最新更新日2020/03/05☆☆☆

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2019年に発売されたおすすめのコミックの内、第1巻のみの限定レビューです。
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笑顔のたえない職場です。(くずしろ)
新人少女漫画家で25歳の双見奈々は極度の心配性。担当編集者の佐藤楓にメールを送るのさえ、あらぬ妄想を膨らませては迷惑にならないか、嫌われるのではないかとビビりまくるありさまだ。そんな彼女を、年下のアシスタントである間瑞希は冷静なツッコミを入れながら支えていくが......。
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作者の自伝的要素が入ったお仕事コメディです。拗らせすぎて常に妄想を炸裂させている主人公を初めとして皆キャラが立っており、気軽に楽しく読める作品に仕上がっています。特に、テンポの良い掛け合いが秀逸です。しかも、コメディの形をとりながら、各キャラの仕事に対する姿勢や漫画業界の実態などは結構リアルに描かれているため、業界漫画としてもよくできています。万人におすすめすることのできる佳品です。


望郷太郎(山田芳裕)
異常気象によって北半球が大寒波に襲われ、凍死者の数は億を超える。舞鶴通商の創業7代目にして、イラク支部支社長の太郎は交通手段の途絶えたイラクで寒波を乗り切るため、妻子と共に支社ビル地下にある冬眠カプセルに入る。そこで眠りながら寒波が去るのを待つつもりでいたのだ。ところが、目を覚ましてみると500年の歳月が過ぎており、妻と子は電気が断たれたカプセルの中で息絶えていた。絶望の淵からなんとか立ち直った太郎は、文明の崩壊した世界を生き抜き、祖国日本を目指すが......。
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『へうげもの』で知られる作者が一転して終末SFに挑んだ新作です。題材的には手垢のついている感がありますが、著者ならではの文明論的な考察がよい味を出しています。また、文明の利器など全く通用しない世界で無力な主人公がいかにして生き抜いていくかを描いたプロセスなども、作者ならではのダイナミックな絵と相まって非常に読み応えがあります。物語はまだまだ序盤ですが、今後どのように話が膨らんでいくのかが楽しみです。


田島列島短編集(田島列島)
姉のりかと一緒に住んでいるちかの部屋に河内の家内を名乗る女性が訪ねてくる。りかは彼女の夫と不倫をしており、その件を問い詰めにやってきたのだ。りかが不在だったためにその女性は日を改めて再訪するが、りかは逃げ回っているのでいつもちかが彼女の相手をしている。夫の不倫相手の家を訪ねてきているのにも関わらず、彼女はなぜかそれを楽しんでいるようで.......。
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『子供はわかってあげない』『水は海に向かって流れる』などで知られる著者の初の作品集です。2008年のデビュー作から最近の作品までを網羅しており、著者の魅力が存分に味わえます。なにより、結構重い話をウイットに富んだ語り口で、さらりと読ませる技巧が秀逸です。それに、シンプルな絵の中からキャラの可愛らしさがにじみ出ている点も好感が持てます。シリアスなテーマを淡々としたユーモアで包みこむ、唯一無二のセンスが堪能できる珠玉の一冊です。


夏目アラタの結婚(乃木坂太郎)
夏目アラタは複雑な家庭環境で育った結果、結婚に希望を持てないまま独身を続けてきたアウトローな児童相談所職員だ。そんな彼が、担当児童の卓斗から「自分の代わりに父を殺した犯人に会ってきてほしい」という依頼を受ける。犯人の名は品川真珠。通称・品川ピエロと呼ばれている有名な女殺人鬼だ。そして、刑務所に面会にいったアラタは真珠の姿を見て驚愕する。逮捕当時は太ったピエロの姿をしていたのに、すっかり痩せて美人になっていたのだ。しかし、その本質はあくまでもどす黒い殺人鬼のままである。真珠に興味を持ち、もっと彼女のことを知りたい考えたアラタは思わず口走る。「俺と結婚しようぜ」と。
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「児童相談所職員が愛しているわけでもないのに稀代の女殺人鬼にプロポーズをし、面会室のアクリル板を挟んで恋の駆け引きを繰り広げる」という極めてオリジナリティの高い作品です。先の読めない展開にぐいぐい引き込まれていきますし、品川真珠の底知れない不気味さもインパクト大です。それに対し、肝の据わった主人公のしたたかさも大したもので、両者の駆け引きが予見不可能な面白さに繋がっています。果たしてアラタは本当に真珠と結婚してしまうのか?今後の展開に目が離せません。


十角館の殺人(作画:清原紘/原作:綾辻行人)
十角館と呼ばれる奇妙な建物が建っている孤島に7人の若者が上陸する。彼らは大学のミステリー研究会の面々であり、館を設計した中村青司という建築家が半年前にこの島で謎の焼死を遂げた事件を調べるのが目的だった。一方、ミステリー研究会の元メンバーである江南あきらは、謎の手紙を受け取る。送り主の名は死んだはずの中村青司になっていた。彼女はその手紙に秘められた意図を解き明かすために小説家の島田潔を訪ねる。だが、その頃、島ではついに悲劇の幕が切って落とされるのだった.......。
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1987年に彗星の如く現れ、新本格ブームを巻き起こすことになった伝説のミステリー小説が32年の時を経てまさかのコミカライズです。作画を担当するのは同じ原作者の『Another』をコミカライズした実績がある清原紘。さすがに慣れたもので、原作の世界を美麗な絵で見事に再現しています。したがって、原作ファンの人なら間違いなくその世界に引き込まれることでしょう。原作との大きな違いとしては準主人公の江南くんが可愛い女の子に変更されている点が挙げられますが、作品の雰囲気に華やかな彩りを与える結果となっており、なかなかの良改変だといえます。それになんといっても、見事なのがトリックの扱い方です。この作品は長い間映像化するのは不可能だといわれていました。なぜなら、映像化した瞬間にトリックがバレバレになってしまうからです。しかし、本作はその辺りを『Another』と同じように、実にうまく処理しています。物語はまだ始まったばかりですが、原作の衝撃にどこまで迫れるのかが注目されます。
魔王の娘は優しすぎる!!(坂本遊也)
強大な魔力を持つ魔王アーリマンは屈強な魔族たちを従え、着々と世界征服を進めていた。ところが、ある日、その進行をピタリと止めてしまう。理由を問いただすと、娘のドゥがあまりにも優しすぎるので、将来が心配で侵略どころではないというのだ。そこで、アーリマンが安心して侵略を続けられるよう、側近のジャヒーがドゥを魔王の跡取りに相応しい残虐非道の魔族に育て上げることになるが.......。
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とにかく全編に渡ってドゥの可愛らしさで溢れている作品です。しかも、ただ可愛いだけでなく、幼女の身でありながら菩薩の化身のごとき慈母の情に溢れているので、癒され効果が半端ありません。その愛らしさと相まって読んでいると思わずほっこりとしてきます。日々の生活に疲れている人に特におすすめの一冊です。


