最新更新日2019/07/11☆☆☆

殺人犯が人間を切り刻むスラッシャー映画はヒッチコック監督の『サイコ(1960年)』やバーウァ監督の『モデル連続殺人(1963年)』などを経て徐々に発展を遂げていきました。特に、80年代に入ると不気味な仮面を被った殺人鬼が登場する作品が次々と生まれ、ホラー映画の中心的存在にまで上り詰めていったのです。しかし、かつては隆盛を誇った一大ジャンルも今では見る影もありません。そこで、その手の映画に関しては詳しくないという人のために、仮面の殺人鬼が登場するスラッシャー映画について、その歴史を振り返りながら解説をしていきます。
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1974年

悪魔のいけにえ(トビー・フーパー監督)
墓荒らしが頻発しているというテキサス州。5人の男女は帰郷した際に自分たちの家の墓が無事かを確認しにいくが、その途中で一人のヒッチハイカーを拾う。ところが、その男はナイフで自傷行為を始めたり、写真を車内で燃やしたりと異常な行為を繰り返し、耐えられなくなった一行は無理やりその男を車から降ろす。その後、一行は車のガソリンを分けてもらおうと、荒野にポツンと建っている一軒家に立ち寄るが、そこはさきほどのヒッチハイカーの家だった。しかも、その弟は頭から人皮を被った殺人鬼であり、ターゲットにされた一行は次々と命を落としていく。
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のちに数々のフォロワー作品を生むことになった殺人鬼映画の金字塔です。とにかく、レザーフェイスを頭から被ってチェーンソーを振り回す男というビジュアルがインパクト大です。後発の作品と比べるとホラー描写自体は地味で血まみれシーンなどは皆無なのですが、BGMを一切使用せずに効果音だけを響かせる演出方法は生々しいまでの臨場感に満ちています。それに、レザーフェイスの男だけでなく、その家族もみな狂っているという設定がこの映画をより怖いものにしています。殺人鬼から逃れて助けを求めても、その相手が殺人鬼に負けず劣らない狂人だと判明する瞬間の絶望感は半端ありません。その上、カメラワークの見事さも一級品で、そうした演出の素晴らしさが単なるゲテモノ映画から一級のカルト映画へと押し上げているのです。実際、本作はその芸術性の高さからマスターフィルムがニューヨーク近代美術館に永久保存されることになったほどです。なお、本作はその後シリーズ化され、何作も続編が作られることになります。しかし、トビー・フーパー自身が監督を務めた『悪魔のいけにえ2』がセルフパロディとして楽しめる他は、どれも1作目には遠く及ばない凡作に終わってしまっています。 
アリス・スウィート・アリス(アルフレッド・ソウル監督)
12歳のアリスは離婚で父と離別し、母は妹のカレンばかりを可愛がることから、愛に飢えた屈折した少女に育っていた。そして、家でも学校でも問題行動ばかり起こすようになっていたのだ。そんなある日、聖餐式のために教会に出掛けたカレンが何者かに殺されるという事件が起きる。その日以来、学校指定の黄色いレインコートを身に付け、不気味なマスクを被った謎の人物がアリスの家族たちを次々と襲い始める。そして、その犯人として真っ先に疑われたのがアリスだった。
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『悪魔のいけにえ』と『ハロウィン』という2大名作に挟まれた極めてマイナーな作品ですが、天下の美少女ブルック・シールズのデビュー作としてのちに注目されることになります。もっとも、彼女が演じたカレンは早々に殺されてしまうので出番はそれほど多くありません。それよりも注目したいのがアリス役のポーラ・シェパードです。12歳の屈折した少女という難しい役柄を見事に演じており、何気ない表情やしぐさが非常にリアルです。しかも、当時の彼女の実年齢が19歳という事実にも驚かされます。その顔だちは幼く、とても19歳には見えません。一方、サスペンスミステリーとしてもストーリーは良く練られており、二転三転する展開は非常に見応えがあります。そして、なんといっても、ぞっとする戦慄のラストが秀逸です。忘れ去られるには惜しい佳品だといえます。
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2015-05-22


