最新更新日2021/03/05☆☆☆

平成は日本のアニメやゲームが世界的に注目され、ハリウッドを始めとした海外で盛んに映画化が行われた時代でもありました。昭和の時代には日本のコンテンツが洋画になることなどほとんどなかっただけに、これは大きな変化だといえるでしょう。しかし、文化的な違いからか、出来上がった作品に今ひとつなものが多かったのも確かです。そこで、日本のアニメやゲームを海外で映画化した主な例を振り返りつつ、それぞれの作品の出来がどうだったかについて解説をしていきます。
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1991年(平成3年)

ガイバー強殖装甲ガイバー)米・日
原作
1985年に月刊少年キャプテンの創刊号から連載が始まった少年漫画です。ジャンル的には仮面ライダーVS悪の秘密結社といったヒーローもの路線ですが、独特の重厚な雰囲気や秘密結社が世界征服を達成してしまうといった意表を突いたストーリーでカルト的な人気を獲得していくことになります。1989年にはOVAが発売され、2005年にはテレビアニメも放送されました。1997年の月刊少年キャプテン休刊に伴い連載が一時ストップするものの、1999年より少年エースネクスト、2002年には月刊少年エースへと連載が引き継がれています。

【劇場版
日本の漫画が初めてハリウッド映画となった記念すべき作品です。ただ、製作費は日本の企業が出しているため、本当の意味での洋画とはいえないかもしれません。内容的にもいかにも低予算特撮映画といった感じでハリウッド映画らしいゴージャスな雰囲気は皆無です。おまけに、全体的にコミカルな味付けで原作の重厚な雰囲気はぶち壊しになっています。その一方で、『死霊のはらわたⅡ』や『プレデター』の造形を担当したスティーブン・ワンの特殊メイクはよくできています。また、主人公が『スターウォーズ』で主人公のルーク・スカイウォーカーを演じたマーク・ハミルだというのもなかなか衝撃的です。しかし、いずれにせよ、その後ハリウッドで製作された日本のコンテンツ作品と比べると原作の知名度は低く、その上、小規模上映だったため、話題になることはほとんどありませんでした。
The Guyver
Classic Cult Collection (Germany)


1993年(平成5年)

スーパーマリオ/魔界帝国の女神(スーパーマリオブラザーズ)米 
原作
1985年に発売され、ファミコンの認知度を一気に高めたアクションゲームの名作です。以後も数え切れないほどのシリーズ作品を発表し、テレビゲーム随一のコンテンツへと成長していきます。シリーズ総売り上げ本数も発売から30年で5億本を突破しています。まさにテレビゲーム界のレジェンドというべき存在です。
先に製作された『ガイバー』は日本での劇場公開がなかったこともあって、その存在を知る人はごく少数でした。したがって、日本のコンテンツがハリウッド映画になると騒がれたのは本作が初めてということになります。製作費も約5000万ドルと『ガイバー』に比べてケタ違いです。そんなわけで大いに期待されたわけですが、結果は北米興行収入が約2000万ドル、日本配給収入は約3億円と大惨敗に終わっています。敗因として挙げられるのはなんといっても原作再現度の低さです。ボブ・ホスキンスのマリオはまだ許せますが、ヨッシーがあの愛らしい姿ではなく、普通の恐竜というのはいかがなものでしょうか。また、マリオに欠かせない必須アイテム、キノコもドロドロの菌糸として描かれていて、はっきり言って不気味です。その上、ラスボスのクッパをデニス・ホッパーが素顔のまま演じているのに至っては名優の無駄遣いとしかいいようがありません。とにかく、すべてがゲームとかけ離れており、違和感が半端ないのです。ストーリーもファミリー向けのファンタジー映画のはずが、妙にダークな世界観で爽快感が著しく欠けるものになっています。全くといっていいほど原作の良さが引き出せておらず、かといってオリジナルの映画としてみてもグダグダの展開で面白くありません。大コケしたのもやむなしといえます。
スーパーマリオ 魔界帝国の女神 製作25年HDリマスター [Blu-ray]
ボブ・ホスキンス
TCエンタテインメント
2017-12-22



シティ・ハンター(シティハンター) 香 
原作
1985~1991年にかけて週刊少年ジャンプに連載された少年漫画であり、いわゆるジャンプ黄金期を支えた作品の一つです。主人公の冴羽僚は年齢不詳のスイーパー(始末屋)。少年漫画の割にはハードボイルドタッチで大人向けの内容でしたが、コミカルな味付けをすることで次第に人気が高まり、単行本累計発行部数5000万部を超える大ヒット作となります。1987年にはテレビアニメも始まり、こちらもシーズン4まで重ねる人気作となっていきます。小比類巻かおるやTMネットワークなどによる主題歌が次々とヒットしていったのも印象的でした。
CITY HUNTER (1) (ゼノンセレクション)
北条司
コアミックス
2019-11-18

【劇場版
ハリウッドに続いて香港でも日本の作品が映画化されることにより、日本のコンテンツが世界で注目されている事実を広く知らしめることになります。ただし、公開前から危惧された通り、ジャッキーチェン演じる冴羽僚は全く原作のイメージを再現できておらず、スクリーン上に登場するのは冴羽僚のコスプレをしたジャッキー・チェンでしかありません。一応銃も使いますが、すぐにカンフーで戦い始めるため、シティハンターらしさは皆無です。しかも、日本のコンテンツだという事実を意識してか、ストⅡなどの日本カルチャーのパロディを無理に詰め込んでますますカオスなことになっています。そして、極めつけはブルース・リーの映画を見て冴羽僚がカンフーに開眼するシーンです。そのシチュエーションはジャッキー・チェンそのものであり、冴羽僚である必要性は全くありません。結局のところ、いつものジャッキー・チェン映画であり、中途半端に原作要素を入れたためにより完成度の低いものになってしまっています。
シティーハンター SPECIAL VERSION ジャッキー・チェン 後藤久美子 RAX-901 [DVD]
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エー・アール・シー株式会社
2014-11-28


