最新更新日2018/10/15☆☆☆

10月21日発表の山田風太郎賞。その候補作の概要です。
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代体(山田宗樹)
大病や大けが負った人間の意識を治療中の間、別の体(代体)に移し替える技術が開発された近未来。使用中の代体が行方不明になり、破壊されて発見されるという事件を描いたSF作品。
山田宗樹氏は2013年に『百年法』で第66回日本推理作家協会賞を受賞。同作品は第3回山田風太郎賞候補にもなりました。今回は2回目の候補となります。
代体 (角川文庫)
山田 宗樹
KADOKAWA
2018-05-25


罪の声(塩田武士)※山田風太郎賞受賞
数年前に亡くなった父の遺品を整理しているとそこからグリコ森永事件(作中:ギン萬事件)に使われた脅迫テープが出てくる。しかも、その声は幼き日の自分の声だった。彼はギン萬事件について調べ始める。一方、その頃、若手新聞記者も31年前に起きたギン萬事件の謎を追っていた。
塩田武士氏は神戸新聞勤務後、2010年に『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞を受賞してデビュー。元新聞記者ならではの膨大な資料と綿密な取材に基づいたリアリティあふれる傑作がどこまで評価されるのか注目されるところです。
罪の声 (講談社文庫)
塩田 武士
講談社
2019-05-15


望み(雫井脩介)
高校生になった息子が夏休み明けに他の2人とともに失踪する。数日後、そのうちのひとりが複数から暴行を受けて殺害されているのが発見される。息子は果たして加害者なのか?被害者なのか?重苦しく澱む心理を追ったサスペンス小説。
雫井脩介氏は『犯人に告ぐ』にて2004年文春ミステリーベスト10で第1位に選ばれ、同作で第7回大藪春彦賞を受賞しています。
望み (角川文庫)
雫井 脩介
KADOKAWA
2019-04-24


バベル九朔(万城目学)
主人公は雑居ビルバベル九朔の管理人をしながら作家になる日を夢見ていた。しかし、カラス女が現れた日から日常は壊れていく。物語の中に自らの心象風景を重ねた自伝的幻想小説。
万城目学氏は2006年『鴨川ホルモー』でデビュー以来、本作を含めて9作の小説発表していますが、そのうち5作が直木賞候補になっています。しかも、前作の『悟浄出立』は山田風太郎賞とのダブル候補です。これだけ賞に絡み続けている万城目学氏。そろそろ初受賞はあるのでしょうか?
バベル九朔 (角川文庫)
万城目 学
KADOKAWA
2019-02-23


室町無頼(垣根涼介)
応仁の乱前夜、権力者のやりたい放題で京の都は飢民であふれていた。そんな中、飢民を集めて土一揆を企てる者がいた。時代劇の形を借りたハードボイルド。
垣根涼介氏は代表作『ワイルド・ソウル』で第6回大藪春彦賞、第25回吉川英治新人文学賞、第57回日本推理作家協会賞のトリプル受賞を達成しています。しかも、翌年の『君たちに明日はない』では山本周五郎賞も受賞。本作は時代劇に転向してから2作目に作品で、1作目の『光秀の定理』も山田風太郎賞の候補となっています。
室町無頼(上) (新潮文庫)
垣根 涼介
新潮社
2019-01-27


ロンドン狂瀾(中路啓太)
1930年のロンドン海軍軍縮会議を舞台に、政治家たちのそれぞれの思惑とこの問題の複雑な経緯を分かりやすくかつ情熱的に描いた歴史小説の傑作。
中路啓太氏は2006年に『火ノ児の剣』デビュー。以後、江戸時代や関ヶ原の合戦などを舞台にした時代小説を中心に作品を発表していましたが、本作ではロンドン海軍軍縮会議という珍しい題材を選んでいます。2009年の『己惚れの砦(己惚れの記改題)』で第31回吉英治文学新人賞候補。