1978年

ハロウィン(ジョン・カーペンター監督)
1963年のハロウィンの夜。イリノイ州にある小さな町・バドンフィールドで陰惨な事件が起きる。わずか6歳のマイヤーズ家の長男・マイケルが長女のジュディスを殺害したのだ。マイケルは精神病を患っていると診断され、精神病院に収監される。それから15年の歳月が過ぎた。21歳になったマイケルは突如精神病院を抜け出し、白いハロウィンマスクを被った姿でバドンフィールドに戻ってくる。そして、町の人々を次々と殺し始めたのだ。彼の真の目的は高校生のローリー・ストロイドを殺害することにあった。果たしてマイケルとローリーの関係とは?
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スラッシャー映画を代表するシリーズの第1作目であり、ジョン・カーペンター監督の出世作でもあります。30万ドル程度の低予算映画にもかかわらず、本作はアメリカ国内だけで5000万ドル近い興行収入をあげ、日本でもカルト的な人気を得ることになります。この映画の特徴はなんといっても、観客の不安感を煽るテーマ曲です。この音楽の見事さによって低予算映画故にスプラッター描写があまりないという欠点を補い、ホラー映画としての恐怖感を高めることに成功しています。ちなみに、この音楽を作曲したのはカーペンター監督自身であり、2作目以降の続編でもアレンジを重ねて使用され続けています。また、より一層の雰囲気を盛り上げてくれるのがカメラワークです。何者かがジワジワと忍び寄ってくる雰囲気を見事に表現しており、緊張感を高めてくれます。殺人鬼マイケルの無表情な仮面と、いるのかいないのか分からない存在感の希薄さもいかにも都市伝説の産物といった感じで不気味です。以上のように、本作は徹底的に雰囲気にこだわった作品です。ただ、多くのB級ホラー映画にみられるような派手な見せ場は皆無です。同時に、前半の思わせぶりな演出が、狙ってやっているとはいえ、少々引っ張りすぎだという欠点もあります。それだけに、ホラー映画に刺激を期待している人は物足りなく感じるかもしれません。現代の派手なホラー映画を見慣れている観客にとっては賛否のわかれそうな作品です。
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1980年

13日の金曜日(ジョーン・S・カニンガム監督)
1957年の13日の金曜日。ニュージャージー州にあるクリスタルレイクのキャンプ場でジェイソンという名の少年が溺れて行方不明となる。その直後からキャンプ場では奇怪な事件が続出し、ついには殺人事件が発展する。キャンプ場は閉鎖され、それから数十年の月日が過ぎた。ようやくキャンプ場が再開されることになり、指導員候補生たちがキャンプ場を訪れる。しかし、彼らが足を踏み入れた途端、姿なき殺人鬼は再び牙をむき、彼らに襲いかかる......。
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本シリーズに登場するジェイソンはおそらく映画に登場する殺人鬼の中では最もメジャーな存在です。その理由はシリーズが何作も作られたのはもちろんのこと、アイスホッケーのマスクを被ったあのビジュアルがそれだけインパクトがあったということなのでしょう。ところが、この1作目にはジェイソンは登場しません。殺人鬼の正体はジェイソンではないのです。翌年の1981年に続編の『13日の金曜日PART2(スティーブ・マイナー監督)』が公開され、ようやくここでジェイソンが姿を現します。しかし、このジェイソンもまだアイスホッケーのマスクをつけておらず、代わりに布袋を頭から被っているので随分とイメージが異なります。それにあまり強くもなく、ごく普通の殺人鬼といった感じです。そして『13日の金曜日PART3(スティーブ・マイナー監督)』になってようやくアイスホッケーの面を被ったスタイルが完成するわけです。殺人鬼としての強さも徐々にパワーアップしてきます。ただ、いずれにしても、このシリーズはホラー映画としてあまり上質とはいえません。キャンプ場に集まった若者を順番に殺していって最後に生き残った主人公と対決するという展開が繰り返されるだけなので恐ろしく単調なのです。シリーズ後半になるとジェイソンも殺人鬼から不死身のモンスターへとパワーアップし、超能力少女と戦ったり、未来の宇宙船で戦ったりしますが、基本的なプロットはみな同じです。少なくとも、この映画に気の効いた演出やヒネリのあるプロットなどを期待してはいけません。あえていえば、2001年公開のシリーズ最終作『ジェイソンX』だけはやりたい放題やっているだけに馬鹿映画としてはそれなりに楽しめるといったところでしょうか。それ以外はホラー映画の様式美を楽しめる人限定の作品だといえます。少なくとも、怖さなどを求めてこのシリーズを観るのはおすすめできません。
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1981年

