最新更新日2020/07/09☆☆☆

『エースをねらえ!』『YAWARA!』『あさひなぐ』などを始めとして、女性を主人公にしたスポーツ漫画は数多くありますが、そのなかでも、女子野球漫画というジャンルは、他と比べて異彩を放っています。なぜなら、女子野球だけが、女性同士ではなく、女子VS男子の対決を基調としてきたからです。こうしたスタイルが一般的になっているスポーツ漫画はほかの競技ではまず見当たりません。とはいうものの、現在では、女性VS女性を描いた本来の意味での女子野球漫画も増えてきました。そこで、女子野球漫画の歴史を振り返りながら、「男女混合タイプ」と「女子オンリータイプ」の代表的な作品をそれぞれ紹介していきます。
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※西暦表記は連載を開始した(描き下ろしの場合は単行本の初巻を発売した)年です
A.男女混合タイプ
日本において野球は戦前から高い人気を誇るスポーツでしたが、その一方で、女性が競技者として参加することはほとんどありませんでした。1950年には女子プロ野球が設立されたものの、それも自然消滅していきます。そのため、女性同士のチームで試合をするなどといった状況はほぼありえないことだったのです。そうした現実を踏まえ、女子野球漫画といえば、女性が男性に混じって野球をするといった展開がほとんどでした。あるいは女性で結成されたチームがその他大勢の男性チームに挑んでいくという内容の作品もしばしば見られます。いずれにしても、体力に劣る女性がパワフルな男性選手にいかにして勝つかといった内容がドラマの中心にあったわけです。しかし、時代の流れと共に、そういったスタイルにも変化が生じてきます。具体的にどういった作品があるのかを順を追って説明していきます。

1972年

野球狂の詩(水島新司)
1975年のドラフトで東京メッツは水原勇気という無名の選手を1位で指名する。マスコミは水原勇気の在籍している高校に取材に行くが、そこで驚くべき事実が判明する。水原勇気は女性だったのだ。野球協約には支配下選手として登録できるのは男性だけであるという規定があり、それにもかかわらず独断で指名を決めた岩田鉄五郎に対して、球団オーナーは激怒する。また、水原自身も卒業後は獣医の道に進む予定であり、野球を続けるつもりはなかった。しかし、水原の才能に惚れぬいていた岩田は彼女を粘り強く説得し、入団を決意させる。さらに、オープン戦での強行登板などで投手としての実力をアピールすることで犬神総裁から選手登録の許可を取り付けるのだった。こうして公式戦初登板を迎えた水原は、序盤こそ左のアンダースローから繰り出す快速球とナチュラルに変化する独特の球筋でプロの打者を翻弄していくが、球質の軽さとスタミナ不足が露呈して最後は滅多打ちにされてしまう。二軍に落とされた水原はそこで軍曹の異名を持つ捕手の武藤と出会い、2人で夢の魔球・ドリームボールの開発に取り組むことになるが.......。
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男臭い野球漫画の世界に女性選手を初めて主人公として登場させた画期的な作品です。とはいえ、連載初期から中期にかけて水原勇気は登場しておらず、内容そのものも50代の現役投手・岩田鉄五郎を中心とした非常に泥臭いものでした。それだけに、連載4年目にして突如、華奢で可憐な水原勇気が新たな主人公として登場したのには驚かされました。しかも、安易に美少女投手を活躍させるのではなく、協約の壁や体力的な女性の限界をきっちりと描いている点にも感心させられます。そして、それらをいかにして乗り越えていくかというドラマは読み応えがあるものでした。何より、魔球・ドリームボールを巡る謎と相手打者との駆け引きが非常にスリリングです。また、水原勇気自身も可愛らしさと凛々しさを兼ね備えた魅力的なキャラであり、さすがは野球漫画史上最も有名な女性選手だけのことはあります。なお、『野球狂の詩』自体は1977年に連載終了となりますが、水原勇気はその後も『野球狂の詩 平成編』『野球狂の詩VS.ドカベン』『ドカベン ドリームチーム編』など、さまざまな作品に登場しています。


1987年

チェンジ(小山ゆう)

10歳の少女、高杉早は大の野球好きだったが、事故で足が動かなくなり、田舎の医療センターで入院生活を送っていた。あるとき、彼女は菊川西高の野球部員と出会い、エースの下田明から試合を見せてくれるという約束を交わす。ところが、試合当日に早は交通事故で命を落とす。それを不憫に思った新米の死神は自分の寿命を削って早に49日間の命を与えるのだった。高校生として生き返った早は菊川西高校に入学し、野球部に入部する。そして、他の野球部員たちと共に残り少ない日々を精一杯生きていくが.......。
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純粋無垢な女性キャラが多い著者の作品のなかでも本作のヒロインは中身がリアル10歳だけあってそれが、少々やりすぎの域にまで達しています。しかし、その無垢な描写が限られた命という設定とマッチして終始切ない雰囲気を醸し出すことに成功しているのです。また、真っすぐな性格の熱血主人公やクールに振舞いつつも勝負に執念を燃やすライバルといったキャラの配置も青春ドラマを盛り上げる要素として過不足ないものです。そして、何といっても最大の見どころは、早の秘密をみんなが知ってからの展開です。彼女に勝利をプレゼントするために一丸となって闘う姿にはぐっとくるものがあります。ラストがややご都合主義なのは賛否が分かれるかもしれませんが、それを差し引いても素晴らしいといえる感動傑作です。
チェンジ 1巻
小山 ゆう
ビーグリー
2015-09-25


