更新終了☆☆☆




2016本格ミステリ・ベスト10
探偵小説研究会
原書房
2015-12-04


2015年4月


偽りの果実:警部補マルコム・フォックス(イアン・ランキン
不良警官の内偵中に関係者が死亡する。さらに、それは25年前の民族運動家の事故死に繋がり、それがスコットランドの諸問題にも関連してくる。シリーズ第2弾。
警察小説としては特に突出した存在ではなく、事件も地味ですが、地道な捜査を行う内に少しずつ話が膨らんできて、700ページを全く飽きさせずに読ませる筆力は見事。



2015年3月

ザ・ドロップ(デニス・ルヘイン) ギャングの息のかかった場末のバーでバーテンダーをやっているボブの人生は、怪我を負った子犬を拾ったことで動き出す。閉塞感漂う裏社会での孤独な男の戦い。
短い作品ですが、その中に仄暗い人生の悲哀がぎっしりとつまっており、非常に濃厚な読書体験を得ることができます。一級のノワール小説。

2016年度このミステリーがすごい!海外部門18位


追風に帆を上げよ/クリフトン年代記 第4部(ジェフリー アーチャー)
身寄りのないハリー・クリフトン少年がその才能を見いだされ、栄達と冒険の人生を歩んでいく一大サーガの第4部。本作ではクリフトン家の滅亡を願う者の豪華客船を巡る陰謀が描かれる。
ハラハラドキドキさせる展開は相変わらずで、引きも絶妙。早く次巻を読みたいと思わせる手腕はさすがです。



2015年2月

猟犬(ヨルン・リーエル・ホルスト) 17年前の女性殺しで、容疑者逮捕の決め手となった証拠が捏造されたものと判明し、指揮をとっていた刑事に容疑がかかる。彼は名誉を回復するべく真相を追うが・・・。シリーズ第8作。
序盤はやや退屈ですが、警官の父と新聞記者の娘が父が力を合わせて真相に迫っていく展開は非常に読み応えがあります。父の視点と娘の視点が交互に入れ替わる構成も、その度に話が進展していくので、独自のテンポを生んでいて、読んでいて心地よさを感じる作品です。
猟犬 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
ヨルン リーエル ホルスト
早川書房
2015-02-05


死者は眠らず(ジェフリー・ディーヴァー他)
優秀な美術学芸員が殺され、妻が逮捕された。彼女は犯行を否認するが、多くの証拠によって死刑となる。その10年後、彼女の追悼式で意外な事実が判明する。 人気作家26人が集結した前代未聞のリレー小説。
26人の合作ともなれば、普通グダグダになってしまいそうですが、全く違和感を感じさせず、しっかり読み応えのある作品に仕上がっているのは見事です。しかし、整合性を意識しすぎたためか、結末が無難なものに落ち着いてしまった点には物足りなさを感じてしまいます

死者は眠らず (講談社文庫)
ジェフリー・ディーヴァー
講談社
2015-02-13


2015年1月

偽証裁判(アン・ペリー) 1857年。看護師のへスターは、名家の女主人が旅行をする間の付添い人として雇われる。しかし、女主人は死に、へスターは殺人罪で逮捕される。裁判での無実の証明をかけて奮闘する私立探偵モンク。シリーズ第5弾。
派手な面白さはありませんが、人物が丁寧に描かれていて、緊迫感のある裁判シーンも読み応えがあります。全体的に、手堅い良作という感じです。

偽証裁判〈上〉 (創元推理文庫)
アン・ペリー
東京創元社
2015-01-29


模倣犯(M・ヨート) 犯罪心理捜査官セバスチャンシリーズの2作目。主婦が首をかき切られて殺される事件が発生した。しかし、それは、かつてセバスチャンが捕え、現在服役中の犯人の手口とそっくりだった。そして、犯行が続く中で、セバスチャンは、被害者がすべて自分と関係のあった女だということに気づく。
超自己中の主人公をはじめとして、強烈な個性をもったキャラクターたちの人間模様が絶妙。前半は人物をじっくりと描き、後半は元脚本家らしいスピーディで映像的な展開、そして、考え抜かれた立体感のあるプロットは物語に深みを与えています。『ミレニアム』以降、注目されている北欧ミステリーの中でも頭ひとつ抜けた存在だと言えるでしょう。ただ、人によっては、事件がなかなか進展しない前半の展開に退
屈さを覚えるかもしれません。

そして医師も死す(D・M・ディヴァイン ) 診察所の共同経営者の死に対し、疑いをかけられたターナー医師は独自に真相を探る。
奇抜な謎や大トリックなどは何もありませんが、伏線が丹念に張り巡らされており、それを悟らせないミスリードの技巧も一級で、極めて質の高いフーダニットの傑作です。しかし、一方で、物語的には主人公の要領の悪さが読者のストレスを誘発している面もあり、そこが難点となっています。
2016年度このミステリーがすごい!海外部門16位
2016年度本格ミステリベスト10 海外部門1位
そして医師も死す (創元推理文庫)
D・M・ディヴァイン
東京創元社
2015-01-22