血のバレンタイン(ジョージ・ミハルカ監督)
20年前の2月14日の夜。アメリカ東部にある炭鉱の町・バニガーはバレンタインを祝う人々で賑わっていた。しかし、その頃、鉱山では人為的なミスから爆発事故が起こり、数人の鉱夫が生き埋めになってしまう。6週間後、その中の一人・ハリー・ウォーデンが奇蹟的に救出されるが、彼は生き残るために同僚の肉を口にし、精神に異常をきたしていた。翌年のバレンタインにハリーは精神病院を脱走し、事故の原因を作った同僚2人をつるはしで殺害する。それから、彼らの心臓をハート型のキャンディボックスに入れ、「2度とバレンタインを祝うな」という警告を残して姿を消してしまうのだった。月日が流れ、当時を知らない若者たちは自分たちの手でバレンタインを復活させる。だが、そこに鉱山服とガスマスクで身を包んだ謎の人物が現れ、若者たちを殺していく。果たして、犯人はハリーなのか?
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昔、惨劇のあった場所で若者たちが馬鹿騒ぎをし、そこに殺人鬼が現れて再び惨劇が繰り返されるという明らかに『13日の金曜日』を意識した作品です。いわゆる二番煎じなのですが、ガスマスクにツルハシという独特のビジュアル、かなり過激な惨劇シーン、それと対比をなすような美しいエンディング曲などといった要素が印象的です。そのため、マニアから高い評価を受け、カルト的な人気を誇っています。ただ、ストーリーに関してはテンプレ通りに人が殺されていくだけなので、過大な期待は禁物です。また、DVDで観る場合は完全版以外のバージョンは最大のウリであるゴアシーンがばっさりとカットされています。購入あるいはレンタルをする際には必ずバージョンの確認をするようにしましょう。
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バーニング(トニー・メイラム監督)米・加 
若者たちで賑わう湖畔のキャンプ場。しかし、ここには恐ろしい逸話があった。かつて管理人だった大男のクロプシーが若者たちの悪戯によって火だるまにされたという。しかも、大やけどを負って醜悪な顔になった彼は復讐心に燃え、森の中で植木バサミを持って若者たちがくるのを待ち構えているというのだ。そして、それは単なる噂話ではないことが証明される。森に入って行った一人の少女が血祭りにあげられ、惨劇の幕が開く......。
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本作も『血のバレンタイン』と同じくやはり『13日の金曜日』の影響下にある作品です。そのうえ、スラッシャー映画としては本家よりも出来がいいという点も『血のバレンタイン』と同じです。なんといっても、『ゾンビ』や『死霊のえじき』などで有名なトム・サーヴィニの特殊技術が見事で、過激な残虐シーンはスプラッター映画好きにはたまらないものがあります。ちなみに、サーヴィニは13日の金曜日シリーズにも何作か参加していますが、残虐性は本作のほうが遥かに上です。特に、クライマックスでの問答無用の大量虐殺シーンはホラー映画史上屈指の名シーンです。逆光で姿がよく見えない殺人鬼登場のカットも秀逸で不気味さをより一層際立たせています。覆面や仮面をしているわけではないのに顔は一切見えないといった演出は本当によくできています。ただ、顔を見せないことにこだわっているのであれば、映画の序盤で素顔は見せないほうがよかったのではないでしょうか。そのせいで、殺人鬼の持つ神秘性がいくらか後退してしまっています。また、、殺人鬼が登場するのが遅く、前半が冗長なのは大きな減点材料です。ストーリーもテンプレ通りで特に新味はありません。やはり、本作もスプラッターが好きだという人限定の作品だといえます。
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ローズマリー(ジョセフ・ジトー監督)
1945年。女学生のローズマリーは出兵中の恋人の帰還を待ちきれず、手紙で別れを告げた。その3カ月後、彼女は卒業生のダンスパーティ中に新しい恋人のロイと一緒に席を外し、2人っきりになったところを軍服姿の何者かに惨殺される。振られた恋人が凶行に及んだらしかったのだが、結局、犯人を逮捕することはできずじまいだった。時は流れ、1980年。35年ぶりにダンスパーティが再開されることになる。同じころ、コロンバスで凶悪な殺人犯が逃亡するという事件が発生する。そして、再び軍服姿の殺人鬼が現れ、次々と卒業生を殺していくのだった。果たして犯人の正体は?
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作品自体はよくあるスラッシャー映画ですが、ここでもトム・サーヴィニによる特殊メイクの効果が冴えまくります。特に、剣を脳天からつき刺して顎から剣先が飛び出るシーンなどは忘れ難いインパクトを観る者に与えてくれます。血しぶきの量も半端ではなく、これぞスプラッター映画というできばえです。しかも、単に残虐というだけではありません。それをいかにリアルに見せるかという工夫が秀逸なのです。物語自体は決して上等なできとはいえませんが、サーヴィニの名人芸が随所で輝きまくっています。残虐シーンが苦手でなければ、それを確認するためだけでも観る価値があります。ある意味、最高のスプラッター映画ともいえるカルト的傑作です。
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1983年