1991年

メイプル戦記(川原泉)
1991年。野球協約改正に伴い、女性にもプロ野球の門戸が開かれることになる。それに伴って、1992年に誕生したのが、女性だけを集めたセリーグ7番目のチーム、スイート・メイプルスだ。入団資格を女性だけに限定した背景には、宝塚歌劇団の大ファンである球団オーナーの強い意向があった。そうして集められた選手たちは、ディスコ・クイーンやプロ野球選手の妻、元甲子園優勝投手のオカマといった個性的な面々。そんな彼女らを率いるのはかつて無名の高校を夏の全国大会準優勝に導いた広岡真理子監督だった。やがて開幕を迎え、メイプルスは大方の予想に反して快進撃を続けるが、対戦チームの油断がなくなり、戦力分析も一通りされたあたりから劣勢に立たされるようになる。しかも、チーム内ではアクシデントが続発し......。
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素人の女性監督が弱小野球部を甲子園に導いていく『甲子園の空に笑え!』の外伝的作品です。野球漫画だというのに泥臭さや熱血といった要素は希薄で、シリアスな問題について触れつつも、全体的にはのほほんとした雰囲気に包まれている点がいかにも川原作品です。『甲子園の空に笑え!』と同様に、既存の野球漫画とは全く異なる空気感を味わうことができます。そして、ユーモラスな展開に笑いながらも最後は野球漫画としてしっかりと盛り上げてくれるところが見事です。特に、後半戦で記録的な連敗を喫しながらも、各選手の奮闘によって巻き返していくくだりは燃えますし、最後は大いに泣かせてくれます。短い作品ながらも、野球を主題とした少女漫画の頂点に立つ作品といっても過言ではない傑作です。
メイプル戦記 1 (白泉社文庫)
川原泉
白泉社
2013-06-10


1992年

無敵のビーナス(池田恵)
森若は前の学校の野球部で問題を起こして退職したすちゃらか教師。だが、野球への未練を断ち切れず、朝香女子高の硬式女子野球部の監督を引き受けることになる。そこで彼は187センチという女性離れした体格を持ちながら、上がり症で実力を発揮できていない野球部員、斉藤光にピッチャーとしての素質を見出す。彼の指導により、やがて彼女は時速150キロの剛腕を誇るエースへと成長していく。一方、森若が前の学校で暴力事件を起こしていたことが問題視され、朝香女子高の大会出場が危ぶまれる事態となってしまう......。
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すっきりとした絵柄は読みやすく、キャラも一人一人を魅力的に描くことに成功しています。ただ、王道的スポーツ漫画とこの絵柄はややミスマッチの感があり、気弱なヒロインという設定も話を盛り上げる際の阻害要因になっているのは否めないところです。一方、第2部の後半からの畳みかける展開には素晴らしいものがあるだけに、盛り上がるまでに時間がかかってしまった点が惜しまれます。こうして見てみると、決して完成度は高いとはいえないものの、どこか忘れ難い味があるのも確かです。今読んで面白いかは微妙ですが、黎明期の女子野球漫画を語るうえで外せない一作だといえるでしょう。


1994年

君は青空の下にいる(森本里菜)
一ノ瀬渚は野球好きの少女で、小学生のときは天才ピッチャーとしてリトルリーグで活躍していた。ところが、中学生になると、女だからという理由でレギュラーから外され、渚は次第に野球に対する熱意を失っていく。そんなとき、高校野球の規定が変わり、女子でも公式戦に参加できるというニュースが飛び込んできた。やがて、美浜高校に入学した渚はピッチャー志望の選手として野球部に入り、厳しい練習にも喰らいついていく。しかし、他の男子部員は女子が自分たちと一緒に野球をやることを快く思っておらず.......。
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りぼんにしては珍しい、王道的スポコン野球漫画です。周りのイジメや偏見に負けずに自分の信念を貫き、やがて周囲との信頼関係が芽生えてくるという展開は、ベタながらも読んでいて胸が熱くなるものがあります。長髪の野球部員が多い、華奢な体つきの女性投手なのに時速140キロの速球を投げ込むといった具合に、超人系野球漫画というわけでもない割にはリアリティに欠けてますが、そこは少女漫画だと割り切って読むのが正解でしょう。さわやかな読後感を味わえる佳品です。


1997年

朝子の野球日記(水島新司)
櫟朝子は岐阜県にある弱小野球部のマネージャーをしながらも、高い野球センスを買われてバッティングピッチャーも務めていた。そんな朝子が、あるとき練習試合で投げることになり、思わぬ快投を披露する。その噂はたちまち岐阜県中に広まり、美人だったこともあって朝子の人気は急上昇。ついには高野連を説得して公式戦出場が認められるまでに至ったのだ。連戦連敗だった野球部も絶対的なエースが誕生したことでメキメキと力をつけ、甲子園を目指すまでになるが........。
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野球漫画の巨匠・水島新司が『野球狂の詩』以来、20年ぶりに描いた女子野球漫画です。とはいうものの、内容的にはいつもの水島作品で、これといった目新しさはありません。その代わり、安定した面白さはさすがで、また、女性が主人公だからか、水島作品としては珍しく、お色気シーンが多めなのも特徴的です。ちなみに、華奢な体でか弱さが強調されていた水原勇気に対して、朝子は雪山通学で培ったがっしりとした体つきをしており、逞しさを前面に押し出しています。一方、投手としては、ドリームボールに頼りっきりだった水原勇気とは違い、ノビのあるストレート、高速スライダー、スローカーブといった現実的な球種のコンビネーションで勝負している点も目を引きます。そうしたところに注目して両作品を読み比べてみるのも一興ではないでしょうか。なお、本作は高校の大会が終わって卒業後の進路に注目が集まるところまで描かれていますが、掲載誌であったビックコミック・ゴールドの休刊に伴い、その後がどうなったのかわからないまま終了しています。