1994年(平成6年)

ストリートファイター
(ストリートファイターⅡ)

原作
『ストリートファイターⅡ』は1991年にアーケードゲームとして登場したカプコン製作の対戦型格闘ゲームです。1987年の『ストリートファイター』の続編にあたる作品なのですが、大幅な改良を施すことによって前作とは全く異なるゲーム性を獲得することになります。対戦の駆け引きの面白さが一気に高まり、ストⅡという呼び名と共に一大ブームを巻き起こすことになったのです。使用できるキャラクターも一人一人明確な個性があり、それがより一層、人気を高めていく結果となりました。その後、さまざまな対戦型格闘ゲームが登場することになりますが、それらすべての源流というべき偉大な作品です。
主演のジャン・クロード・バンダムがガイルにちっとも似ていないのはいたしかたないところです。主役級の俳優で格闘アクションのできる白人と考えると、おそらくベストの選択だったのでしょう。しかし、他のキャラクターが全然似ていない上に格闘技が全くできないというのはいただけません(ザンギエフだけは異様に似ていましたが)。せめて見た目か、アクションのどちらかだけでも頑張ってもらいたかったところです。特に、日本では主役ポジションのリュウとケンがショボすぎです。一方、老け顔の春麗も見ていて厳しいものがあります。そもそも、100分の本編で原作のキャラを無理やり全員(なぜかフェイロンだけ出ていませんでしたが)出しているのでストーリーも散漫としています。まるで質の悪いコスプレ大会を延々見せられているような気分です。ちなみに、興行成績のほうは製作費約3500万ドルに対して全世界での興行収入が1億ドルとなっており、スーパーマリオよりはマシといった感じです。ただ、肝心の日本では配給収入約3億円と大惨敗を喫しています。
ストリートファイター [Blu-ray]
ジャン=クロード・ヴァン・ダム
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2010-04-16




ダブルドラゴン(ダブルドラゴン・双截龍 
原作
1987年にテクノスジャパンより発表されたアーケードゲームであり、ベルトスクロールアクションというジャンルを確立したことで有名です。スラム街のような世界を舞台にしてバイオレンスなアクションを展開していくのが独特の魅力となっています。ちなみに、主人公であるリー兄弟の名前は、開発者たちが敬愛していたブルース・リーからとったものです。
ストーリー的にはストリートファイターよりも遥かに原作に忠実であり、主役のジミー・リー役もカンフーの大会で優勝経験のあるマーク・ダカスコスが演じているためにそれなりに見応えのある作品に仕上がっています。ただ、物語に深みというものが全くなく、終始軽いノリで進んでいくため、原作ゲームを知らない人が楽しむにはかなり苦しいものがあります。また、アクションはそれなりなのですが、ラスボスが魔力を武器にして戦うため、肝心のクライマックスに格闘シーンが全くなくて盛り上がらないというのも問題です。そもそも、『ストリートファイター』と比べると知名度が圧倒的に低かったため、話題になること自体がほとんどありませんでした。ちなみに、ラスボスを演じているのは『ターミネーター2』のT-1000で有名なロバート・パトリックです。
Double Dragon [DVD]
Robert Patrick
Film 2000
2001-09-24


ガイバー/ダークヒーロー
強殖装甲ガイバー)米・日
原作
※『ガイバー』参照

【劇場版
コメディタッチで描かれた1作目の作風に不満を抱いたスティーブン・ワンが自ら監督を務めた続編です。そのため、作風は大きくシリアスに傾き、変身スーツもより原作に近いものになっています。アクションに関しても原作の雰囲気から離れてカンフーアクション風になったのには賛否がありましたが、前作に比べると大いに迫力が増していることは確かです。バイオレンス度も増し、見応えのある佳品に仕上がっています。とはいえ、本作は日本では劇場公開さえされておらず、ビデオが販売されたのみでした。当然、知名度は前作以上に低く、その評価もマニア限定のものとなります。
ガイバー/ダークヒーロー【字幕スーパー版】 [VHS]
デビッド・ヘイター
バンダイビジュアル
1994-04-20


1995年(平成7年)

北斗の拳(北斗の拳) 
・日
原作
1983~1988年まで週刊少年ジャンプに連載され、インパクトのあるハードアクションによって一大ブームを巻き起こした作品です。「お前はもう死んでいる」という決め台詞は流行語にもなりました。最初は衝撃的な人体破壊のシーンばかりに注目が集まりましたが、次第に主人公のケンシロウを始めとする男たちの熱いドラマにも人気が集まるようになります。ジャンプ黄金期の前期を牽引した傑作です。
北斗の拳 1巻
原哲夫
コアミックス
2015-06-08