肉欲のオーディション/切り裂かれたヒロインたち(ジョナサン・ストライカー監督)
ベテラン女優のサマンサは有名監督であるジョナサンの作品に出演するべく、オーディションに向けて演技の特訓を続けていた。そんなときジョナサンはサマンサを精神病院に入院させる。彼女の挑戦する役は狂人なので、そこで役の研究をしてほしいというのだ。ところが、サマンサが退院する前に映画のオーディションが始まってしまう。実際のところ、ジョナサンはもっと若い女優を使いたいと考えており、要するに邪魔になったサマンサを騙して精神病院に隔離したというわけだ。怒り狂ったサマンサは精神病院を脱走する。そして、その直後から、老婆の仮面を被った殺人鬼がオーディションに参加した女優たちを次々に血祭りにあげ始める。果たして犯人はサマンサなのか?
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アイスホッケーの面をかぶったり、ガスマスクを装着したりと覆面系殺人鬼のコスチュームも色々ですが、ことインパクトに関しては本作の殺人鬼が群を抜いています。老婆のマスクが中途半端にリアルなので不気味さが半端ないのです。その姿で鎌を振り回しながら追いかけてくれば、誰でもびびってしまいます。特に、スケートをしながら覆面老婆がこっちに近づいてくるシーンは絵面的に悪夢そのものです。ただ、ラストのオチは意外性はあるものの、ちょっと賛否が分かれそうです。
DVD発売なし

1986年

アクエリアス(ミケーレ・ソアヴィ監督
町外れの古い劇場で劇団員たちは夜遅くまでリハーサルをおこなっていた。だが、監督とプロデューサーが作品の方向性を巡って口論を始めるなど雰囲気は最悪だった。一方、練習中に足を痛めた女優のアリシアは衣裳係のベティと近くの病院に行くことになる。その病院は精神病院だったが、親切な医者が特別に診察をしてくれるというのだ。だが、そこには16人もの人間を殺害した殺人鬼が収監されており、病院を脱走してアリシアたちの乗ってきた車に忍び込む。そうして、劇場への侵入を果たした殺人鬼はフクロウの仮面を被り、劇団員の一人を血祭りにあげる。恐怖の一夜の始まりだった。
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監督のミケーレ・ソアヴィはイタリアンホラーの鬼才といわれたダリオ・アルジェント監督の愛弟子であり、本作が監督デビュー作です。それだけにアルジェント作品を思わせるグロテスクかつスタイリッシュな映像が印象に残る作品に仕上がっています。基本的なプロットは典型的なスラッシャー映画で、これといったヒネリもありません。その代わり、封鎖された劇場を舞台にして芸術的な映像美に浸れるのがこの作品ならではの魅力です。特に、舞台に死体を並べてその中でくつろいでいるフクロウ男のシーンは幻想的で美しく、スラッシャー映画屈指の名シーンだといえるでしょう。
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 1996年

スクリーム(ウェス・グレイヴン監督)
カリフォルニア州の片田舎にある町・ウッズボローで事件は起きた。女子高生のケイシーがビデオを観ようとしたときに電話がかかり、電話の主はボイスチェンジャーで加工された声で「今からクイズを出すので答えられなかったらお前を殺す」といってきたのだ。やがて、帰宅した彼女の両親は内臓をえぐられて木にぶら下げられたケイシーの死体を発見する。しかも、事件はそれで終わりではなかった。今度は同じ学校の生徒であるシドニーの元に電話がかかり、殺されかけるという事件が起きる。警察は彼女の恋人であるビリーを疑い、逮捕するが.....。
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80年代は遠い過去となり、スラッシャー映画がすっかり廃れた頃に公開された1本です。そのためか、本作は過去のスラッシャー映画を振り返るパロディ色の強い作品に仕上がっています。 劇中の人物がホラー映画について語り合うシーンなどはマニアにとっては大いに楽しめますし、スラッシャー映画あるあるネタを活かしたギャグも愉快です。とはいえ、本作は単なるコメディ映画というわけではありません。コメディ要素を随所に散りばめながらも、ホラー映画としてもかなり本格的です。開幕早々ドリュー・バリモアが殺されるシーンはサスペンスたっぷりですし、ホラー映画のお約束を踏襲しつつも、微妙に外すことで飽きさせない工夫もされています。それに、本作はミステリー要素もあり、意表をついた犯人の正体にも驚かされます。殺人鬼映画を見慣れた人をミスリードする仕掛けが施されているのです。スラッシャー映画に新しい息吹を吹き込んだ90年代を代表する傑作です。
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1997年