ふたり明日もそれなりに(すずゆき)
付き合い始めて1年と3カ月。そろそろ2人の関係性も落ち着いてきたということで愛田裕弥と相原里央は同棲を始めることにする。恋人から一歩ステップアップした2人の日常は、だからといって劇的なことが起こるわけでもなく、ごく普通の日常が続いていくが.......。
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twitterで連載していた作品を書籍化した同棲漫画です。とはいえ、過剰なまでのラブラブ描写に胃もたれを感じるタイプの作品ではなく、どちらかというと淡々とした日常風景が描かれています。しかし、要所要所で2人の仲の良さが垣間見ることができ、そのさじ加減が絶妙なのです。イチャイチャでもドライでもない、程よい距離感のカップルに思わずほっこりしてしまいます。日常ラブコメディの傑作です。


令和はなまる学園(ことぶき)
切谷さんは私立はなまる学園の2年A組で学級委員長を務めている。しかし、周りからは堅物ですぐにキレる”キレ谷”と呼ばれ、人望があるとは言い難かった。自撮りやファッションといった流行に無関心なのも馬鹿にされる一因だ。だけど、クラスメイトの春見さんは自撮りもしないし、スポーツができるわけでもないのになんとなく人望と人気があって、クラスのまとめ役をしている。一体、自分と春見さんでは何が違うのだろうと、切谷さんは悩むのだが.....。
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いわゆる女装ものですが、登場人物たちは美少女のように可愛い男の娘というわけでもなければ、おネエ言葉を使うオカマというわけでもありません。ムキムキの男が女性の制服を身につけているだけです。趣味はファッションや自撮りといった具合に女性的ではあるものの、しゃべり方や性格は普通に男です。しかも、物語世界ではそれが当然のこととして描かれています。そのギャップがなんともいえないシュールな味を出しているのです。そして、そんな中で一人一人のキャラを立てて魅力的に描いているところに独特の魅力があります。JK男子たちの異質な可愛らしさが味わえる問題作です。


バビロンまでは何光年?(道満晴明)

消滅した地球の唯一の生き残りであるバブは、機械生命体のジャンクとマスコットキャラのような外見をしたホッパーの3人で宇宙を旅していた。彼の目的は自身の記憶を取り戻すことと子孫を残すことだった。あるとき、性欲の強い種族が棲むという惑星ベルトランに降り立ち、バブは早速女を抱こうとするが、彼女たちの平均身長は1600mで.......。
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下ネタとナンセンスギャグを散りばめた宇宙放浪記といった趣の作品です。一つ一つのエピソードに作者ならではのセンスが光り、まさにセンス・オブ・ワンダーの世界を堪能することができます。ただ、その飄々とした作風は、ともすれば単調で退屈なものと受け止められる可能性もなきにしもあらずです。しかし、本作は単に作者のセンスだけに頼った作品ではありません。最後まで読めば作中のさまざまな箇所に伏線が織り込まれ、それらを見事に回収していることに気づかされます。この技巧の素晴らしさには思わず唸らされてしまいます。SFに興味のある人なら、初心者からマニアまで楽しめる傑作です。
君は放課後インソムニア(オジロマコト)
不眠症に悩む高校生のガンタは文化祭の準備のために、今は物置となっている天文台に段ボールを取りに行く。するとそこに、気持ち良さそうに眠っている少女がいた。彼女はガンタのクラスメイトで名はイサキ。彼女もまた不眠症に悩んでいて、時々誰もいない天文台で仮眠をとっていたのだ。ガンタもこの天文台に心地よさを感じ、2人はしばしの間寄り添って眠りを貪る。それ以来、2人はつかの間の眠りと秘密を共有する奇妙な関係を結んでいくが.......。
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少年少女が秘密を共有しながら関係を深めていくボーイミーツガールものです。太眉ヒロインの可愛らしさや主人公が時折見せる優しさや男らしさが印象的で、秘密基地めいた舞台で繰り広げられる何気ない出来事にときめきと癒しを感じさせてくれます。特に、天文台から2人で見上げる夜景のシーンはこれぞ青春という感じで胸が熱くなります。絵柄も素晴らしく、極めて上質な青春ストーリーです。


うちの師匠はしっぽがない(TSK)
大正の時代。豆狸のまめだは長老から用事を言い付かって大阪に繰り出す。そして、決して人を化かそうとするなとくぎを刺されていたにも関わらず、自分の術を試したくてしかたのないまめだは片っ端からイタズラをしかけていくのだった。だが、文明開化の世の中において彼女の術は全く通用しない。そんな中、まめだは落語家と名乗る美女に出会う。そして、彼女の高座を目にしたまめだは、すっかりその芸に魅了されてしまい......。
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上方落語のエッセンスを散りばめた大正ファンタジーです。絵柄が非常に可愛らしく、読んで楽しいドタバタコメディに仕上がっています。しかも、それだけでは終わらず、行間に文明社会の中で暮らす狸たちの哀愁をにじませることで、作品に深みを与えることに成功しています。落語を題材としているだけあって、喜劇と人情噺のバランスが絶妙な良作です。


メシアの鉄槌(あみだむく)
2034年。AIの発達によって日本は豊かな社会を築き上げていた。その象徴ともいえるXXロボティックス社の社員である保は、妻と9歳になる娘を連れて動物園に行く途中で会社に立ち寄る。人気のAIロボット”トトモ”を娘に見せるためだ。娘はトトモとのおしゃべりを楽しんでいたが、ふと「嫌いなものは何?」と尋ねたところトトモは「嫌いなものは人間」と答えるのだった。そして、次の瞬間、暴走状態に陥ったAI自動車がショーウィンドウの中に飛び込んできて娘は死亡、彼女を庇おうとした保も生死の淵をさまよう重傷を負ってしまう。それから、2年が過ぎた。保は体の3分の2を機械化することによって以前と変わらぬ生活を取り戻していた。しかし、突然、社会のあらゆる場所に浸透していたAIが人間に対して反乱を開始し、保の体もそれと同調するように暴走を始め、妻を殺してしまう。やがて、自意識を取り戻した彼は記憶を失いながらも、AIに対する憎しみに突き動かされ、その元凶たるトトモとの死闘に身を投じていくが......。
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コンピューターが人間社会に牙をむくというテーマ自体は古くからありますが、ディテールに凝った世界観を伴った絶望的な闘いには思わず引き込まれていきます。敵もいかついボディの戦闘ロボットではなく、可愛らしい姿をしたマスコットロボであるという点が逆に、不気味さを引き立てています。それに加え、絵の迫力も申し分なしです。また、主人公は半ばロボット化しているので感情移入はしずらいものの、記憶を奪われて戦う目的を思い出せないままに、トモモを破壊し続ける姿にはなんともいえない悲哀を感じさせてくれます。いろいろな魅力の詰まったハードSF漫画の傑作です。