【劇場版
実写映画版は監督も主演もアメリカ人ですが、製作は東映ビデオが務めています。したがって、本作も『ガイバー』同様、正確な意味ではハリウッド映画ではありません。製作費も2億円程度という話で、それなら最初から日本映画として作ればよかったのでは?という気がします。低予算なので当然のことながら中身は完全なB級です。もちろん、B級でも面白ければよいのですが、本作はそれ以前に原作との違いが気になって素直に楽しめないという問題があります。まず、ケンシロウを演じてるゲイリー・ダニエルズですが、彼はトータル35勝を誇る元キックボクサーです。そのため、確かにアクションシーンは無難にこなしています。ただし、原作のケンシロウの超人的な拳法を期待している観客にはその動きがしょぼく感じてしまうのです。特に、ケンシロウの代名詞というべき北斗百烈拳はあまりの説得力のなさに、失笑すらもれてしまいます。もちろん、人間に漫画のキャラの動きを再現できるわけはありませんが、その辺は撮り方の工夫でなんとかしてもらいたかったところです。また、ストーリーの方もケンシロウの師父であるリュウケンがシンに銃殺されるなど、原作ファンが「なんでやねん」と突っ込みたくなる改悪のオンパレードです。さらに、リンとバットがあまりにも原作イメージと違いすぎるという問題もあります。結局のところ、これが『北斗の拳』というタイトルが付いていなければB級アクション映画の凡作程度の評価で終わっていたところですが、あまりにも原作漫画との乖離が激しいことで本作は90年代を代表するクソ映画の烙印を押されることになります。
北斗の拳【劇場版】 [DVD]
ゲイリー・ダニエルズ
東映ビデオ
2004-11-21



2002年(平成14年)

バイオハザード
(バイオハザード)独・英・仏
原作
1996年に家庭用ゲームとして発売された『バイオハザード』はゾンビを相手に戦うアクションアドベンチャーゲームですが、ポリゴンによる立体フィールドを創出したことによってリアルな恐怖表現を実現しました。その映像は3Dゲームに耐性のなかった当時のゲーマーに大きな衝撃を与え、プレイステーションという発売されたばかりのプラットフォームでミリオンセラーの大ヒットを記録します。その結果、プレイステーションは一気に躍進し、当時熾烈だった次世代機戦争の主導権を握ることになったのです。『バイオハザード』自身も大人気シリーズとなり、さまざまなプラットフォームで続編や番外編を未だに発売しつづけています。
日本のゲームやアニメを海外で映画化すると原作の雰囲気が壊されるというイメージがすっかり定着した頃に公開され、そのマイナスイメージを払拭したのが本作です。もともと海外を舞台にしたゾンビゲームなので洋画との相性がよかったこともあり、原作のイメージを見事に再現しています。主役は原作のジルからオリジナルキャラのアリスに変更されているものの、彼女を演じるミラ・ジョヴォヴィッチの美しさが物語世界の雰囲気にマッチしていて非常にいい感じです。ストーリーも単純なゾンビ襲撃ものにするのではなく、主人公の記憶喪失を軸にして次第に謎が解けていく展開にしているのが秀逸です。おかげで、物語が単調になるのを回避し、観客の興味を引っ張り続けていくことに成功しています。ただ、現代の目から見るとモンスターのCGのクオリティが低い点がつらいところです。ともあれ、本作は興行的にも成功を収め、ゲームと同じようにその後何本もの続編が製作されることになります。日本のコンテンツ作品の中では最も成功した洋画タイトルの一つです。
バイオハザード [DVD]
ミラ・ジョヴォヴィッチ
アミューズソフトエンタテインメント
2003-01-24



2003年(平成15年)

ハウス・オブ・ザ・デッド
(ザ・
ハウス・オブ・ザ・デッド)米・加・独 
原作
1997年にセガから発売されたアーケード用3Dガンシューティングです。当時、すでに3Dガンシューティング自体は珍しくなくなっていましたが、敵をゾンビにした点に大きな特徴があります。つまり、相手に撃ち返される心配がないかわりに、ゾンビは銃弾にひるむことなくこちらに近づいてくるので、視覚的なスリルをたっぷりと味わえるというわけです。また、各面を単純にクリアすればよいというわけではなく、条件によってルートが分岐するといった要素もゲームに深みを与えています。そういった魅力によって本作は高い人気を得、シリーズも4作まで発売されることになります。
『バイオハザード』と同じゾンビゲームの映画化ですが、クオリティのほうは大きく劣っています。大したストーリーがなくてひたすら銃を撃ちまくるのは原作準拠だからよいとしても、あまりにもメリハリがないのでひどく単調に感じてしまうのです。確かに、ゲーム風の画面を挿入したり、マトリックス風のカメラワークを駆使したりして変化を付けようとはしているのですが、それが演出として全く意味をなしていないのが痛いところです。凡庸なアイディアをなんの工夫もなく、垂れ流されるので見ているほうは段々と苦痛に感じてしまいます。ちなみに、監督のウーヴェ・ボルは最低映画に送られるゴールデンラズベリー賞に何度もノミネートされている人物であり、本作を見るとなるほどという感じがします。
ハウス・オブ・ザ・デッド [DVD]
ジョナサン・チェリー
日活
2005-08-05



2004年(平成16年)

バイオハザード Ⅱ アポカリプス(バイオハザード3 LAST ESCAPE)
独・英・仏・加
原作
バイオシリーズの第3弾であり、前作の『バイオハザード2』と同じ時系列を別の視点から描いた点に特徴があります。また、シリーズ1作目の主人公だったジル・バレンタインが再登場するのもファンにとってはうれしいところではないでしょうか。