2000年

Boy Meets Girl~マウンドの少女~(塀内夏子)

リトルリーグでショートとして活躍している森田文武は、負けず嫌いの少年で食事と睡眠以外はすべて野球に費やしていた。その彼が所属する富士見リトルに文武と同い年の神武しおりが入部する。しおりは女の子ながらも左腕から繰り出す速球と多彩な変化球によってめきめきと頭角を現していく。彼女の加入で強豪チームの一角となった富士見リトルのライバルは全国優勝の経験もある住吉リトルだった。このチームには十割バッターと噂される古荘勇樹と女金太郎の異名を持つ剛腕エースの立花アヤコがいる。練習試合では互いのエースの球を打ち崩せずに引き分けに終わるが、しおりは住吉リトルの強さを肌で感じるのだった。そして、今までの練習嫌いが嘘のように、真剣な姿勢で野球に取り組むようになっていく。一方、しおりと共に朝練で汗を流す文武は彼女に対して淡い恋心を抱きはじめる。しかし、しおり自身はライバルの勇樹が気になり始め......。
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『オフサイド』や『Jドリーム』などのサッカー漫画で知られる著者が野球に挑戦した作品です。野球描写自体は少々首をかしげるところもありますが、男女混合で行うリトルリーグならではの甘酸っぱい雰囲気がよくでています。また、野球をしたことがない人でもノスタルジックな雰囲気に浸れるのもこの作品ならではの特徴といえるでしょう。野球そのものよりも、思春期の入口にたった少年少女を描いた青春ものとしてよくできた佳品です。
Boy Meets Girl ~マウンドの少女~ 1巻
塀内夏子
電書バト
2016-04-08


2001年

剛球少女ー甲子園に賭けた夢ー(原作:/作画:千葉きよかず)
麻生遥はプロでエースとして活躍した夏川啓吾の娘だった。その啓吾は八百長疑惑でプロから追放され、3年後に無罪が証明されるも復帰戦当日に交通事故で亡くなっていた。遥は父の遺志を継ぐべく、彼の母校である港北大学附属湘南高校野球部に入部する。しかし、高校の公式試合では女子の出場は認められていない。それでも「あきらめない限り夢は叶う」という父の言葉を胸に練習に打ち込んでいくのだった。そんな彼女に選手や監督はつらく当たるが、練習試合での熱投によって周囲の見る目が違ってくる。こうして遥がチームから認められたことにより、全員一丸となって甲子園を目指すことになるのだが........。
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長年低迷していた元強豪校が一人の天才女性投手の登場によって、意識改革が行われ、高い目標にチャレンジしていくというかなり王道的な野球漫画です。また、周りからつらく当たられながらも決して諦めることなく、かといって変な気負いもない自然体なヒロインにも好感が持てます。絵も綺麗で、伸びのあるストレートとコントロール抜群のナックルを武器に強打者と渡り合う勝負シーンも読み応え満点です。ただ、全体的にヒネリのないベタなストーリーに対しては好みが分かれるかもしれません。その代わり、そのベタな展開をじっくりと描くことで熱いドラマに昇華している点は見事です。チームメイトとの友情やライバルとの間に芽生える心の絆に胸を打たれる力作です。


2002年

神様がくれた夏(えぬえけい)
夏希はリトルリーグでエースとして活躍していたが、中学になると野球をやめてしまう。想いを寄せていた男の子・英一から「野球をやっている女は好きになれない」という理由で振られてしまったからだ。それからというもの、クラスメイトたちとファッションや芸能人の話をし、女の子らしく振舞おうとするものの、心の中ではちっとも楽しめずにいた。そんなある日、夏希は顔見知りの監督から弱小チームをお前の力で救ってくれと懇願される。再び野球を始めた彼女は勝利を重ね、自分を振った男の子との対決の日を迎える.....。
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月刊少女漫画誌のなかよしに全2話で掲載された短編作品です。短いながらも緊迫感あふれる野球のシーンに少女漫画らしい恋愛要素を絡め、読み応えのある作品に仕上がっています。一方、可愛らしい絵柄も魅力となっており、特に、ラストで見せるヒロインの笑顔が印象的です。ちなみに、本作にはサッカーを題材にした『G・K・1』が収録されていますが、こちらもなかなかの傑作です。


2005年

アイドルA(あだち充)
超高校級の投手として騒がれ、東京オニオンズの指名を受けた平山圭太と人気急上昇中のグラビアアイドル・里見あずさは幼馴染。しかも、2人の間にはとんでもない秘密があった。実は平山圭太自身はなんのとりえもない凡人で、投手として活躍していたのは里見あずさだったのだ。圭太はあずさの2足の草鞋がばれないように彼女の影武者を努めていたのだが.......。
◆◆◆◆◆◆
青春野球漫画の第一人者であるあだち充のコメディ色の強い一作ですが、いくらコメディでも荒唐無稽さがひどすぎます。まず、ヒロインが華奢な体つきのグラビアアイドルでありながら、マウンドに上がれば碌に練習もしていないのに150キロ台のストレートを投げ込んで、プロのバッターをきりきり舞いさせるというのはありえなさすぎです。しかも、双子でもないのに20歳近い男女が入れ替わって、誰からも気付かれないなどということがあるはずもありません。もしこれを凡百の漫画家が描いたならば、棒にも箸にもかからない愚作になったでしょう。しかし、そこはさすがあだち充です。もともと主役級の顔はみな同じという欠点を逆手にとり、それに加えて独特の緩い空気感を押し通すことで、無茶な設定をなんとなく納得させてしまっているのです。話の展開も一見単調なようにみえながら、要所要所でメリハリをつけ、読者を飽きさせません。まさに、あだち充ならではの名人芸です。


