最新更新日2016/4/12☆☆☆

4月19日発表予定の日本推理作家協会賞のノミネート作品とその概要についてまとめてみました。
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孤狼の血(柚木裕子)※日本推理作家協会賞受賞
昭和63年の広島。新人刑事・日岡がやくざとの癒着が噂されている刑事・大上とコンビを組み、やくざの抗争に挑んでいく。
柚木裕子氏は、2012年の『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞を受賞。そして、今回の『孤狼の血』は女流作家らしからぬ非常に男くさい警察小説で、このミステリーがすごい!2016で3位になったことで注目されました。さらに、第154回直木賞、第37吉川英治文学新人賞にも続けてノミネート。受賞には至らなかったものの本作の評価が高いことを裏付ける結果となっています。
孤狼の血 (角川文庫)
柚月裕子
KADOKAWA
2017-08-25


生還者(下村敦史)
多くの人命を奪った雪崩の事故から奇跡的に生還したふたりの証言は全く異なるものだった。嘘を言っているのはどちらなのか?
下村敦史は2014年の『闇に香る嘘』が第60回江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビュー。江戸川乱歩賞は9年連続挑戦で最終候補に残ること5回目にしての受賞でした。同作品は、その年のこのミステリーがすごい!3位に選出されて大型新人として注目を集めました。『生還者』はこのミステリーがすごい!2016の15位どまりでしたが、作品の評価自体は高く、プロデビュー3作目での受賞を狙います。
生還者 (講談社文庫)
下村 敦史
講談社
2017-07-14


戦場のコックたち(深緑野分)
第2次世界大戦中の戦火のフランスで、合衆国陸軍に所属するコックが日常の謎に挑む異色ミステリー。
深緑野分氏は2010年に作家デビューして以来、ほとんど無名の存在でした。しかし、本作でこのミステリーがすごい!2位、ミステリーが読みたい2位、週刊文春3位と非常に高い評価を受けたことで、2015年の大きな話題のひとつになります。しかも、本作は本屋大賞、直木賞、大藪晴彦賞とたて続けにノミネート。特に、直木賞では『つまをめとらば』と同時受賞させるかどうかで激しい議論が交わされました。今回の本命的作品です。
戦場のコックたち (創元推理文庫)
深緑 野分
東京創元社
2019-08-09


東京結合人間(白井智之)
嘘がつけない病をもった人間が集う島で殺人が起きるが、嘘をつけないはずの容疑者全員が犯行を否認する。グロテスクでいてロジカルな異色の本格ミステリ。
白井智之氏は2014年の横溝正史賞最終候補になった『人間の顔は食べずらい』でデビュー。本格ミステリの書き手ながら残酷描写が多く、理知的な面と倒錯的な面が両極端に両立しているという特異な作風を持ち味としています。『東京結合人間』も読み手を選ぶ非常にマニアックな作品ながら、このミステリーがすごい!で16位、本格ミステリベスト10で8位にランクイン。日本推理作家協会賞においても台風の目になるか注目です。
東京結合人間 (角川文庫)
白井 智之
KADOKAWA
2018-07-24


ミネルヴァの報復(深木章子)
夫の妻の履行調停の結果、元の鞘に戻った二人だったが、今度は妻が夫の浮気相手に対して損害賠償の訴えを起こす。そんな中、弁護士会見でその妻が殺害される。リガールサスペンス風本格ミステリ。
深木章子氏は弁護士出身のミステリー作家で、2010年に『鬼畜の家』でデビュー。2013年の『衣更月の一族』と2014年の『螺旋の底』が続けて本格ミステリ大賞の候補になっています。