最新更新日2021/01/23☆☆☆

映画の中ではクルマが主役となる場面が少なくありません。カーチェイスシーンはもちろんのこと、ロードムービーや、ときにはロマンス映画などでも車は重要なファクターとなります。そこで、映画を彩ってきたさまざまな名車について、登場した映画ともども紹介をしていきます。


模倣から始まった自動車王国の夜明け/トヨタ 2000GT
1960年代、日本はまだまだ自動車後進国でした。欧州の国々に頭を下げて、車の作り方を教えてもらっている段階だったのです。 しかし、その中で突然変異的なクールで美しい車が登場します。それがトヨタから発売された2000GTです。 この車は映画『007は二度死ぬ』に出演した事でも有名です(とは言っても、運転席に座ったのはジェームス・ボンドではなく、ボンドガール役の若林映子でしたが)。60年代の国産車とは思えないほどデザインセンスがよく、007の映画においても他のボンドカーと比べて全く見劣りしない存在感を示しました。 しかし、それもそのはずで、この2000GTは世界一美しいと言われたジャガー Eタイプを換骨奪胎した模倣カーなのです。当時の日本の自動車メーカーはオリジナルで高級スポーツカーを開発するノウハウを持ちあわせていませんでした。そのため、自身のレベルアップを図るにはこのような手段に頼るしかなかったという事情があります。 もちろん、パクってひと儲けしようなどいう意図などはありません。実際、あまりにも生産コストが高いために、最初から利益度外視の開発でした。大赤字を覚悟しても一流メーカーの技術を貪欲に学び、自身を世界レベルまで押し上げようとしたのです。その甲斐あって、トヨタは大きなステップアップを果たし、世界を代表する自動車メーカーへと駆け上がることに成功しました。 確かに、欧州の錚々たるスポーツカーに比べると性能的には大した車ではありません。しかし、その志の高さによって2000GTは、日本を代表する名車として自動車ファンの心に深く刻まれているのです。


トヨタ2000GTが登場するおすすめ映画
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007は二度死ぬ(1967)
シリーズ5作目にして全編日本ロケということで注目を集め、大ヒットを記録した作品です。ただ、その内容はニンジャ、ゲイシャ、海女といったトンデモ日本全開のおバカ映画で、『ロシアへ愛をこめて』や『ゴールドフィンガー』などといった名作と比べると完成度の低さは否めません。しかし、その分、秘密兵器が次々と飛び出す肩の凝らない娯楽作品に仕上がっており、気楽に楽しむことができます。そして、ボンドカーとして登場するGT2000 のかっこよさもなかなかのものです。ちなみに、本作に登場するGT2000は屋根を外してオープンカー仕様となっています。これはショーン・コネリーが188cmと長身で座席に座ると窮屈になってしまうための特別措置です。
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狙撃(1968)
当時、若大将シリーズの爽やかなイメージで人気だった加山雄三が冷徹な殺し屋役に挑戦した異色作です。ハードボイルド調のクールなムードとヒロインが憧れているニューギニアのサイケなイメージが入り混じってなんともカルトな作品に仕上がっています。一方、アクション映画としてはクルマと銃の描写がマニアックに描かれており、見どころ満載です。主人公が乗る2000GTもヘリとのチェイスを始めとして、見せ場を豊富に用意されています。
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ヘアピン・サーカス(1972)
物語は、ライバルを事故死させてレースから引退した元レーサーが暴走族の中で女王然と振る舞う女の天才的なドライビングテクニックに魅了され、勝負を挑むというもの。トヨタが全面協力しており、ヒロインが乗るGT2000のかっこ良さが最大限に引き出されています(なぜか主人公のクルマはマツダRX-3ですが)。出演者も役者ではなく、本物のドライバーなのでカーチェイスの迫力が半端ありません。ただ、その分、演技力に乏しく、ドラマが盛り上がらないという難はありますし、ストーリーもありきたりです。それでも、車の描写の素晴らしさはそれらの欠点を補ってあまりあります。クルマ好きな人にとっては必見の傑作です。
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