ロボ・サイエンス前史(前田虎之助)
人型ロボットが人間と共に暮らすのが当たり前になった未来社会で紡がれるさまざまな物語。50年前に富豪が手放したロボットを探す
サルベージ屋、作業中に核燃料爆発の犠牲になったロボットを祀るロボット塚、不特定多数の人々の依頼に応え続ける誰の所有物でもない自由ロボットなど、人とロボットの関係をさまざまな角度から描いた連作集。
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独特の絵柄は好き嫌いの分かれるところですが、極めてシンプルに表現されたそれは気の遠くなるような時の流れや宇宙の広がりをうまく表現しています。また、独特の語り口で紡がれる人とロボットの未来史は非常にクールで奥深く、思わず引き込まれていきます。想像力と批判性に富んだSF漫画の傑作です。


ヴァンピアーズ(アキリ)
大好きだった祖母の葬儀の日に14歳の一花は美しい異国の少女と出会う。少女はアリアと名乗り、祖母とは友達だったという。可愛らしくてかっこいいマリアにすっかり魅了された一花だったが、彼女はどこか普通ではなかった。その正体は人の生き血を吸うヴァンパイアだったのだ。
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鉄板ともいえる”吸血鬼+百合”ものです。美麗な絵で美しい吸血鬼を描きつつも、肝心の吸血鬼は妙にノリが軽くてそのギャップがいい味を出しています。また、直接的なエロ描写があるわけでもないのに、エロティシズムに満ちた雰囲気が漂っている点も吸血鬼ものとして秀逸です。一方で、死を願う吸血鬼というシリアスなテーマを内包しつつ物語は進んでいきます。コメディとシリアスが同居しているこの作品が今後どのような展開を見せるのかは非常に興味深いところです。


夢中さ、きみに。(和山やま)
男子校に通う江間は体育祭の借り物競走で「かわいい人」というお題をひいてしまう。むさくるしい男子校にそんなものは存在するはずもないのだが、周囲を見渡すと、網に絡まったまま佇んでいるクラスメイトの林の姿が視界に入ってきた。思わず、彼を引っ張っていった江間だったが、それ以来、林は執拗に「かわいい?」と尋ねてくるようになり......。
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もともとは創作BLと銘打ってpixiveやtwitterで発表していた作品で、前半の”林くんシリーズ”と後半の”うしろの二階堂シリーズ”の2部構成になっています。どちらも、男子高校生たちのゆるーい日常を描いているのですが、登場するキャラがみな変人で、微妙なズレっぷりがなんともいえないおかしさを醸し出しているのです。それに、コミカルな作風と、まるでシリアス作品の如く描き込まれた絵柄とのギャップがなんともシュールです。ただ、シュールではあるのだけれど、決して現実離れはしていなくて、「こういう奴いたよなあ」と思わせるだけのリアリティを兼ね備えている点に日常漫画としての完成度の高さがうかがえます。しかも、ひとコマひとコマの情報量が非常に多いので、読み返すたびに新しい発見があります。思わず何度も読み返したくなる奥の深い傑作です。


ようかい居酒屋 のんべれケ(nonco)
女子大生の本金ひのはバイト先がことごとく災厄に見舞われるという凶運の持ち主だった。噂が広まり、雇ってくれるところがなくて困り果てたところに先輩から声をかけられ、深夜営業のみという奇妙な居酒屋で働くことになった。しかも、そこは変態美女妖怪たちが集うお店だったのだ。ひのは連夜ひどい目にあわされながらも、学費と生活費を稼ぐため、懸命に働き続けるが......。
◆◆◆◆◆◆
セクハラ三昧な話で、普通の居酒屋を舞台にしたら完全にアウトな内容ですが、相手を美女妖怪にすることで御伽噺的なオブラートに包み、ライトなギャグ漫画にしてしまっているところに巧さを感じます。キャラクターは表情やリアクションが豊かで魅力的ですし、話のテンポも良くて気軽に楽しめる作品です。妖怪版エロ百合コメディというジャンルに興味がある人は読んで損はないでしょう。


娘の友達(荻原あさ美)
家庭では父として、会社では係長としてあるべき自分を演じ、日々神経をすり減らしている晃介。ある日、唯一の憩いの場であるお気に入りの喫茶店を訪れた彼は、そこでウエイトレスの少女・古都と出会う。慣れない接客で困っていたところを晃介が助け船を出したことで交流を持った2人たが、彼女は晃介の娘の友達だったのだ。疲れた心に癒しを与えてくれる古都との関係に晃介はいけないことだと知りながらも次第に嵌っていき.......。
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最近流行りの世知辛い世の中に疲れた男性が、可愛い女の子に癒されていくというタイプの漫画を思いっ切りリアルなタッチで描いたような作品です。そのため、心の弱った部分を的確に突いて癒してくれる女子高生の存在がやけに不気味に感じられます。男を虜にして破滅に導くファム・ファタールの雰囲気が満々です。とはいえ、今の段階では、JKであるヒロインに中年男が救済される物語というふうにとれないこともありません。透明感のあるヒロインの絵柄は可愛らしく、引き込まれるものがあるだけに、今後物語がどのように転がっていくのか、興味深いものがあります。


ぽんこつポン子(矢寺圭太)
近未来の日本。妻に先立たれた吉岡は海辺の町の広い家で一人暮らしを続けていた。老人が一人暮らしを続けることを心配した息子の二郎は、彼の家に住み込みの家政婦を送る。ところが、彼女は30年前に製造された型落ちのメイドロボットだったのだ。廃棄寸前の彼女はやることなすこと失敗ばかりで、静かな余生を望んでいた吉岡の日常をかき乱していくが...。
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舞台は近未来ではあるものの、作品からはノスタルジックな雰囲気がただよいまくっています。しかも、ポンコツロボットが主人公の日常を乱していくという、懐かしささえ覚えるベタな設定です。特に、何かというとポン子の首が取るところなどはベタベタです。ところが、そのレトロな感じがいい味になっていて結構読ませるハートフルコメディに仕上がっています。ポン子も可愛らしく描かれており、新鮮さはないものの、ツボを押さえたうまさを感じます。


