最新更新日2019/07/31☆☆☆
Next⇒不可能犯罪の歴史 海外編Ⅱ.ジョン・ディクスン・カーの時代
内部から鍵のかかっている部屋に死体が転がっている密室殺人、袋小路から忽然と姿を消す人間消失、犯人は空中を歩いたとしか思えない足跡のない殺人など物理的に不可能と思われる現象を論理的に解決するのはミステリー小説の大きな醍醐味です。その魅力故に今までさまざまな不可能犯罪トリックが考案され、多くの読者を魅了してきました。今回はそんな不可能犯罪ものの歴史についてまとめてみました。
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1841年
モルグの街殺人(エドガー・アラン・ポー)
世界最初のミステリー小説にして世界初の密室殺人の登場する作品 。ただ、その扱いはあまりにも軽いのでうっかりと見逃しそうになるほど。
1891年
ビッグボウの殺人(イズレイル・ザングウィル)
おそらく世界で最初に密室殺人をメインテーマとして扱った長篇作品。トリックはシンプルかつ巧妙なもので、それに影響を受けた後世の作家がさまざまなバリエーションを考案しています。そのため、本作を未読でもある程度ミステリーに通じている人ならこのトリックを知っている可能性は高いでしょう。
1892年
まだらの紐(アーサー・コナン・ドイル)
ホームズシリーズを代表する名作であり、古典的な密室殺人トリックが有名です。ただ今となっては、つっこみどころが満載な真相がよくネタにされる作品でもあります。
1903年
飛んできた死(サミエル・ポプキンズ・アダムス)
おそらく世界最初の足跡トリックミステリー
1905年
十三号独房の問題(ジャック・フットレル)
思考機械シリーズの代表作。通常の不可能犯罪とは趣が違い、絶対脱出不可能とされる独房からいかに抜けだすかがテーマになっている作品です。
正義の四人(エドガー・ウォーレス)物語自体は本格ではなく怪盗ルパンのようなスリラーですが、作中に出てくる密室の謎に対して賞金がかけられた作品。そして、作品そのものは大ヒットしましたが、正解者があまりにも多く、この本のために立ち上げた出版社はたちまち資金難に陥ったそうです。
1908年
黄色い部屋の謎(ガストン・ルルー)
密室ものの古典的名作としてあまりにも有名です。当時としては非常によく練られたトリックであり、しかも人間消失トリックがふたつも(ただしこれらは単純なトリックですが)あるといという贅沢な作りになっています。
オーストリア産の短編ミステリー。独特のムードをまとった作品で最初期の足跡トリックが登場します。
1909年
アルミニウムの短剣(オースティン・フリーマン)
ディクスン・カーの『プレーグ・コートの殺人』の元ネタとなったと思われる密室殺人もの。
1911年
ズームドルフ事件(メルヴィル・ディヴィスン・ポースト)
日仏の著名な作家たちも同様のトリックを使っていることで有名な作品。銃弾による密室殺人と言えばこれというほど広く知られているトリックです。しかし、本作はトリックだけの作品ではなく、不可能犯罪を巡る雰囲気の盛り上げ方が巧みです。
ブラウン神父の童心(G・K・チェスタトン)
あまりにも有名な『見えない男』を初めとして不可能犯罪を扱った作品が多く収録されている短編集。
1912年
ギルバート・マレル卿の絵(V・L・ホワイトチャーチ)
列車が次の駅に着くと貨車が一両消失していた。魅力的な謎で有名な作品ですが、今となっては単純なトリックです。
1923年
八点鐘(モーリス・ルブラン)
怪盗アルセーヌ・ルパンが探偵役を務める連作ミステリー。トリッキーな仕掛けがある本作は本格ミステリの短編集として評価が高く、『テレーズとジュメール』と『雪の上の足跡』には、それぞれ密室トリックと足跡トリックの古典的なバリエーションが登場します。
血染めの鍵(エドガー・ウォーレス)
施錠された地下室で男が銃殺され、唯一の鍵は血だらけになって部屋の中に転がっていたという謎を扱っています。あの定番中の定番である密室トリックを初めて使用し、ヴァン・ダインや横溝正史にも影響を与えたといわれています。ただし、物語はロジカルな本格ミステリというわけではなく、どちらかといえば波乱万丈のスリラーといった感じの作品です。
1925年
密室の行者(ロナルド・A・ノックス)
ユーモアと皮肉が信条のノックスらしいひねくれた密室もの。通常の密室殺人とは違い、食料がたっぷりあったにもかかわらず、男が密室内で餓死しているという奇妙な謎を扱っています。
カナリア殺人事件(ヴァン・ダイン)
ミステリーファンが密室トリックと言われて最初に頭に思い浮かべる基本トリックが登場します。
1931年
ケンネル殺人事件(ヴァン・ダイン)
『カナリア殺人事件』の発展型というべき密室トリックや古典的なトリックのバリエーションなどが用いられています。トリックは陳腐ですが、プロットはなかなか凝っており、ヴァン・ダインの作品としては『グリーン家殺人事件』『僧正殺人事件』に次ぐ傑作だといえます。
1932年
二つの密室(F・W・クロフツ)
広域に渡る捜査で、乗り物を利用したアリバイを崩していくのが定型となっているクロフツとしては珍しい、ひとつの家庭を舞台にした密室殺人もの。短編では1920年発表の『急行列車内の謎』で不可能犯罪を扱っていますが、そちらは得意の列車ものです。本作で登場するふたつの密室トリックは極めて単純で、現代読者から見れば陳腐と評されるものでしょう。しかし、プロット自体はよく練られており、密室の帝王ディクスン・カーが本領を発揮する前の作品と考えれば、出来自体はそう悪くはありません。