2008年

高校球児ザワさん(三島衛里子)
都澤理沙は女性でありながら日践学院高校野球部に所属し、男子部員と共に練習に励んでいる。中学時代にはリトルシニアで投手兼遊撃手として関東大会優勝の経験もあり、兄はプロも注目している日践学院高校野球部のエースだ。規定により公式戦への出場はできないものの、理沙は練習試合には出場し、高校卒業後も野球を続けるつもりだった。そんな彼女の日常は........。
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男女混合型の女子野球漫画と言えば、ヒロインが規約の壁を突破して野球の公式戦に出場し、屈強な男子選手をきりきり舞いさせるというのが一つの定型でした。しかし、本作ではそういったファンタジックな要素は排除されており、女子野球選手の日常を淡々と描いている点が異彩を放っています。試合の場面はほとんどなく、部活動のシーンが大半を占めているので普通なら単調な作品になってしまいそうですが、多彩な視点からあるあるネタを盛り込んで飽きさせないのが見事です。また、露骨なお色気シーンなどはない代わりに、女性選手の何気ない仕草からほのかなフェティシズムを感じさせる仕様となっており、フェチすぎる野球漫画としてメディアに紹介されたこともあります。色々な意味で、女子野球漫画の常識を打ち破った一作です。


大正野球娘。(原作:
神楽坂淳/漫画:原作伊藤伸平)
1925年。東邦星華女学院に通う鈴川小梅は親友の小笠原晶子から野球を一緒にしてほしいとお願いされる。詳しく話を聞いてみると、パーティーで男性から「女性は主婦として家庭に入るべき」と言われたのが悔しくて、彼の得意な野球で見返したいのだという。小梅は晶子の考えに賛同するも、2人とも野球のことを全くといっていいほど知らなかった。そこで、級長の宗谷雪や学校一の秀才である川島乃枝の協力を得て、メンバー集めをしつつ、男子チームに勝つ方法を模索していくことになるが.......。
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2007年にライトノベルとして発表された作品のコミカライズです。2009年にはアニメ化もされており、先にそれらに触れていた場合はキャラデザがかなり異なるので違和感を覚えるでしょう。また、物語の大筋はどれも大体同じですが、原作やアニメ版のさわやかなスコポンコメディといったノリと比べると、コミック版はギャグテイストへと大きく舵を切っています。なにより、肝心の野球をあまりしていないのが気になるところです。一方で、原作とは別物だと割り切って読めば、キャラ同士の軽妙な掛け合いやブラックな笑いなどはかなり楽しめる出来に仕上がっています。それに、野球の試合も最終巻ではきっちりと描いており、手に汗握る展開を見せてくれます。ラストが少々あっけないのが残念ですが、好評だった原作やアニメとはまた違ったテイストを味わえる佳品です。
大正野球娘。 (1) (リュウコミックス)
伊藤 伸平
徳間書店
2009-02-20


2009年

夏草ホームベース(平手将之)
先輩が全員卒業し、唯一の野球部員となった古橋圭太。彼は部の存続のために行きすぎた勧誘活動を行い、幼馴染で生徒会副会長の水谷泉にいつもたしなめられていた。そんなとき、1年生の女の子・綿貫操が野球部に入部したいといってくる。大喜びの圭太だったが、実は彼に気のある泉は野球部を潰して圭太を生徒会に入れるべく、生徒会権限で野球部存続を賭けての勝負を強制する。しかも、彼女が助っ人として雇ったのは甲子園常連校の4番だった。あまりにも不利な条件だったが、ピッチャー志望の操がその勝負を受け、なんと150キロは超えていると思われる剛速球で相手のバットをへし折ってしまう。果たして彼女は何者なのか?
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部員の少ない弱小野球部を再建していくという王道的な展開の野球漫画ですが、全体的にラブコメタッチで絵も可愛らしいという点が持ち味となっています。ヒロインの操が高校に入ったばかりで150キロオーバーのストレートを投げるなど、あり得ないくらいチートなのも、ギャグとしてみれば悪くありません。話のテンポもよく、野球に詳しくない人でも気楽に楽しめる作品です。ただ、早々と打ち切りになったため、肝心の試合がかなりはしょられており、本格的な野球漫画を期待していた人にとっては物足りなさを感じるでしょう。それから、連載時は全22話だったものが、単行本2巻に収めるため全16話にカットされている点もいささか残念です。


2012年

しこたま(ニシカワ醇)
剛力たまは幼いころより野球好きの父に鍛えられ、日常生活においても全身に重りをつけて筋力強化を図るほどの熱血少女に育っていた。そして、足を高く上げることで男子顔負けの剛速球を繰り出すノーザンクロス投法を編み出し、野球の名門として知られる私立国際天上高校に入学する。だが、野球部への入部は、キャプテンにして高校野球屈指のスラッガーである橘スケキヨが猛反対をし、結局、女性だという理由で拒否される。そこで、たまはメンバー9人を集めて野球部に試合で勝ち、野球部そのものを乗っ取る計画を画策するが........。
◆◆◆◆◆◆
ノーザンクロス投法や龍笛打法といった必殺技が次々と飛び出す、昔の野球漫画のパロディのような作品です。しかも、女性キャラの可愛らしさに反して、いかにも少年チャンピオン的な下ネタが満載で、いろいろぶっ飛んでいるところがウリとなっています。野球漫画として読めばくだらなさすぎて脱力必至なのですが、そのくだらなさを楽しむべき作品です。