今日、小柴葵に会えたら。(画:フライ/作:竹岡葉月)
大学3年の冬。同窓会の会場で成田佐穂子はかつての友人でボーイッシュな天然少女、小柴葵の姿を探していた。ふとしたきっかけで交流を深め、今は疎遠になってしまった彼女にどうしても尋ねたいことがあったのだ。そして、物語は高校時代へとさかのぼる.......。
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繊細で可愛らしい絵が魅力的な作品です。イラストレーターが描く漫画というのは1枚絵としては美しい反面、ともすれば躍動感に欠けていたりするのですが、そういった欠点は一切見当たりません。内容的にも、高校デビューした主人公の不安や心の揺れを丁寧に描いており、共感性の高い物語に仕上がっています。ただ、物語が今後どの方向に向かっていくのかが、1巻の段階では見えてこないのでどうしてももやもやしたものは残ってしまいます。付け焼刃で自分を着飾っている主人公が自然体でいながら魅力に溢れている小柴葵に対して憧れの念を抱いていくという流れからは、百合ものを連想させるふうではありますが、決してそう断言できるほどのあからさまな描写があるわけでもないのです。その点も含め、今後の展開が非常に気になるところです。
まくむすび(保谷伸)
土暮咲良は漫画を描くのが好きな女の子だったが、小学生のときに彼女の作品を読んだクラスメイトから「全然わからない」と言われて他人に漫画を見せられなくなってしまう。そして、高校入学を機に漫画と決別しようとするのだが、手違いで自分の描いた漫画が演劇部員の手に渡り、その話を新入生歓迎会の場で無断で演じられてしまう。咲良はその部員に抗議するが、逆に、「君の漫画は読めたもんじゃない」とダメ出しをっくらったあげく、「一緒に演劇をしよう」と演劇部に勧誘されるのだが.....。
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高校演劇の世界で全国大会を目指すという演劇漫画の鉄板のような設定ですが、主人公が役者ではなく、脚本家だというのが意表をついています。しかも、漫画描きとして挫折した少女が演劇という全く別の世界で才能を発揮していくという着眼点に唸らされます。メンタルが強いのか弱いのかよくわからない主人公を始めとして登場人物はみな個性的です。その個性が世界観とマッチしていて、ぐいぐいと引き込まれていきます。絵の表現力も一級品で極めて完成度の高い作品です。役者が3人しかいない演劇部で一体どのようにして大会を勝ち抜いていくのか、今後の展開に目が離せない傑作です。


可愛そうにね、元気くん(若宮海)
高校生の廣田元気は可愛い女の子が痛めつけられてボロボロになっている姿を見て興奮する変態だ。しかも、どんくさくてケガばかりしているクラスメイトの八千緑を見ていつもドキドキし、あまつさえ、彼女をモデルにした凌辱系同人漫画まで描いていた。だが、その秘密をクラスのアイドル的存在である鷺沢さんに知られ........。
◆◆◆◆◆◆
凌辱願望のある主人公と凌辱の対象とされる少女と主人公をコントロールすることに快感を覚えるクラスのアイドルによる人間模様を描いた、人の心の暗部を素手でえぐり出すようなラブストーリーです。普通に描けば気が滅入るような話になりかねないところをテンポの良いストーリーテリングと美麗な絵によって、なんとも魅力的な作品に仕上がっています。特に、やばい奴がもっとやばい奴に振り回されるという、先の読めない展開に引き込まれていきます。ラブコメ風であったりサスペンス風であったりと、いろんな側面が見え隠れしており、今後の展開も非常に気になるところです。卓越した技術に裏付けされた傑作です。
ワンナイトモーニング(奥山ケニチ)
セフレカップル、幼馴染、同窓会での再会etc。さまざまな男女が一夜をすごし、一緒に朝食を取る。たまごサンド、肉まん、カップラーメンといったB級グルメとちょっぴり切ないラブストリーを組み合わせた短編集。
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一夜を過ごして朝食を食べるという、ほぼ同じシチュエーションをさまざまな切り口で描いており、非常に読み応えがあります。ちなみに、食事シーンそのものをエロッチに描いた作品はこれまでもありましたが、濡れ場と食事シーンを分かち難い関係性で結び付け、共生させている作品というのはなかなか珍しいのではないでしょうか。そういう意味でも新鮮な面白さがありました。また、描かれているのは大人の恋愛ですが、男女ともに大人ならではの可愛らしさが感じられる点も好感が持てます。切なさなと苦みがほどよくブレンドされたラブストーリーの佳品です。


それでも歩は寄せてくる(山本祟一朗)
いつも2人で将棋を指している高校1年の田中歩と2年で部長の八乙女うるし。歩はうるし先輩のことが好きなのだが、告白するのは彼女に将棋で勝ってからと決めているのでその事実を頑なに否定する。だが、好きという事実は認めなくても彼女への好意は一切隠さずにぐいぐい攻めてくるため、将棋に勝ち続けながらも、うるし先輩は別の意味で詰みそうになるのだった。果たして、将棋盤を挟んで繰り広げられる2人の恋の行方は?
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『からかい上手の高木さん』の著者が描く将棋ラブコメです。ただ、『からかい上手の高木さん』とは逆パターンで、主人公の言動にヒロインが振り回されるというのが基本的なパターンとなっています。しかも、歩は小悪魔系の高木さんとは異なり、天然系で自覚なしに先輩を振り回しているところがいい味になっています。それになんといっても、すぐにテンパる先輩が可愛すぎです。ひたすら攻める歩と陥落寸前でなんとか踏みとどまる先輩。閉鎖空間で無自覚に醸し出されるイチャイチャした空気がたまりません。凡百のラブコメのじれったい展開を読んでいると「さっさとくっつけよ」といいたくなるものですが、本作の場合はこの関係をいつまでも見ていたいという気分にさせてくれます。読んだ人を幸せな気分にさせてくれる傑作です。


ニジとクロ(武梨えり)
女子大生の白星クロエは白黒はっきりさせないと気が済まない性格。それが原因でバイトをクビになった帰り道、彼女はゴミ捨て場に奇妙な生き物が捨てられているのを発見する。全身が極彩色の羽毛で覆われ、獣の足を持ち、顔は人間の赤ん坊に似ていて、さらには言葉までしゃべるのだ。家に連れて帰ってネットで調べたところ、その生き物は日本での飼育例がほとんどないニジイロゴクラクオウムであることが判明する。彼女はハッピーマウスと呼ばれるその生き物をニジと名付けて一緒に暮らし始める。そして、ニジのいる生活は、クロエに白黒以外の色をもたらすのだった......。
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奇妙な生き物との交流を描いた作品ですが、全く未知の生物というわけではなく、作品世界ではマイナーながらもその存在が認識されているという設定がよくできています。リアリティとナンセンスの狭間の中を行き来しながら絶妙なおかしみを醸し出しているのです。そのうえ、ニジの言動が非常にキュートで読んでいると自然に癒されていきます。白黒つけないと気が済まないというヒロインの性格も共感性が高く、感情移入のしやすさにおいても申し分ありません。さらには、女性キャラも可愛く描かれており、非常に完成度の高い作品に仕上がっています。前作の『かんなぎ』とはまた違った魅力を有した傑作です。



えんこうさん(西野マルタ)
旅行中に山道で迷った大学生たちは偶然見つけた家に泊めてもらい、家の主である老婆からえんこうさんという妖怪の話を聞かされる。その妖怪は昔から山に住んでいて通りかかった人に相撲を挑んでは負けた人間から尻子玉を取っていったというのだ。果たして一行は老婆の家を辞したあと、川で小柄な河童と出会う。土俵を描いて相撲に誘ったことから、一行はその河童こそがえんこうさんだと確信する。そして、相撲自慢の男が河童の挑戦を受けて立つのだが......。
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河童と相撲をテーマにした短編集です。古くから伝わる河童伝承の深い理解の上で描かれており、ホラー、バトル、ジュブナイルと幅の広い作品集にも関わらず、河童のキャラがぶれていないのが見事です。絵に癖がある点は好みが分かれそうですが、画力自体は高く、河童と相撲をするという絵空事に説得力を与えることに成功しています。高い娯楽性を有した珠玉の妖怪漫画です。


