最新更新日2021/11/07☆☆

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本ミス2021
対象作品である2019年11月1日~2020年10月31日の間に発売された謎解き主体のミステリー作品の中からベスト10の順位を予想していきます。ただし、あくまでも個人的予想であり、順位を保証するものではありません。また、予想は作家の知名度や人気、作風、話題性などを考慮したうえで票が集まりそうな作品の順に並べたものであり、必ずしも予想順位が高い作品ほど優れているというわけでもありません。それらの点についてはあらかじめご了承ください。
※紹介作品の各画像をクリックするとAmazon商品ページにリンクします
2021本格ミステリ・ベスト10
探偵小説研究会
原書房
2020-12-05


本格ミステリベスト10海外版最終予想(2020年11月14 日)

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記載方法は以下のようになっています。
予想順位.タイトル(作者名)本ミスの順位(このミスの順位 文春の順位 読みたいの順位)
ただし、「→本ミスの順位(このミスの順位 文春の順位 読みたいの順位)」の部分が記載されているのは予想ランキングあるいは本ミスで10位以内のものだけです。
なお、このミス、文春、 読みたいはそれぞれ「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「ミステリが読みたい!」の略です。
※※※※※※※※※※※※※※

1位.その裁きは死(アンソニー・ホロヴィッツ)1位(このミス1位 文春1位 読みたい1位)
シリーズ2弾。弁護士殺しという事件そのもに派手さはありませんが、大小さまざまな謎や過去の事件などが複雑に入り組み、最後にきれいに解き明かされるさまは、まさに上質な探偵小説の味わいです。犯人の意外さにも驚かされますし、本格ミステリとしては前作以上の出来映えではないでしょうか。
その裁きは死 ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズ (創元推理文庫)
アンソニー・ホロヴィッツ
東京創元社
2020-09-10


2位.指差す標識の事例(イーアン・ペアーズ)6位(このミス3位 文春4位 読みたい2位)
いわゆる信用できない語り手を4人配し、語り手が変わるたびに大学講師毒殺事件の様相ががらりと変わる構成の妙に惹き込まれていきます。そして、4人の多重推理が最後に1本の糸でつながり、意外な真相が明るみになる展開が見事です。17世紀の英国を舞台にした歴史ミステリーの傑作です。
指差す標識の事例 上 (創元推理文庫)
イーアン・ペアーズ
東京創元社
2020-08-31


3位.殺人七不思議(ポール・アルテ)3
先に翻訳された『あやかしの裏通り』よりも古いオーウェンシリーズの第2弾。世界の七不思議になぞらえた7つの見立て予告不可能犯罪という派手な趣向がたまりません。トリックもなかなかよく考えられています。ただし、いわゆるバカミストリックなのでこれを楽しめるかどうかは好み次第でしょう。


4位.網内人(陳浩基)2位(このミス14位 文春5位 読みたい17位)
SNS上での誹謗中傷が原因で自殺した妹の復讐を果たすため、姉が電脳探偵を雇って犯人を突き止めようとする話。途中まではオーソドックスな復讐譚のように見えますが、そこは陳浩基です。途中から物語の様相ががらりと変わり、プロットの巧みさに驚かされます。ハイテク探偵の鮮やかな推理も見事。
網内人 (文春e-book)
陳 浩基
文藝春秋
2020-09-28


5位.死亡通知書 暗黒者(周浩睴)5位(このミス4位 文春7位 読みたい17位)
中国の東野圭吾こと周浩睴による3部作の第1弾。本作は本格というよりは警察小説に近いのですが、犯人の仕掛ける驚くべきトリックあり、連続殺人犯の正体に迫る見事なロジックありといった具合に本格好きな人も堪能できるつくりになっています。同時に、サスペンススリラーとしても一級品です。


6位.ストーンサークルの殺人(M・W・クレイヴン)4位(文春8位
本作は、主人公の刑事と女性分析官の友情物語や老人ばかりを狙う連続猟奇殺人の犯人を追うサスペンスがメインとなっており、必ずしも本格ミステリとはいえません。ただ、ホワイダニットの謎や張り巡らされた伏線を回収して真実へとたどり着くプロセスは謎解きミステリーとして読み応えがあります。


7位.死んだレモン(フィン・ベル)8位(このミス16位 文春17位 読みたい8位)
半身不随の主人公が絶体絶命の危機に陥りながらも26年前の少女失踪事件の謎を解き明かすニュージランド発のサスペンスミステリーです。一方で、その強烈なサスペンスは巧みなミスディレクションとしても機能しており、過去を遡りながら真相に迫る謎解きミステリーとしてもよくできています。
死んだレモン (創元推理文庫)
フィン・ベル
東京創元社
2020-07-30


