更新終了☆☆☆


 
2016本格ミステリ・ベスト10
探偵小説研究会
原書房
2015-12-04


2015年10月


悪夢はめぐる(ヴァージル・マーカム) 全囚人を見せてほしいと刑務所に訪れた女性は、不吉な言葉を残し、絶命する。それが悪夢の始まりだった。
密室、不可能犯罪のオンパレード、奇想天外のトリックに破綻寸前のプロット、不自然さを感じさせる歪んだストーリー。B級感満載ながらも忘れ難い味わいが残る怪作です。


悲しみのイレーヌ(ピエール・ルメートル) 度を越した猟奇殺人を繰り返す殺人鬼とそれを追うカミーユ警部。大ヒットを記録した『その女アレックス』の前日譚。
アレックスを読んでしまうとネタばれになる部分があるので、できれば、こちらを先に読んでほしいところです。ちなみに、本書はアレックスよりも古典的ミステリーのフォーマットに近いので、本格ミステリファンにはこちらの方が好評かもかれません。さらに、見立て殺人というシチュエーションもケレン味たっぷりで、ますます、本格ファン好みのテイストです。その上、二転、三転展開するドラマは起伏に富み、アレックスに勝るとも劣らない上質なサスペンス小説に仕上がっています。ただ、本格ファンにとっては真犯人は比較的に分かりやすいかもしれません、それに、グロテスクなシーンがかなりあり、結末も悲劇的なので、そういったものが苦手な方は注意が必要です。しかし、それでもなお、キャラクターがひとりひとり立ちまくっており、面白い本であることではまちがいありません。
2016年度このミステリーがすごい!海外部門2位
本格ミステリベスト10 海外部門7位


アルファベット・ハウス(ユッシ・エーズラ・オールスン) ドイツ上空で、撃墜された英国軍パイロットのブライアンとジェイムスは、負傷したナチスの将兵になりすまして生き延びるが、送り込まれた精神病院でひどい虐待にあう。やがて、ブライアントは脱走に成功するが、ジェイムスを置き去りにしてしまう。そして、28年後、彼はジェイムスの消息を追うため、ドイツへと向かう。
かなり陰残で緊迫感に満ちた物語です。特に、第1部は容赦のない虐待描写に目をそむけずにはいられません。しかし、それだけに、読みごたえは十分で、戦争や友情について深く考えさせられる作品に仕上がっています。
アルファベット・ハウス (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
ユッシ・エーズラ・オールスン
早川書房
2015-10-07


スキンコレクター(ジェフリー・ディーヴァー) 女の肌に毒物で刺青を彫って死に至らしめる事件が発生。それはかつての敵、ボーンコレクターを想起させるものだった。科学捜査官ライムシリーズ11弾。
最近、やや停滞気味だった同シリーズですが、本作では従来の面白さがよみがえっています。どんでん返しの連続も健在で、さらに、宿敵ウォッチメーカーやボーンコレクターの名前がでてくるのは、ファンにとっては嬉しいところです。そうした過去の名犯人に比べて、本作の犯人がやや小物に感じられてのは残念ですが、今後の熱い展開が予見できる終わり方には、期待に胸を膨らませざるをえません。
2016年度このミステリーがすごい!海外部門1位
スキン・コレクター
ジェフリー ディーヴァー
文藝春秋
2015-10-17


 
2015年9月

あなたは誰?(ヘレン・マクロイ) クラブ歌手の元へ「婚約者の所に行くな」という匿名の電話がかかってきた。それを無視して婚約者の元に訪れると、その夜のパーティーで、彼のいとこが毒殺される。
1942年の作品。マクロイ得意のサスペンス風味が強い本格ミステリーですが、今回は、ひねりがよく効いていて、フーダニットに秀でた佳作に仕上がっています。また、初期の作品のため、全盛期のものと比べると、古典ミステリーに近いテイストです。