ラスト・サマー(ジム・グレンスピー監督) 
7月4日の独立記念日にクイーンコンテストで女王に選ばれたヘレンの元に、友人のジュリーがお祝いに駆け付ける。さらに、互いの彼氏であるレイとバリーも合流し、それぞれのカップルは将来について語り合う。だが、その帰り道、不注意から通りかかった男を車で轢いてしまったのだ。男はまだ息があったが、4人は自分たちの保身のために彼を湖に沈めてしまう。それから1年がすぎたとき、大学に進学したジュリーの元に一通の手紙が届く。そこには「1年前に何をしたか知っている」と書かれてあった。それ以降、4人の周辺には鉤爪の男が姿を見せるようになり.......。
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B 級ホラーとして堅実な作品です。過去の因縁から誕生した殺人鬼が若者たちの前に現れ、惨劇を繰り返すという定石を丁寧に描いており、そういう意味では安心して楽しめる佳作だといえるでしょう。ただ、惜しむらくはそこから一歩踏み出したプラスαが皆無に近い点です。そのため、新しい刺激を求めている人は物足りないと感じるかもしれません。あえて新機軸な点を挙げるならばラストで明らかになる意外な犯人ですが、整合性がとれておらず、かえって作品を破綻させかねない要素になってしまっています。過大な期待は捨て、安心と安定の殺人鬼映画を見たいという人におすすめの作品です。なお、本作はシリーズ化してPart3まで作られています。2作目もそこそこ楽しめる出来なのですが、3作目はいきなりの路線変更で完全に迷走してしまっています。殺人鬼映画を楽しみたいのならPart3は避けるのが賢明でしょう。
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2006年

ビハインド・ザ・マスク(スコット・グロサーマン監督)
3人のTVクルーが巷で噂の仮面男を取材することになる。男の名はレスリー・ヴァーノン。レスリーは幼少期に彼を虐待した両親を殺害し、その行為に恐れおののいた町の人々によって滝から突き落とされた過去があるという。しかも、彼は復讐のために、町の若者たちをジェイソンやフレディのように血祭りにあげる計画を立てているというのだ。それを聞いたクルーたちは半信半疑のまま彼への取材を続ける。レスリーは具体的な計画の詳細を話始めるのだが......。
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00年代に流行った、フィクションをいかにもドキュメンタリーっぽく撮影したモキュメンタリー映画の1本です。最初は殺人鬼志望の男への取材という形で始まり、全然ホラーっぽくないのですが、ジェイソンやフレディーなどを実在の殺人鬼として扱っている点がユニークです。そのうえで、スラッシャー映画のリスペクトが随所に盛り込まれているので、インタビューを見ているだけでもなかなか楽しめるつくりになっています。一方、犠牲者をどのように追い込むか、リハーサルを繰り返すシーンなどは間が抜けていて笑えます。そして、後半は一転して殺戮シーンとなるわけですが、それまでのドキュメンタリータッチから普通の劇映画へとカメラが切り替わる演出が斬新です。これにより、観客はモキュメンタリーと正統派スラッシャー映画の2つを楽しめるというわけです。ただ、直接的な残酷シーンがほとんどないので、スプラッター映画のファンには物足りなさを感じるかもしれません。それに、スタッフが殺人鬼の計画をすべて知っているのに犯行を阻止できず、犯人の思惑通りに動いてしまっている点はやや説得力を欠いてしまっています。アイディアは良いだけに、肝心なところで完成度を落としてしまっているのが惜しまれます。
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2009-05-13