【劇場版
映画の話自体はオリジナルストーリーですが、ゲーム版の主人公であるジルが初めて登場する他、舞台背景やクリーチャーなど、『バイオハザード3 LAST ESCAPE』の影響を強く受けています。また、作品の傾向としてはホラー要素が大きく後退し、アクションが全面に押し出されているのが印象的です。そのため、ホラー映画を見に来た人はがっかりするかもしれませんが、痛快娯楽アクション映画として観ればかなり楽しい作品に仕上がっています。ゲームのキャラやクリーチャーたちが大挙して登場し、お祭り騒ぎのような作品になっているのです。そういう意味では原作ファンにも十分配慮が行き届いた作品だといえます。ただ、その反面、脚本はどうしても大味なものにならざるを得ず、その辺りは賛否の分かれるところではないでしょうか。
バイオハザード II アポカリプス デラックス・コレクターズ・エディション [DVD]
ミラ・ジョヴォヴィッチ
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2005-01-26



2005年(平成17年)

頭文字D 
THE MOVIE(頭文字D)中・香
原作
峠道を舞台に公道最速を目指す走り屋たちの青春を描いた青年コミック。
週刊ヤングマガジンにて1995~2013年まで連載され、全48巻で約5000万部の売上を記録した大ヒット作品です。人気の源はなんといってもリアルで迫力満点のマシン描写にあり、その魅力は3DCGで描かれたアニメにも引き継がれることになります。その結果、アニメもかなりの人気を博し、DVDのトータル売上50万本という数字を達成することになったのです。

【劇場版
香港ノワールの名作『インファナル・アフェア』のスタッフによる映画化ということで期待は否応なく高まっていたものの、ドラマ部分は安っぽいメロドラマといった感じで肩透かしを食らうことになった作品です。また、舞台は日本なのに出演者の多くが香港の俳優であり、香港映画のノリで話が進んでいくというのもかなり違和感があります。その代わり、レースシーンの迫力は一級品です。日本の実写映画でこれだけの臨場感を出すのは困難でしょう。ドラマに対する期待は捨て、レースシーンのみに注目すべき作品だといえます。
頭文字[イニシャル]D THE MOVIE スタンダード・エディション [DVD]
ジェイ・チョウ
エイベックス・ピクチャーズ
2006-02-15


2006年(平成18年)

サイレントヒル(サイレントヒル)
・日・加・仏 
原作
1999年にコナミから発売されたホラーアドベンチャーゲームです。プレイステーションをプラットフォームにして多数のシリーズを発売し、ホラーゲームとしては『バイオハザード』に次ぐ知名度を誇っています。また、『バイオハザード』がゾンビによるアクティブな恐怖を基調としているのに対し、『サイレントヒル』は静寂の中から滲み出てくるようなゾッとする恐怖にこだわっているという違いがあります。さらに、家族が物語上のメインテーマとなっているのも本シリーズならではの特徴です。ちなみに、世界販売本数はシリーズで900万本を記録しています。




【劇場版
セットや美術に凝り、ゲームの雰囲気をかなり忠実に再現しているため、原作ファンなら間違いなく楽しめる出来です。生理的嫌悪感をそそるクリーチャーの動きやサウンド演出までゲームそのままなのもうれしいところです。おまけに、ストーリーもまるでゲームをプレイしているかのような感覚で進んでいきます。ただ、原作をよく知らない人にとっては作りものっぽく感じられ、その点に不満を覚えるかもしれません。ゲームに思い入れがあるかどうかで大きく評価が変わってきそうな作品です。
サイレントヒル [Blu-ray]
ラダ・ミッチェル
ポニーキャニオン
2016-08-17



2007年(平成19年)

DOA/デッド・オア・アライブ
DEAD OR ALIVE米・独・英
原作
『デッド・オア・アライブ』は『バーチャファイター』や『鉄拳』といった3D対戦格闘ゲームの人気が高まっていた1996年にテクモ(現コーエーテクモゲームス)から発表されました。従来の打撃や投げという要素に加え、ホールドという掴み技を導入し、「打撃は投げに勝ち、投げはホールドに勝ち、ホールドは打撃に勝つ」という三すくみシステムを完成させたのが最大の特徴です。さらに、当時の他の格闘ゲームに比べると、女性キャラが多く、可愛らしさやセクシーさを全面に押し出したものとなっています。全体的にバストの大きさが強調され、乳揺れなどの演出も注目を集めました。一方で、美しいグラフィックと奥深いゲームシステムも高く評価され、シリーズ累計で世界販売本数1000万本を達成する人気作となっていきます。




【劇場版
冒頭からどう見ても日本とは思えない
巨大な忍者砦が映し出され、その時点で胡散臭さ全開です。その後もB級テイストのストーリーが展開され、真面目に観るのがばかばかしくなります。登場人物も決して原作に似ているとはいえません。ゲームの再現度を期待して観ると失望すること請け合いです。しかし、一方で、セクシーなコスプレ美女軍団が暴れまわるさまはなかなか爽快で、格闘シーンもかなり本格的です。それから、原作再現度は低いといいましたが、『DEAD OR ALIVE Xtreme』のビーチバレーシーンがきっちりと再現されているのには原作愛を感じました。最初からバカ映画だと割り切れば大いに楽しめる作品だといえます。
DOA デッド・オア・アライブ デラックス版 [DVD]
デヴォン青木 ホリー・ヴァランス ジェイミー・プレスリー ケイン・コスギ サラ・カーター ナターシャ・マルテ
ジェネオン エンタテインメント
2007-08-03


2008年(平成20年)