8位.笑う死体 マンチェスター市警エイダン・ウェイツ(ノックス・ジョセフ)※ランク外
深夜のホテルで発見された身元不明の”笑顔の死体”の謎を追う『堕落刑事』シリーズ第2弾。基本的になダークな雰囲気の警察小説ですが、一見無関係なさまざまな事件が結び付き、真相を浮かび上がらせていくプロセスは謎解きミステリーとして読み応えがあります。ただ、本格として読むには少々冗長。


9位.探偵コナン・ドイル(ブラッドリー・ハーパー)※ランク外
タイトルに反してコナン・ドイルはワトソン役で主に探偵役を務めるのはホームズのモデルだといわれているベル博士。物語は、当時のロンドンの風俗描写を魅力的に描きつつ、落ち着いた筆致で切り裂きジャックの正体に迫っていきます。読み応えがあり、真相の説得力もなかなかのものです。


10位.最悪の館(ローリー・レーダー=デイ)※ランク外
ダークスカイという宿泊施設を舞台にした、一種の館ものミステリーです。一癖も二癖もある登場人物の錯綜した人間関係を紐解きながら殺人事件の犯人を探っていくプロセスは、フーダニットミステリーとして読み応えがあります。一方で、心理描写メインの重苦しい展開は好みが分かれそうです。
最悪の館 (ハヤカワ・ミステリ)
ローリー レーダー=デイ
早川書房
2020-04-02



その他注目作品10

11.ネヴァー・ゲーム(ジェフリー・ディヴァー)
リンカーン・ライムシリーズの著者が放つ新シリーズ。主人公は人探し専門の懸賞金ハンターで、あらゆる可能性をパーセントで表示し、数字の大きなものから当たっていくという調査方法にはライムと違った味わいがあります。得意のどんでん返しは控えめながも、ヒネリの効いた展開に惹き込まれます。
ネヴァー・ゲーム
ディーヴァー,ジェフリー
文藝春秋
2020-09-25


12.悲しい毒(ベルトン・コッブ)
1936年発表の作品。事件は、資産家の家で年越しパーティーをしているとボヤ騒ぎが起き、続いて招待客の青年が砒素で毒殺されるというもの。話はかなり地味で単調ながらも、終盤の二転三転する展開は読み応えがあり、巧みに張り巡らされた伏線とミスディレクションの冴えも見事です。
悲しい毒 (論創海外ミステリ)
ベルトン・コッブ
論創社
2020-07-07


13.ヒルダ・アダムスの事件簿(メアリー・ロバーツ・ラインハート)
『らせん階段』で有名な著者が1932年に発表したミス・ピンカートンシリーズの第1弾。看護士のヒルダとパットン警視のコンビが微笑ましい一方で、ヒルダが潜入捜査を行う失踪事件は一体何が起きているのかわからないという謎めいた展開を堪能できます。古典ながらも読み応えのある佳品です。
ヒルダ・アダムスの事件簿 (論創海外ミステリ)
M・R・ラインハート
論創社
2020-05-11


14.笑う仏(ラッフィング・ブッダ)
1937年発表の作品。日米を含む列強8カ国がひしめき合うエキゾチックなムードの北京で、笑う仏(布袋)が暗躍する連続殺人を描いた本格ミステリです。推理の根拠がやや脆弱なのが惜しまれるものの、犯人の正体には意外性があり、それを読者に悟らせないためのミスディレクションも見事。
笑う仏(ラッフィング・ブッダ) (論創海外ミステリ)
ヴィンセント・スターレット
論創社
2020-08-10


15.ヘル・ホローの惨劇(P・A・テイラー)
1937年発表の作品で、陽気な元航海士が探偵役を務めるシリーズ第10弾。舞台は千人足らずの小さな村。物語は、町おこしの祭りでにぎわうなか、殺人事件が発生するが、犯人を探しつつも祭りが終わるまで対外的に事件を隠蔽しようというもの。謎解きは緩めだが、ユーモラスな語り口は読み応えあり。
ヘル・ホローの惨劇 (論創海外ミステリ)
P・A・テイラー
論創社
2020-08-10