2016年度本格ミステリベスト10 海外部門2位
あなたは誰? (ちくま文庫)
ヘレン マクロイ
筑摩書房
2015-09-09


2015年8月

偽りの楽園(トム・ロブ・スミス)
ダニエルの元に父からの電話がかかってくる。母が入院していた精神病院から脱走したというのだ。両親はスウェーデンで平穏な老後をすごしていたはずではないのか?とまどう彼に対して、今度は母からの電話が。その話によると、彼女は狂ってなどなく、父が悪事に手を染めようとしてるらしい。ダニエルはどちらを信じて良いのかわからず途方に暮れる。
この作品の大半を占めるのが母親のダニエルに対するひどくもったいぶった告白話なのですが、この部分をどう感じるかで作品の評価が大きく変わってきます。不安感や緊迫感を煽る巧みな語り口だと感じれば、あなたにとってこの作品は傑作です。「いいから、さっさと何があった言いやがれ!」と思うのであれば、そっとページを閉じた方が賢明でしょう。実際、世評も賛否相半ばしています。全く面白さが分からないという人が少なからずいる一方で、各年間ミステリーランキングで高い順位を記録していることからも分かるように、熱烈に支持している人も多くいるのです
2016年度このミステリーがすごい!海外部門14位
偽りの楽園(上) (新潮文庫)
トム・ロブ スミス
新潮社
2015-08-28


もう過去はいらない(ダニエル・フリードマン) 88歳になるかつての名刑事バックの元に、78歳の元銀行強盗が助けを求めにやってくる。彼は何者かに命を狙われているというが、バックは彼が何かを企んでいると睨んでいた。『もう年はとれない』の続編。
もうすっかり老人になって、体も弱っているのにマグナムをぶっ放す元刑事のタフガイぶりがなんとも魅力的です。人種差別や権力の腐敗など重たいテーマを扱っていますが、それをユーモアで包み込んで、上質なエンタメ小説に仕上げているのがこのシリーズの特徴になっています。ただ、本作は、前作と比べるとドタバタ感は後退し、どちらかというと、ずっしりとしたハードボイルドといった趣です。
2016年度このミステリーがすごい!海外部門6位
もう過去はいらない (創元推理文庫)
ダニエル・フリードマン
東京創元社
2015-08-29


街への鍵(ルース・レンデル) 白血病患者に骨髄を提供したメアリー。体に傷がついたと、そのことをなじる恋人、骨髄の提供者である優男、不気味な犬飼いの老人、そして、残忍なホームレス殺人。多くの人々の思惑が重なり合い、やがて物語はひとつに収束していく。
日本でも80年代にブームになったサスペンス小説の女王、故ルース・レンデルの初翻訳本。
日常が悪意や暴力でゆっくりと崩壊していくさまは、さすがに熟練の腕を感じさせる出来栄えです。また、キャラクターの肉付けが上手いので、視点が頻繁に変わるのにも関わらず、混乱することなく読み続けることができます。約20年前の作品ですが、全く古さは感じさせません。そして、今はただ、彼女の作品が、これ以上読めないことが残念でなりません。

2016年度このミステリーがすごい!海外部門11位
街への鍵 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
ルース・レンデル
早川書房
2015-08-07


彼女のいない飛行機(ミシェル・ビュッシ) 飛行機事故で唯一生き残った生まれたての女児。しかし、その飛行機に、赤ん坊はふたり乗っていたのだ。生き残ったのはどちらなのか?司法判断によって一応の決着をみたが、それに納得がいかない金持ちの方の家族が探偵を雇う。そして、18年の歳月が過ぎて・・・。
非常に面白い作品ですが、難解なのが探偵のノートです。結論を先延ばしにしてだらだらと続く文章には多くの人が辟易していまうでしょう。しかし、それにも、実は意味があり、最後には謎が鮮やかに解かれます。いかにもフランスミステリーらしい企みに満ちた一作です。
2016年度このミステリーがすごい!海外部門9位
彼女のいない飛行機 (集英社文庫)
ミシェル ビュッシ
集英社
2015-08-20


髑髏の檻(ジャック・カーリイ) ネットで死体遺棄の場所を告知する殺人犯。その死体はどれも異様な着飾りを施されていた。その謎にカーソン刑事と彼の兄であり、逃走中の殺人鬼でもあるジェレミーが挑む。犯罪捜査官カーソン・ライダーシリーズ。
事件はかなり陰惨ですが、レギュラーキャラクターがエネルギッシュで魅力的なので楽しく読むことができます。また、エログロ満載にも関わらず、読後は不思議と爽やかな希有なシリーズです。
2016年度このミステリーがすごい!海外部門10位
2016年度本格ミステリベスト10 海外部門4位
髑髏の檻 (文春文庫)
ジャック カーリイ
文藝春秋
2015-08-04