スピードレーサー(マッハGoGoGo!)
原作
日本でテレビアニメの放送が始まってまだ間もない1966年に放映された子ども向けレースアニメです。ボタンひとつでジャンプしたり、電動のこぎりで木を切り倒しながら走ったりと楽しいギミックが魅力で、高い人気を博しました。しかも、その人気は国内だけにとどまらず、アメリカでも『スピードレーサー』のタイトルで放映され、一大ブームを巻き起こすことになります。そして、そのことがのちにハリウッドでの映画化につながっていくわけです。

【劇場版
監督は『マトリックス』によって映像の革命児と呼ばれたウォシャウスキー兄弟です。そんな彼らが5年ぶりに新作を発表するということで当然、大きな注目が集まりました。しかし、興行収入は全世界で1億ドル以下と、大惨敗といってよい数字に終わっています。とはいえ、内容的には決して駄作というわけではありません。俳優以外をすべてCGで描いた極彩色の映像にはこれまでの映画にはないインパクトがありますし、おもちゃ箱をひっくり返したような世界観も楽しさに溢れています。また、監督の原作愛がひしひしと感じられる点も好印象です。ただ、画面の派手な色合いはずっと見続けていると目がチカチカしてきますし、ストーリーも原作に合わせて子供っぽくしすぎたきらいがあります。その結果、本作は観る人を極端に選ぶ作品となってしまい、期待されていたような興行成績を得られなかったというわけです。
スピード・レーサー [Blu-ray]
エミール・ハーシュ
ワーナー・ホーム・ビデオ
2010-04-21



2009年(平成21年)

ストリートファイター/ザ・レジェンド・オブ・チュンリー(ストリートファイターⅡ)
原作
※『ストリートファイター』参照



【劇場版
『ストリートファイターⅡ』の人気キャラクター・春麗がストリートファイターになるまでを描いたアナザーストーリー的な作品です。1994年の『ストリートファイター』が安っぽいコスプレ大会だったのに対して、本作は非常に真面目な作りになっています。春麗が老け顔ではなく、若くて美人なのも好印象です。ただ、今回は逆に、あまりにも遊び心に欠けているのが問題です。まず、春麗がお団子頭にチャイナ服といったいつものコスチュームをしていないので誰だかわかりません。敵キャラも同様です。かろうじてバルログだけは仮面をしているので認識可能ですが、こちらは演じている役者がミスキャストすぎです。そのため、全くストⅡらしさ皆無の単なるB級アクション映画になってしまっています。また、ストⅡとは別物の独立した映画として観ても、とりたてて誉めるところがない凡作というのが正直なところです。



ドラゴンボール EVOLUTION(ドラゴンボール)
原作
週刊少年ジャンプにて1984~1995年まで連載されていた冒険バトル漫画です。その人気はジャンプ黄金期の連載漫画の中でも突出しており、国内での単行本売上が1億6千万部、海外も合わせると2億5000万部以上という数字を叩き出しています。しかも、テレビアニメも11年間の放送の間、平均視聴率20%以上を維持し続け、世界80カ国以上で放送されたという実績を持っています。おまけに、ゲームでもミリオンセラーのソフトを10タイトル以上輩出しているのです。まさにレジェンド級の怪物作品だといえるでしょう。



【劇場版
日本のアニメやゲームを原作とした洋画は、その最初期においてはひどいとしか言いようのないありさまでした。原作に対するリスペクトが感じられず、クオリティも低いものばかりだったのです。それが、21世紀に入ると、完璧とまではいえないものの、それなりに楽しめる作品も増えてきました。ところが、ここに来て最大級というべき地雷が炸裂します。それがこの『
ドラゴンボール EVOLUTION』です。世界的な人気作品だけあって公開前は大いに期待されていましたが、いざ公開されると多くの人がその出来の悪さに失望してしまうことになります。まず、孫悟空が高校に通っていて、しかも、ティーンエイジャー向けの恋愛映画みたいな展開を始めるところからして滅茶苦茶です。リスペクトのなさでは『スーパーマリオ』や『ストリートファイター』すら凌駕しています。チョウ・ユンファの亀仙人も明らかにミスキャストです。ラスボスのピッコロ大魔王に至ってはシンボルマークである触角がなくなっており、これではジム・キャリーの『マスク』と区別がつきません。はっきりいってドラゴンボールらしさはゼロです。それでもアクション映画として面白ければまだよいのですが、全体的に迫力不足で盛り上がるところが全くありません。当初は続編も予定されていたとのことですが、1作目がこの出来では中止になるのも当然だといえるでしょう。
ドラゴンボール EVOLUTION (特別編) [DVD]
ジャスティン・チャットウィン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2010-04-23



ATOM(鉄腕アトム)香・米
原作
『鉄腕アトム』は21世紀の近未来を舞台に、原子力で動く少年型ロボットの活躍を描いたSF漫画です。漫画の神様・手塚治虫の代表作の一つであり、1952~1968年の長きに渡って連載を続けていました。1959年には実写ドラマとなり、そして1963年に日本初の連続テレビアニメとして放送されるに至り、大ブームを巻き起こします。初回視聴率は27.4%で最高視聴率は40%越えを記録しています。なお、このアニメは『アストロボーイ』のタイトルでアメリカに輸出され、そこでも高い人気を得ることになります。
鉄腕アトム 1
手塚治虫
手塚プロダクション
2014-04-25



【劇場版
この作品は実写ではなく、CGアニメとして映画化されています。原作漫画や日本のアニメに親しんでいる人にとっては結構違和感がありますが、出来自体はそれほど悪くありません。CGのクオリティも高く、脚本も全体的に駆け足気味ではあるものの、無難にまとめられています。ただ、物語としてはかなり子供向けです。そのため、大人にはそっぽを向かれ、子供にはアトムというタイトル自体が訴求力に乏しいということで、興行は大コケに終わってしまいます。大きな赤字を出し、製作会社はCGアニメーションから撤退する事態へと追い込まれてしまいました。