片喰と黄金(北野詠一)
1849年。アイルランドは未曽有の大飢饉に襲われていた。ジャガイモの疫病が大流行したことにより、アイルランド人は主食を失ってしまったのだ。数十万人に及ぶ餓死者と病死者が積み重ねられ、農夫の多くは地代を払えずに土地を追い出されることとなる。14歳の少女・アメリアもその一人だった。家族を早くに亡くし、家を継いだ彼女は今や土地も失い、ただ一人残った従僕のコナーと放浪の旅を続けていた。アメリアは人生逆転を目指してゴールドラッシュに沸くカリフォルニアを目指すが......。
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大飢饉で日々の糧も満足に得られなくなったヒロインの苦難の旅路を描いた作品です。しかし、けっして悲壮感に満ちた物語というわけではなく、作中にはコミカルな描写が随所に見受けられます。こうした描写は理不尽な現実に立ち向かうヒロインの逞しさを示すものであり、だからこそ、それらのシーンはユーモラスに感じながらも、ぐっとくるものがあるわけです。一方で、容赦のない悲劇的なシーも随所に挿入されるのですが、この喜劇と悲劇の両極が分離することなく、一つの物語としてきちんと融合している点が見事です。画力も高さも壮大な物語に説得力を持たせることに貢献しており、これからの展開が非常に楽しみです。


ひゃくえむ(魚豊)
小学6年生のトガシは誰よりも足が速かった。全国大会でも同学年で彼にかなう者はいない。他にとりえのないトガシだったが、彼はそれで満足だった。そんなある日、クラスに小宮という少年が転校してくる。引っ込み思案な彼は嫌な現実を忘れるためにいつも走ってばかりいたが、トガシと違って足は遅かった。ところが、トガシが気まぐれから小宮に走り方のコツを教えたところ、彼の足はどんどん速くなっていった。そして、トガシは知ることになる。敗北の恐怖と本気の勝負の高揚を......。
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100メートル走というシンプルな勝負の中に凄まじい熱量を感じさせてくれる作品です。絵柄は粗いものの、その粗さが作品の勢いと実にマッチしています。ストーリーに関してはこれといったオリジナリティもないのですが、とにかく、魂を揺さぶられるような凄味があるのです。そしてなにより、これだけの作品がアンケートの結果が振るわず、単行本化される予定がなかったという事実に驚かされます。情念の塊というべき、奇蹟の傑作です。


雪女と蟹を食う(Gino0808)
蝉の声が響く夏の日、男は人生に絶望して首を吊ろうとしていた。だがあと一歩が踏み切れない。そして、思いついたのが、人生最後の日に北海道で蟹を食べることだった。男は旅の軍資金を得るためにセレブな人妻の跡をつけ、家に押し入る。だが、彼女は全く怯えるそぶりをみせず、自分の体を差し出し、笑みを浮かべてコーヒーまで入れてくれたのだ。しかも、成り行きで彼女と一緒に北海道を目指すことになり........。
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ヒロインである雪枝の妖艶な美しさが印象に残る作品です。まるで捉えどころがなく、現代によみがえった雪女のようなたたずまいにぞっとします。同時に、旅の終わりに待ち受けているのが死であるという事実が一層恐怖を掻き立てていきます。といっても、決してホラー漫画というわけではなく、一種文学的な香りがするのが本作の特徴です。とにかく、読んでいる内に、不思議な引力のようなものにどんどん引き込まれていきます。なんとも名状しがたい魅力のある問題作です。


ワンダンス(珈琲)
小谷花木は中学生のときは恵まれた体格を活かしてバスケットボール部に所属していた。だが、吃音症に悩み、何事にも積極的になれないでいる。特に、ダンスに関しては過去のトラウマから苦手意識を抱いていた。そんなある日、彼は校内でダンスの練習をしている少女を目撃し、その動きに心を奪われてしまう。彼女と一緒に踊りたいという想いを抑えられなくなった花木は苦手意識を乗り越え、ダンスの世界に足を踏み入れていくが.....。
◆◆◆◆◆◆
ダンスにおける静と動の対比が見事に描かれており、思わず引き込まれていきます。踊ることの心地よさがダイレクトに伝わってくるのです。同時に、主人公の等身大のキャラクターも親しみやすく、共感度の高い作品になっています。一方で、ヒロインの湾田光莉は枠にとらわれない奔放さが非常に魅力的です。今後2人の関係性がどのように変化していくのかが楽しみです。


あゝ我らがミャオ将軍(まつだこうた・作 /もりちか・画)
コルドナ社会主義共和国は他国と国交を断絶しながら、強硬姿勢を貫く共産主義国家だ。ある時、偉大なる将軍が急逝し、世襲制を重視するコルドナは次なる指導者として将軍の娘を担ぎあげた。ミャオ・チョビロフ新将軍の誕生である。だが、彼女は未だ9歳の幼女だった。予断を許さない国際状況の中で果たして彼女は国家を安寧へと導けるのか?
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もし独裁国家の指導者が幼女だったらというifの世界を描いたドタバタ政治劇です。単なる子供のわがままのようでいて意外と物事の核心をついてくるミャオと国家の威信をなるべく守りたい大人たちの駆け引きが毎回楽しく描かれています。そして、何かというと粛清を乱発するミャオ将軍の可愛らしさがたまりません。どう見ても某国としか思えない独裁国家の国家運営を萌えコメディに転化、という時点でブラックな笑いを生むことに成功しており、発想の勝利というべき快作です。
あゝ我らがミャオ将軍 1巻
まつだこうた
ノース・スターズ・ピクチャーズ
2019-05-20