2007年

ハロウィン(ロブ・ゾンビ監督)
イリノイ州のバドンフィールドで暮らすマイケル・マイヤーズは孤独な少年だった。学校に友達はおらず、家族にすら相手にされていなかったのだ。そして、ハロウィンの夜にマイケルは自分を馬鹿にしていた母親の恋人や姉とそのボーイブレンドを殺害する。精神障害と判断されて精神病院に入院させられるマイケル。だが、その17年後、成長したマイケルは生き残った唯一の肉親である彼の妹を探すために病院を脱獄し、再び凶行を繰り返す......。
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80年代に全盛を極めたスラッシャー映画も90年代以降勢いを失い、『スクリーム』のような変化球な作品が目立つようになってきました。そして、00年代後半からは一周回ってリメイク作品の製作が盛んに行われるようになったのです。その先鞭をつけたといえるのが本作です。スラッシャー映画の火付け役となった作品が今度はリメイクムーブメントの走りとなったわけです。ちなみに、監督はミュージシャンでホラー映画マニアのロブ・ゾンビですが、同じホラー好きでもジョン・カーペンターとはホラー観にかなりの隔たりを感じます。カーペンター版のマイケルには人間であって人間でないような底知れない不気味さがありました。なぜバドンフィールドの人々を殺して回るのかもよくわかりません。それが無表情な仮面のイメージと重なって底冷えのする恐怖を生みだしていたのです。それに対して、ゾンビ版は幼少期のマイケルの不幸な生い立ちを丁寧に描くことで分かりやすい殺人鬼誕生の物語に仕上げ、成長したマイケルもマッチョな大男で現実的な脅威として描かれています。これでは元ネタにあったゾッとするような感覚の再現は望むべくもありません。とはいえ、本作のほうが優れている面もあります。まず、カーペンター版ではチラッとしか出てこない少年時代のマイケルですが、本作ではたっぷりと尺が割かれ、しかも、その殺人鬼ぶりがじっくりと描かれています。この少年殺人鬼のインパクトが強烈なのです。大男になったマイケルよりも少年時代のほうが遥かに怖いくらいです。ここまで少年時代にこだわるのであれば、一層のこと外伝として少年マイケルの物語にしてしまったほうがよかったのではないでしょうか。それから、全体的にバイオレンス描写が派手に描かれ、お色気シーンも満載です。したがって、カーペンター版が地味すぎると感じた人なら、こちらのほうが楽しめるかもしれません。静のジョン・カーペンター、動のロブ・ゾンビといった感じでしょうか。なお、2009年には続編の「ハロウィンⅡ」も公開されましたが、幻想的な描写をふんだんに取り入れ、殺戮シーンを強化することでよりロブ・ゾンビ色の強い作品になっています。もはや元の作品とは全くイメージが異なるものになっているため、本作以上に賛否の分かれる結果となりました。
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2010-05-26


2009年

ヒルズ・ラン・レッド(デイヴ・パーカー監督)
『ヒルズ・ラン・レッド』は20年前に製作された幻のスラッシャー映画だ。その過激な内容から、ほとんど上映されることはなく、フィルムも監督と一緒に行方不明になったという。映画オタクのタイラーはこの謎に夢中になり、フィルムの行方を探すとともに、そのプロセスをドキュメンタリー映画にしようとする。そして、監督の娘であるアレクサを探し出し、インタビューの許可を得るのだった。タイラーはアレクサの他に、恋人のセリーナや友人のラロを引き連れて映画の撮影現場だった山奥の町・スカーギルを訪れる。そこで、アレクサは『ヒルズ・ラン・レッド』に登場する殺人鬼・ベビーフェイスそっくりの人影を目撃し.......。
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幻のホラー映画を追い求めている内に、本物の殺人鬼に遭遇するというメタ構造を持つ作品です。また、80年代のスラッシャー映画のオマージュにもなっており、そのため、過去の有名作を想起するような場面が随所に出てきます。マニアにとってはたまらない作品といいたいところですが、少々詰め込み過ぎで全体的に平板な作りになってしまっている点が惜しまれます。一方で、大きな見どころとなっているのがベビーフェイスが自分の顔を切り刻み、人形の顔を縫い付けているシーンです。このグロさはなかなかのインパクトです。そのあとはちょっと単調で中弛みを感じるものの、中盤以降、殺人鬼が本格始動してからはクレイジーな展開で盛り上げてくれます。ただ、無言の不気味さを信条とする殺人鬼が多い中で、ベビーフェイスが普通に喋りだすのは少々拍子抜けかもしれません。その代わり、段階を踏んで豹変していく、アレクサ役のソフィー・モンクの怪演ぶりは必見です。以上のように、欠点も長所も多い作品なのですが、この手の映画が好きなら見て損はないといえるのではないでしょうか。
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2013-07-03


