER)

映画監督を目指す少女・キネ子と映画マニアの貧乏青年・大八の2人が織りなす日常を描いた四コマ漫画です。シュールでハイテンションなOYSTER節がたっぷりと堪能できる佳品で、ボクっ娘キネ子さんの可愛らしさがそこに彩りを与えています。2巻で終了したのが惜しまれる作品です。


2017年

赤狩り THE RED RAT IN HOLLYWOOD(山本おさむ)
合衆国政府が国内の共産主義者を社会の重要ポストから追放していった、いわゆるマッカーシズムが吹き荒れた1950年代。当時のハリウッド映画に焦点を当て、その裏で繰り広げられた赤狩りの実態を描いた実録漫画です。メインとなっているのは表現の自由を巡る政治ドラマなのですが、『ローマの休日』『猿の惑星』『波止場』『エデンの東』などといった名画の裏話がたっぷりと描かれているので、映画好きな人にとっては興味深いものがあるのではないでしょうか。


ショート・ピース(小林有吾)
高校の映像研究部に所属し、変人だが天才的な映像センスを持つ主人公と、彼と関わることで壁を乗り越えて前に進んでいく人々の姿を描いたヒューマンドラマです。物語としての勢いとテーマ性の奥深さを兼ね備えており、ギャグとシリアスのバランスも見事な傑作です。