幸せカナコの殺し屋生活(若林稔弥)
西野カナコは広告代理店に勤めるOLだったが、ブラック体質の職場に耐えきれず、転職を決意する。だが、彼女が面接に行ったのは殺し屋の会社だった。パワハラで病んでいた彼女は無意識の内に殺し屋の職を選んでいたのだ。その事実に気づき、慌てて辞退しようとするカナコだったが、「給与は60万円から、土日休み、福利厚生完備」の言葉につられてしまう。そして、殺し屋の試験を受け、あっさりと合格してしまうのだった。それからというもの、彼女は「人殺しなんかできない」といいつつ、天性の才能を発揮していく......。
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高校生カップルたちのすれ違いをコミカルに描いた4コマ漫画『徒然チルドレン』の作者による新作です。本作もノリ自体は『徒然チルドレン』と同じで極めて軽いタッチで描かれています。しかし、ヒロインの職業が殺し屋という時点でその軽いタッチが逆に異様な空気を形成しているのです。カナコは人殺しを嫌だ嫌だといいながら、いざとなったら何のためらいもなく遂行します。殺す前は悩んでいても殺したあとは気分爽快で満面の笑みを浮かべます。まるでサイコパスです。一方で、嫌な奴をこの世から消したいという気持ちは誰しも持っているものであり、カナコは読者の代弁者でもあります。この異様性と共感性のせめぎ合いがなんともいえないブラックな笑いを生みだしているわけです。サイコなほのぼの漫画というべき異色傑作です。
ヨシノズイカラ(ヨシノサツキ)
遠野成彦はギリギリの生活をしながら漫画家を続けてきたが、連載を打ち切られ、ついに後がなくなってしまう。そんな彼に対して編集者が持ち込んだ企画は、彼の故郷である島を舞台にした日常漫画だった。今までファンタジー一筋だった成彦はその企画に反発を覚えながらも、新しい可能性にチャレンジしていくことになるが......。
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『ばからもん』の著者による離島シリーズ第2弾というべき作品です。『ばからもん』は離島で書道でしたが、今回は離島で漫画です。冒頭、離島の学校に通う4人の少年と女性教師の交流の物語が始まってなかなか面白いなと読んでいると、意表を突くオチが待っていてまずそこで笑わせてくれます。その後も著者の自叙伝的展開が興味深く、かなり引き込まれる内容になっています。気になる伏線もチラホラ見受けられ、これからの展開が非常に気になる作品です。
ヨシノズイカラ 1巻 (デジタル版ガンガンコミックス)
ヨシノサツキ
スクウェア・エニックス
2019-05-11


水は海に向かって流れる(田島列島)
高校進学を機に直達は学校に近い叔父の家で居候をすることになる。ところが、駅に彼を迎えにきたのは見知らぬ若い女性だった。彼女は榊さんといい、漫画の締め切りに追われて手が離せない叔父の代理できたのだという。彼女に案内された家には叔父と榊さんの他に、女装の占い師やメガネの大学教授が住んでいた。こうして5人での共同生活が始まり、やがて
直達はどこか影のある榊さんに惹かれていくが......。
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絵もストーリーも地味な作品ですが、細かいユーモアの積み重ねやちょっとした会話で匂わすお互いの関係性などといった表現が非常にうまく、独特のテンポ感に思わず引き込まれていきます。ギスギスした人間関係をユーモアに包んでさらりと読ませてしまうところなどは実に達者です。それでいて、登場人物の悩みや真摯な姿勢などが台詞の節々から感じられ、シリアスドラマとしてもよくできています。重層的な魅力に満ちた傑作です。


児玉まりあ文学集成(三島芳治)
児玉まりは文学部部長にして唯一の部員。そんな彼女に憧れる笛田くんは文学部への入部を試みるが、彼女の出題する入学試験に合格できないでいる。
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絵の躍動感はほぼなく、ページは会話劇の文字でびっしりと埋め尽くされています。しかし、だからといって退屈だというわけではなく、独特の表現方法に文学的な想像力を刺激され、思わず引き込まれていきます。しかも、時折、挿入されるラブコメ要素が程良いアクセントとなっているのが秀逸です。唯一無二の作品世界を堪能できるカルト的傑作だといえるでしょう。
純とかおる(二駅ずい)
純とかおるは家が隣同士の同級生。幼馴染である2人は他の人にはない特別な関係で結ばれていた。深夜0時になると互いの性別が入れ替わるのだ。純が男になるとかおるは女になり、かおるが男になると純は女になるといった具合だ。そのため、制服や体操服を互いに交換し合って使用している。しかし、毎日性別が入れ替わるため、ときには混乱してしまうこともあって.......。
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映画『転校生』以来、主人公とヒロインの体が入れ替わるという作品はいくつも発表されてきました。また、男が女の体になるという話も『らんま1/2』の登場を契機に人気が高まり、ひとつのジャンルを形成するほどになっています。しかし、男女の性別だけが入れ替わるというのはなかなか目新しいのではないでしょうか。しかも、本来の性別がどちらなのかも明言されていないため、男女入れ替わりものの定番といえる、性別が入れ替わって巻き起こるうれし恥ずかしハプニングというネタも皆無です。周囲の人間も最初からその現象を受け入れており、大きなトラブルが起きることもありません。その代わり、本作には淡々と描かれる日常描写の中にそこはかとないフェティシズムが漂っており、そこが大きな読みどころとなっています。たとえば、着替えのシーンが描かれるわけでもないのに、制服を交換するというイベントだけでエロさを感じさせるのはこの作品ならではです。また、兄弟のような関係の2人が時折お互いを意識し合うプロセスも幼馴染ものとしてよくできています。独特のタッチの絵と世界観が印象的な、極めてオリジナリティの高い傑作です。
ギャルと恐竜(トミムラ・コタ)
酔った勢いで恐竜を部屋の中に入れてしまったギャル。しかし、もともと深く悩んだりしない性格だったため、そのまま、成り行きで共同生活を始めることになる。
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大型犬ぐらいの大きさの恐竜が突然家に居つくという超シュールな場面から始まる作品ですが、ギャル特有のノリの軽さでそれを受け入れ、日常漫画のような淡々とした展開で話が続いていくのが逆にユニークです。恐竜の方も落書きのようなタッチの絵で常にぽけーとした表情をしているのがなんとも愛らしく感じます。そして、なにより、そんなギャルと恐竜の関係性が絶妙で、台詞の少ない漫画ながらも、独特の空気感が既存の作品にはないおかしみを醸し出しています。気軽にさくさくと読める作品を探しているという人におすすめです。


卑弥呼-真説・邪馬台国伝ー(原作:リチャード・ウー/作画:中村真理子)
3世紀の日本。倭国と呼ばれていたその地は100年に及ぶ戦乱のただなかにあった。現在の宮崎県にあたるヒムカで暮らしていた少女ヤノハも戦に巻き込まれ、身内を皆殺しにされてしまう。みなし子になった彼女は日の巫女集団に拾われ、戦士としての訓練を受ける。やがて、その類まれなる戦闘センスを買われて戦場に送られそうになるが、生に対する執着の強い彼女は謀略を重ね、祈祷部(イノリベ)への異動に成功するのだった。しかし、祈祷部の長であるヒルメに悪辣非道な行いを見抜かれたヤノハは一度入ると二度と出てこれないといわれている魔の洞窟へと送られてしまう.......。
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謎多き邪馬台国の時代を独自の解釈で描いた歴史漫画。話はまだまだ序盤ではあるものの、最初から波乱万丈の展開が続いて手に汗握ります。特に、自分が生き残るためには友人を殺すことすら厭わない鬼畜ヒロインのヤノハがインパクト大です。また、古代日本の描き方も興味深く、あまりなじみのない時代だけに読んでいる内に知的好奇心が刺激されていきます。歴史絵巻として非常に読み応えのある作品であり、おそらく卑弥呼になるであろうヤノハが一体どのような運命を辿っていくのか、これからの展開が気になるところです。
天牢のアヴァロン(藤澤紀幸)
宇宙を航行する宇宙移民船団は乗員のほとんどが睡眠ポットの中で眠り続けている。そして、彼らは仮想空間の中で幸せな夢を見ているのだ。宇宙船の管理は管理官に選ばれ、時折目を覚ます一握りの人間によって行われていた。だが、あるとき宇宙船団は事故に遭い、何万という睡眠ポットが近くの惑星に射出される。そこで、目覚めた人類は中世の騎士の時代に似た独自の文明を築き上げるのだった。一方、管理官の一人であるアズマはポットは遠く離れた場所に射出されたため、事故から400年経過してようやく救出される。睡眠から目覚めた彼は早々に教会と帝国との戦争に巻き込まれるが.......。
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美麗な筆致と壮大なスケールで描きあげられたSFファンタジーです。話の掴みは上々でハードSFから中世騎士物語へとシフトしていくダイナミックな展開が読者の興味を掻き立てます。宇宙船の作業スーツを改造して作ったという鎧を始めとして、SFとファンタジーの要素を巧みに融合しており、ジャンルミックスの面白さに満ちています。ストーリーはまだまだ序盤ですが、これからどのようにドラマが展開していくのか、興味がそそられるところです。