13日の金曜日(マーカス・ニスペル監督)
1980年。パラメ・ボーヒーズという中年女性がクリスタル・レイクを訪れた若者たちを次々と血祭りにあげるという事件が起きる。湖の監視員を務めていた若者の怠惰のために息子・ジェイソンを失い、以来、彼女はクリスタルレイクを訪れる若者たちを憎むようになっていたのだ。事件は彼女に襲われた犠牲者の一人が逆襲に転じ、パメラを殺害したことで幕を閉じた。それから時が過ぎ、行方不明になった妹を探している女性・クレイと休日を活かして遊びにきた大学生の一行がクリスタルレイクを訪れる。しかし、そこでは死んだと思われていたジェイソンが隠れ暮らしており、パメラの意思を継いで恐るべき殺人鬼と化していたのだ。
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本作は「13日の金曜日」の1作目のリメイクというわけではなく、Part1~Part4完結編)までのシリーズ前半の総集編的リメイクとなっています。まだ不死身のモンスターと化していなかった時代のジェイソンを総括したもので、原点回帰を目指した作品だといえます。過去作と比べると、四半世紀経ただけあってさすがに映像はクリアです。おなじみのシリーズをうまく現代風にアレンジもしています。ただ、リメイクとして特に新しい要素を導入したというわけでもないので、やはり元ネタと同じ弱点を抱えています。犠牲者がただ淡々と殺される展開が続くだけなので、観ていて非常に退屈です。4作を1本にまとめただけあってテンポは非常によいのですが、それが面白さにつながっていないのです。逆にいえば、スラッシャー映画特有のグロさや陰惨さはほとんどなく、適度なお色気で楽しませてもくれるので、ポップコーン片手に気軽に楽しむには最適の作品だといえるかもしれません。元々がそういう作品であるため、その意味ではよくできたリメイクだともいえます。古典ホラーのお約束を現代の映像で楽しみたいという人にはおすすめです。
ブラッディ・バレンタイン 3D(パトリック・ルシエ監督)
ハーモニーという小さな町の炭鉱で、オーナーの息子で新人作業員のトムは自らのミスで事故を起こし、5人の犠牲者をだしてしまう。唯一の生存者であるハリーウォーデンは意識不明の昏睡状態だった。その1年後、ハリーは突然目を覚まし、ツルハシで町の住人たちを殺し始める。多くの犠牲者を出しながらもハリーは炭鉱の中で射殺され、事件は終結した。それから10年後、町を出ていたトムが突然戻ってくる。父が死んだので炭鉱を売却しようというのだ。ところが、再び、10年前と同様の連続殺人事件が発生する。果たして犯人の正体は?
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マニアから高い評価を得ている「血のバレンタイン」のリメイク作品です。ウリである残虐度の高さは健在で、しかも、3Dなので血しぶきのあがるシーンなどはなかなか見応えがあります。全体的に原作よりも丁寧に作られており、その辺りも好印象です。一方、ストーリーに関しては取り立てて特筆すべき点がないというのも原作と同じです。サクサクとテンポよく殺されていくのでその辺りを楽しむべき映画でしょう。なお、「血のバレンタイン」とは犯人が異なっているため、原作を見た人も新鮮な気持ちで楽しめるのがグッドです。
スクリーム4 ネクスト・ジェネレーション(ウェス・グレイヴン監督
学生時代に繰り返された殺人鬼の襲撃から生き延びたシドニー・プレスコットは作家として成功を収め、本の宣伝のために久しぶりに故郷であるカリフォルニア州のウッズボローに戻ってきた。そして、そこで保安官のデューイやその妻である元キャスターのゲイルといった懐かしい面々と再会する。ところが、彼女の帰郷を待っていたかのように再び惨劇が発生する。女子高生のマニーとジェニーが何者かに惨殺されたのだ。10年ぶりの悪夢の再来に新たな世代はいかに立ち向かうのか?
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作品内でホラー映画について言及するメタ構造や犯人探しの趣向を盛り込むことによってスラッシャー映画の新境地を築いたスクリームですが、さすがに回を重ねるごとにマンネリ化は避けられず、3作目でシリーズは打ち切りとなりました。ところが、「ハロウィン」や「13日の金曜日」の復活という流れに乗って本シリーズも久しぶりに続編が公開されることになります。前シリーズは3作目くらいになるとネタ切れ感が目立っていたのですが、今回は久しぶりの新作ということで同窓会ムービーのノリで楽しめる作品に仕上がっています。新鮮さはあまりなく、どちらかというとクラシカルな雰囲気ではあるものの、それが逆に味になっています。前シリーズの生き残り組が老けてしまった感はいなめませんが、新ヒロインが可愛いのも好印象です。ただ、やはり、ファン向けの作品であり、前シリーズに思い入れのない人がいきなりこれを見ても古臭いホラー映画としか思えない可能性大です。実際、興行は大コケに終わり、新3部作の予定だったのが、これ1作で打ち切りとなってしまいました。