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内部から鍵のかかっている部屋に死体が転がっている密室殺人、袋小路から忽然と姿を消す人間消失、犯人は空中を歩いたとしか思えない足跡のない殺人など物理的に不可能と思われる現象を論理的に解決するのはミステリー小説の大きな醍醐味です。その魅力故に今までさまざまな不可能犯罪トリックが考案され、多くの読者を魅了してきました。今回はそんな不可能犯罪ものの歴史についてまとめてみました。
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1841年
モルグの街殺人(エドガー・アラン・ポー)
世界最初のミステリー小説にして世界初の密室殺人の登場する作品 。ただ、その扱いはあまりにも軽いのでうっかりと見逃しそうになるほど。
1891年
ビッグボウの殺人(イズレイル・ザングウィル)
おそらく世界で最初に密室殺人をメインテーマとして扱った長篇作品。トリックはシンプルかつ巧妙なもので、それに影響を受けた後世の作家がさまざまなバリエーションを考案しています。そのため、本作を未読でもある程度ミステリーに通じている人ならこのトリックを知っている可能性は高いでしょう。
1892年
まだらの紐(アーサー・コナン・ドイル)
ホームズシリーズを代表する名作であり、古典的な密室殺人トリックが有名です。ただ今となっては、つっこみどころが満載な真相がよくネタにされる作品でもあります。
1903年
飛んできた死(サミエル・ポプキンズ・アダムス)
おそらく世界最初の足跡トリックミステリー
1905年
十三号独房の問題(ジャック・フットレル)
思考機械シリーズの代表作。通常の不可能犯罪とは趣が違い、絶対脱出不可能とされる独房からいかに抜けだすかがテーマになっている作品です。
正義の四人(エドガー・ウォーレス)
1908年
黄色い部屋の謎(ガストン・ルルー)
密室ものの古典的名作としてあまりにも有名です。当時としては非常によく練られたトリックであり、しかも人間消失トリックがふたつも(ただしこれらは単純なトリックですが)あるといという贅沢な作りになっています。
奇妙な跡(バルドゥイン・グロラー)
オーストリア産の短編ミステリー。独特のムードをまとった作品で最初期の足跡トリックが登場します。
1909年
アルミニウムの短剣(オースティン・フリーマン)
ディクスン・カーの『プレーグ・コートの殺人』の元ネタとなったと思われる密室殺人もの。
1911年
ズームドルフ事件(メルヴィル・ディヴィスン・ポースト)
日仏の著名な作家たちも同様のトリックを使っていることで有名な作品。銃弾による密室殺人と言えばこれというほど広く知られているトリックです。しかし、本作はトリックだけの作品ではなく、不可能犯罪を巡る雰囲気の盛り上げ方が巧みです。
ブラウン神父の童心(G・K・チェスタトン)
あまりにも有名な『見えない男』を初めとして不可能犯罪を扱った作品が多く収録されている短編集。
1912年
ギルバート・マレル卿の絵(V・L・ホワイトチャーチ)
列車が次の駅に着くと貨車が一両消失していた。魅力的な謎で有名な作品ですが、今となっては単純なトリックです。
1923年
八点鐘(モーリス・ルブラン)
怪盗アルセーヌ・ルパンが探偵役を務める連作ミステリー。トリッキーな仕掛けがある本作は本格ミステリの短編集として評価が高く、『テレーズとジュメール』と『雪の上の足跡』には、それぞれ密室トリックと足跡トリックの古典的なバリエーションが登場します。
血染めの鍵(エドガー・ウォーレス)
施錠された地下室で男が銃殺され、唯一の鍵は血だらけになって部屋の中に転がっていたという謎を扱っています。あの定番中の定番である密室トリックを初めて使用し、ヴァン・ダインや横溝正史にも影響を与えたといわれています。ただし、物語はロジカルな本格ミステリというわけではなく、どちらかといえば波乱万丈のスリラーといった感じの作品です。
1925年
密室の行者(ロナルド・A・ノックス)
ユーモアと皮肉が信条のノックスらしいひねくれた密室もの。通常の密室殺人とは違い、食料がたっぷりあったにもかかわらず、男が密室内で餓死しているという奇妙な謎を扱っています。
1927年
カナリア殺人事件(ヴァン・ダイン)
ミステリーファンが密室トリックと言われて最初に頭に思い浮かべる基本トリックが登場します。
1931年
ケンネル殺人事件(ヴァン・ダイン)
『カナリア殺人事件』の発展型というべき密室トリックや古典的なトリックのバリエーションなどが用いられています。トリックは陳腐ですが、プロットはなかなか凝っており、ヴァン・ダインの作品としては『グリーン家殺人事件』『僧正殺人事件』に次ぐ傑作だといえます。
1932年
二つの密室(F・W・クロフツ)
広域に渡る捜査で、乗り物を利用したアリバイを崩していくのが定型となっているクロフツとしては珍しい、ひとつの家庭を舞台にした密室殺人もの。短編では1920年発表の『急行列車内の謎』で不可能犯罪を扱っていますが、そちらは得意の列車ものです。本作で登場するふたつの密室トリックは極めて単純で、現代読者から見れば陳腐と評されるものでしょう。しかし、プロット自体はよく練られており、密室の帝王ディクスン・カーが本領を発揮する前の作品と考えれば、出来自体はそう悪くはありません。
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