TEKKEN 鉄拳(鉄拳)日・米
原作
SEGAの『バーチャファイター2』が大ブームを巻き起こしていた時期に、ナムコ(現バンダイナムコグループ)が発表したアーケードゲームです。発表当初は『バーチャファイター2』の影に隠れてそれほど注目されることはありませんでしたが、プレイステーションと互換性のある基盤で開発されたことによって風向きが変わってきます。バーチャファイターがセガサターンでしか発売されないため、プレイステーションユーザーはその代替品として『鉄拳』を求めたのです。しかも、移植に時間がかかるバーチャファイターとは異なり、すぐに家庭用ソフトとして発売されるのも魅力的でした。そしてプレイステーション版『鉄拳2』はミリオンセラーを達成し、盤石の人気を築いていくことになります。ゲームシステム的には四肢にそれぞれ一つずつ対応させた4つの打撃ボタンや10連コンボといった独自のシステムがユニークです。その後も本作はシリーズを重ね、2017年にはギネスから「最も長く続く3D対戦格闘型ビデオゲーム』の称号を送られることになります。
鉄拳7 - PS4
バンダイナムコエンターテインメント
2017-06-01




【劇場版
いろいろ問題のある作品ですが、まず何と言っても日本人役を全員白人が演じているため、違和感が半端ありません。それに加えてカタコトの日本語が頻出するのでますますコレジャナイ感が高まっていきます。とはいっても格闘シーンに関してはそこそこ迫力があり、バカ映画として割り切れば楽しめないこともありません。ただ、各キャラのファイティングスタイルが全く原作準拠ではないため、原作のファンが鑑賞するとストレスの溜まる出来になっています。特に、ラスボスである一八との対戦があまりにもあっさりと終わってしまったのが残念です。
TEKKEN -鉄拳- [Blu-ray]
ジョン・フー
ワーナー・ホーム・ビデオ
2011-07-20



2010年(平成22年)

ザ・キング・オブ・ファイターズ
ザ・キング・オブ・ファイターズ)
原作
1994年にSNKが家庭用ゲーム機・NEO・GEOから発売した対戦格闘ゲーム。その最大の特徴は『餓狼伝説』や『龍虎の拳』といった自社の人気ゲームのキャラを登場させ、ドリームマッチバトルというコンセプトを打ち出したことにあります。また、ゲームシステム的には3VS3というチームバトルの概念を初めて導入した作品としても有名です。同タイトルは対戦格闘ゲーム全盛の時代において絶大な人気を誇り、SNKもそれに応えて2003年までは毎年新作を発表し続けます。その後の新作発売は断続的になっていきますが、今なお根強い人気を誇る、格闘ゲーム界のビッグタイトルの一つです。




【劇場版
今まで数多くの格闘ゲームがハリウッドによって映画化され、その多くはひどい出来でした。本作はその中でも最底辺に位置する作品です。まず、原作には多くの日本人キャラが登場しますが、『
TEKKEN 鉄拳』と同じで彼らを演じているのがすべて白人という時点で萎えてしまいます。その上、衣裳も似せようとしていないので誰が誰だかわからない状態です。これなら東洋人キャラを東洋人が演じ、わかりやすくコスプレをしていた『ストリートファイター』のほうがまだマシです。それでも『DOA/デッド・オア・アライブ』のようにアクションに切れがあるのであればB級映画として楽しめたかもしれませんが、DOAと比べると圧倒的に迫力が不足しています。必殺技の再現などもなく、一体なんのために映画化をしたのかが謎です。もちろん、ストーリーにも観るべきものは皆無であり、絵に描いたような駄作に仕上がっています。
ザ・キング・オブ・ファイターズ [DVD]
マギー・Q(不知火舞 役)
アミューズソフトエンタテインメント
2011-09-02



2012年(平成24年)

サイレントヒル:リベレーション3D
(サイレントヒル3)・加・仏
原作
2003年にプレイステーション2から発売されたシリーズ第3作です。同時に、1作目の直接的な続編にもなっています。システム面は過去作とほぼ同じですが、新たにスタミナシステムが追加され、スタミナを消費すると移動速度が遅くなるようになっています。その結果、慎重な行動が求められ、よりスリルを味わえるようになりました。
SILENT HILL 3
コナミ
2003-07-03





【劇場版】
ゲームを忠実に再現していた前作と比べ、本作はすべてにおいて雑さを感じさせます。展開は安っぽくってご都合主義なものになっていますし、物語自体にメリハリが感じられないので観ていてひどく退屈です。それに何より、映像にこだわりが感じられないところが大きなマイナスです。一応、ゲームのシーンを再現しようとはしていますが、前作と比べると薄っぺらさは否めません。かろうじて、音楽のクオリティが相変わらず高い点だけが救いでしょうか。ちなみに、音楽担当は前作やゲーム版を手掛けた山岡晃です。



2015年(平成27年)