マウンドファーザー(野部利雄)
弱小球団東都エンジェルズの元投手・辺里教武は引退後にスカウトになるも、彼が探しだしてきた選手は皆使い物にならず、苦境に立たされていた。そんなある日、彼は女子高生の神堂マリと出会う。彼女は野球部に所属しており、しかも、練習試合では投手として21奪三振を記録したこともあるというのだ。彼女の投球を実際に目にした辺里は、これは金の卵だと直感し、球団オーナーを説得して彼女と入団契約を結ばせる。こうして史上初の女性プロ野球投手が誕生し、辺里プロデュースによる神堂マリ育成計画がスタートするが......。
◆◆◆◆◆◆
プロ野球関係者が女性選手の才能に惚れてプロ入りさせるという点は『野球狂の詩』と同じですが、本作の場合はそこから先が少し異なります。単に天才女性投手に無双させるのではなく、女性としての限界を踏まえたうえで、ヒロインの能力をプロの投手として最大限に活かすにはどうすればいいかを徹底的に考え抜いているのです。その創意工夫が既存の女子野球漫画にはなかった面白さにつながっています。それに、野球に関する蘊蓄も色々と盛り込まれており、たとえば、当時導入されたばかりの統一球に関する分析などは興味深いものがあります。比較的早い巻で打ち切りとなってしまったため、終盤の展開が駆け足なのは残念ですが、野球好きな人にこそ読んでほしい佳品です。


2013年

勝利の女神だって野球したい(松本ミヒ)
20XX年。スポーツ人口の減少から高等学校硬式野球公式試合にも女子の参加が認められるようになる。それから数年。当初は女子を参加させる高校は現れなかったものの、一人の天才少女の登場によって流れは大きく変わっていく。彼女は男子チームから無安打1失策のノーヒットノーランを達成したのだ。一方、その試合で敗北した槍慎高校の手越祐一監督は弱腰の采配が批判にさらされ、学校を去っていく。狭桜山高校に転勤した手越は廃部寸前の野球部の顧問を務めることになるも、投手が怪我で試合続行不能のピンチに陥る。そこに現れたのが1年A組の委員長で、野球経験者の風間藍香だった。彼女の活躍をきっかけに手越は才能ある女子生徒たちと出会い、野球部に勧誘していくが......。
◆◆◆◆◆◆
野球漫画としては突出した点はないものの、女の子の可愛らしさが光る作品です。特に、感情豊かに描かれる表情が秀逸です。本格的な野球シーンを期待した人にとっては肩透かしですが、ラブコメメインの野球漫画としては上質な作品といえるのではないでしょうか。それだけに、月刊コミック・アーススターの休刊に伴って早期終了となったのが惜しまれます。
勝利の女神だって野球したい! 1 (アース・スターコミックス)
松本 ミトヒ。
アース・スター エンターテイメント
2015-07-06


2015年

MAJOR 2nd(満田拓也)
元メジャーリーガー・茂野吾郎の息子である茂野大吾は父に憧れて小学4年のときに三船ドルフィンズに入団するも自分の才能のなさに挫折を味わう。しかし、佐藤寿也の息子である佐藤光との出会いによって再び野球と向き合う決意をするのだった。それから数年が過ぎ、中学2年生になった大吾は風林中学のキャプテンを務めていた。しかし、部員は大吾を含めて6人しかいない。しかも、そのうち4人が女性だった。実は部員の大部分が不祥事を起こして退部処分となったうえに、監督も責任をとって辞任してしまい、指導者すら不在の状態だったのだ。そんななか、大吾は新入生の入部に期待をかけ、謹慎明けの大会に備えてチーム作りを進めていくが.......。
◆◆◆◆◆◆
大ヒット野球漫画の主人公である茂野吾郎の息子の成長を描いた、いわゆる2世ものです。幼年期から順を追って物語を進めていっているのは前作と同じなのですが、大きく異なるのは中学生になった主人公のチームメイトが女性ばかりであるという点です(ちなみに、中学編は91話、単行本10巻から)。主人公を含めて主要メンバー9人中7人が女子で(その後、男子も女子も増えていきますが)、これではまるでハーレム漫画のようです。しかし、そのことによって前作とは全く異なったカラーを打ち出すことに成功し、それが独自の魅力となっています。俺様キャラで試合でも独り相撲になりがちだった吾郎に対し、大吾はあくまでも縁の下の力持ちに徹して女性選手たちをうまくコントロールしているという対比がユニークです。女性キャラも皆個性的で、女子野球漫画としてもかなりレベルの高い作品に仕上がっています。ただ、中学と異なり、高校野球は男子に混じっての女性選手出場は認められていないだけに、今後どのような展開になるのかが気になるところです。