サンドリーヌ裁判(トマス・H.・クック)
聡明で美しい大学教授の死。同じ大学教授である彼女の夫が疑われ裁判となるが・・。夫婦間の深い溝を濃厚な心理描写と共に浮き彫りにした一級のサスペンス。
裁判の進行と過去の回想が交互に描かれる構成は冗長ですが、クックの鋭い人間洞察によって読み応えのある作品に仕上がっています。前半、裁判にかけられる夫のいけすかない人間性が赤裸々に綴られ、不快に感じる部分もある中で、それが後半、魂の救済の物語へ変わるその対比はあざやかです。
2016年度このミステリーがすごい!海外部門12位



米露開戦(トム・クランシー&マーク・グリーニー) 治安国防機関出身者に牛耳られたロシア政府は次第に暴走を始める。そして、彼らはロシア帝国復活を目指し、最初に目をつけたのがウクライナだった。
トム・クランシーの遺作となった作品。情報戦に終始して、結局、開戦にはいたらなかったので、そういう意味では肩透かしですが、緊迫のある展開は読み応え十分です。そして、現実の国際問題を予見したかのような内容が興味深いものになっています。

米露開戦1 (新潮文庫)
トム クランシー
新潮社
2014-12-22


禁忌フェルディナント・フォン・シーラッハ 事象を色や音として感じ取れる共感覚を持つ写真家。その彼が、女性を誘拐した容疑で逮捕され、厳しい尋問の末、殺人を自供する。彼を救うべく敏腕弁護士が法廷に立つが、状況証拠は不利なものばかりだった。
簡潔な文章でつづられる世界観は非常に魅力的ですが、曖昧模糊とした結末は賛否が分かれます。ミステリーとしてよりも文学として評価の高い作品です。

2016年度このミステリーがすごい!海外部門13位
禁忌
フェルディナント・フォン・シーラッハ
東京創元社
2015-01-10


2014年12月

ありふれた祈り(ウィリアム・ケント・クルーガー)
1961年、恵まれた家庭に育ちながらある悲劇によって多くの死を経験してしまう13歳の夏。
ミステリーというよりも主眼は家族の物語。丁寧な人物描写で登場人物たちを魅力的に描き、突然訪れた危機からの家族の再生を感動的に綴っています。珠玉と呼ぶにふさわしい名品です。
2016年度このミステリーがすごい!海外部門3位
エドガー賞(MWA賞)受賞
アンソニー賞受賞
マカヴィティ賞受賞
バリー賞受賞
ありふれた祈り (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ウィリアム・ケント・クルーガー
早川書房
2016-11-09


スナイパーの誇り(スティーヴン・ハンター) 第二次世界大戦時、白い魔女と恐れられたソ連の女射撃手ミリ。しかし、彼女は1944年を最後に記録から姿を消していた。モスクワに飛んだボブは記者のキャシーと調査を開始する。ボブ・リー・スワガーシリーズ。
美女スナイパーが活躍する過去の物語は非常に面白かったのですが、ボブを主人公にした現代編のストーリー運びが強引に感じられたのが残念です。

スナイパーの誇り(上) (扶桑社ミステリー)
スティーヴン・ハンター
扶桑社
2014-12-23


白の迷路(ジェイムズ・トンプソン) ウァーラ警部は脳腫瘍からの復帰後、超法規的な職務に従事している。その一方、彼の住む国フィンランドでは移民擁護派の政治家が殺され、それを契機に報復殺人が繰り返されるという深刻な危機に陥っていた。
シリーズ前2作がハードながらも堅実な警察小説だったのに対し、今回は一気にノワールの世界に突入しています。その中で、現実のフィンランドでも深刻化している移民と人種差別の問題を正面から取り上げているのが本作の特徴です。今までと全く異なる空気に違和感を覚える読者も多いでしょうが、ドラマの濃厚さは特筆もので、読了後には深い感銘を覚えるでしょう

白の迷路 (集英社文庫)
ジェイムズ トンプソン
集英社
2014-12-16


2014年11月

判決破棄リンカーン弁護士(マイクル・コナリー) 24年前の少女殺しの犯人として服役中の男。しかし、最新のDNA判定の結果、少女の服に付着していた精液は男のものとは異なることが判明する。判決は破棄され、再審とはなった裁判の行方は?
息詰まる法廷ドラマは大変面白く、上質のリーガルミステリーでしたが、結末が微妙だったのが少々残念です。

判決破棄 リンカーン弁護士(上) (講談社文庫)
マイクル・コナリー
講談社
2014-11-14


ヴァイオリン職人と天才演奏家の秘密(ポール・アダム)
名ヴァイオリンニスト・ジャンニのもとへパガニーニの愛用した名器を持ちこんだ美術品ディーラーは、翌日、撲殺死体となっていた。さらに、彼の所有物からバガニーニに宛てた女性の手紙が発見される。
殺人事件の謎に関しては全くたいしたことはありません。それよりも、歴史や音楽の蘊蓄が楽しく、また、主人公の周囲の人間関係もいい雰囲気を醸し出しています。






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