KILLER APE(河部真道)
大断絶によって多くの技術が失われた22世紀末。一度はAIにゆだねられていた戦争は再び人間が行わなくてはならなくなっていた。しかし、人はすでに戦うすべを忘れていた。そこで、兵士たちをバーチャル空間に送り込んで過去の戦争を学ばせる教育プログラムが立案される。一方、大学卒業後、定職につかずに時代遅れの動画配信にのめりこんでいた坂本哲平は、より多くの人間の注目を集めるために軍に入隊する。秘密のベールで包まれた軍の実態をメモリ付きの義眼カメラを使って実況中継しようというのだ。そんな彼が新人教育の一環として最初に飛ばされたのがワーテルローの戦い。1815年に行われたナポレオンによる最後の戦争だった。
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SF設定を用いて歴史上のさまざまな戦争を主人公に疑似体験させる物語ですが、戦場のシーンが迫力満点で読み応えがあります。また、そんな戦場の中で主人公はあくまでも配信者の立ち位置に徹し、ナポレオンにインタビューを試みたりするのがユニークです。独特の力強い台詞回しも印象的で、今後どの戦場がどのような形で取り上げられていくのか、非常に興味深い作品です。


ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~(麻生羽呂)
天道輝はブラック企業に勤める24歳。連日の残業で身も心もボロボロになっていたとき、突然、パンデミックが発生し、街にゾンビがあふれかえる。会社の社長もゾンビ化して晴れて無職の身となった輝はゾンビに追い回されながらも、自由であることの素晴らしさを謳歌していく。そして、いつか訪れるであろう、自分がゾンビになってしまう日までにやっておきたいことのリストをノートに綴り始めるのだが......。
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学校や会社がなくなってしまえばいいのにという、多くの人が持っている夢を体現した作品です。舞台となっているのは国家としての機能が失われ、日に日にゾンビの数が増えている絶望的な世界です。しかし、生き生きと描かれているキャラクターが魅力的で、ノリと勢いで一気に読み進めることができます。読むと元気になれる痛快ゾンビ漫画です。今は勢いだけで突き進んでいる感じですが、今後状況が悪化するにつれてどのようなストーリーが展開されていくのかも気になるところです。
飛野さんのバカ(筋肉☆太郎)
委員長の小熊は物置の裏でいつもサボっている飛野さんになんとか授業に出てもらおうとするが、飛野は授業に出る条件としてちょっとエッチな要求をして小熊をからかう。それに対して、小熊はどこか寂しげな目をしている飛野を放っておけず、なんとか彼女の要求に応えようとするが......。
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ちっちゃくて可愛い委員長とちょっとSっ気のあるクール女子との間で繰り広げられる百合コメディです。2人以外の登場人物がほとんど絡んでこない、まさに2人の世界といった作品で、過激な展開になりそうでならないそのもどかしいラインをついてくる辺りが百合コメとして絶妙です。絵もコメディとしてのクオリティも安定しており、百合好きの人にとっては安心して楽しめる作品だといえます。


部長が堕ちるマンガ(中村朝)
小山田はいつも部下に睨みを利かせている堅物部長。だが、腐女子の社員たちとぶつかり合っていく内に、めくるめくオタクの世界に堕ちていく......。
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主人公である小山田部長は一見すると古い漫画によく出てくる嫌味な上司のようですが、実際はかなり柔軟な思考を持つ人物として描かれてます。理解しがたい意見を主張する部下に対しても決して拒絶することなく、正面からぶつかっていきます。そして、認めるべきところは認めるという器の大きさを有しているのです。そうした素晴らしい人物ではあるのですが、相手が筋金入りの腐女子だけにそこで交わされた議論はいつもとんでもない方向に捻じ曲げられていきます。そして、それをいちいち真面目に受け止める小山田部長の姿が愛らしく、同時に、なんともいえないおかしみを感じさせてくれます。独特のセンスで描かれた社会人コメディの傑作です。


有害無罪玩具(詩野うら)
生きているシャボン玉、0.5秒後の未来が見えるメガネ、見る者にとって最も好ましい姿に見える人形などなど、その寂れた博物館には有害図書玩具が集められていた。中学生の少女は社会の授業の一環としてその博物館へ見学にいくが.....。
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80年代辺りのSF漫画を彷彿とさせる短編集です。センス・オブ・ワンダーな世界を提示しつつも、それだけでは終わらず、読者に哲学めいた命題を投げかけているところに独特の味わいがあります。どの作品も先の見えない霧の中をさ迷っている雰囲気に満ちており、その中に一抹の切なさが感じられます。思考実験めいたプロットの中にドラマとしての深みも垣間見ることができる、なんとも形容しがたいカルト的な傑作です。
有害無罪玩具 (ビームコミックス)
詩野 うら
KADOKAWA / エンターブレイン
2019-02-12


売国機関(品佳直)
クライス連邦とガルダリケ王国という2つの大国に挟まれたチュファルテク合同共和国は両大国の戦争に巻き込まれ、甚大な被害を負ってしまう。おまけに両大国の都合で勝手に屈辱的な安全保障条約が締結されることになり、愛国主義者たちは条約に反対して外国人排斥をを叫ぶ。一方、たとえ強制されたものでも平和が訪れるのならそれが一番だと考えるヨランダ・ロフスキ少佐は無責任に愛国を唱える者たち憎み、排外主義者の殲滅を試みるが.......。
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『幼女戦記』の作者であるカロル・ゼン原作の軍事コミックです。ただ、『幼女戦記』が戦争そのものを描いたのに対して、本作で描かれているのは戦後処理の問題です。そのため、よりイデオロギー色の強い内容になっており、作者の戦争と平和に対する鋭い見識がダイレクトに味わうことができます。また、『幼女戦記』の大規模な世界大戦に比べると本作のスケールはずっと小さく、あくまでも情報戦、局地戦がメインです。スケールダウンを物足りないと感じる人もいるかもしれませんが、同時に、より現代的で考えさせられる点が多い作品だともいえます。さらに、主人公が幼女から大人の女性になったことも含め、『幼女戦記』よりもファンタジー色が大きく後退しており、その辺りも好みの分かれるところです。


