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7月19日発表予定の第155回直木賞。その候補作品の概要をまとめてみました。今回は作者全員が直木賞ノミネート経験者であり、しかも、6人の内5人が直木賞と並ぶ3大大衆文学賞と言うべき山本周五郎賞か、吉川英治文学新人賞を受賞しています。実力者揃いのメンツの中から誰が受賞するのかが注目です。

暗幕のゲルニカ(原田マハ)
稀代の画家・ピカソの代表作であるゲルニカ。国連本部のロビーにはその名画と同じ図柄のタペストリーが飾れていたが、2003年に忽然と姿を消す。ゲルニカを隠した犯人は誰なのか?現代と大戦前のパリが交錯する美術ミステリー。
2012年に大いに話題になり、第147回直木賞候補を経て第25回山本周五郎を受賞した『楽園のカンヴァス』。本作はそれと同じ著者が得意とする美術ミステリーです。原田マハ氏は2014年にも、ピカソ、ドガ、セザンヌなどの画家を題材した短編集『シヴェールニの食卓』で第149回直木賞候補になっており、今回3度目の正直となるかが注目です。
暗幕のゲルニカ
原田 マハ
新潮社
2016-03-28


家康、江戸を建てる(門井慶喜)

徳川家の力を削るために豊臣秀吉が命じた関東への領地替えだったが、家康はその何もない広大な土地に未来への可能性を感じていた。彼は無名だが腕の立つ職人を集め、一大プロジェクトを遂行する。数十年の歳月をかけて江戸をつくり上げた職人たちの熱い魂の物語。
門井慶喜氏は2000年にデビューして以来、ミステリー作家として活躍していましたが、2013年に伊藤博文の若き日を描いた『シュンスケ』で歴史小説に初挑戦。本作で4作目の歴史物になります。なお、2015年に153回直木賞候補となった『東京帝大叡古教授』は明治時代を舞台にしたミステリーです。
家康、江戸を建てる
門井慶喜
祥伝社
2016-02-09


海の見える理髪店(荻原 浩)※直木賞受賞
老いた理髪師が、閉店の日の最後の客と交わす 何気ない会話が思わぬ結末を迎える表題作から、数年前に15歳で亡くなった娘になりかわって成人式に出席しようとする夫婦の奮闘を描く『成人式』までの家族にまつわる6つのエピソード。おかしくも切ない胸に染みいる短編集。
荻原浩氏は、これまでに『あの日にドライブ』、『 四度目の氷河期』、『愛しの座敷わらし』、『砂の王国』と4度の直木賞候補ノミネート。今回が5度目の挑戦となります。直木賞以外では2005年に若年性アルツハイマーを題材にした『明日の記憶』で第18回山本周五郎賞を受賞。翌2006年には渡辺謙主演で映画化もされました。他にも、2014年には『二千七百の夏と冬』で第5回山田風太郎賞を受賞しています。


真実の10メートル手前(米澤穂信)
遺書を残して心中した高校生の男女は、なぜそれぞれ異なる方法で命を絶ったのか?衰弱死した初老の男が書き遺した「名を刻む死」とは何を意味するのか?姪殺しの容疑で逮捕された少年が書いた手記に秘められた真実とは?『さよなら妖精』で女子高生として登場し、『王とサーカス』でジャーナリストとしての生き方を見つめ直した太刀洗万智のその後を描いた連作ミステリー。
米澤穂信氏は、『満願』と『王とサーカス』で、このミステリーがすごい!などの年末のミステリーランキングにおいて、前代未聞の2年連続3冠王を達成。ミステリー界ではエース的存在と言える俊英です。2011年には『折れた竜骨』で第65回推理作家協会賞を受賞、2012年には『古典部シリーズ』が『氷菓』のタイトルでアニメ化。2014年に発表した『満願』は第151回直木賞の候補作となると同時に第25回山本周五郎賞を受賞しました。勢いに乗っている作家だけに今回も受賞を期待したいところですが、本作は去年話題になった『王とサーカス』のスピンオフ的作品であり、これ単体での評価は厳しいかもしれません。
真実の10メートル手前
米澤 穂信
東京創元社
2015-12-21


天下人の茶(伊東潤)
茶の道を追い求めながらも権謀術数を巡らし、天下人・豊臣秀吉を操ろうとする千利休。細川忠興、古田織部など、彼の弟子を通して茶聖と呼ばれた男の裏の顔を描く連作時代小説。
伊藤潤氏は2003年のレビュー以来、緻密な考証に基づく濃密な歴史ドラマを持ち味としてその評価を上げていき、2011年の『城を噛ませた男』で第146回直木賞候補にノミネートされます。翌年の『国を蹴った男』で再び直木賞候補となると同時に第34回吉川英治文学新人賞を受賞。2013年には『巨鯨の海』で三度直木賞候補となり、第4回山田風太郎賞を受賞しました。さらに、2014年の『王になろうとした男』で4度目の直木賞候補。5回目のノミネートで今度こそ受賞となるでしょうか?
天下人の茶
伊東 潤
文藝春秋
2015-12-05


ポイズンドーター・ホーリーマザー(湊かなえ)

毒親である母から逃げて女優になった娘と娘を一途に想い続けていた母、女に刺された優しい男と男を刺し殺した優しい女、母親に厳しくしつけられた姉と甘やかされた妹。人間の数だけ真実があり、主観が変われば見える風景も違ってくる。永遠のすれ違いの中で至る後味の悪い結末。著者18番のイヤミスの味が濃密に詰め込まれた短編集。
作家デビュー作の『告白』は第6回本屋大賞を受賞。中島哲也監督によって手掛けられた映画版は2010年の映画賞を総なめにしました。その後、2013年には『望郷』で直木賞候補に。今回は2回目のノミネートですが、湊かなえ氏は先日、『ユートピア』で第29回山本周五郎賞を受賞したばかり。勢いに乗って連続受賞はあるのでしょうか?


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