2016年

クロスプレイーCLOSE PLAYー(芹之由奈)
人気急上昇中のアイドルグループ、Love Dogs。初のドーム公演は大いに盛り上がり、ライブも佳境に差し掛かる。ところが、そのとき、落雷による衝撃でメンバー9人はパラレルワールドに飛ばされてしまう。そこではLove Dogsのメンバーとプロ野球チームが野球の対戦を行っている最中であり、しかも、元の世界に戻るにはその試合に勝たなくてはならないというのだ。しかし、当然のことながら、女性アイドルとプロ野球選手では力の差は歴然としており、1回表だけで61点を奪われてしまう。絶望感が漂う中、さらに不思議な現象が起きる。時が巻き戻され、気がつくと彼女たちはプレイボール前のドーム球場に立っていた。果たして、Love Dogsのメンバーはこの野球無間地獄から抜け出すことができるのだろうか?
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女子野球というジャンルにループものの要素を取り入れた斬新すぎる設定が目を引く作品です。また、アイドルがプロ野球選手とガチ勝負するという展開も無茶すぎてインパクト大です。しかも、それをギャグとしてではなく、大真面目に描いているところに本作の妙味があります。ループという設定を活かして、絶望的な状況を覆していく展開は結構スリリングです。女の子たちの可愛らしさも申し分なく、うまくいけば思わぬ異色傑作となった可能性もあっただけに、早々と打ち切りになったのが惜しまれます。


2017年

フジマルッ!(詠里)
藤丸あさひは野球に夢中な女子高生。髪を短く切り、たった一人の女子部員として、男子部員たちに混じって白球を追っている。上手くなるためには努力を惜しまず、青春のすべてを野球に賭けていた。だが、そんな彼女も最初から野球好きだったわけではない。子供の頃はむしろ、何にも興味を示さない無気力な少女だったのだ。それがある日、父親と甲子園に野球観戦をしにいくことになり.......。
◆◆◆◆◆◆
ヒロインが男性相手に真っ向勝負を挑むというタイプの作品ではなく、等身大な野球女子の姿を描いているという点では『高校球児ザワさん』と相通ずるものがあります。しかし、あちらは野球女子の日常を比較的淡々と描いていたのに対し、本作はヒロインの幼少期を中心に据え、成長物語に焦点を当てている点が独自性だといえます。特に心理描写が巧みで、抜け殻のような無気力少女がふとしたきっかけで野球を始めるも、壁にぶち当たって葛藤するといった一連のシークエンスが秀逸です。また、迷いのない強さを見せる現在の藤丸と挫折の連続だった幼少期の彼女との対比も印象的で、読んでいるとすぐに引き込まれていきます。野球女子の成長を幼少期から追った希有な佳品です。ただ、個人的には現在の藤丸やその後の彼女の姿をもう少し見たかったような気もします。


2019年

リトル・ブル(原作:Cボ/作画:佐藤駿光)
4年連続地方大会決勝で敗れ、甲子園行きを逃している県立大手東高校。そこにはプロ注目のスラッガー・馬場亮介がいたが、代わりに、投手力が致命的に弱かった。その大手東高校にシニアリーグ時代に亮介から3三振を奪ったことのある牛島翔が入学する。亮介は早速彼を野球部に勧誘するも、翔はすでに野球を辞めたという。肩を落とす亮介に対し、代わりに翔が推薦したのは双子の妹のエミだった。実は3年前に亮介から三振を奪ったのは翔ではなく、エミだったのだ。こうして強力な戦力を得た大手東高校野球部だったが、女子は男子の公式試合には出場できない。そこで、亮介は一計を案じ........。
◆◆◆◆◆◆
よくある美少女投手が活躍する系の野球漫画ですが、本作の場合はヒロインの可愛らしさが大きなセールスポイントになっています。マウンドに立つと闘志むき出しで踏み込んだ足を地面にめりこませるほどのド迫力ですが、普段はおとなしくてちょっとおバカな女の子というギャップがたまりません。また、スリムな体型ではなくムチムチボディにすることにより、野球女子としての説得力とヒロインとしてのエロティシズムを同時に満たすことに成功しています。ただ、高校1年生のヒロインが160キロを出しちゃうような作品なので、野球漫画としてのリアリティに関してはあまり期待しないほうが無難でしょう。



B.
女子オンリータイプ
現実に女子だけで野球をするといったケースが皆無に近かったために、漫画においても女子チーム同士が対戦するという内容のものは異色作と呼ばれる作品がいくつか散見される程度でした。ところが、2010年に女子プロ野球が60年ぶりの復活を遂げたことにより、そういった作品も次第に数を増やしています。具体的にどのような作品があるのか、代表的なものをいくつか紹介していきます。

1990年

ボンジュール・ベースボール(中山星香)
三角翠は幼いころより祖母のシゴキを受けてスポーツ万能少女になっていくが、同時に、そのせいですっかりスポーツ嫌いになっていた。また、スポーツの実績で周囲から騒がれるのを嫌い、彼女は知り合いの誰もいない雷燕学園中等部に入学する。ところが、部活に入らなかったために祖母から弁当抜きの罰を受け、空腹を抱えながら学校に通う羽目になっていた。それを知った女子野球部の斬込神枝は弁当の差し入れと引き換えに練習試合に出場してほしいともちかけるが.......。
◆◆◆◆◆◆
おそらく、女子野球部の話をメインで描いた最初期の作品です。作者は『妖精国の騎士』や『花冠の竜の国』といったハイ・ファンタジー漫画の第一人者として知られる中山星香ですが、その絵柄と野球漫画という題材のギャップがなんともシュールです。また、タイトルのボンジュールとベースボールのミスマッチ感も独特の味わいがあります。中身は意外にもきちんと野球をやっているのですが、1巻で完結してしまっただけに消化不良なのは否めません。決して良作とはいえないものの、このジャンルが開拓される前の怪作として押さえておきたい作品です。
ボンジュール・ベースボール
中山 星香
ビーグリー
2016-12-22