2015年7月

弁護士の血(スティーヴ・キャビナー)
かつて、ゴロツキだったエディはあるきっかけで改心し、今では弁護士になっていた。しかし、仕事に打ち込んで家族を顧みなかった結果、妻との仲は最悪になっていた。そんなあるる日、彼はロシアン・マフィアに銃を突きつけられ、マフィアのボスに不利な証言をする証人を殺せと命じられる。10歳の娘は人質にとられ、自身の体には爆弾がセットされる。絶体絶命の危機に、エディはどう立ち向かうのか。
物語は、マフィアとのアクションパートと法廷での論戦が交互に語られていきます。これ以上ないピンチを切り抜ける関係上、多少のご都合主義は感じますが、展開がスピーディなのでとにかく読んで楽しい作品です。それに、絵空事めいたアクションシーンに比べ、法廷シーンはリアリティがあり、じっくりと読ませます。ストーリーに目新しさはないものの、極めてよくできた娯楽小説だと言えるでしょう。
2016年度このミステリーがすごい!海外部門8位
弁護士の血 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
スティーヴ・キャヴァナー
早川書房
2015-07-23


声(アーナルデュル・インドリダソン) ホテルの地下室で、サンタクロース姿の初老のドアマンが惨殺死体で発見される。
被害者は元ボーイソプラノの人気少年歌手。変声期を経た後、彼はどうなったのか?やがて明らかになるその栄光と挫折の過去。
重苦しい雰囲気漂う北欧ミステリー。ミステリーというよりも心に傷を負った家族の物語を中心に展開されます。ミステリーとしては凡庸ですが、人間ドラマとして読み応えのある小説に仕上がっています。

2016年度このミステリーがすごい!海外部門5位
声
アーナルデュル・インドリダソン
東京創元社
2015-07-29


水の葬送(アン・クリーヴス) シェトランド諸島のエネルギー産業を取材していた新聞記者が水死体で発見される。前作で負った心の傷が癒えぬペレス警部は事件を解決へ導けるのか?
前作で衝撃の結末を迎えたシリーズの第5弾。派手な展開はなく、ジェトランドの美しい風景と丹念な人間描写で読ませるシリーズですが、本作は遅々として進まぬ捜査の他に、傷心から立ち直れないペレスの姿も描かれ、ジリジリさせられます。しかし、最後は見事に事件を解決してすっきり。今後、ペレスがどのように立ち直っていくかが気になります。
2016年度本格ミステリベスト10 海外部門9位
水の葬送 (創元推理文庫)
アン・クリーヴス
東京創元社
2015-07-21


ネメシス 復讐の女神(ジョー・ネスボ) オスロで起きた銀行強盗。銀行員がひとり射殺され、犯人は逃走。ハリー警部も捜査に加わるが、有力な手掛かりは見つからない。さらに、元恋人と食事した翌日、彼女が死体で発見される。ハリーホレーシリーズ第4弾。
序盤から緊迫した展開が続き、話も二転三転。非常に面白いエンタメ小説です。ただ、ノルウェーが舞台のため、登場人物の名前が覚えにくいという難点があります。
2016年度このミステリーがすごい!海外部門18位


リモート・コントロール(ハリー・カーマイケル) 飲酒運転で人を殺して収監された男。しかし、関係者の証言を集める内に事件はその様相を変えていく。
派手な事件ではなく、仕掛けもシンプルなのですが、ミスリードが巧みで、作者の手のひらの上で読者が翻弄される本格ミステリの佳作です。ストーリーは地味ですが、コンパクトにまとまっているので、退屈せずにサクサクと読み進めることができます。

2016年度本格ミステリベスト10 海外部門5位
欺きの家(ロバート・ゴダード) ケラウェイは社史を編纂するための記録の収集を命じられるが、その一部はすでに紛失していた。そして、その記録を探ることで彼は40年前の少年の死と向かい合うことになる。
過去と現在を行き来する回想型ミステリー。あまり起伏ないストーリーですが、登場人物の個性がしっかり書き込まれているため、最後まで飽きずに読むことができます。繊細で情緒豊か。それでいて、静かにサスペンスが浮き上がってくる上品な味わいのエンタメ小説です。