2012年

スマイリー(マイケル・J・ギャラガー監督)
チャットをしている最中に「笑顔のために」というフレーズを3回入力するとチャット先にスマイリーという殺人鬼が現れるという都市伝説が若者たちの間で広まっていた。一方、大学に入学し、ルームシェアを始めたアシェリーはルームメイトのプロクシーに誘われて男子学生が主催するパーティに参加する。そこにはスマイリーを呼び出す実験をしているグループがいた。実験が始まり、「笑顔のために」と3度打ち込むと果たして画面の向こうにスマイリーが現れる。そして、チャットの相手は突然現れたスマイリーによって殺されてしまったのだ。しかし、みんなはそれを合成映像だといって信じようとはしなかった。帰宅後、アシェリーとプロクシーもスマイリーを呼び出す実験をしてみると、なんと本当にスマイリーガ現れ、チャットの相手を殺してしまう。その事件以降、アシェリーは罪悪感から精神を蝕まれ、スマイリーの悪夢に悩まされるようになる。しかも、彼女の周囲からは次々と知人が姿を消していくのだった。一体何が起きているというのか?。
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スマイリーは久々に登場した殺人鬼のニューフェイスです。なんといっても特徴的なのがシュールな笑顔で、見た目のインパクトは十分にあります。一方、ホラー映画としての恐怖演出は今一つといった感じです。残虐描写に関しても過激さや目新しさはないので、その辺に期待するとがっかりするでしょう。代わりに、怪しい人間が次々と登場し、ヒロインの妄想オチも示唆されるなどといった具合に、謎が謎を呼ぶ展開はなかなかです。最後の意外性を狙った真相といい、全体的にはスクリーム系の作品だといえます。ただ、『スクリーム』の1作目ほどの切れ味はありません。肝心のどんでん返しにグダグダ感があり、素直に驚くことができないのです。素材はよかったのですが、それを活かし切れていないのが残念です。
スマイリー [DVD]
ケイトリン・ジェラルド
アメイジングD.C.
2013-07-03


2018年

ハロウィン(2018)
マイケル・マイヤーの襲撃から辛くも生き残ったローリーはそれからというもの、マイケルの再襲撃に怯える日々を過ごしていた。それから40年。マイケルの担当医だったルーミス医師はすでにこの世を去り、その教え子であるサルティン医師が跡を継いでいた。しかし、行政上の都合からマイケルは病院から刑務所へ移送されることになる。その途中で眠らされていたマイケルが突如覚醒し、そのまま逃走。夜の闇にまぎれて故郷の
バドンフィールドへと迫るのだった。危機を察知したローリーは家族を守るため、マイケルに立ち向かう決意をするが.......。
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2007年にリメイクされた作品のまさかの再リメイク化です。しかも、今回は1978年版のリメイクというわけではなく、1978年版の続編という形になっています。つまり、『ブギーマン』や『ハロウィンⅣ/ブギーマン復活』といった一連の物語はなかったことにして、改めて続編を作り直したというわけです。主演もジェイミー・リー・カーティスがそのままローリー役を演じています。いまさら感のある企画ですが、これが意外と面白く仕上がっているのです。ローリーが単に逃げ回るだけの可弱い少女ではなく、40年を経て戦うお婆ちゃんと化しているのが痛快です。しかも、最初は怯えていたローリーの娘や孫たちも最後には勇猛果敢に戦うという非常に熱い展開で楽しませてくれます。1978年版の全編に漂う不気味な雰囲気というのは後退しているものの、とにかく見せ場見せ場の連続で飽きさせない作りになっています。音楽もかっこよく、残酷描写はしっかりと描かれ、最後の対決は大いに盛り上がるという素晴らしい娯楽映画に仕上がっているのです。ただ、1作目の雰囲気が好きだという人にとっては肌に合わない可能性はあります。