デッドライジング ウォッチタワーデッドライジング)
原作
2006年にカプコンがXBOX360から発売したアクションゲームです。ゾンビが溢れかえった世界の中で生き抜くゲームということで同じカプコンの『バイオハザード』を連想しがちですが、両者のゲーム性は全く異なります。『バイオハザード』がイベントをクリアしながら先に進んでいくタイプのアドベンチャーゲームとすれば、『
デッドライジン』はエリア内を自由に行き来できる箱庭型アクションゲームです。そのエリア内でゾンビ退治にいそしむのもよし、買い物を楽しむのも良し、生き残った人々と交流を深めるのも良しといった具合に非常に自由度が高い点が魅力となっています。しかも、『バイオハザード』がシリアスドラマであるのに対して、本作にはコメディタッチの要素がふんだんに盛り込まれているのも大きな違いです。以上のように、『バイオハザード』との明確な差別化を図り、ゲーム自体の完成度も申し分なかったため、本作は極めて高い評価を得ることになります。XBOX360が普及していないために日本での売上は伸び悩みますが、北米ではミリオンセラーを記録し、人気シリーズとしての第一歩を踏み出したのです。

【劇場版】
ゲーム版の小ネタが随所にちりばめられているため、原作のファンなら楽しめるかもしれません。しかし、独立したゾンビ映画として観た場合は緊張感がなさすぎてなんともしまらない出来になっています。また、ストーリー的に必要がないと思われるシーンも多すぎて全体的に冗長です。30分ぐらい削ってもっとテンポをよくすればまだかなりマシになった気がします。原作愛は十分に感じられるものの、実力が伴っていない凡作というのが妥当な評価ではないでしょうか。
デッドライジング ウォッチタワー [Blu-ray]
ジェシー・メトカーフ
ポニーキャニオン
2015-12-02



皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ(鋼鉄ジーグ) 
原作
70年代に数多く作られた巨大ロボットアニメの1つであり、1975~1976年にかけてテレビ放映された作品です。各パーツが変形して磁石で合体するというのが最大の特徴であり、
主人公自身も頭部に変形してロボットのパーツの一部になるという設定にはインパクトがありました。ただ、先行作品の『マジンガーZ』や『ゲッターロボ』などに比べると視聴率は低調で、決して人気作品というわけではなかったのです。ところが、この作品が1979年にイタリアで放送されると、爆発的な人気を得ることになります。現在40代のイタリア人でこの作品を知らない人はいないといわれているほどです。
鋼鉄ジーグ VOL.1 [DVD]
古谷徹
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
2017-01-11

【劇場版】
本作は『鋼鉄ジーグ』の実写化ではなく、突然、超人的な能力に目覚めた男が自分の生き方を模索していくという、いわばアメコミヒーローの変奏曲的な物語になっています。そこに、鋼鉄ジーグオタクのヒロインを絡めて鋼鉄ジーグのリスペクト作品に仕上げているというわけです。ただ、ヒーローものといってもハリウッド映画のような颯爽としたシーンは皆無で、超人的な能力を得たからといって簡単にヒーローになれるわけではないというリアリズムが全編を貫いています。スーパーヒーローという絵空事にリアリズムを注入することで実に切なく、心に沁みいる作品になっているのです。既存のヒーロー映画には飽きたという人におすすめしたい傑作です。
皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ [Blu-ray]
クラウディオ・サンタマリア
ポニーキャニオン
2017-12-20



2017年(平成29年)

ゴースト・イン・ザ・シェル
攻殻機動隊/GHOST IN THE SHELL 
原作
人間の電脳化やサイボーグ化が進んだ近未来を舞台に内務省直属の公安9課の活躍を描いたサイバーパンクアクション。もともとの原作は1991年に単行本が発売された士郎正宗のSF漫画ですが、アニメ映画やテレビアニメが製作されたことでその名が広く知られるようになります。特に、1995年に公開された劇場用アニメ『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』は北米において日本の映像作品として初めてビデオセール100万本を突破するという快挙を達成しています。
GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 [Blu-ray]
家弓家正
バンダイビジュアル
2017-04-07

【劇場版】
物語そのものは原作とは無関係のオリジナルストーリーですが、アニメを彷彿とさせるシーンが散りばめられており、原作のリスペクトという点では申し分ない映画です。しかし、そもそも原作アニメの『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』自体がハリウッドのSF映画に多大な影響を与えているため、今更その元ネタを映像化しても古臭く感じるだけです。それに、映画オリジナルのギミックも感性が古くて全体的に80年代のサイバーパンク映画といった印象がぬぐえません。ビルよりも高い芸者のホログラムなどは『ブレイドランナー』を彷彿とさせ、とてもこれが2017年の映画だとは信じられないほどです。また、スカーレット・ヨハンソン演じる少佐が義体化前は日本人だったとか、公安9課の荒巻課長を英語がしゃべれないビートたけしが演じているとか、日本に対する中途半端な配慮も作品に違和感をもたらす結果となっています。それに、なりより問題なのはパッケージにもなっているヨハンソンの疑似ヌードです。もっさりとしてカッコ悪く明らかに作品のイメージを悪くしています。原作には全くないシーンだけになぜあのような設定にしたのか疑問の残るところです。とはいえ、決して駄作と断じるほどにひどい作品というわけでもなく、ストーリーも分かりやすいのでB級映画と割り切って観ればそれなりに楽しめるのではないでしょうか。
ゴースト・イン・ザ・シェル[AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]
スカーレット・ヨハンソン
パラマウント
2018-03-23