1992年

ひと夏の少女(木下健二)

高山高校女子硬式野球部のキャプテン、森川穂積は全国高校女子野球選手権大会を目指して練習に明け暮れていたが、男子野球部員に占拠されてグランドを使えないのが悩みの種だった。地区大会が間近に迫り、穂積は週に一度でいいからグランドを使わせてほしいと頼むも、男子部員たちは一笑に付すだけだ。彼らの態度に腹をすえかねた穂積は、その場の勢いで、自分の退部を賭けて男子野球部との勝負を受けてしまう。一方、他の女性部員たちは最初から男子に勝てるなどとは思っておらず、穂積に冷たい視線を向ける。そんな彼女を見かねた男子野球部の次期エース、松崎は穂積のコーチを買って出るが........。
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女子野球部や女子野球の大会についてきちんと描いた最初期の作品で、実際に女子の公式大会が開かれるようになったのが90年代後半からであることを考えると、先見の明のある作品だといえるでしょう。とはいえ、前半は男子部員との試合がメインとなっており、従来の女子野球ものの要素も併せ持った過渡的な作品ともいえます。内容的には手に汗握る激しい試合やドラマチックな展開があるわけではなく、全体的に地味な点は否めません。絵柄が可愛らしいこともあってどちらかというと、ほのぼのとした雰囲気の作品です。その代わり、主人公やライバルなどの心情やチームの絆などがきちんと描かれている点には好感が持てます。ただ、当時の野球はサッカー人気に押されていたこともあり、本作はこれといって話題になることもなく、2巻で打ち切られてしまいます。そのため、終盤が駆け足になってしまったのはいかんともしがたいところです。


2000年

鉄腕ガール(高橋ツトム)
戦後間もない日本。化粧品メーカーの女社長、蘭崎五十鈴は女性がもっと活躍できる社会というビジョンを掲げていた。ある日、彼女は米兵相手に女給をしていた加納トメと出会う。その美しさと凶暴性にほれ込んだ五十鈴はトメを自社の広告塔として雇い、日本初の女子プロ野球の選手として登録する。最初、トメにとってそれは遊び半分の仕事にすぎなかった。しかし、五十鈴の弟である克己の思想に感化され、女性の力で戦勝国の米国に強烈な一撃をくらわせるという、野球対決プロジェクトに身を投じていくことになる.....。
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1950年から1951年にかけて日本で行われていた女子プロ野球をモチーフにした作品です。とはいえ、物語自体は史実とはかけ離れていますし、そもそも当時の女子プロ野球がどんなものであったのかも実はよくわかっていません。そういうわけで、ほとんどは作者の想像で描かれたものだと思われますが、一つの作品として独特の魅力を放っていることは確かです。まず、劇画調の絵柄と大ゴマの多用は既存の女子野球漫画にはない迫力を備えていますし、女性選手の可愛らしさではなく、女性解放の進む戦後の日本においてヒロインのロックな生きざまを描いている点も異彩を放っています。一方で、社会派的な作風の割には、マウンドに立ったヒロインがメジャーリーガーたちと対等に渡り合ったり、女子野球日米対抗試合で数兆円規模の賭けが成立したりと荒唐無稽な展開が続きます。しかし、絵の迫力のおかげでそういった荒唐無稽さがちっとも欠点になっていない点が見事です。ちなみに、野球漫画としての面白さは物語中盤の日米対抗試合が頂点であり、それ以降はトメを中心とした人間ドラマに移行してしまいます。そのため、後半になると野球は物語の背景にすぎなくなってしまうのが少々残念です。


2010年

球場のシンデレラ(小坂俊史)
高校3年生の児玉郁代は勉強は駄目だがスポーツ万能で、十種競技の選手として活躍していた。ところが、野球経験が全くないにも関わらず、なぜか発足したばかりの女子プロ野球チーム・東京メルヘンズにスカウトされる。しかも、プロとはいえ、東京メルヘンズはとんでもない貧乏球団で......。
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2010年に始まったばかりの女子プロ野球を題材とした4コマ漫画です。試合以外のネタが多いので野球に詳しくない人でも気軽に楽しめるようになっている一方、設定自体は細かく作り込まれており、野球好きとして知られる作者の愛が伝わってきます。4コマ漫画として安定した面白さがあり、特に女子野球ならではの貧乏ネタが秀逸です。主役以外のキャラも徐々に立ち始め、後半になるほど面白さも増していくのですが、それだけに1巻で完結してしまったのが惜しまれます。


2011年

マックミランの女子野球部(須賀達郎)
部活動が盛んなマンモス校・マックミラン高校に入学した正清大地は、家事全般をソツなくこなす家庭派男子。そんな彼が部活動に選んだのが昨年度全国ベスト4の実績を誇る女子野球部のマネージャーだった。個性的な女子部員を影から支え、大地は彼女たちと一緒に全国優勝を目指していくが.......。
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元々は『マックミラン高校女子硬式野球部』のタイトルで別冊少年マガジンに連載されていたものを、週刊少年マガジン移籍時に改題した作品です。チームのお母さんである男子マネージャーと個性あふれる女性部員たちとの絡みをコミカルに描いた4コマ漫画ですが、ギャグだけでなく野球の描写もしっかりしている点が目を引きます。また、男性キャラ一人に多数の美少女キャラといったハーレム構造になっているものの、主人公がお母さん気質であるため、恋愛フラグが全く立たないのも逆に新鮮です。また、一人一人のキャラの立て方が明快で、ネタが分かりやすい点も長所だといえるでしょう。ストーリーとギャグのバランスが取れた野球4コマの佳品です。