欺きの家(上) (講談社文庫)
ロバート・ゴダード
講談社
2015-07-15


友だち殺し(ラング・ルイス) 大学病院の死体保管室で、失踪中の美人秘書が遺体で発見される。1942年発表の著者デビュー作。
大学生たちの瑞々しい青春模様や刑事たちのユーモラスな掛け合いを交えて描き出される端正な本格
ミステリーです。ただ、人によっては前半が淡々として退屈だと感じるかもしれません。


出口のない農場(サイモン・ベケット) 逃亡中の男は森で罠にかかって負傷するが、農場の娘が介抱してくれる。しかし、その農場には何か秘密が隠されいるようだった。
展開はかなり淡々としているので退屈に感じる人もいるでしょうが、読んでいる内に、よどんだ空気のような不安がまとわりつき、独特のサスペンスを感じるようになります。その雰囲気に嵌まれば、後はぐいぐいと読み進むことができるでしょう。特に驚くようなサプライズはありませんが、語り口のうまさが光る作品です。



2015年6月

子守唄(カーリン・イェルハルドセン) 喉を掻き切られ、ベッドに横たわる母親と幼い子供たち。事件の影には謎の男の存在が・・・。ハンマルビー署シリーズ第3弾。
悲惨な事件が続き、刑事たちもいろいろと問題を抱えてるという、ひたすら重く沈んだ雰囲気の警察小説です。本当に読んでいてつらいのですが、先が知りたくて読み進めてしまうという不思議な魅力があります。当初、3部作と言われていたシリーズは全8作となり、登場人物のこれからにますます目が離せません。
子守唄 (創元推理文庫)
カーリン・イェルハルドセン
東京創元社
2015-06-29


薔薇の輪(クリスチアナ・ブランド) 障害を持っているために田舎に住んでいる娘。そして、彼女との交流を綴ったエッセイが人気の女優。しかし、特赦で彼女の夫が出所してきたことで事件は起こる。 英国本格ミステリーの巨匠、晩年の作品。全盛期のような驚愕の結末とかはありませんが、細部に技巧が光る佳作です。
2016年度本格ミステリベスト10 海外部門3位
薔薇の輪 (創元推理文庫)
クリスチアナ・ブランド
東京創元社
2015-06-29


エンジェルメイカー(ニック・ハーカウェイ) ギャングの子として生まれたジョーは時計の機械職人として暮らしていたが、謎の機械の修理を依頼されて運命が変わる。それは、第2次世界大戦時に開発された最終兵器の鍵だったのだ。
スチームパンクのようなSF的世界を舞台にアクションあり、謎解きありの波乱万丈のエンタメ小説。とにかく、登場人物が饒舌で、風呂敷がどんどん広がっていくのが特徴ですが、その辺りを楽しめるかどうかで評価が変わってきます。

2016年度このミステリーがすごい!海外部門4位


悪女は自殺しない(ネレ・ノイハウス) 若い女の偽装自殺と大物検事の猟銃での自殺。無関係に思われたふたつの事件がひとつに繋がり、そこから様々な悪事が暴かれていく。オリヴァー警部と女刑事ピアが活躍するシリーズ第1作。
登場人物が魅力的で、小さな事件から大きな事件へと繋がっていくダイナミックな展開もミステリーとして十分面白い出来です。ただし、先に翻訳され、傑作と名高いシリーズ第3作『深い疵』などと比べると、若書き故か構成が荒く、ごちゃごちゃしている感は否めません。
悪女は自殺しない (創元推理文庫)
ネレ・ノイハウス
東京創元社
2015-06-12


ゲルマニア(ハラルト・ギルバース) 1944年のドイツ。空爆に晒され、廃墟となったベルリンで行われる連続女性猟奇殺人。その捜査を命じられたのは、ユダヤ人だったために公職を追われた元刑事だった。
ナチス政権下なのにユダヤ人の刑事が捜査を任されたり、戦争で悲惨な状況になっているのにもかかわず、猟奇殺人がくり広げられたりと、シチュエーションの異様さが衝撃的な作品です。そして、その設定のおかげで、常にヒリヒリとしたサスペンスを味わうことができます。ただ、ミステリーとして見た場合、謎解きや犯人の動機などは凡庸で、これといって特筆すべき点はありません。
ゲルマニア (集英社文庫)
ハラルト ギルバース
集英社
2015-06-25


