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4月11日発表予定の本屋大賞の候補作の概要と受賞作予想をまとめてみました


i(西加奈子)
「この世界にアイは存在しません」数学教師の言葉に曽田アイは衝撃を受ける。シリア難民の子として生まれ、アメリカ人の父と日本人の母に養子に迎えられた彼女は、不幸であふれる世界の中で自分が幸福な環境にいることに居心地の悪さを感じていた。そんな彼女に数学教師の言葉が突き刺さる。 アイディンティティの喪失に悩む女性を描いた感動と奇蹟物語。
西加奈子氏は 幼児期をイラン、小学時代をエジプトで過ごし、ライター業を経て2004年に『あおい』で作家デビュー。2015年には『サバラ』で直木賞を受賞しました。本屋大賞ノミネート作品は『さくら(10位)』、『ふくわらい(5位)』、『サバラ(2位)』の3作。徐々に順位を上げているだけに本作での受賞が期待されます。
i(アイ)
西 加奈子
ポプラ社
2016-11-30

 
暗幕のゲルニカ(原田マハ)
2003年国連ロビーに飾られていたゲルニカのタペストリーが突然姿を消す。ピカソの大作ゲルニカを挟んで過去のスペイン内戦と現代の911テロ事件がシンクロする美術ミステリー。
原田マハ氏は2003年にカルチャーライターとして執筆を開始、2005年に『カフーを待ちわびて』で第1回ラブストーリー大賞を受賞して小説家としてレビュー。2012年には『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞を受賞。本屋大賞は2013年に『楽園のカンヴァス』がノミネートされ、3位を記録しています。 
暗幕のゲルニカ
原田 マハ
新潮社
2016-03-28


桜風堂ものがたり(村山早紀)
 埋もれていた名作を掘り起こすのが得意な書店員の青年・月原一整は、万引き事件の責任をとって書店を辞めざるを得なくなってしまう。彼はネットで親交を温めていた書店店主の老人を尋ねるが…。本を巡るさまざまな出会いを描いた書店員奮闘記。
村山早紀氏は児童文学作家として1993年に『ちいさいえりちゃん』でレビュー。同作品で毎日童話新人賞最優秀賞及び第4回椋鳩十児童文学賞を受賞。本屋大賞は初ノミネート 。


コーヒーが冷めないうちに(川口俊和)
とある喫茶店には席に座ると自分が望んだ過去に戻れるという都市伝説があった。しかし、それを実現するには非常に面倒なルールに従わなければならないという。その喫茶店の名はフニクリフニクラ。4つの奇跡が引き起こす心温まる物語。 
川口俊和氏は1971年生まれの舞台脚本家&演出家。 本作は「4回泣ける」のキャッチフレーズでベストセラーになった作品で、川口氏の小説家としてのデビュー作です。

 
コンビニ人間(村田沙耶香)
大学卒業後、18年間コンビニで働き続ける女性。メンバーは次々変わっても満ち足りた気持ちで日々働き続ける惠子。しかし、ある日、新人の男性から「そんな生き方は恥ずかしくないのか」と詰め寄られるか…。人生の正しさとは何かを問うリアリズム小説の傑作。
村田沙耶香氏は2003年に『授乳』で第46回群像新人文学賞優秀賞を受賞してデビュー。2009年には『ギンイロノウタ』で第30回野間文芸新人賞を、2013年には『しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞を受賞。そして、本作では155回芥川賞を受賞しています。その他の代表作としては『殺人出産』や『消滅世界』などがあり、いずれもぶっとんだ世界観に引き込まれる作品です。なお、本屋大賞は本作が初ノミネートです。
コンビニ人間
村田 沙耶香
文藝春秋
2016-07-27


『ツバキ文具店』小川糸/幻冬舎
小さな文具店を営んでいる鳩子。彼女は文具の販売の他に手紙の代筆を請け負っている。代筆を通して人の気持ちに寄り添うヒロインに心癒される物語。
小川糸氏は1999年に『密葬とカレー』で作家デビュー。しかし、その後作詞家などの活動がメインとなり、作家業からはしばらく離れていた。2007年には小説家復帰作とも言える『食堂かたつむり』がベストセラーとなり、2010年には映画化もされました。さらに同作品はフランスやイタリアの文学賞も受賞します。また、2010年に発表された『つるかめ助産院」はNHKでドラマ化。本屋大賞は今回が初ノミネートです。
ツバキ文具店
小川 糸
幻冬舎
2016-04-21