2015年

セーラーエース(しげの秀一)
関東女学院に通う桜木繭は女子野球部に所属し、投手として活躍していたが、今は休部中でギャル道を邁進していた。しかし、実際にやってみると思いのほか退屈なので再び野球に戻る決意をする。しかも、復活した繭の投球はなぜか、ストレートも変化球も以前より威力を増しており.......。
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『バリバリ伝説』や『イニシャルD』などで男同士の熱いバトルを描いてきたしげの秀一が次に選んだテーマはまさかの女子野球でした。しげの秀一に女性主人公はどうなんだ?と危惧されたものの、内容は意外と悪くありません。特に、モデル体型のギャルで飄々とした性格のヒロインが秀逸です。生意気な天才美少女が無双する話ですが、独特のとぼけた味が効いて嫌味になっていないのです。それに、ヒロイン以外のキャラもきちんと掘り下げがなされており、読み応えがあります。ただ、キャラの面白さに対して試合内容はやや凡庸な印象を受けますし、急遽打ち切りになったのか、それとも作者が飽きたのか、最後が尻切れトンボで終わってしまっている点はいただけません。


2016年

花鈴のマウンド(原作:紫々丸/漫画:星桜高校漫画研究会)
桐谷花鈴は都立星桜高校野球部のエースで甲子園に憧れる女の子だが、春の大会では京都雅高校の柊木美玲に完膚なきまでに打ち負かされてしまう。花鈴は美玲に勝ちたい一心から幼馴染で男子野球部主将の大門頼に指導を仰ぐ。そして、新しい武器を身につけるため、投球フォームや球の握り方などに工夫を凝らしていくのだが........。
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原作を日本女子プロ野球機構の創立者が担当しており、そのため、全体的に野球の入門書のような内容になっています。野球初心者にとってはなかなか興味深く読むことができるのではないでしょうか。ただ、ヒロインが高校3年のエースなのにその程度のことを今さら習得していくのか?といった点に関しては違和感が否めません。入門書てきな内容にするならば、高校1年の新入部員が徐々にエースへと成長していくというふうな構成にしたほうが自然だったように思えます。一方で、絵に躍動感が乏しいという欠点はあるものの、試合自体は個性的なライバルキャラが次々と登場し、テンポよく進むので読み応えがあります。あとは、好きな男の子を巡っての三角関係といった少女漫画的ドロドロ展開が結構な比重を占めるため、その辺りに関しては好みの分かれるところでしょうか。
花鈴のマウンド新装版(1巻)
紫々丸
大垣書店
2010-01-27


球詠(マウンテンプクイチ)
埼玉県に住む武田詠は鋭い変化球が武器の投手だが、中学時代はそれを捕球できるキャッチャーに恵まれず、連敗を重ねてきた。詠は野球の道をあきらめ、制服が可愛いという理由で新越谷高校に進学し、そこで幼馴染の山崎珠姫と再会する。2人は大きくなったら一緒に硬式野球をしようという約束をした仲だった。詠と珠姫はその約束を果たそうとするが、野球部は不祥事を起こしてほとんどのメンバーが退部しており、結局、メンバー集めから始めることとなる。初心者だが他の選手のフォームをコピーするのが得意な川口伊吹、天才的なバッティングセンスの持ち主で九州出身の中村希、剣道の全国優勝経験者ながらも野球に強い憧れを持つ大村白菊、旧野球部の残留組である先輩の岡田怜と藤原理沙など。経験も実力もバラバラながらも9人のメンバーが集まり、新越谷高校野球部は再始動する。そして、練習試合を重ねながらチーム力を高めていき、全国大会地区予選に臨むことになるのだが......。
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女子硬式野球がメジャースポーツになっているという設定に基づくパラレルワールド的な作品です。しかも、描かれているのは女性ばかりでモブも含めて男性キャラは全くでてきません。キャラ同士の関係も百合的なムードが濃厚なのはさすがきらら連載作品といったところですが、決してそれだけでは終わっておらず、野球描写に関してもかなり本格的な作品に仕上がっています。緻密な野球理論に基づく試合の駆け引きは手に汗握りますし、キャラクター一人一人の選手としての個性付けが試合展開の面白さにつながっているのも見事です。百合漫画と野球漫画の魅力を併せ持った希有な傑作だといえます。
球詠 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
マウンテンプクイチ
芳文社
2016-11-25


なでしこナイン(東元)
野球部に所属する女子高生の白井球子はある朝、神社の階段の上から転げ落ちてしまう。気がつくと周囲の風景が一変していた。なんと彼女は落下の衝撃で昭和24年にタイムスリップしてしまったのだ。当惑する球子だったが、元来の明るさからあっという間に昭和という時代になじんでしまう。そして、偶然の出会いからその時代の女の子たちと一緒に女子プロ野球チームの結成を目指すことになるのだが.......。
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1950年に発足した女子プロ野球誕生秘話をタイムスリップというSF要素を交えて活写した作品で、昭和風の絵が作品の舞台背景に実にマッチしています。そして、戦後間もない時代を懸命に生きる人々の姿を生き生きと描いた点がこの作品の魅力だといえるでしょう。また、女子プロ野球がドサ回りの興業から始まったというエピソードなども興味深いものがあります。女子プロ野球黎明期の描写を通して懐かしい時代の空気が満喫できる佳品です。
なでしこナイン1 (COMICAWA BOOKS)
東 元
主婦の友社
2017-02-01