ワシントン・スクエアの謎(ハリー・スティーヴン キーラー) 1921年発行のエラーコインを買い取ってくれることを知った青年は、指定の場所に向かうが、そこには死体が転がっていた。事態がめまぐるしく展開するサスペンス小説。
1920年代から30年代に活躍した作家の作品です。決して完成度が高いわけではなく、ある意味3流のサスペンス小説ですが、闇鍋のようにいろいろな要素がぶち込まれた作品で、混沌とした面白さがあります。あまり深く考えず、物語の流れにに身を任せて楽しむのがよいでしょう。
ワシントン・スクエアの謎 (論創海外ミステリ)
ハリー・スティーヴン キーラー
論創社
2015-06


夜が来ると(フィオナ・マクファーレン ) 老女の元に、自治会から派遣されたというヘルパーがやってきた。認知症の彼女に対して、ヘルパーは次第に本性を見せ始め、老女の世界は異様なものとなる。
認知症の老婆が家の中で虎を目撃する序盤から不穏な空気が流れ、強烈なサスペンスが発生します。行われる犯罪自体は陳腐なものですが、そこに認知症による幻覚が加わり、まるでダークファンタジーのような世界が展開されるのが印象的です。

夜が来ると
フィオナ マクファーレン
早川書房
2015-06-24


2015年5月

悪魔の羽根(ミネット・ウォルターズ)
2002年、アフリカの小国であるシエラレオネで5人の女性が殺され、3人の元少年兵が起訴されるという事件が起きる。しかし、報道記者のコニーは英国人のマッケンジーを疑っていた。2年の月日が流れ、バグダッドにいた彼女は、マッケンジーによって監禁されてしまう。3日後、ほとんど無傷で解放されたコニーだったが、監禁中に何があったかは警察に話そうとしなかった。
語り手であるコニーが読者に対して事実を隠ぺいしているので全体がひどく謎めいた雰囲気になっています。とは言うものの、その謎を巡ってのサスペンスフルな展開が続くかというとそうではなく、序盤と終盤を除く大半が、心の平穏を求める彼女の田舎暮らしの様子に費やされているのです。ここで描かれる村人たちとの軋轢やトラウマとの対峙を濃厚な心理サスペンスと取るか、物語の停滞と取るかでこの作品の評価は変わってきます。中盤の静かに緊迫感を煽る展開に感情移入できなければ本作の凄味を味わうことは困難でしょう。

2016年度このミステリーがすごい!海外部門6位
悪魔の羽根 (創元推理文庫)
ミネット・ウォルターズ
東京創元社
2015-05-29


死への疾走(パトリック・クェンティン) マヤ文明の遺跡を舞台に、二転三転する事件とふたりの美女に翻弄されるピーター。ピーター・ダールスシリーズで唯一未訳だった作品
観光地巡り、謎の美女、波乱万丈のストーリーと、スケールの大きな2時間サスペンスドラマといった感じの作品です。とにかく、内容てんこ盛りで読者を飽きさせないようにと工夫を重ねているの所に好感が持てます。

死への疾走 (論創海外ミステリ)
パトリック クェンティン
論創社
2015-05


さよならシリアルキラー(バリー・ライガ) 殺人鬼である父親に殺しの英才教育を受けて育った高校生ジャズ。彼はそのことに苦悩しながらも、自身の能力を生かして連続殺人犯を追っていく。
アメリカのヤングアダルト小説。ミステリーとしては特筆すべき点は何もなく、凡庸な作品ですが、主人公の心の葛藤を中心とした青春小説としてはよくできており、読み応えのある作品になっています。
さよなら、シリアルキラー (創元推理文庫)
バリー・ライガ
東京創元社
2015-05-11


ブエノスアイレスに消えた(グスタボ・マラホビッチ) 4歳になる娘とベビーシッターがブエノスアイレスの地下鉄で消息を絶った。その行方はようとして知れず、父親は私立探偵の力を借りるが・・・。
日本に紹介されるのは珍しいアルゼンチン産のミステリーです。失踪した娘を探すのに9年もの月日が流れますが、それでも飽きさせることなく読ませるその筆力に、熟練の技を感じます。ただ、人によっては中盤辺りは冗長だと思うかもしれません。しかし、物語は後半になると加速度を増し、徐々に真相が明らかになる展開で読者の心を鷲掴みにします。ラストもひとひねりがあり、最後まで予断を許さない作品です。






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