罪の声(塩田武士)
テーラーを営む俊也は父の遺品からカセットテープを見つける。そこに録音されていたのは31年前のギン萬事件の脅迫に使われた子供の声。しかも、それは幼き頃の俊也自身の声だった。膨大な資料からグリコ森永事件を再構築し、圧倒的リアリティ に基づいて描いた傑作ミステリー。
塩田武士氏は新聞記者の経験を生かし、2010年に将棋をテーマとした『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞を受賞して作家デビュー。2012年には新聞社を辞して専業作家となり、2016年に本作を発表。第7回山田風太郎賞を受賞し、その年の年末には 週刊文春ミステリーベスト10で見事1位に輝きました。本屋大賞は本作が初ノミネートとなります。
罪の声
塩田 武士
講談社
2016-08-03


みかづき(森絵都)
教育免許は持っていないが、教える才能に長けた小学校用務員の吾朗。彼は生徒の母である千明から学習塾を立ち上げるので力になってほしいと頼まれる。やがて、ベビーブームと経済成長を背景に塾は軌道に乗っていくが、 しかし、その先にはいくつもの波乱が待ち構えていた。学習塾の経営と教育論を巡る三代の大河ストーリー。
森絵都氏 は1990年に『リズム』で第31回講談社児童文学新人賞を受賞してレビュー。1999年には『カラフル』が第46回産経児童出版文化賞を受賞してアニメと実写の両方で映画化をされます。それ以外にも多数の児童文学賞を受賞していますが、一般小説の分野でも活躍を始め、2006年には『風に舞い上がるビニールシート』で第135回直木賞を受賞しました。本屋大賞は2004年の第1回に『永遠の出口』が4位選ばれたのに続いて2回目のノミネートです。
みかづき
森 絵都
集英社
2016-09-05

 
蜜蜂と遠雷(恩田陸)
養蜂家の父と各地を転々として正式にピアノ教育を受けたことのない15歳の風間塵、かつては天才少女と呼ばれながらも母の死とともにピアノから離れていた20歳の栄伝亜夜、卓越した演奏技術で優勝候補と目されている19歳のマサル・C・レヴィ=アナトール。注目の国際ピアノコンクールに天才ピアニストたちが集結し、熱き戦いを繰り広げる。
恩田陸氏は『六番目の小夜子』で第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補に選ばれ、1992年に作家デビュー。以後、多くの文学賞を受賞し、今年、6回目のノミネートとなる本書でついに直木賞も射止めました。なお、本屋大賞は2005年に『夜のピクニック』で1位に輝いて以来、2回目のノミネートです。2回目の1位となるかが注目です。
蜜蜂と遠雷
恩田 陸
幻冬舎
2016-09-23


『夜行』 森見登美彦
学生時代、京都で過ごした6人の仲間。しかし、鞍馬の火祭の日、長谷川さんが忽然と姿を消してしまう。それから10年後、長谷川さん以外の仲間が再会するが、彼らはいずれも旅先で『夜行』という絵にまつわる不思議な体験をしていた…。 
森見登美彦氏は2003年に京大大学院在籍中に書き上げた『太陽の塔』が第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、作家レビュー。2006年には第20回山本周五郎賞を受賞した『夜は短し、歩けよ乙女』が話題となり、人気作家の仲間入りを果たしました。『夜は短し、歩けよ乙女』はその年の本屋大賞2位にも選ばれ、以後、森見氏は本屋大賞ノミネートの常連となります(『有頂天家族(2008年4位)』、『ペンギンハイウェイ(2011年3位)』、『聖なる怠け者の冒険(2014年9位)』)。

夜行
森見 登美彦
小学館
2016-10-25


受賞作予想
本屋大賞は数人の作家が合議で決める他の文学賞と異なり、多くの書店員の投票によって決められます。つまり、ひとりの選者が特定の作品に惚れ込み、猛プッシュの末にサプライズ受賞なんてことはないわけです。そのため、どうしても地味な作品、アニアックな作品は不利であり、ある程度話題性があって本好きから幅広い支持が得られそうな作品が選ばれる傾向があります。そういう意味では今回の本命は『蜜蜂と遠雷』ではないでしょうか。去年の受賞作である『羊と鋼の森』とピアノがテーマという点がかぶるのが気になりますが、評判の良さと支持層の広さでは群を抜いています。続いて、ノミネートされるたびに順位を上げている西加奈子氏の『i』が対抗作となるような気がします。そして、ダークホースが『桜風堂ものがたり』です。書店員が主人公で地方の書店が舞台の物語だけに投票者の中にも共感を覚える人が多いのではないでしょうか。

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