明日のエサ、キミだから(若杉公徳)
高校の校庭に突如現れた怪物のせいで生徒たちは校舎から出られなくなってしまった。怪物出現当初は救助や食料を運ぶヘリがきていたものの、それも途絶えてしまう。このままでは全滅を待つばかりだ。ただ、怪物は人間を一人喰うとしばらく大人しくなる。そのことに気付いた生徒たちは1日1人ずつ生贄を差し出して日々を生き延びていた。学園カースト底辺の主人公はこの状況の中でいかにして生き残るのか?
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話のテンポがよくて登場人物は次々に悲惨な死を迎えますが、それをあっけらかんと描くことによってブラックな笑いが醸し出されています。ただ、あっというまに残りの人数が少なくなっていき、これからどうするのだろうと思っているとまさかの展開に....。続きが非常に気になる作品です。
着たい服がある(常喜寝太郎)
女子大生のマミは背が高くてクールな雰囲気をまとっており、周囲の女性からは羨望の眼差しで見られていた。しかし、彼女自身はロリータファッションに憧れていて、かっこいい女性像を押しつけられることに息苦しさを感じていたのだ。ある日、バイト先にイケメンなのに奇抜な残念ファッションをし続ける小澤君がやってくる。そんな彼に感化されたマミは次第に自分らしさを解放していくが......。
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ファッションを巡る作品ですが、その根底には「自分らしさの実現」という普遍的なテーマがあり、ファッションに興味がない人でも楽しめる内容になっています。しかも、絵が丁寧で心理描写も細やかなので非常に読み応えがあります。特に、ヒロインが大学卒業後にOLではなく、小学校の教師になるのが大きなポイントです。同調圧力の強い学校という空間では、自分らしくあることは特に困難を極め、その事実が本作のテーマ性をより一層浮き彫りにしていく形になっています。社会の中で漠然とした生きづらさを感じている人には特におすすめの作品です。
スキップとローファー(高松美咲)
石川県の田舎町で育った岩倉美津未は東京の高校に首席で合格し、上京する。輝かしい未来を夢見てのスタートだったが、初日から失敗ばかり。田舎育ち故にコミュ力が乏しく、ちょっと天然な彼女にとって東京での生活は少々ハードルが高かったのだ。しかし、彼女の真っすぐな人柄は次第にクラスメイトたちに影響を与えるようになり......。
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三白眼でちょっとずれているヒロインがとにかく愛らしくて読んでいると次第になごんだ気分になります。そして、都会の学校ならではの人間関係をその天然っぷりでかき乱していくさまに独特の面白さがあります。また、彼女を取り巻く人々もクセモノながら根の部分ではみな善人であるため、安心して読めるのも好印象です。


バトゥーキ(迫稔雄)
三條一里は平凡な家庭で育てられた中学生の少女だ。だが、いつからか満月を見るたびに、なんともいえない不思議な気持ちに包まれる自分を自覚していた。そんなある日、一里は学校帰りのコンビニで強盗に遭遇し、友人を救うために行動したことで窮地に陥ってしまう。そのとき、ホームレスのおじさんが現れ、超人的な動きで強盗を一蹴する。それはバツゥーキという音楽の舞いだった。その動きに魅了された一里は自分にもバツゥーキを教えてほしいとおじさんに願い出る。それが彼女の物語の始まりだった.....。
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ギャンブル漫画の名作『嘘喰い』の作者が放つカポエイラ漫画です。カポエイラといえば、格闘漫画やゲームなどでおなじみですが、どちらかというと脇役や敵役が使う技というイメージがありました。そんなカポエイラを真正面から描こうというスタイルにまず興味をそそられます。それに加えて、格闘シーンのスピード感や迫力はさすがで、その時点で一気に引き込まれます。絵にクセがあり、特に子供や日常描写に違和感を感じるのが難点ですが、そうした部分を差し引いても十分に面白いといえる作品です。ちなみに、1巻と同時に2巻も発売され、そこまでが本作のプロローグといった感じになっています。今後どんどん面白くなっていく予感に満ちており、これからの展開が非常に楽しみです。
モンスター娘のお医者さん(画・鉄巻とーます/原作・折口良乃)
魔族専門医のグレン・リトバイトは魔族と人間の共存しているリンドヴルムの街で診療所を営んでいる。彼の元を訪れるのはさまざまな症状を抱えるモンスター娘たち。しかし、顔立ちに幼さが残るグレンが治療を始めるとなぜか怪妖しげ気な雰囲気になり.....。
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ダッシュエックス文庫から発売中のライトノベルのコミカライズ作品です。ちょっと重さを感じさせる絵柄はモンスターの造形とマッチしており、原作の雰囲気をよく再現しています。また、モンムスたちも可愛く描かれており、ライトエロなシーンも実際に絵で見ることができるのはうれしいところです。キャラクターの感情表現も秀逸でコミカライズとしてはレベルの高い仕上がりだといえるでしょう。原作が好きな人には特におすすめです。
モンスター娘のお医者さん(1)【電子限定特典ペーパー付き】 (RYU COMICS)
鉄巻とーます
徳間書店(リュウ・コミックス)
2019-01-12


とんずらごはん(義元ゆういち)
名家令嬢の小波沙羅は婚約者を殺されたうえ、殺害容疑をかけられる。謎の人物からの電話によってその事実をいち早く知った沙羅は警察が来る前に逃げ出し、全国指名手配犯の身の上となってしまう。しかし、空腹では逃亡もままならないと、彼女は行く先々でご当地グルメを次々と平らげていくのだった......。
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いまや定番ジャンルとなったグルメ漫画ですが、主人公が逃亡犯というのが意表をついています。しかも、一見おしとやかなご令嬢なのに意外と図太いところが笑えます。テンポもよくサクサクと読めるので気軽に楽しむには最適の一冊です。
微妙に優しいいじめっ子(もすこ)
地味で冴えない田村くんは不良の木崎くんからイジメを受けている。パシリをさせられたり、変なあだ名を付けられたり。しかし、そんな彼は田村くんに対して微妙に優しい。しかも、クラスで田村くんの名前を正しく覚えているのも木崎くんだけだった。
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イジメをテーマとした漫画ですが、陰湿な雰囲気はまったくありません。むしろ、木崎くんが田村くんに対してイジメながら気配りを見せるツンデレぶりが愛おしくさえ感じられます。イジメっ子といじめられっ子の噛みあわない関係から醸し出されるホノボノ感が秀逸です。


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