Death Note/デスノート(DEATH NOTE)米 
【原作】
2003年12月~2006年6月まで週刊少年ジャンプで連載され、比較的短い連載期間にも関わらず、3000万部を超える売上を記録した大ヒット作品です。そこに名前を書いた人間を死に追いやることのできるデスノートを巡る頭脳戦を描いた作品なのですが、本作が数ある少年ジャンプのヒット作の中でも異彩を放っているのは主人公の夜神月(やがみ・らいと)が悪人として描かれている点です。一応、デスノートを使用するのは犯罪のない理想郷を築くためだとし、同情の余地のない悪逆非道な人物以外は殺さないというルールを自身に課してはいるものの、実際は、目的の障害となる人物であればたとえ善人であってもあっさりと殺してしまいます。しかも、最初は自信過剰な故に多少傲慢なところがある程度の人物像だったのが、回を追うごとにどんどん性格が歪んでいき、最後にはまるで殺人を愉しんでいるかのごとき言動をみせるようになるのです。この強烈な主人公像と人気キャラであるLとの頭脳戦の面白さや、小畑健の緻密な作画などによって本作は社会現象というべき人気を獲得することになります。2006年に前後編で公開された藤原竜也主演の映画も好評を博し、それをきっかけにアニメ・ドラマ・スピンオフ映画など、次々と新たな映像化作品が製作されていったのも記憶に新しいところです。

【劇場版】
アメリカでは2017年に『Death Note/デスノート』のタイトルで映画化されていますが、これは劇場公開はされておらず、Netflixによるネット配信という形をとっています。ちなみに、アメリカを舞台にしているため、登場人物の名前は夜神月がライト・ターナーといった具合にすべて米国風です。しかし、問題はそんなことよりも物語の設定そのものにあります。ライトは平凡な若者で、原作では冷静沈着だったLもすぐに取り乱してしまう人物として描かれているのです。そのため、原作最大の魅力だった頭脳戦の要素がすっぽりと抜け落ちてしまっています。特に、冷静さを失ったLがライトを追いかけ回すという後半のシーンは『DEATH NOTE』とは別物の何かと言わざるをえません。そして、それ以外にも、話の展開にはいろいろ雑さが目立ちます。やはり、あの原作を100分でまとめるのは無理があったようです。かろうじて見所といえるのは死神リュークの造形がが日本版より迫力があり、犠牲者のゴアシーンが派手な点ぐらいでしょうか。なお、監督のアダム・ウィンガードは2021年に『ゴジラVSコング』も手掛けており、こちらは好評を博しています。
DVD未発売

2018年(平成30年)

シティ・ハンター 史上最香のミッション(シティハンター) 
原作
※『シティ・ハンター』参照




【劇場版】

まさかのフランス版シティハンターです。その時点で不安しかありませんが、これが驚くほど原作に忠実に作られています。獠のもっこり、香のハンマー・海坊主のバズーカ―なども完全再現です。ストーリー自体はオリジナルではあるものの、原作の雰囲気を壊さないように細心の注意が払われている点に原作愛を感じます。そのうえで、コメディとしてもアクション映画としてもよくできているのが見事です。B級テイストの漫画チックな作りは原作を知らなければ好みの分かれるところですが、原作ファンなら間違いなく楽しめる出来だといえるでしょう。漫画原作にアレンジを加えずにそのまま実写化したものとしては希有の成功例です。



2019年(平成31年)


アリータ:バトル・エンジェル銃夢)米 
【原作】
全身サイボーグの少女がさまざまな敵と戦うサイバーパンクSF格闘漫画です。ビジネスジャンプで90~95年まで連載されました。格闘アクションがメインの作品ですが、軌道エレベーターやナノマシンなどといったSFガジェットがふんだんに盛り込まれている点も大きな見どころになっています。なお、本編終了後にはその続編である『銃夢 Last order』が2000~2014年にかけてウルトラジャンプ及びイブニングで連載されました。また、海外でも人気の高い作品であり、英語圏では『Battle Angel Alita』のタイトルで発売されています。
銃夢(1)
木城ゆきと
講談社
2014-01-31

【劇場版】
映画を観てまず驚くのがヒロインであるアリータの目です。CG加工された目はまるで漫画やアニメのキャラのように巨大で、最初に観たときはどうしても違和感を覚えます。しかし、慣れてくるとその巨大な目がキュートに見えてくるのが不思議です。そして、映画を観終わるとヒロインの可愛らしさはあの目でなければ表現できなかったのだと納得させられてしまいます。また、本作では目に限らず、CGが効果的に用いられています。特に、アリータの圧倒的な強さを見せつけるバトルシーンは圧巻です。おそらく、日本のコンテンツ作品に基づいたハリウッド映画の中では最良の1本だといえるでしょう。実際、観客の評価は上々で興行収入も北米では今一つだったものの、世界全体では4億ドル以上というまずまずのヒットを記録しています。ただ、続編ありきの作りだったため、怒涛の盛り上がりを期待していた人にとっては中途半端な作品に感じたかもしれません。ここはぜひとも続編の登場に期待したいところです。
アリータ:バトル・エンジェル 2枚組ブルーレイ&DVD [blu-ray]
ローサ・サラザール
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
2019-09-11



今後の映画化予定作品
極めて駄作率の高かった日本のアニメ&ゲームの洋画化ですが、そんな中からもいくつかの佳作・傑作は生まれています。ハリウッド映画も次第に日本のコンテンツの扱い方に慣れてきている印象を受けるので令和の時代にはさらなるクオリティアップに期待したいところです。そして、その第1弾というべき存在が年号が切り替わってすぐに封切られた『名探偵ピカチュウ』です。評判も上々で世界的なヒットを続けています。その他にも、『
ソニック・ザ・ヘッジホッグ』『君の名は。』『進撃の巨人』『機動戦士ガンダム』などの映画化が予定されており、その映像化がどのようなものになるかはなかなか興味深いものがあります。


★★★
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