16.憑りつかれた老婦人(メアリー・ロバーツ・ラインハート)
1942年発表のミス・ピンカートンシリーズの第3弾であり、1962年別冊宝石112号に掲載された『おびえる女』の新訳バージョンです。錯綜した人間関係、密室に現れる蝙蝠、数分間を巡るアリバイなど、読みどころは満載ですが、バタバタした展開のため、真相解明のカタルシスに欠けるのが残念。
憑りつかれた老婦人 (論創海外ミステリ247)
M・R・ラインハート
論創社
2020-03-06


17.亀は死を招く(エリザベス・フェラーズ)
1950年の作品です。南仏のリゾートホテルを舞台にして国際色豊かな登場人物が織りなすサスペンスは読み応え満点。犯人も意外で、亀を解決の糸口として用いる発想もユニークです。ただ、本格ミステリとして見た場合、推理の根拠となるロジックが弱く、トリックも納得度が低い点が難点だといえます。
亀は死を招く (論創海外ミステリ)
エリザベス・フェラーズ
論創社
2020-02-06


18.シャーロック伯父さん(ヒュー・ペンティコースト)
田舎町を舞台に、主人公の少年とシャーロック・ホームズのように全てを見通す伯父さんがさまざまな事件に立ち向かう連作短編。とはいえ、謎解き要素は薄く、古き良き時代の児童文学の如き、牧歌的なミステリー風冒険譚を楽しむ作品です。この手の雰囲気が好きな人にはかなりの良作だといえます。
シャーロック伯父さん (論創海外ミステリ)
ヒュー・ペンティコースト
論創社
2020-05-15


19.ある醜聞(ベルトン・コッブ)
1969年発表の作品で、あらすじは警部補が上司である警視を疑いつつ、警視庁女性職員の死の謎を追っていくというもの。関係者への尋問シーンなどは巧みで読み応えがあるものの、ミスディレクションがあからさま過ぎて犯人の正体がみえみえになってしまっているのが残念です。
ある醜聞 (論創海外ミステリ)
ベルトン・コッブ
論創社
2019-12-27


20.至妙の殺人(L・J・ビーストン/ステイシー・オーモニア)
戦前から戦後にかけて人気を博した妹尾あき尾翻訳による探偵小説の復刻本。L・J・ビーストンとステイシー・オーモニアの2人の作家の短編が収録されていますが、ビーストンの作品群はラストのどんでん返しの妙が楽しめます。特に、パイプの持ち主を巧みな推理でつきとめる『パイプ』が秀逸。
至妙の殺人 (論創海外ミステリ)
L・J・ビーストン
論創社
2019-11-26



チェック漏れ作品

カメレオンの影(ミネット・ウォルターズ)7位(このミス12位 文春16位 読みたい6位)
イラクで爆弾に顔を吹き飛ばされて以来、人が変わったかのように凶暴となった元中尉の身の周りで連続殺人が起き、彼自身が疑われるというもの。心理サスペンスの色が強い作品ですが、誰もが嘘をついているなかで、やがて意外な真相が浮かび上がってくる展開には驚かされます。ただ、少々冗長。
カメレオンの影 (創元推理文庫)
ミネット・ウォルターズ
東京創元社
2020-04-10


ザリガニの鳴くところ(ディーリア・オーエンズ)9位(このミス2位 文春2位 読みたい3位)
話は、両親に捨てられ、人里離れた湿地帯で一人暮らす少女がやがて成長し、幼馴染の助けもあって、将来の目途が立った矢先に殺人事件の容疑者として裁判にかけられるというもの。過酷な運命に見舞われる少女の成長物語として秀逸で、同時に、裁判の行方に手に汗握り、意外な真相にも驚かされます。
ザリガニの鳴くところ (ハヤカワ文庫NV)
ディーリア オーエンズ
早川書房
2023-12-05


時計仕掛けの歪んだ罠(アルネ・ダール)10位(このミス8位 文春11位 読みたい10位)
15歳の少女が失踪した3件の事件を連続誘拐殺人だと確信する犯罪捜査課の警部が、執念の捜査を続けるという物語ですが、なぜ警部がこれほど事件の捜査にこだわっているのかという理由が意表をつくもので驚かされます。そして、ラストを読んでまたびっくりというサプライズに満ちた傑作です。
時計仕掛けの歪んだ罠 (小学館文庫)
アルネ・ダール
小学館
2020-07-07


2020年12月5日追記
予想結果
ベスト5→5作品中4作的中
ベスト10→10作品中7作的中
順位完全一致→10作品中3作品

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探偵03